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官能小説 恋のメイクレッスン 4話
新しい私

「はーい、とーっても可愛くできました!」
伊織がケープを外すと同時に花織は立ち上がって歓喜の声を上げた。
「ひなたとっても綺麗!さすが伊織、腕だけは確かね」
「これが……わたし?」
鏡には見知らぬ女の子が映っていた。
長かった前髪は目の上まで切りそろえられ、腰まであった髪は鎖骨あたりまで短くなっており、大きなアーモンド形の瞳に筋の通った鼻。全体的に整った顔立ちがそこにはあった。
まともに自分を見たことがない私は、鏡に映った人物が自分であると気づくまで数秒かかってしまった。
「痛んでたからだいぶ切っちゃったけど大丈夫そう?」
伊織は鏡を取り出すと、後ろから見たヘアスタイルを確認させる。
「バッチリです。もう、なんて言ったらいいか……自分が自分じゃないみたいで、すごく感動しちゃって」
視界が広くなって二人の顔がはっきりと見えると、ますます嬉しくなり思わず出そうになった涙をぐっとこらえる。
「感動している暇なんてないわよ。これからみっちり二日間、鬼のメイクレッスンがあるんだからね」
うっとりとしていた花織は一転、ニヤリと笑いながら腕を組む。
その迫力に若干気圧されながらも、やり遂げてみたいという意思が湧いてくる。
今朝までの内気で自信のない自分はどこに行ったのだろうかと思うくらい、ヘアスタイルが変わったことでこんなにも心が弾むような気持ちになることが不思議だった。
変わらなきゃ
「……あ!大事なこと忘れてた。お代はいくらですか?」
私は慌てながらソファにある鞄から財布を取り出すと、散らばった髪の毛を掃いている伊織に尋ねた。
「今回は特別にタダにしてあげちゃう。お店が休みで暇だったし、いい腕慣らしになったわ〜」
「でも、そういう訳には……」
「それじゃあ、お友達にここの美容院を宣伝しちゃってちょうだい。できれば可愛い感じの男の子限定で!」
伊織は戸惑う私を見据えると妖しい微笑みを見せた。赤い口紅が弧を描いてミステリアスな色香を漂わせる。
「伊織!またお客さんをナンパする気?」
花織はわなわなと拳を握ると、獲物を待ち焦がれたような瞳をしている伊織をキッと睨み付けた。
「ナンパ?」
私の疑問の声にハッと我に返った花織は、深い溜め息をつくとソファに座り直し頬杖をついた。
「……そう。伊織ってば男のお客さんが来ると見境なしにナンパしちゃって、この辺じゃ有名なのよ。だから両親が一人で店を任せるのは不安だって言うのよね」
「過保護な親よねぇ」
「そういう話じゃないの!ナンパは同じ趣味の人としてちょうだい。とにかくお客さんには手を出さないの」
なるほど。花織の両親が不安がっていたのはこういう理由だったのか。
確かに美容院でいきなり同性からナンパをされたら誰だって驚いてしまう。
「イイ男がいても自分をアピールしなきゃなにも始まらないじゃない」
伊織は掃き掃除に戻ると不貞腐れたように呟いた。
「自分をアピール……」
そうだ。自分からアクションを起こさなければ始まるものも始まらない。
いつも見ているだけの自分はアピールするための行動をなに一つしていなかった。
「ひなた、伊織の話を真に受けなくていいから」
「あら失礼しちゃうわ」
花織は呆れたように伊織を小突くと、紙袋を抱え私に自室へ来るように促した。
(これから、私はどう変わっていくんだろう?瀬戸君が振り向いてくれるような女の子になれるかな?)
少しの不安はあったものの、新しいことにチャレンジする楽しみの方が大きい。
私は伊織に深々と頭を下げお礼を言うと、花織の自室へと向かった。

あらすじ
美容師で、香織の兄である伊織に髪を切ってもらったひなた。
伊織がケープをはずすと、鏡にうつるひなたは見違えてしまうほどに美しく大変身していた…。