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官能小説 職場での再会【1-2】彼女の、愛のゆくえ
職場での再会【1-2】彼女の、愛のゆくえ
豪華なシャンデリア、きらびやかな衣装、グラスとグラスがこすれあう乾杯の華やかな音、アルコールと葉巻、男性の呟き、女性のため息、そして喧騒……
銀座8丁目にある銀座のクラブで、シャンパンと男の賛辞に酔い、お世辞を口にしたり男の誘いにすねたりかわしたりと、夜ごと繰り広げられる擬似恋愛を私は楽しんでいた。
「くんくん、匂うよ、夜の世界の匂い」
休日のイタリアンランチの席で、友達の由紀に「夜の世界の匂い」と指摘されて私はドキッとした。
目が大きく色が浅黒い私とは反対に、由紀は切れ長で色白、しかも直感的に人の本質をズバリと見抜く。
だから頼りになる洞察力も、時には巫女のご神託のような威圧感も漂う。
「有名なスピリチャルカウンセラーの本を読んでいたら、オヤジと不倫で別れると男にモテないって」
「え?何で?」
「女はセックスで男のオーラをもらうとか。きっとオヤジの癖が乗り移るの」
「ふ〜ん」
「不倫しなくても、金持ちオヤジとお水の世界で、いちゃついているとオーラが移って、彼氏できなくなるよ」
「ええ〜そんな〜」
「夜のバイトを減らしたら?本当に匂うよ」
パスタを食べる手が止まってしまった。
休日のレストランは閑散としていて、窓から差し込む初春の光がテーブルのグラスに反射して、ゆらゆらと頼りなさそうに光っていた。
……朝の光に包まれて男の裸体が光っていた。
昔の男に似ている男とホテルで過ごしたあの夜のことが蘇った、自己嫌悪も一緒に。
「知り合いの会社で、週3日の事務のバイトを探してるの。素子、どお?」
由紀の紹介バイトに、私は飛びついた。
「おはようございます」
会議に出席した私は、議事録を採るためにノートパソコンを開いた。
議題はクラシックコンサートの打ち合わせ。メンバー全員のやる気で会議室は熱気であふれていた。
由紀の紹介バイトは、アーティストのコーディネートの会社で、私はクラシックの部署へまわされた。
会議が終わり近くになり、ノックして入ってきた男に、私は「あ」と声をあげそうになった。
「遅くなってすみません」
指揮者の久住だった。彫りの深い顔に洗練された雰囲気が静かに漂っている。
一瞬私に注がれた久住の視線は、すぐに他のメンバーへ移っていった。
昼間のほうが清楚でいいよ
その夜ベッドに横になって、アロエのローションをそっと指に塗り、一番敏感なところへと持っていった。
久住は夜のバイトで最初の席の、接待客の一人だった。素敵な人だったが、緊張して一言二言しか話せなかった…再会したものの、私のことを覚えていなかった。
寂しさに浸る独りだけの快楽は一瞬に終わった。夜は長く続いた。
それから半年後。コンサートは大成功に終わった。
祝賀会のあと、「同じ方向だから送っていくよ」とさりげなく声をかけてくれた久住にびっくりしたが、彼の物腰は優雅そのもので、うっとりしすぎてあやうく姿を見失うところだった。
車がスタートすると、隣の久住は私の顔をチラっと覗き込んだ。
彼の唇がゆっくりと開いた。
「銀座のお店にいたよね」
「知っていたんですか?」
私は驚いて彼の顔を見た。
「うん、会社の人たちに知られるとマズイから黙っていた。昼間のほうが清楚でいいよ」
彼の思いやりが信じられなかった。が、やがて感謝の気持ちが湧き上がって、吸い寄せられるように彼を見つめ続けた。
アパートの前で車が止まると、久住は先に出て車のドアを開けてくれた。
少し震えながら彼が差し出した指に触れて降り立った瞬間に、久住がふわっと軽く唇を重ねてきた。
あっという間の出来事だった。シトラスのコロンの香りが漂った。
「じゃあ、またね」
久住は体を離し、スマートな仕草で別れを告げると、車はすぐに出発した。
私は唇にそっと指をあてた。
久住の温かな感触が残っていた。
名残惜しくて、久住を乗せた車が見えなくなるまで見送っていた。