女性のための無料 官能小説・官能漫画サイト
エルシースタイル(LCスタイル)は、登録商標です【商標登録第4993489号】
ラブコスメが提供する情報・画像等を、権利者の許可なく複製、転用、販売などの二次利用をすることを固く禁じます
官能小説 先生とわたし 1話
戸惑い
望月里香は他人の体温を感じながら、相反する二つの感情の間で揺れ動いていた。
その一つは、喜びだった。高校時代からずっと憧れ慕ってきた人と、彼女は今抱き合っている。
淡い憧れが叶うのはこの上なく嬉しいことで、彼女の心はあたたかいもので満ち満ちていた。
もう一つは、戸惑いだった。高校の先生であった彼──青木優という──はどうせ自分のことを子供としか見ていないだろうと思っていたし、それに里香には恋人もいた。
だから再会しても恋愛対象としては見られていないと勝手に思い込んでいた。
欲しいと言って
こうして抱き合うのは何かの気まぐれだと、彼女は思おうとしていた。決して、優が自分を好きなわけではないと。自分を恋人にしたいわけではないと、里香は自身に言い聞かせていた。
なのに、である。思わず優に抱きついた里香を、彼は優しく抱きしめ返してくれた。抱擁の意味を考えに考えても、彼女にはわからなかった。
ベッドの端に腰掛けながら、里香は戸惑いの声をあげる。
「せんせ……?」
抱きついた体勢から顔を少しずらして、里香は優の額に自分の額をくっつけた。
「先生、いいの……?」
「ああ、いいよ。望月が俺を求めてくれるなら、いつだって俺は応じるさ」
少し低めの優の声が、里香の耳に響いた。あくまで受け身でいたいような優の言葉に、里香は頬を膨らます。
「求めてくれるなら、なんて消極的な答えじゃイヤ。先生から私を欲しいって言って」
「……仕方ない子だな、望月は」
優からの答えの代わりに、彼は里香にキスをした。優の薄い唇が、里香の柔らかい唇にふわりと当たる。触れるだけのキスなのに、体温が伝わってくるようで里香は胸が高鳴った。
「……それに、その『望月』って言うの、もうやめてください」
「それなら、……里香も……俺のことを『先生』って呼ぶのもやめてくれよ。先生って呼ばれると、生徒といけないことをしてるような気になっちゃうから」
「そうですね……ううん、そうね。優、さん……もう一度、キスしよ?」
少し恥ずかしそうに優の名を呼んで、里香は今度は自分から唇を寄せる。一度ついばむようなキスをしてから、彼女はおずおずと舌を出して優を誘い出した。
「んっ……は……ぅ……っ」

だんだんと激しくなるキスに、里香は吐息を漏らした。頭の中がだんだんぼうっとして、キス以外のことが考えられなくなる。目の前の愛しい人と昂まりたいという気持ちだけが、彼女を突き動かしていた。
「せんせ……じゃなかった……優さんっ……私……」
里香が息継ぎをするように一旦唇を離す。彼女は喜びのせいか涙目になっており、キスを終えるとその顔を見せないように優の肩に顔を乗せた。
「里香。キスだけで満足?」
彼女を抱きしめたままの手で、優は里香の背中を二、三度さすった。里香は、キスだけで満足していないことを悟られないように、優にぎゅっとしがみつく。だが彼女の本心は、彼にはお見通しだった。
「……満足じゃないでしょ? 少なくとも、俺はもう少し続きがしたいな」
「……ほんとに?」
「うん、本当に。……っていうか、里香。俺がそういう風に求めるように、仕向けてるだろ?」
優の声には若干の苦笑いが含まれていた。彼には、里香が自分に続きをするよう促しているように思えたらしい。実際のところ、里香も優がリードしてくれたら嬉しいと思っていたから、あながち間違いでもなかった。
「いいから……続き、しよ?優さん」
「ああ」
優は頷くと、ベッドに彼女を横たわらせた。
夢を見てるみたい
彼の部屋には、ほとんど物がない。シンプルな部屋に、真っ白い壁紙と天井が貼られているのが逆に目に付くぐらい物がなかった。
里香はベッドに仰向けになりながら、不思議な気分になった。
(私、先生の恋人になったってことだよね)
視線を天井のあちこちに揺らめかせていると、里香の上に覆い被さった優が彼女にたずねる。
「どうした?何か変なものでもあったか?」
「ううん、違うの。優さんと結ばれるのが、変な感じ──あ……いや、変って、ネガティブな意味じゃなくて、嬉しいんだけど不思議な感じがして」
慌てて弁明する里香の髪を、優は優しく撫でた。
「そっか。確かに、出会った頃とは立場も何もかも違うもんな」
「うん」
優はとびきり優しい瞳で里香を見つめたあと、彼女の首筋に唇を寄せた。キスが首筋に落とされていくと、その度にかすかな音がする。
「……っ、ん……んんっ……」
首筋をなぞる優の刺激に、里香は思わず声をくぐもらせた。
「里香、もっと声出していいよ」
「でもっ……」
「聞かせてよ、里香の声。今君が俺の腕の中にいるって、実感させてほしい。再会して、里香に惚れて……これが夢じゃないって実感したい」
夢、と聞いて里香はハッとした。
首筋への愛撫に背中がゾクゾクしていたが、彼の言葉はそれよりも彼女をどきりとさせた。
「夢、ね……んっ、くぅうっ……あ、ぅっ……」
執拗に首筋を唇で食む優に対し、里香は何も考えられなくなりそうだった。
そんな中でただ一つ、夢という言葉が彼女は引っかかっていた。
里香自身も優と同じように感じていたのだ。
(先生とこんなことになるなんて、夢にも思わなかった)
発端
ことの始まりは、久しぶりに開かれた高校の同窓会だった。
連絡先のわかる同学年全員に声がかけられたこの会だが、皆大学を卒業して社会人になったばかりということで、集まったのは連絡した人数の三分の一程度だった。
里香は同じクラスで仲が良かった友人たちと、最近の仕事や生活について話していた。
就職して一人暮らしを始めた人もいれば、親元に残ってのんびりしている人もいる。
里香は大学生の頃から付き合っている彼氏と同棲をしていると告げると、結婚間近かと友人たちに詰め寄られてしまった。
「まだわかんないよ、結婚するかどうかなんて。最近はあんまりうまくいってないし」
ため息混じりに答える里香に、友人の一人、昌美がはつらつとして言葉を返す。
「でも、結婚は考えてるでしょ?じゃなかったら同棲なんてしないよね」
「ま、まあね……」
その時、里香の視界に一人の男性が映った。
ちらりとそちらを見ると、彼も里香の方をたまたま見ていたらしく、目があう。目があったのは、高校二年生の時に英語の担当をしてくれた青木優先生だった。
先生は、里香のことを視線にとらえると彼女の方へまっすぐ歩いてくる。
(青木先生だ……高校生の頃、憧れてたなあ)
高校を卒業してから五年経っても変わらぬ先生の姿に、里香はほんの少しホッとした。
「望月。久しぶりだな」
「青木先生!お久しぶりです。お変わりなく」
お変わりなく、なんて社交辞令がすんなり出てくる自分自身に驚きもしたが、里香は笑顔を先生に向けた。

「変わらないか……確かに、そのまま歳だけとってる感じだな」
「おいくつでしたっけ」
「俺?今年で32だよ」
そう言って笑う先生の顔は、社交辞令でもなんでもなく、出会った頃と何も変わらなかった。
憧れていた人だから、もっと想像の中で美化されているかもしれないと思っていたのに、先生は想像のままだ。里香は嬉しくなって、つい明るい声でこう言う。
「ねえ、先生。せっかくだから連絡先交換しませんか?」
「ああ、いいよ。この辺に住んでるなら、たまに飲んだりしよう」
里香と先生は携帯電話を取り出すと、何の気なしに連絡先を交換した。
まさかこれが新たなときめきを里香にもたらすなんて、その時の彼女は想像もしていなかった。
初恋に近い憧れが、叶う瞬間が訪れるなんて、ひとかけらも──。
⇒【NEXT】再び先生と里香の運命は…(先生とわたし 2話)
あらすじ
憧れだった高校の先生と大人になって再会し、抱き合っていること…
それは里香にとってこの上なく嬉しいことだった。
しかし、彼女は戸惑いを感じていた。
彼女は年の差からして彼の恋愛対象になれないと勝手に思い込んでいたし、彼女には恋人がいた…