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官能小説 恋のチカラ 3話 (自分を変えたい)
変わりたい気持ち
「新しい自分探し、始めませんか」
CMの声は、それからも和葉の胸で響き続けた。
その声に耳を傾けるうちに、一人暮らしは「興味がある」ものから「したい」ものに変わり、やがて「しなくてはいけない」と思うものになった。
「一人暮らし、してみたいんだけど。貯金はあるから」
自分でも驚くぐらい、自然と言い出せた。
家族そろっての朝食の時間だ。
和葉の家では兄や姉はみんな独立して、それぞれ結婚したり一人暮らしをしたりで、べつべつに暮らしている。
母は、最後に残った末っ子まで出て行くのは、たとえ近場に住むのだとしても寂しいとは言いながらも、止めなかった。
「心配だったのよ、あんたみたいな甘えっ子、ずっと家にいたらいつまでも自立できないだろうから」
父も同じ考えのようだった。
別れの理由
その翌日、和葉は賢作から別れを告げられた。
「これ以上付き合っていてもお互いダメになると思うんだ」
「ダメって…どういうこと?」
「それは、自分で考えてみてほしい」
賢作はそれ以外、何も言ってくれなかった。
和葉は賢作に家の鍵を返すと、ひとりで駅に向かって歩き始めた。
不思議なことに、涙は出なかった。
「自分で考えてみてほしい」
…一体、答えは何なのだろう。
自分を変えたい
何に気づかなければいけなかったのだろう。
気になって、つい、泣くのも忘れた。
いつもだったら、次の恋ができるまで泣きやまないほどだったのに。
週末に不動産屋を回って何件かの内見をした後、両親の意見も聞きながら、住むマンションを決めた。
3週間後に入居することにして、荷造りを始めた。
失恋、引っ越し、一人暮らし…これをバネに、もっと素敵な女性になりたい。
荷物を詰めたダンボール箱を積み重ねながら、和葉は改めて、強く思った。