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官能小説 初めてのひみつ 7話
おかえりなさい
和樹が単身赴任に出てからというものの、この日をずっと待っていた。壁に貼ったカレンダー。
そこにつけたハートの印を眺め、美咲は指折り数えていた。
美咲は和樹が乗った電車が着く時間よりも、三十分も早く駅に着いた。
近くにあるコーヒーのチェーン店に入り、注文をしたものを片手に、改札が見える窓際のカウンターに座った。昨日まで雨がずっと降り続いていたが、今日は快晴であった。綺麗な夕焼け空がどこまでも広がっている。
和樹はこの空を見ながら電車でこちらに向かっているのだろう。
美咲は改札を眺めながら、キャラメルフラペチーノを楽しむ。

「美咲ちゃん」
聞きなれた――いや、ずっと待っていた声がした。美咲はゆっくりと振り向く。大きなトランクスーツを手にした和樹がいた。
(か、ずき……くん?)
何度か目を瞬かせるだけで、美咲はその場から動けなかった。
和樹の短い黒髪が、窓から入る光によってきらきらと揺れながら近づく。足取りがとてもゆっくりとしたものに思えた。美咲の唇が微かに動く。ただ、驚きと喜びで胸がいっぱいだった。ずっと待っていた和樹がいま目の前にいる。美咲は涙が出そうになるのを堪えた。
「ただいま」
茶色がかった和樹の瞳と、美咲の丸くした瞳が合った。美咲は勢いよく立ち上がると和樹に抱きついた。ぎゅっと力いっぱい抱きしめた。和樹の腕も美咲を抱きしめた。
「驚かすなんてズルい」
美咲が顔を上げると、和樹の手が美咲の頬に添えられた。細く長い指。そして手から伝わる温かさ。どれも半年ぶりだが、いっときも忘れたことがない。ずっと、ずっと待っていたものだ。
美咲は背伸びをすると、和樹の頬に軽くキスをした。
「おかえりなさい」
和樹の困ったような表情が、美咲の滲んだ視界に映った。
食欲をそそる料理たち
テーブルに並ぶのは和樹の食欲をそそる料理たち。
ハンバーグ。野菜がたっぷり入ったスープ。ホウレンソウとベーコンのキッシュ。
どれも美咲の手作りである。ハンバーグには彩りを考えて、ナポリタンとニンジンのグラッセとマッシュポテトを添えた。
和樹は美咲が作る料理を何度か食べたことがあった。けれども、こうして久し振りに会う美咲と一緒に、そして彼女の部屋で食べていると、いつもとは違った雰囲気があった。
「和樹くん、今日は泊まっていくんだよね? いま。お風呂入れているから」
濡れた手をタオルで拭きながら、美咲は振り向いた。スカイブルーのギンガムチェック柄でワンピースのようなエプロンを身に着けている。前で結ばれている大きなリボンが揺れて、とても愛らしい。
「あ、う、うん。ありがとう。洗い物、手伝おうか?」
「ううん。長旅だったし、和樹くんはゆっくりしていて」
和樹は立ち上がりかけたが、美咲に笑顔で言われてまた座った。
「まるで新婚みたいな気分だよ」
笑い混じりに和樹が言うと、美咲の後ろ姿がビクッとした。水音に混じって、ガチャガチャと食器が崩れるような音がした。美咲は顔を真っ赤にして振り向いた。
「もうっ、またそんなこと言って!」
「あはは。そのエプロン、新しいものかな? すごく似合っているよ。ワンピースみたいだね。前のシンプルなものも似合っていたけど、今日はもしかして俺のために?」
「ひみつ。ご想像におまかせしますー」
美咲の声は、つんとしたものであった。しかし和樹にはそれが照れによるものだと分かっていた。
可愛らしい美咲がよりいっそう可愛く思え、その姿に和樹は心を奪われるばかりである。
和樹が脱衣所で服を脱いでいると、風呂場からほんのりと良い香りがした。入浴剤だろうと思った和樹は、美咲による気遣いに嬉しくなる。
「いい香りだな」
風呂場ではグレープフルーツの香りがしていた。美味しそうな甘酸っぱい香りに誘われ、和樹は鼻歌を歌いながら湯に手を入れた。
(……あれ!?)
水のようで水ではない感触がした。それは手ですくうと、水よりもゆっくりと浴槽に落ちていった。腕を浸けてみると、まるでゼリーよりも柔らかい何かの中にいるような感触がした。このような、とろりとした湯は初めて見た。
後ろから声がし、和樹は驚いて振り向いた。
ガラス扉越しに美咲がおり、衣擦れの音がした。
「このお風呂って……」
「それ、お気に入りのショップで買ったの。『トロケアウ』っていって、名前が凄く気に入ったの。ふたりで入りたいなぁって思ってね。……和樹くんは、そのー……こういうの苦手?」
美咲の声は恥ずかしさを含んだものであった。まるでローションのような湯……男の性を刺激する嘘のような現実が目の前にある。和樹は自分の心臓が激しく音を立てているのが分かり、しばらく湯を見つめた。
「……ごめんね、勝手なことしちゃって! わ、わたし……えっと……!」
和樹が返事をしないことに美咲は慌てた。それはガラス扉越しでも和樹に伝わった。
「い、いや。こういうのも……いいかも……」
ぽつりと和樹が呟く。「え?」という美咲の声がした。 和樹は立ち上がると扉を開けた。そこには下着姿の美咲が立っていた。
「一緒に入ろうか、美咲ちゃん」
あらすじ
和樹が単身赴任に出てから和樹と会えるのをずっと楽しみにしていた美咲。2人は久しぶりに再会を果たし…