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官能小説 二度目の恋に落ちたから 5話

不安な気持ち

個室居酒屋で、良が芽衣に迫られていたのと同じ頃――。

「ど、どうしよう、可奈。私、高畑さんに愛想を尽かされたのかもしれない」

蓉子はビデオ通話で可奈に泣きついていた。

当然のことながら、今この瞬間、良に何が起こっているのか蓉子は知らない。

時刻は夜10時を回っている。可奈がいるスペインは昼2時だ。今日はたまたま仕事が休みで、サングリアを飲みながらゆっくりしていたらしい。背後の窓から緑溢れる庭園が見えた。

「はあ? 何があったのよ、いったい」

聞かれて、蓉子は今日学校で良に言われたことを詳しく話した。喋っている途中で半泣きになってしまう。普段のモデル然とした蓉子からは想像もできない姿だ。

「だ、だから、私……高畑さんにフラれちゃったんだと思う……」

「んなわけないんでしょ!!」

可奈は一喝した。

「もっといろんな人やことに目を向ける、イコールあんたから離れるなんて、解釈が個性的すぎるわよ!」

「え、そ、そうかなあ」

「そうよ。いったん落ち着きなさい。ほら、深呼吸して。はい、息吸ってー」

「う、うん。すー、はー……」

可奈と話しているうちに、蓉子は次第に冷静になっていった。

誘惑

同時刻。

「ねえ、高畑先生。もっと仲良しになれるところ、行きませんか」

個室居酒屋の一室で、芽衣は良にしなだれかかっていた。

(ほら、女の子のほうから誘ってるんだよ)

芽衣は良の手を取り、胸に触らせてもいる。Fカップで形もいい、芽衣の自慢の胸だ。

良の手はPCが突然フリーズしてしまったように動かない。カタブツだとは思っていたが、想像以上だった。でも、このほうが落としがいがある。

(あとひと押しかふた押し……どんなふうに攻めたらいいかな)

首を伸ばして良の頬にキスをしようとしたとき、ふいに良が芽衣の手を突き返した。

「す、すいません」

「えっ」

芽衣は上目遣いも忘れて良を見つめ返した。

「池田先生の気持ちは……嬉しいです。でも僕には好きな人がいるから……その気持ちを受け取ることはできません。ごめんなさい」

良は申し訳なさそうな、困ったような表情をしていたが、それでも毅然と芽衣を見据えていた。

(後で「あれはお酒の勢いだった」って逃げることだってできるのに……)

ここまで勝負に出たのに肩透かしを食らったような気分になって、芽衣は悲しいというより悔しくなった。

「好きな人って、誰ですか」

悔しいから、困らせてやりたくなった。言われなくても良の言動を眺めていればわかってしまうことを、あえて聞いてみる。

「そ、それは……あの……」良の頬が赤くなっていく。

「私の知っている人ですか」

「えっと……」

「斉木さん……ですよね」

芽衣は観念して笑ってみせた。良の反応があまりにも初々しくて、これ以上しつこく虐めたら自分のことを嫌いになりそうだった。

こんな気持ちになるぐらいだったら、もっとまっすぐに向き合って、まっすぐに思いを伝えればよかった――今さらながら、少しだけ後悔する。

(私にだって、そんなふうにしかできなかった頃はあったはずなんだけど)

でも、ずいぶん昔のことになってしまった気がする。どうしてだろう。自分だって一生懸命恋をして、幸せになろうとしてきたはずなのに、いつの間にか最初に夢見ていたのと違う風景が広がるところに来てしまった。

「どうしてそれを……」

「見ていたらわかりますよ」

芽衣は良から離れて肩をすくめてみせる。

「斉木さん、オトナの女って感じで格好いいですもんね。私も負けないように女を磨きます。高畑さんみたいな男性に好意を持ってもらえるように」

「い、いえ。池田先生は十分魅力て……」

「フった女に、そういうことを言っちゃダメですよ」

告白後目線が合う二人

芽衣は良の口に人差し指の先をあてて、その先を言えないようにした。

伝えたいこと

翌日、授業が始まる前に、芽衣は教室に入ろうとする蓉子に後ろから声を掛けた。

「池田さん、でしたよね」

「ええ。高畑良さんの、予備校の同僚です」

蓉子が一瞬「どんな顔をしていいのかわからない」とでもいいたげな、複雑そうな表情をした。

「どうしたんですか? 授業のことで質問でも?」

「いえ、どうしても伝えておきたいことがあって」

「伝えておきたいこと?」

蓉子が首を傾げた。

「はい。私、今日づけでこの料理学校をやめることにしました。もう先生にお会いすることもないともないと思います」

蓉子は面食らい、それから傷ついたような表情を浮かべた。大人びた女性だと思っていたが、よくよく観察していると、子供っぽい無邪気なところもあるのではと感じる。

「そうですか……あの、授業に何か物足りないところが?」

「いえ、まったく」

芽衣は首を横に振る。

「授業に物足りないところはないんですが、先生にはあります。……先生」

芽衣の声音が真剣になったのを察したらしく、蓉子の背筋が伸びた。

「先生にその気がないのなら、高畑さんをちゃんと振ってあげて下さいね。彼、真面目だから、あまり振り回さないであげて」

「えっ、それ、どういう……」

蓉子がたじろいでいる間に、芽衣は「じゃあ、私はこれで」と軽くお辞儀をして背を向けた。

早足で進む背中に、蓉子の視線を感じる。もっと詳しく尋ねたいのに、突然のことにびっくりして何もできずにいることが、振り返らなくてもわかる。無邪気なだけではなく、意外と不器用でもあるらしい。

(あのカタブツとはお似合いかもね)

芽衣は心の中で精一杯の負け惜しみを言ってみせた。

可奈の帰国

そんなとき、可奈が帰国するという報せを受けた。

日本で片づけなければならない仕事が発生したので、短期間ではあるが一時帰国するという。

蓉子は可奈を家に招いて、数日前から仕込んだ和食を振る舞った。

「帰国したら、おいしい和食を食べさせる」。良との恋愛相談に乗ってもらう代わりにそう約束をしたことを、蓉子はもちろん忘れていなかった。

「おいし〜。お味噌汁と魚の煮物、癒される〜」

横から見ていて呆気に取られるぐらい、可奈はよく食べた。

「やっぱり海外に長くいると、和食のおいしさが身に染みてわかるようになるね〜。ただでさえ忙しくて、普段ロクなものを食べられないし」

そんな中で相談に乗ってくれていたのか。

「可奈、本当にいつもありがとうね。可奈がいなかったら、私、どうなっていたか……」

白いご飯を三杯お代わりしてやっと食べ終わった可奈に、蓉子はぺこりと頭を下げた。本人を前にしてきちんとお礼を言うと、感謝や安心感から涙が滲み出てきた。

「あ、ご、ごめんね。私、こんなときに泣くなんて……おかしいよね」

「人から見ておかしいかどうかなんて、どうでもいいじゃない。あんたが泣きたかったから泣いたんでしょ」

可奈は昔から変わらない姉御口調で、食べすぎで膨らんだお腹をさすりながら言った。二人にしてみれば幼い頃からのごく普通のやりとりなのだが、ここ数年しか蓉子のことを知らない人が見たらきっと驚くだろう。完全無欠にも見える蓉子が、こんなふうに誰かに説教されているなんて。

「あんたは昔からイメージを気にしすぎなんだよ。あんた自身は結局、高畑さんとどうなりたいの?」

「それは、その……」

「ちゃんと考えなさいよ。そこにしか答えはないんだから。私はその答えに辿り着く手助けをしているだけなんだからね」

蓉子はさんざん考えこんだ末に答えた。

「……もうほんのちょっとでいいから自信がほしい。高畑さんと向かい合ったときに、『私なんてどうせダメなんだ』って思わずに済む自信が」

「ふうん、そっか」

蓉子の答えを受けて、可奈は何かに思いを巡らせているようだった。

翌日、可奈は再び日本から旅立った。今度は南米エクアドルに行くのだそうだ。

(商社の仕事って本当に大変なんだなあ)

また帰国したときには、今回以上に美味しい和食をごちそうしようと蓉子は決心した。

決意

数日後、可奈名義で荷物が届いた。外国からネット通販を利用して、蓉子の家に届くように手配してくれたらしい。これまで何か送ってくれたときと同じだ。

開けてみると、もう慣れてもよさそうなものなのに、蓉子はまたも腰が抜けるような思いを味わった。

「バ、バイブ……ってやつだよね、これ」

小ぶりのかわいらしい見た目だが、間違いない。

ほどなくして、荷物を追うようにして可奈からメールも届いた。

『自信に即つながるわけじゃないけど、こういう経験もしておけば、多少はプラスになるんじゃないかと思って』

「バイブはなんてムリだよ……」

可奈には感謝している。でも、こればっかりは……。蓉子はなすすべもなく、しばらく涙目でバイブを眺めていた。

メールの着信音が響いた。スマホを取ると、今度は良からだった。

『斉木さん、この間素敵なお店を見つけたんです。もしよかったら、また食事に行きませんか』

(そうだ、いつかどこかで、勇気を出して踏み出さないといけないんだ)

良をあまり振り回さないであげて。そう言って去っていった芽衣のことも思い出す。

もう、待たせるわけにはいかない。

(やってみよう。きっとできる……)

蓉子は顔を上げ、バイブを握り直した。

→NEXT:蓉子は初めてバイブを使うことに…!(『二度目の恋に落ちたから 6話』)

あらすじ

蓉子は自分がはっきりしないせいで良がほかの女性に目を向けてしまったと可奈に泣きついていた。そんなことないと可奈に背中を押され少し冷静になる蓉子。その一方、良は芽衣に迫られていて…?

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