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官能小説 夏目かをるの小説【story01-1】彼女の、愛のゆくえ
夏目かをるの小説【story01-1】彼女の、愛のゆくえ
「何だかあたし、ブスになったような気がする」
朝、洗面台の鏡の前で唇の下にできた、大人のニキビを見つけた私はすごくあわてた。
今どきニキビなんて!触ってみると大きい。
ヤバイ!その瞬間プチっとつぶれてしまった。
「わぁ〜跡が残ったら大変!」
寝室に駆け込んで整理棚の救急箱から軟膏を取り出した。
そのときふと「病院、辞めようかな」と独り言が自然にこぼれた。体中から力が抜けてしまった。
「素子、待って」
後ろから声をかけてきたのは、友達の須藤由紀だった。
勤務先の病院まで私は渋谷からバスで、六本木にオフィスのある由紀と時々一緒に乗車することがある。
渋谷駅のロータリーで、私達は「遅刻しそう」と顔を見合わせた。吐く息が白かった。
「病院辞めたくなって…」
「ドクターと別れてから?」
「…う〜ん、どうかなぁ」
大学病院で栄養管理士をしている私は、今年の春に4歳年上の森ドクターから交際を申し込まれた。
彼のはにかんだ表情に、28歳の私の脳裏に「結婚」の2文字が浮かび上った。
ドクターとの付き合いは順調。……と思いこんでいただけかもしれない。
夏が訪れようとした頃、栄養管理士の後輩の洋子が私と大木研修医との仲をジャマして、ありもしないことをばら撒いた。
「もう!どういうこと!!」
しかも大木研修医までが大真面目な顔で「僕達は何もないですよね」と調理室へわざわざ言いにきた。
「どうして私が巻き込まれなきゃいけないの?」
頬をふくらませて森ドクターに甘えた。恋人だったら慰めて欲しかった、当然でしょ。
でも彼の口から出たのは信じられない一言!
「君が軽々しいからだ」
驚きと失望であっけにとられて、黙り込んでしまった。一番信じてほしい人に誤解されるなんて。悲しいというより、情けなかった。
ぎくしゃくした関係が一ヶ月ぐらい続いた後で、「故郷に帰る」と森ドクターは突然あっさりと去ってしまった。
新しい冒険が始まる…
バスがやってきたので、私は由紀に早口で伝えた。
「今夜から銀座のクラブでバイトするの」
由紀はほおっと息を吐いて、切れ長の目で私を見つめた。
「新しい冒険が始まるね」
週2回の銀座バイトを始めてからすぐに、既婚ドクターから帰宅途中まで跡をつけられた。
それが直接のきっかけで病院を辞めた。次の仕事が見つかるまでクラブ勤めするのも悪くない。
病院を辞めたその夜、大学時代につきあった彼に良く似ていた客に送ってもらった。
タクシーの中で男性にしなだれかかると、男性は私の肩をそっと抱いた。
乳房を大きな掌に包まれ、たちまち唇を塞がれた。
「送っていこうか」
翌朝、着替えが終わった私に、元カレに似ている男性がベッドから優しく声をかけた。
彼の裸体はホテルのカーテンから漏れてくる朝の光で輝いていた。
30代半ばの鍛え上げた男の裸体に昨夜の事が重なる。恥ずかしくなった。
「独りで帰る」
西新宿の高層街のホテルから駅へと向かった。
出勤の人たちとすれ違うたびに、自己嫌悪が膨れ上がっていった。
「私、何をしているの?」
電車に乗った途端に、頭痛と嘔吐感に襲われた。
帰宅してトイレで嘔吐すると、昨夜のセックスが蘇ってくる……
男は荒々しく服を脱がせ、乳房をむさぼった。
乳首をかまれたときに悲鳴をあげたが、男は大事な部分に割って入ってきた。熱いものが身体に流れてきたときに、男の動きが早くなった。
入れられている…という即物的な感覚しか、なかった。
興奮した。男の背中や腰に、爪を立てた…
トイレから出て洗面台の鏡の前に立つと、昔の男と昨夜の男の二人が鏡に浮かび上がった。
私は思わず心の中で叫んだ。
「男のセックスを比較しないこと!」
棚からヘアパフュームを取って毛先に塗りこんだ。柑橘系の香りが爽やかに漂った。