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官能小説 恋のメイクレッスン 6話
どうして私にここまでしてくれるの?
「アイブロウ濃すぎ! アイラインも曲がってる! やり直し!」
「はいぃ!」
鬼のような熱血指導に何度やり直しをさせられ涙ぐんだことやら。
それでも手本を教えられながら繰り返すたびに私のメイク技術はどんどん上がっていって、金曜の夕方から始まったメイクレッスンは日曜の昼間になるとだいぶそれらしくなってきた。
「ひなた、かなり上手くなったね! これなら一人でメイクして大学に行けるよ」
満足そうに喜ぶ花織に、ふと金曜のアパートでの疑問がよみがえった。
「花織はどうして私にここまでしてくれるの?」
唐突な質問に花織は一瞬顔を強張らせると、なにかを思い出したように懐かしむような表情を浮かべた。
「ひなたが……昔の私にそっくりだからだよ」
「私が、花織に?」
(どうしてなんだろう?似ているわけがないのに)
なかなか共通点が見つからず、頭を悩ませていると花織はゆっくりと話し始めた。
花織の想い
「――もう何年前だろう? 中学生の頃すごく好きだった人がいたんだよね。でもその頃の私はすごく地味で自分に自信がなくて、こっそり目で追うのが精いっぱいだった。で、その好きだった人はあっという間に彼女ができて私は失恋しちゃったわけ」
花織は少しだけ寂しそうに笑う。その表情がとても切なくて胸がギュッと締め付けられる。
「失恋してから泣いてばかりの私に伊織がこう言ったの『自信がないならつければいいじゃない。勝手に失恋して泣いている女なんてみっともないだけよ。女を磨かないでいるなんて損でしかないわ』って。だから可愛くなって、こんなに可愛い子があなたのことを好きだったんだよって見返したいって決めたの。それから伊織にメイクを教えてもらって、ファッション雑誌を読んでコーディネートの研究をして今の私ができたんだ。そんな時にひなたと知り合って好きな人がいることを知って、昔の自分がひなたに重なって見えて……」
花織はそこまで言うと、いきなり私に頭を下げた。
突然のことに驚く私に消えそうな声で「ごめんね」と肩を震わせている。
「ごめんね、本当にごめん。押し付けがましかったよね。それでもひなたを私と同じ思いにさせたくなくてつい暴走して、ひなたをたくさん振り回して……」
私は花織の肩を持ち上げ、不安げに彷徨っている視線を合わせた。
「花織、私は花織がいなかったら変われなかった。背中を押してくれなければ多分、ずっと前髪で顔を隠してお洒落もメイクもできなくて、好きな人をただ見ているだけの人生だったと思う。けど今は違うよ。私、今度瀬戸君に告白しようって決意したんだ。花織のおかげだよ? 花織がここまで引っ張ってくれなかったら今の私はいないと思う――だから謝らないで。むしろ感謝してるんだから」
「ひなた……」
不安に駆られた花織はもういなかった。そこには笑いながら嬉し涙を流しあう二人がいた。
「ありがとう花織」
ありがとう。たとえ恋が実らなくても、私は後悔しない。
ずっと胸に秘めていた思いは誰かを好きだった証なんだから。
「あ、それともう一つ言わなければならないことがあったんだよね」
花織は涙を拭うと、決まりが悪そうにから笑いをした。
「瀬戸君と彼女っぽい女の子の話、あれ嘘なんだ。ひなたをなんとか変えたくてとっさに出た嘘なの。ごめんね」
「−−え、ええ? う、嘘だったの?」
えへへ、と頭を掻きながら笑う花織に、私はただ唖然とするしかできない。
それは素直に喜ぶにはちょっと悔しいような、なんとも不明瞭な気持ちだった。
(彼女がいなくてよかったけど、どうしてだろう? すごく複雑!)
心の葛藤は花織の家を出るまで密やかに胸の中で騒ぎ続いていた。
あらすじ
ヘアメイクアップアーティストの伊織に髪の毛を整えてもらい、花織に厳しいメイクレッスンを受けているひなた。
ひなたはなぜ私にここまでしてくれるのかと花織に聞いた。
花織の想いと過去が彼女の口から明かされる…。