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官能小説 二度目の恋に落ちたから 1話
後悔
斜め前を歩いていた若いカップルが、横にあったラブホテルにふいに入っていった。
二人ともまだ二十代前半ぐらいだろう。とくに女の子のほうは顔だちに幼さが残っていた。
このあたりは歓楽街の裏道だ。飲み屋やラブホテルが建ち並んでいる。
(急いでいるからって、裏道なんて通らなければよかったな)
蓉子は後悔した。料理教室の生徒の質問に答えていたら、学校を出る時間がいつもより遅くなってしまった。
斉木蓉子、職業は料理研究家。
蓉子は学生時代からモデルばりの美人だと言ってもらえることが多く、その華やかな雰囲気からマスコミでもときどき取り上げてもらっている。料理の監修を務めた本を出版したり、都内の有名料理教室に自分のクラスも持っていたりもする。
そんな蓉子だが私生活は意外と地味だった。教室と家を往復するばかりで、途中で家に寄っていくような彼氏もいない。
歩きながら蓉子はふと思い出していた。初めてのセックスのことだ。
苦い思い出
大学を卒業する年のことだったから、あれはもう六年も前になる。
(あのときも、こんなラブホテルに入ったのよね……)
――「胸、けっこう大きいんだ」
バスタブの中で、当時好きだった相手に抱き寄せられた。大学の同級生だった。彼は卒業後、就職で地方に勤務することが決まっていた。勇気を出して告白したら、「俺も、ずっと好きだった」と受け入れてもらえて、付き合うことになった。お互いのことをもっとよく知ろうと一緒に飲むことになって、終電を逃して……それでホテルに来た。
「あ……ん、恥ずかしい」
「だめだよ、ちゃんと見せて」
セックスだけでなく、男性と一緒にお風呂に入ったのも、いや、男性に体を見られること自体初めてだった。ぎこちない手つきで隠しながら何とか体を洗ったものの、一緒に湯船に浸かったら、両手を押さえつけられてしまった。
「ん……ちゅ、ぱ……っ」
「はあぁ……んっ」
胸の先を舐められて、甘い声が出た。
(私、こんな声を出すなんて……)
恥ずかしい気持ちでいっぱいになるが、何となく嬉しくもある。体の芯が熱くなっていた。彼のものも硬くなって、太腿に当たっている。
「蓉子……俺、我慢できない」
これまでは自分のことを「斉木さん」と呼んでいた彼なのに、今初めて下の名前で呼んでくれた。相手は蓉子を立たせ、後ろを向かせるとバスタブに手をつかせた。
「立ちバックでいいかな」
「え、でも私、初めてで……」
蓉子は慌てた。いきなり言われてもよくわからない。それに、初めては正常位で抱き合ってしたかった。
「大丈夫だよ、痛くしないから。我慢できないんだ」
「でも……うん」
せっかく付き合うことができたのに、あまりしつこく言うと嫌われそうで、蓉子はそれきり黙った。
「お尻、もっと突き出して」
「……これでいい?」
恥ずかしいポーズだった。体が火照ってしまうのは、お湯のぬくもりのせいだけではない。
「挿れるよ、蓉子……」
耳元に熱い吐息混じりの声が掛かる。次の瞬間、重い痛みに体が芯から引き裂かれそうに感じた。彼が入ってきたのだった。
「ん、ああああ……っ」
痛みの中にも彼の形がはっきりわかった。
「痛い、痛い……っ!!」
蓉子はたまらず叫んだが、彼はやめなかった。無意識のうちに、彼から逃げようと腰が前に動く。彼はそれを押さえつけて、さらに奥に入り込もうとした。
「大丈夫だよ。すぐ慣れるから」
彼も必死なようである。大丈夫と言いながら、声に余裕がまったくなかった。うつむいた視線の先、湯船に血が一滴垂れた。
(初めてのエッチのときって、本当に血が出るんだ)
どこか他人ごとのように思ったことで、少しだけ落ち着いた。
後ろから胸をわしづかみにされたのが妙に気持ちよくて、痛みがわずかに和らいだ気がした。
「奥まで……入ったよ」
「っうん……」
「気持ちいい?」
「……よくわからない」
びくっ、びくっと奥のほうで震えているのは、彼のものだろうか、それとも彼を包み、締めつけている自分だろうか。これがいつか気持ちよくなるんだろうなという予感はあった。結局、お風呂場とベッドで二回セックスした。
「大好き。私のこと、これからも大事にしてね」
二度目のセックスの後、蓉子は彼の胸に縋りついた。
枕元のデジタル時計をふと見ると、時間はすでに四時を回っていた。もうすぐ始発が動き出す。別れるのが惜しかった。
「う、うん……」
彼の返事がどこか弱々しかったことに、あのときは気づけなかった。
初恋の終わり
その日の夜、蓉子は彼に電話をしたが、彼は出なかった。メールの返事もなかった。
大学は卒業に向けてすでに春休みに入っていたので、学校で会えることもなかった。卒業式で見かけて声を掛けようとしたものの、彼は蓉子を見ると逃げるようにどこかに行ってしまった。蓉子は焦った。
(四月になったら完全に離れ離れになってしまう。何とかしなきゃ)
蓉子は彼の家の最寄りの駅で待ち伏せをすることにした。駅の名前だけは聞いていたからだ。こんなストーカーみたいなことをしてはいけないと頭ではわかっていたが、会って話せば何とかなるに違いないという、はかない願いのような希望もあった。
初めてセックスした日、もしかしたら蓉子はそうと傷つかず、彼に嫌われるようなことをしていたのかもしれない。そのせいでふられるのだとしても、せめてちゃんと顔を見てふられたかった。
幸いにというべきか、不幸にというべきか、改札がひとつしかない小さな駅だったから、彼はすぐにつかまった。ちょうど駅構内に入ろうとしていたところだった。
改札横に立っていた蓉子を見つけると、彼は明らかにぎょっとした。
「少し、話したいの」
蓉子が詳しく話を切り出すのを待たず、彼は首を横に振った。
「ごめん。あの夜のことは、悪かったと思ってる」
「なんで謝るの? 私、あなたのことが好きで、それでああなれたんだから、嬉しいと思ってる」
「俺、斉木さんが初めてだって思ってなかったんだ。もっと軽い気持ちで誘ったんだと思ってた。斉木さん、モデルみたいにキレイだし、華もあるし、きっと遊びなんだろうなって」
「そんな……」
今まで褒め言葉だと思っていたことが、胸に深く突き刺さった。
「俺も、処女だってわかったときに途中でやめればよかったんだけど、どうしても止まらなくて……」
「……好きな人がいたりするの?」
「いや、そういうわけじゃないけど。これから就職したら、どっちにしてもそんなに会えなくなるし……ああ、俺もう行かなきゃ。待ち合わせしているんだ」
彼は逃げるようにして蓉子の脇をすり抜け、改札を通った。ちょうどやってきた電車に飛び乗ってしまう。
恋が、終わった。
トラウマ
帰宅してお風呂に入っている間も、初めてのセックスの記憶はなかなか去っていかなかった。
湯船に浸かりながら豊かな胸を見下ろす。この胸はあれ以来誰にも触られていない。

(もう恋なんてしないんだろうな)
寂しいと思うこともある。でも、六年前の失恋の爪跡があまりにも深すぎて、新たな一歩を踏み出すことができない。
といっても、チャンスがないわけではなかった。容姿にはそこそこ気を使っているし、マスコミへの露出もあるから、男性に誘われることは少なくない。はっきりと「付き合ってもらえませんか」と告白してもらったことさえある。だが、
(また、セックスした後にあんなふうにフラれたら……)
もう立ち直れない。いや、今だってまだ立ち直っているとはいえないのだ。最後のセックスから時がかなり流れて、蓉子の気持ちは処女と同じような状態になっている……いわゆるセカンドバージンというやつだ。「モデルのよう」などと言われる蓉子が、じつはセカンドバージンだなんて知ったら相手はどう思うだろう。見栄っぱりといわれればそれまでだが、期待される像が壊れたことで相手が呆れ、離れていくのが怖い。
(「彼」にもはっきり断らないと)
蓉子は料理学校に三ヶ月ほど前に入学してきた生徒・高畑良のことを思い出した。数日前、蓉子は彼に告白されていた。
→NEXT⇒蓉子に告白した相手、良とは…?(二度目の恋に落ちたから 2話)
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あらすじ
蓉子は容姿端麗な美人料理家。
だが、大学時代のトラウマから恋愛に対して積極的になれないでいて…。