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官能小説 初めてのひみつ 6話
きらきら
寒い季節は移ろい、梅雨の時期を迎えた。
しとしと小雨が降る中、美咲は傘をさして歩いていた。半年ぶりとなる『お疲れ会』の集合場所である個室バルに向かう。定期的に連絡を取っている綾と志保、そして美咲。同棲を始めた志保は彼氏と順調で、毎日が幸せだと写真をよくふたりに送った。
店は駅前のビルの地下にあった。店の入り口で名前を告げると奥に案内された。天井は少し低めだが明るく、個室といえども閉塞感はなかった。茶色の長テーブルを挟んでソファが置かれており、壁には小さな風景画が飾られている。
「おつかれー」
手を振り、声をかけたのは綾であった。美咲は向かいに座る。ソファでくつろぐ綾は仕事帰りのようでシャツに黒いパンツ姿である。綾は前回の『お疲れ会』の後に彼氏ができたという。しかも、綾がずっと片思いをしていた人であると聞いて「肉食の綾が意外と乙女だ」と、志保が前に電話で美咲に驚きを伝えた。
「綾は元気にしていた? 彼氏とはどう?」
美咲は鞄を床にあるボックスに入れて言った。
「もちろん、いい感じー。初めは苦手なタイプだったけど、段々と相手のいいところが沢山見えてきて……いまじゃ、すっかりこんな感じ。いままで男は多く見てきたつもりだったけど、まさか自分がこんなにも素直な恋をするなんて思わなかった。志保に『乙女だ』って言われたけど、当たってる。なんだか青春してるみたいな気分」
照れて笑う綾は可愛らしく、幸せそのものに見えた。
「美咲こそ喧嘩とかしてない? もうすぐ半年くらい経つけど」
「ケンカ? ううん。そんなことないよ。たまにビデオ通話しているの」
美咲は柔らかい笑顔で答えた。メニューを取ると、ファーストドリンクを決め始めた。その指先がきらきらと光る。ピンクベージュのグラデーションネイルだ。
「どれにしようかな。悩むなぁ」
美咲はその指先を顎に添えた。にっこりとしているそこには、ほどよく光るグロスが塗られた。べたつきを感じさせない膜ができており、張りのある唇はもぎたての甘酸っぱい果実のようである。

「美咲、メイク変えた?」
綾に問われ、美咲は顔を小さく動かして視線を向けた。そして、にっこりと笑む。水色のワンピースに白いカーディガン。普段の美咲の格好ではあるが、今日は珍しく華奢なイヤリングにネックレスをしていた。
「えへへ。うん、少しだけ変えたの。あと、ちょっとネイルもしてみたの」
「そうなんだー! なんかアレだよね、えっとー……」
「色っぽくなった。艶っぽい、ともいうかも」
「それだ! 美咲、色っぽくなった! オーラが違う! ん?」
綾と志保
綾と美咲のふたりが声のした方を振り向く。そこには志保がいた。ピンクのシャツに白のフレアスカート姿の志保は「おひさー」と笑顔で両手をひらひらと振る。綾の隣に座ると、美咲を見てにこにこしながら言った。
「少し見ない間に随分と雰囲気が変わったね。いまの美咲って、すっごく輝いている」
「……前に志保にラブコスメっていうサイトを教えてもらったよね。で、そのサイトを見て……そのー……えっと……」
「ふふっ。どうやら教えた甲斐があったみたいで。こうして素敵に変わった美咲を見ていると、私も嬉しくなっちゃうなぁ。ね、綾?」
「そういうことかぁ。彼氏も、いまの美咲を見たら嬉しくなると思うよ」
綾は何度も大きくうなずく。
「あのときふたりと話して、私は思ったの。綾や志保のように、もっと素敵な女性になりたい。変わりたい、って。もし昔のままだったら、和樹くんと離れている間、うじうじしてきっと悲しい時間ばかりを過ごしていた」
綾と志保に悩みを打ち明けていなかったら。
教えてもらったサイトを見ていなかったら。
もしも『変わりたい』と思わなかったら――……
「私、いますごく幸せ。自分がまるで自分じゃないみたい。本当にありがとう」
美咲は照れながらも、大きく微笑んだ。
「それと、実は和樹くんが今週末に一度こっちに帰ってくるから……待ちきれなくて」
「じゃあ、とびっきり笑顔でお出迎えしなきゃね」
「つーことは、今日は和樹くんと会える記念ということで! ぱぱっとドリンクを注文して、早く乾杯するよー! さぁ、みんな決めて!」
綾はメニューをテーブルに広げた。美咲と志保はその姿を見て笑った。
⇒NEXT『初めてのひみつ』7話
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あらすじ
寒い季節は移ろい、梅雨の時期を迎え、半年ぶりとなる『お疲れ会』へ向かう美咲。
綾と志保と会う美咲は…