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官能小説 恋のメイクレッスン 2話
ひなたと一樹
瀬戸一樹と出会ったのは、桜が散り始めた大学一年生の春。
初々しい学生たちが青春を謳歌している中、地方から出てきたばかりの私は都会の生活になかなか慣れず毎日が精いっぱいだった。
家賃や光熱費の支払い方もわからなかったし、住民票の移動や奨学金の手続きやバイト探しもしなくてはならない。
初めてのことばかりでほとほと疲弊していた私は、アパートから大学までの道のりを覚えるのも容易ではない状態だった。
大学に行っても地元のように知った顔はおらず、自分から話しかけることができなかった私は、一人で授業のある教室を探し構内で迷子になりかけていた時「泣きそうな顔しているよ?どうしたの?」と瀬戸君に声をかけられたのだ。
偶然にも瀬戸君も私と同じ授業を選択しており、二人で迷いながらもなんとか教室にたどり着くことができた。
見つかってよかった、と嬉しそうに瀬戸君が見せた笑顔に見惚れてしまい、なぜか胸がキュンと締め付けられ、心臓の音が瀬戸君にまで聞こえてしまいそうなくらい高鳴ってしまう。
(これってもしかして、恋なの?)
最初は病気にでもなったのかと思っていたけれど、胸のときめきは瀬戸君を見るたび高まってゆき、これを恋だと認めざるを得なかった。
恋に落ちたのは、私にとってこれが初めてのことだった。
ラフにセットした短めの黒髪、笑ったときに少しタレ目になる優しい目元。
大きな背中に少し骨ばった長い指。全てがたまらなく好きになってしまった。
しかし、明るく爽やかな性格の瀬戸君はあっという間に男女問わず人気になり、話す隙もなかなか掴めなくなってしまった私は、遠目で見ることが精いっぱいになってしまった。
でも、それだけで満足だった。
見ているだけでその日一日が幸せだった。
小さな蕾

「幸せだったんだけどなぁ……」
「なにが?それより手持ちの服ってこれしかないの?」
私の住むアパートの小さなワンルームで、花織は衣装ダンスを開けると次々と服を広げていった。
白いブラウス二枚、黒のレギンスパンツ。履き古したジーンズに少しくたびれたTシャツ数枚とベージュと黒のカーディガン。
どれも着古した形跡が色濃く残り、可愛らしいコーディネートをするには新しく服を買い直さなければ不十分だった。
「普段着ているのはこれだけ。でも……実は着てない服がクローゼットにあるの」
花織の呆れ顔に申し訳なく思いつつ、私はクローゼットを指さした。
溜め息をつきながら花織は「開けるよ」と一声置くと広げた服を跨ぎながらクローゼットの扉を開けると同時に、驚きと歓喜の声を上げた。
「も――、可愛い服たくさん持ってるじゃないの!しかもパンプスやバッグまであるし!……でもこれみんな未使用だよね?」
花織はおもちゃを与えられた子供のようにはしゃぎ、服の一つ一つを丁寧に見定めはじめた。
クローゼットの中には色とりどりの服、バッグ、パンプス、アクセサリーまで揃えられており、ラベンダーほのかな香りが漂うサシェも相俟って、まるで小さなブティックのように魅力的な空間を醸し出している。
「うん、バイトしてお金貯めて可愛いと思った服をネットで買っているうちにこんなことになっちゃって。でも自分には似合わないから着ないでたまに眺めているだけなの」
「はあ!?なに言ってんの?なんでこんなに可愛い服タンスの肥やしにしてるのよ!」
「だ、だってぇ」
オロオロする私に「信じられない!」とむくれながらクローゼットの中の服であれこれコーディネートを考えてくれている花織はやっぱり優しい。
そうだ、いつだって花織は優しくて可愛くて人気者で……。
(どうして私なんかのためにこんなにしてくれるのかな?)
「あとはバッグ……服がこの色だからこれでいいかな?あとはこの服と靴入れてと。ほら!ぼんやり突っ立ってないで次は私の家行ってそのヘアスタイルなんとかするから行くわよ」
私に考える暇を与えないくらい花織はテキパキとコーディネートをいくつか決めると、コーディネートした服、パンプス、ショルダーバッグを大きな紙袋に丁寧に詰め込み、あっという間に玄関で私を呼んでいた。
「え、あれ?いつの間に終わったの?」
「ひなたがぼんやりしている間にすぐ終わったよ。あのクローゼットの中身、なかなかいいセンスしてるじゃない」
「本当!?嬉しい……」
「でもこんな良いものを宝の持ち腐れにしているなんて、相当なお馬鹿さんね」
玄関までやってきた私に笑いながらデコピンをすると、花織は突如として真面目な顔になる。
「自分を変えたいと思う?」
「……うん、これまで自分を隠すことに必死だったけれど、こんなことじゃいつまでたっても変われないって気づいたんだ。眺めているだけの服だって着たいし、瀬戸君に女の子として見られたい。今朝までは全然そう思えなかったんだけど、やっぱり私、瀬戸君のことが好きだから頑張りたい」
初めて素顔を認められ、服のセンスを褒められたことがきっかけで、私の中に自分を変えたいという欲求が芽生え始めてきていた。
その欲求はまだ蕾だが、水と肥料を与えればすぐに満開になりそうな勢いが垣間見える。
その言葉を聞いた花織は満面の笑みを浮かべ、私を抱きしめると花織の髪からシャボンと果実の香りがふわり漂い、鼻孔を心地よくくすぐった。
「よく言えたね。大丈夫、ひなたはきっと綺麗な花を咲かせるから」
「花織……ありがとう」
「よし!ひなたの気持ちが定まったところで、次は私の家でヘアスタイルをバシッと決めてもらいに行こう!」
抱きしめた腕を解くと私の頭をポンと撫で、二人は次なる目的地へ向かった。
――――――――
(そういえば花織の家って初めて行くけど、手土産とか必要ないかな?)
電車に揺られながらふと思い出し、隣に座る花織に聞くと「あ−、手土産なんていらないから大丈夫。気にしなくていいよ」と気遣うように口角を上げると、なにかを思い出したように顔を硬直させた。
「それより、ちょっと……じゃなくてすごく変わった人がいるけれど、たぶん害はないと思うから気にしなくていいからね」
変わった人とはどういう人なのだろうか?
花織の家族なら仲良くしたいし、多少変な人でもきっといい人なのだろうと私は自分を納得させる。
(いやいや、ちょっと待て。害はないと思うってどういう意味なんだろう?)
家へ道のりは、そのことで頭の中がいっぱいになってしまった。
⇒【NEXT】「すごく変わった人」の正体とは…?!(恋のメイクレッスン 3話)
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あらすじ
3年片想いの相手である一樹に恋人がいるかもしれないという事実を知ってショックを受けたひなた。
しかし、ひなたは親友の花織と一緒に一樹にひなたが女として見てもらうための女磨きを始めることに…。