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官能小説 恋のメイクレッスン 8話
告白

水と肥料を充分に与えられた蕾は、太陽を目指して花弁を震わせたった今花開いた。
大学の構内を歩いていると、やたらと視線を感じる。
視線など今まで小銭を落とした時くらいしか感じなかったので視線の意味が分からず不安になったものの、開けた世界の鮮やかさとメイクをして満たされた気持ちの方がはるかに強かった。
「ひなた、すごく綺麗だよ! 頑張った甲斐あったね」
前方から聞こえた声の主を探して駆け寄ると、お互い笑みがこぼれる。
「花織、本当にありがとう。初めてこんなに楽しくて嬉しい気持ちになった」
「どういたしまして。そう言ってもらえて嬉しいよ――あ! 瀬戸君発見!」
そう言うと花織は私の背中をぐいぐいと押して、ベンチに座って本を読んでいる瀬戸君の元へと向かわせる。
「ちょ、ちょっと花織! まだ心の準備が」
出来ていない、と言う前に足がもつれてバランスを崩した体はそのまま瀬戸君へダイブしそうな勢いだ。
背後から花織がやり過ぎたと言わんばかりの声を上げて私の体を支えようとするものの、花織の腕力で私の体重を持ち上げるなど難しいことで、体は瀬戸君目がけてまっしぐらに落ちていく。
「瀬戸君よけて――!」
「藤森!?」
彼の反応
驚く瀬戸君の声に「ああ、もうダメだ」と衝撃に備え目を瞑ると、どうしてか温かな感触が私の体全体を包み込んだ。
(……なにが起きたの?)
ゆっくりと目を開けると、すぐ近くに瀬戸君の顔があった。
抱きしめられていると気づき、キスしそうな顔の距離に驚いて慌てて体を離そうとするが、瀬戸君の腕がそれを許さなかった。
「大丈夫? 怪我してない?」
少し低めの声が優しく耳元をくすぐると吐息まで聞こえて、私は別の意味で大丈夫ではなくなる。
「うん、大丈夫……瀬戸君こそ怪我してない?」
耳まで赤くしながら私はなんとか答えると、よかったと言いながら瀬戸君の腕が解かれる。
私はようやく落ち着きを取り戻し、立ち上がると瀬戸君に「ぶつかってごめんね」と謝った。
瀬戸君は座ったまま気にしなくていいよと笑みを浮かべ、私を見ると顔を赤くして視線を逸らした。
「なんか……すごく可愛くなったね。彼氏でもできたの?」
(嘘……可愛いって言ってくれるなんて)
瀬戸君の可愛いという言葉に恍惚としてしまいそうになるが、彼氏という単語に私は焦り始めた。
「か、彼氏なんていないよ! 私はずっと――――初めて見た時から瀬戸君が好きだったの!花織に協力してもらってお洒落やメイクをして、瀬戸君に女の子として見てもらいたくて頑張ったの……」
――――――ああ、ついに言ってしまった。
少しの達成感と大きな不安で胸が押しつぶされそうになる。返事を待っている間が永遠のように長く感じ、今すぐ逃げ出したい気持ちになった。
瀬戸君はびっくりしたように目を丸くすると、照れくさそうに頭を掻きながら話し始める。
「……藤森に初めて会った日、一緒に教室を探して駆け回っている時に藤森の前髪が風で揺れて素顔が見えて、すごく可愛い子なのにどうして隠しているんだろうって思った。それからなんとなく藤森の視線を感じるようなことがあって、最初は自意識過剰かなって思っていたんだけど、それから気になり始めて……気づいたら好きになってた。」
――こんなことってあるの? 夢じゃないよね?
頬をつねると痛みしか感じず、これは夢でも妄想でもない。紛れもない現実だと私は実感した。
「……本当に、私のこと」
「うん、今日藤森を見てハッとしたんだ。こんな可愛い子を他の誰にも渡したくないって……」
私が独り言のように呟くと、瀬戸君は笑顔でそう答えた。笑った時に少しタレ目になる瞳には私しか映されていない。
瀬戸君は私の前に立ち上がると真剣な眼差しで私の手を取った。少し骨ばった大きな手が優しく私を包み込む。
「好きです。俺と付き合ってください」
「――――っ、はい!」
幸せとはこういうことなんだ。そう思った瞬間周囲から歓声が上がり、野次馬が集まっていることに気付いた。
「公開告白? 羨ましい〜!」「あの子藤森さんだって、あんなに綺麗な子だったんだ」「結構お似合いじゃない?」「うわ〜、人の告白なんて初めて生で見ちゃった!」
急に恥ずかしくなった私は繋いだ手を解こうとするが、瀬戸君は強く握り返し私を引っ張って「ここじゃ二人きりになれないね」と苦笑すると一気に人だかりを走り抜けた。
一瞬、花織の姿が見える。花織は満面の笑みで「おめでとう! 幸せに!」と私に叫んだ。
「ありがとう花織!」
私も花織に大きな声で叫ぶと、暖かな日差しが二人を包んだ。
二人はまるで初めて会った日のようにどこまでも走ってゆく。
あらすじ
伊織と花織のおかげで綺麗になったひなた。
その変化は大学構内を歩いていても、ひなたが今まで感じたことのないたくさんの視線を感じるほどだった。
メイクをして変われた自信に満たされていると、花織の声がして…