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官能小説 恋のチカラ 2話 (自分探し)


自分探し…?

(何がいけないんだろう)

(どうして賢ちゃんは、冷たくなっちゃったんだろう)

そう悩みながら和葉は、家で残りの仕事を片づけている賢作の横で、ダラダラとテレビを見ることをやめない。
それが原因だとは思っていないのだから。

「新しい自分探し、始めませんか?」

突然、テレビから凛と通る女性の声が聞こえた。
和葉はビールを飲む手を止めた。
何かとても大事なことを言われた気がして、画面を改めて見つめる。

スーツを着た人気女優が、学生や新社会人役の男女を相手に、マンションの間取りを説明している映像が流れた。
住宅会社のCMだった。

(新しい自分かぁ……)

変わらない状況

今のこの状況は、自分にもきっと原因はあるのだろうとは思っている。
新しい自分になれたら、それが何なのかわかるだろうか。
そうして、この状況を打開できるだろうか。

パソコンに向かっていた賢作がふいに立ち上がった。

思わずびくっと肩をすくませる。
何も悪いことはしていないのに、反射的に「ごめんね」と謝りそうになった。

「あまりテレビばっかり見るなよ。ほかにすることはないのか」

和葉のほうを見ずに、賢作がぽつりと言った。

「ほかって、何?」

「俺じゃなくて、和葉が考えることだよ」

賢作は話を打ち切るようにして背を向けると、部屋を出てトイレに行った。

繰り返し響く言葉

(もう……やだ)

とは思うものの、賢作と別れたくはない。
賢作が好きなのはもちろんだが、一人になるのもいやだった。

でも、新しい自分になれたら?

彼氏がいないと生きていけない、弱い自分から変われるだろうか。
ずっとそばにいてほしいばかりに、相手が立ち上がっただけで謝ってしまいそうになった自分から。

「新しい自分探し、始めませんか?」

和葉の頭の中で、女優の声が繰り返し響いていた。

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