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官能小説 私のことが好きすぎるワンコな彼氏の甘い逆襲 6話
私のことが好きすぎるワンコな彼氏の甘い逆襲 6話
「……そうだったの?」
どこか静かに呟きを零した直央が、真っ直ぐに私を見つめる。短くない付き合いの中で、その顔が少なからず衝撃を受けている顔だと分かっていたので、私は慌てて声を上げた。
「あの、でも私が悪いから……」
これは本音だ。いくら不安に思っていても、していいことと悪いことがある。
……まあ、あまり仲良くない男性社員の隣に座って話しただけにしては、直央の反応はちょっと過剰だったような気がしなくもないけれど。
「はあ……、なに、そうだったの……なんだ……」
「ぁ、直央……っん、」
頭上から溜息にも似た囁きが降ってくる。それと同時に唇も下りてきて、甘く食むだけの優しいキスが許しを請うように触れた。「俺もごめん、色々」という呟きがキスの合間に挟まれて、私はただそれだけで今日の彼の狼藉を全部許したくなってしまう。
「……あー!!もう、なんだ……マジでごめんなさい。俺どさくさに紛れて結構なこと言ったしやった気が……つかそもそも、俺が不安にさせてたなら俺が悪いし……」
項垂れる直央のふわふわの頭に、犬の垂れ耳を幻視する。ただ今までと違うのは、その仕草はやっぱり可愛いと思えても、彼自身をただの『年下のかわいいワンちゃん』とは思えなくなっていることだ。
彼は私のことがちょっと好きすぎて、本当はSっ気があって、かわいいところもある、――――かっこいい彼氏なのだと思い知らされたから。
「ふふ、……いいよ。いつもと違う直央が見られて嬉しかったし、ずっと直央のしたいようにしてほしいと思ってたから……」
「澄香さん……」
いつものように頭を撫でてあげれば、直央が安心したように身体の力を抜く。私もつられたように心の強張りが解けて、彼の髪をくしゃくしゃにしながら笑いかけた。
「ねえ、だから……その。続き、しない?」
正直、今の状態は生殺しだ。強請るのは少し恥ずかしいけれど、他の場所で嫌と言うほど絶頂を味わってしまった身体では、これ以上待てそうにない。
それに直央だって、入ったままの楔はまだ少しも落ち着いていないわけだし。そう思いながらちらりと直央を窺うと彼はなんだか怖い顔をして、先ほど私が撫でたばかりの髪をぐしゃぐしゃに掻き回して、――――
「はあ、クソ、……何食べてたらこんなかわいい生き物になんの、澄香さん……!」
激情の滲む呻きと同時に、再び勢いよく私を揺さぶり始めた。
「ッああ……!ぁ、っあ、ァん、しら、な……っ」
「ハハ、知らない、ってこと、ないだろ……ッく、」
待ちくたびれてとろとろに蕩けた内壁を、硬く張りつめたもので思い切り引っ掻かれる感覚。途方もない法悦に溺れそうになる私を、直央の腕がしっかりと抱き留めてくれている。それが嬉しくて、幸せで、快楽とは違う理由で目尻に涙が滲んでしまう。
互いの気持ちを打ち明け合ってから、ずうっと、心が温かくて柔らかい。
「ッふ、っん、……ぅ、すみかさ、ん、俺の、気持ちいい……?」
「うん、……ッうん、ぁ、きもちい、」
「なら良かった。ハ、……っく、もうちょい、付き合って……!」
情欲と熱が滴るほどに込められた囁きが耳朶を撫でていく。それすらも快感として受け取ってしまう私の身体は、相変わらず直央に主導権を明け渡したままだった。大事なもののように腕で囲われたまま、溶けるようなキスの雨を降らされて、私の感じすぎて堪らない場所を丁寧に愛される。過去の私主導の行為より、先ほどの直央の『再教育』より、今までの何よりも気持ちよくて。
「直央……っ、ぁ、なお、好き、キス、もっと……」
「うん、澄香さん、……ッは、愛してる、だいすき、絶対放さない、から」
「っ……」
ついばむようなキスに、唇の輪郭まで愛される。
中を埋める質量はどんどん大きくなって、もはや奥まで飲み込めているのが不思議なぐらいだった。ただの刺激としての快感じゃなく、心の充足感が加わったせいで、もうずっと絶頂の中にいるような感じがする。
「澄香さん……」
何度も呼びかけてくれる直央の声が、私を真っ直ぐに果てまで連れて行く。二人分の熱が、身体が、溶けて混じり合って永遠に離れられなくなるみたい、だ。
私を抱きしめる腕の力が強くなる。汗ばんだ身体がぴったりと密着して、ひときわ強く楔が最奥を叩いた。奥底に生まれた膨大な快楽が、大きな波となって全身まで行き渡る感覚、――――
「ぅ、ぁあっ……!」
直央が低く唸った瞬間、膜越しの熱が内壁に押し当てられる。火傷しそうなほどのそれに、私の意識の糸がふつりと焼き切れるのが分かった。
***
『いや〜……それは私も悪かったわ。ごめんね』
「ううん、結局やったのは私だし」
『それで、仲直りは上手くいったってことでいいのよね?』
「もちろん」

キッチンで二つのマグカップに角砂糖を溶かしている直央の背中を眺め、私は微笑む。電話の向こうの文乃は、電子越しにそれを感じ取ったのか、納得したように深く息を吐いた。
『……じゃあ大丈夫そうだし、邪魔しちゃアレだから切るわね。また会社で。本郷君にもよろしくね』
「うん、ありがとう」
ぴ、と電子音を立てて電話が切れると、マグカップを両手に戻ってきた直央が隣へと腰を下ろした。座面が沈むのに任せて彼の肩へと頭を預ければ、小さな笑みに合わせて肩が揺れる。
「先輩、何だって?」
「『反省してます』って。あと直央によろしくって言ってた」
「せっかく無害な後輩で売ってたのにバレちゃったな」
軽口を叩いた直央が、同じように頭を預けてくる。その重みを感じながら、こういう振る舞いも『いい子』の頃の直央だったらあまりしなかったな、なんて口元を緩めてしまった。
あの嵐のような夜から丸一日とちょっと。日曜日の穏やかな昼下がりは、何物にも代えがたいほどの幸福をくれる。
「……澄香さん、こっち向ける?」
「え?……ぁ、んんっ……こら、」
ちゅ、と唇に吸い付かれ、つい今まで通り直央を叱ってしまう。『しまった』と思ったのも束の間、彼はひどく嬉しそうに目を細めてみせた。
「俺、澄香さんに『こら』って言われるのすごく好きなんだ。年上のお姉さんにかわいがられてる感じが」
「そ、それは事実だけど……いいの?」
「なんで?いいに決まってますよ。澄香さんがいいなら、また『する側』もしてほしいなって思ってるし」
「えっ、していいの!?……あっ」
反射的に飛び出した言葉に、慌てて自分の口を塞ぐ。まだキスの距離にあった直央のかんばせが、にんまりと愉しげな表情を浮かべた。
「……したいんだ?」
***
硬い胸板に手を添えて、そっと唇を寄せる。触れた小さな突起を舌先で弄んで、ゆるゆると腰を揺さぶると、少し上から快感に炙られた熱い吐息が降ってきた。
「ぁ、……ッン、すみか、さ、」
「ん、っふふ……きもちい?中、で、おっきくなったね……」
「うん、きもちいい……」
やっぱり、こういうときの直央ってかわいいよなあ。
頭の端ではしみじみとそう思いながらも、眦を下げた直央を見ていると身体はどうしようもなく昂ってしまう。自然と、入り口から奥へとさざめくように内壁を締め付ける形になって、快感に眉を寄せた直央が小さく喉を鳴らした。
「っは、ァ、まじでそれ、ずる……」
「こら、おくちが悪いよ直央。……今は『いい子』の時間でしょう?」
お仕置き、と囁いてから、私は口に含んでいた直央の肌へと歯を食い込ませる。びくんと跳ねた直央の身体を押さえ込み、そのまままた激しく腰を上下させた。
自分主導で動くときは、『好いところ』を上手く外せるのでやっぱり余裕がある。直央の痴態を愉しみながら、少しずつ果てへと昇り詰めていくのが堪らない。甘噛みでまた質量を増したものを中でしっかりと食い締めて、私は直央の頬に手を添えた。
甘い色をした瞳が、こちらを窺うように見つめてくる。
「ね、……このまま私にかわいがられたままイきたい?」
「ん……ぁ、それは、」
「本当は私をどうにかすることだってできるのに、このまま前みたいにかわいがられてイッちゃっていいの……?」
直央の吐息が震える。これはきっと、彼が違う一面を見せてくれたからこそ刺さる言葉だ。本当は私をかわいがることのほうが好きなくせに。それなのにこの立場に甘んじて気持ちよくなってるんだ、――――そんな詰りに、直央の腰が震えるのが分かった。
「うん、……そう、だ。俺は貴方に、最後まで気持ちよくしてほしい……」
「……かわいい」
胸がうずうずして、どきどきして、お腹の奥がわななくように締まる。久しぶりに感じる明確で鮮烈なときめきに、私は噛み付くように直央の唇を塞いだ。彼ほど上手くはないけれど、それでもありったけの愛情を込めたキス。直央はそれに瞼を下ろして、ただ私に与えられる快感を受け入れ始めた。
自分より直央を優先して、大きなストロークで腰を動かす。激しい水音と肌を打つ音が部屋に響き渡るのが、どこか遠くに聞こえた。そこに直央のかわいい唸り声と私の呼吸音が混じって、私たちを取り巻く空気を濃密にしていく。
――――そうして、二人分の熱が一緒に限界点を超えた。
「っはー……、ッは、ぁ……っ」
「ふ、……っあ、よくできました……」
何度も荒い呼吸を繰り返す直央の頬は、ほんのりと上気している。浮かんだ汗を拭うように額を撫で、そのままこめかみの辺りの髪もかき混ぜるようにしてあげると、気持ちよさそうに目を細めた。
「……気持ちよかったみたい、だね」
「ン、……はぁ、っは、……おかげさまで、めちゃくちゃ良かった、です」
「なら、よかった……」
果てたばかりの気怠い身体を何とか動かして直央の上からどくと、彼は勢いよく上半身を起こす。一度私の中から出ていった楔は、まだしっかりと芯を残しているように見えて。
「じゃあ、――――今から俺の番、な」
⇒【NEXT】直央の声が甘く甘く煮詰められて、濃厚な蜂蜜のように重く滴る。(私のことが好きすぎるワンコな彼氏の甘い逆襲 最終話)
あらすじ
飲み会での行動はヤキモチを妬かせようとしていたと打ち明けた澄香。
そして直央との関係に不安を持っていたことも。