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官能小説 同居美人〜番外編〜 ワケありイケメン 小島泰明〜ラブストーリー〜


「伝説みたいな存在の人」

私、上塚想子が小島泰明さんと初めて会ったのは、妹の想子の結婚式だった。

「えっ、ひょっとしてあの小島さんですか。ウェディング・プランナーの……」

「結婚したい女性」にとっては、小島さんは伝説みたいな存在の人だった。

彼が勤めていた会社はもともと結婚相談所だったが、小島さんが結婚相談を手がけるとみんな面白いように結婚していくので、社長がウェディング・プランニング部門も新設したという。小島さん自身もプランニング専門になったが、彼の部下たちがそのノウハウを受け継ぎ、今も同業者からは頭ひとつ飛び抜けた結果を出しているそうだ。

想子が暮らしていた「ビューティ道場」に、女性を幸せにするカリスマたちが住んでいるとは聞いていたけれど、まさか小島さんがいたなんて。

彼のことをよく知っているのは、私も「結婚したい女性」だからだ。

私はもうすぐ31歳になる。昔はあまり結婚願望がなかったけれど、このところ肌荒れが起こりやすくなったり体力がなくなってきたりと、体の変化を感じることが多い。それと並行するように、結婚したいという気持が強くなってきた。

うぅん、結婚したいというのは正確にいうとちょっと違う。

「心から信頼できる人と、ずっと一緒にいたい」――このほうが正しい。

だったら結婚という形をとることが、私にとってはベストな選択なのだと答えを出していた。

でも、いざ結婚したいと思っても、今まで仕事ひとすじだったこともあって、「この人!」と思える男性が周りにいなかった。以前好きだと言ってくれた男性は、みんな結婚したり、婚約者ができたりしていた。それ以外の男性も、結婚を目指したいと考えるとどうしても構えてしまう。

昔の生き方を後悔はしていない。でも、

(若いから勢いもあったし、自分を過信していたところも多かったんだろうな)

とは思う。

私は小さい頃から成績もよかったし、自分でいうのも何だけどかなり整った顔立ちに生んでもらったおかげで、周囲から何かと期待されることが多かった。それに合わせて、完璧であろうとしていた。

でも、今はもう違う。

想子や悠さんとの一件も自分の殻を破る大きなきっかけになって、今は昔よりも「完璧ではない自分」を受け入れている。そして、自分はそんな人間なのだと周囲にきちんと打ち明けている。

「あの、というほどではないですよ」

驚いている私に、小島さんは苦笑した。

「お姉さんは外資系の化粧品会社にお勤めだと伺いましたが……」

「ええ。あの、あとで名刺をお渡ししてもよろしいですか」

「もちろん、お願いします」

結婚式後、私たちは名刺を交換した。

それから数日経って、私は小島さんに連絡した。彼の会社を訪ねて結婚相談をしたいと伝えると、大歓迎だと返事が来た。

(自分が結婚相談所に行くなんて、昔の私だったら考えられなかっただろうな。そんなことをするぐらいなら一生独身でもいい! って、意地を張っていた気がする)

メイクをしていると、以前より表情が柔らかくなっているように思えた。


「運命の相手を探すためには」

私の担当は、特別に小島さんが受けてくれることになった。

そこまで期待はしていなかったけれど、嬉しいことは間違いない。ありがたく申し出を受けることにした。

私は小島さんに尋ねられるままに、結婚相手に希望する条件を話した。

「そうですね……真面目に、地道に働いてくれて、家事もちゃんと分担してくれるなら、学歴や収入にあまりこだわりはないです。容姿は、もともとの顔や体型はあまり気にしませんけど、それを格好よく見せようと気を配れる方がいいですね。年齢は上も下もこだわりはありませんが、やっぱりある程度近い人のほうが価値観が合うのかなと思っています。子供はほしいとは思うけど、できなかったらそれも仕方ないという感じかな。不妊治療までは今は考えていません」

喋りながら、これも昔の自分では考えられなかったことだとしみじみする。数年前ならきっと、どうせ結婚するなら容姿も収入も職歴も申し分ない、女性なら誰もがうらやましがるような男性を望んだだろう。

今は、ちょっと情けないところがあるぐらいの男性がいい。一方で「思いやりがあって誠実」という点だけははずせない。お互いの情けないところを笑い飛ばし、慈しみ合い、助け合いながら生きていける人。もちろん完全無欠な男性と性格がピタリと合ったら結婚を考えるけれど、完全無欠なこと自体は条件にはならない。

相手の希望について話していると、自然と自分がどんな結婚生活を求めていて、そのぶん何は諦められるのかも自覚できてきた。小島さんいわく、運命の人を探すときに大事なのは、ほしいものよりも諦められるものをはっきりさせることだという。

「瞳子さんなら、すぐにお相手が見つかると思いますよ」

小島さんはそう言って、条件に合った上、とくに私に合いそうだという男性のファイルを見せてくれた。

「みんな、素敵な方ですね」

お世辞ではなくて、本当にそうだった。みんなそれぞれ違った魅力があって、すぐには決められそうにない。

正直にそう話すと、「もちろんそうでしょう。ゆっくり考えて下さい」と小島さんは答えた。

「個人情報保護の関係でファイルのコピーなどはお渡しできませんが、イニシャルとそれぞれのごく簡単な特徴を書いたメモをお渡ししておきます。これがあればお家で思い出せるでしょう。落ち着いてじっくり考えてみて下さい。お会いするだけなら、何人でも大丈夫ですよ」

小島さんは使い慣れたふうの万年筆で、さらさらと男性たちのことをまとめてくれた。

「はい、どうぞ」

受け取ったメモとファイルを照らし合わせて確認すると、メモが一枚多かった。

それに、そのメモだけは内容が違う。ほかにはない電話番号とメールアドレス「だけ」が書いてある。個人情報保護というのならアウトだけど……

「えっと、これは?」

「それは……」

小島さんの頬がわずかに赤くなる。

「あの……私の電話番号とアドレスです。私も条件からははずれていないようでしたので、よかったら候補に入れてもらえませんか」


「二人で幸せになるためには」

「僕も最近、上塚さんと同じようなことを考えていたんです。昔は結婚願望はありませんでしたが、今は誠実で自立した女性と一緒に年を重ねていきたい、と。といっても僕はあくまでも相談員ですから、あまり重く受け止めないで下さい。公私混同といわれても仕方のないことをしているのですから、おいやでしたらはっきり断っていただければちゃんと切り替えます」

小島さんはそう言ったが、私の中で彼はすぐに最有力候補になった。ビューティ道場の住人なら人柄も悪くないだろうし、第一印象もよかった。

それでも念のため数日考えた。それでもやっぱり気持ちは変わらなかったので、小島さんに連絡すると、まずは食事に行きませんかと誘われた。

初めての食事は、ある一流ホテル内の日本料理屋だった。赤坂に本店のある格式のある店で、私も何度か海外のお客様の接待に使ったことがある。男性に連れて行ってもらう店のランクにあれこれ言う趣味はもはやないけれど、それでも、ちゃんとした店だと自分との関係を真面目に考えてくれているんだと伝わってきて安心する。

小島さんも私もそこそこお酒を飲めるほうだったので、お店のおすすめの日本酒で乾杯した。

何回かデートするうちに、小島さんの前で気を張ることがなくなってきた。

良くも悪くも、彼は私とは比べものにならない数の女性を、心の奥底の願望まで含めて知っている。私が多少取り繕ったところですぐに見抜かれるだろう。そう考えると、かえって楽だった。

私が勝手にリラックスしていると、小島さんも肩の力が抜けてきたようだった。

「私のどんなところがいいと思って下さったんですか?」

何度目かの食事の席で私は素直に尋ねてみた。

「僕なんかいなくても、いずれ自分で幸せになれるんだろうなぁというところが素敵だと思いました。幸せの形が結婚ではなくても、何らかの方法で」

即答だった。

「それってあんまり『かわいくない女』ですよね。男性ってもっと従順でかわいらしくて、自分がついていなければと思うような女性を好きになる人が多いんだと思っていました」

自虐のつもりはなかったが、つい自分で笑ってしまった。だからこそ、私の婚活はちょっと難航するんじゃないかとも思っていた。

小島さんはふと真面目な表情になった。

「確かに男性のほうが女性に比べれば支配欲が強い傾向があると思いますし、そこを不意打ちみたいにくすぐってもらえば正直、嬉しいものです。ですが、だからといって女性に従順さや弱さを求める男性は、はっきり言ってロクでもないです。だってそれって相手をナメてるってことでしょう」

ワインを傾けながら、そういえば数年前に結婚退職したものの、今年離婚した大学の先輩がそんなことを言っていたのを思い出した。彼女は彼の強引なぐらい力強くぐいぐい引っぱっていってくれるところ、彼は彼女の「か弱くて守ってあげたくなるところ」が好きだと言っていたけれど……

「そういう男性は女性を愛しているのではなくて、女性を通して自己愛を満たしているだけ。それだけならいいですが、最終的にDVやモラハラにつながることも珍しくありません。女性が自分以上に活躍しそうになったりすると、とくに……」

子供を幼稚園に預けられることになって再就職しようとしたとき、彼女は元夫が働く会社以上の大企業に派遣ではあったが内定が決まった。すると彼は途端に彼女が働くことをいろんな理由を並べ立てて反対し、幼稚園の入園申請も勝手に取り消してしまったそうだ。

「逆説的なようですが、二人で幸せになるためにはまずそれぞれが自立していること。相手もそうだと認められ、尊敬し合えることが必要です。それが僕の出した答えですし、僕たちの会社ではそれをご理解いただけない方の入会はお断りしています。そういった方たちを幸せにできるノウハウまではありませんから」

そうか、私は幸せになれるタイプだったみたいだ。


「ここが好きなんだね」

結婚を意識したデートの中で、私たちはお互いの結婚観を言葉や態度で確認し、付き合うことになった。

告白は小島さんのほうからしてくれた。ストレートに「好きです、結婚を前提に付き合ってもらえませんか」と。変な駆け引きやこちらを試すような言動をしないところに、彼の「強さ」を感じた。

断られたらどうしようと考えれば、普通はそんなにまっすぐに言えないだろう。けれど彼は、自分が傷つくことよりも私を不安にさせないことのほうを選んでくれた。

「今までいろんな女性と接してきたけれど、この先も一緒に生きていきたいと思ったのは瞳子さんが初めてです」

すぐにイエスと答えたのはいうまでもない。

私は小島さんの私に対する姿勢だけではなく、他の人への態度も好きだった。とくにお客様の幸せのためにいうべきことはいいつつ誠心誠意努力するところは、見習いたいと思った。

だから、イエスの後にはこう付け加えた。

「人の頑張る姿、求めているものをまっすぐ受け止める小島さんが好きです」

気持ちはちゃんと言葉にしないと伝わらないというのは、外資系の会社での仕事の中で学んだことのひとつだった。

***

私は自分が考えていた以上に、小島さん……泰明さんにすべてをさらけだせるようになった。

体の嗜好にしても、そう。今までは自分にMっ気があるなんて思ってもいなかったけれど、泰明さんと何度もセックスするうちに、だんだんそうなんだとわかってきた。

「俺の前ではエッチになっていいんだよ。きれいだよ」

と、繰り返し囁いてくれたせいかもしれない。

仕事が忙しいときにはとくに、いっぱい翻弄してもらいたくなる。

顎を軽く掴まれて上を向かされ、ぐいっと手をひっぱられながら少し強引にキスをされると、スイッチが入ってしまう。

「可愛くていじめたくなる。今日も全部さらけ出してもらうよ」

耳たぶを甘噛みされながら囁かれると、もうそれだけで胸が苦しい。

最初は、頭を撫でたり髪にキスしたりして優しく……それから、柔らかいバスローブの紐で手や足を軽く縛る。

泰明さんの前では、動けなくなることが逆に心地よかった。

バストが目立つように、膨らみの上下を縛ることもあった。そうするといつも、前にせり出した胸が泰明さんの愛撫を心待ちにして、何もしないうちから敏感になった。

泰明さんは前にツンと突き出した乳首を舐めたり、吸ったり、噛んだり自由に弄んだ。乳首は舌や唇の動きに合わせて転がりながら、コリコリに硬くなっていく。じゅるっと唾液の音がすると、それも愛撫のかわりになった。

「ここが好きなんだね」

「…………っ」

口で答えなくても、体が答えを出してきた。

とろとろになったあそこをじっくり見つめられると、もう言い逃れはできない。

泰明さんはピンクローターを取り出した。

脚を閉じてしまわないよう、しっかり押さえつけられる。その上でクリトリスを剥き出しにして、ローターをそっとあてる。

赤くぷりぷりになったクリトリスを、振動が襲った。

「あぁぁんっ!!」

人の動きとはまったく違う快感にイってしまいそうになる。だけど泰明さんはなかなかイカせてくれない。すぐにローターを離してしまう。

それだけじゃなく、

「ここ、すごくヒクヒクしているよ、ほら見えるだろう」

ふるふる震えるクリトリスやすっかり湿った花びら、ぱっくり開いて蜜を溢れさせるその中を、手鏡に映して見せつけてきたりする。


「この人と結婚する」

泰明さんは鏡はそのままに、指で花びら開いた。

中からとろっと蜜が流れ出す。

「や……」

自分の欲望をこんなふうに見せつけられると、恥ずかしさも気持ちよさも膨らんで、頭がくらくらしてくる。

「こんなに濡らして悪い子だ、おしおきが必要だな」

泰明さんがとろける蜜壺の中に硬くそそり立った彼自身をそっとあてがい、少しずつ中に収めていく。

「ん、あぁぁ……んっ!」

いっぱいに膨らんだ泰明さんで、あそこが満たされていく。少し息苦しいような感じもたまらない。亀頭が襞をかき分けながら侵入していくのがわかる。

溢れた蜜が太腿に垂れて、流れ落ちた。濡れすぎて、潤滑油という程度ではなくなっている。自分の体がこんなにエッチだったなんて。

「気持ちいい……」

私は夢見心地で泰明さんを思いきり抱きしめた。どくん、どくんと中で脈打っているのがどちらの体のモノなのか、もはやよくわからない。

「瞳子がいやらしいから……こんなに硬くなっちゃった。この体でしずめてもらうからね」

耳元にかかる泰明さんの声も熱い。

私のお尻の肉をむぎゅっと掴み、泰明さんが腰を動かし始めた。

「あぁん、あ、あんっ……!」

乱暴ではないけれど、力強い。最奥まで達するたびに、求められていることを強く感じる。していることはSっぽいのに、穏やかな物腰や口調はそのままなところもよかった。

挿れたまま、体位を何度か変えた。

「起き上がって」

言われるままに、上半身を起こす。抱きかかえられると、対面座位の体勢になった。

泰明さんは今度は斜め上に腰を突き入れる。

「ふぁぁ……ん!」

仰向けになっていたときとは違うところ、Gスポットにあたった。内側からぴったり粘膜を密着させながら、こすり上げられる。

泰明さんの腰が突き上がるたびに、体がびくん、びくんと跳ね上がった。

絡み合うふたり

揺れる乳房を優しく掴まれ、揉まれる。

「あ、あぁ、あん……」

さらに乳首もペロペロ舐められて、ちゅぱちゅぱ吸われて……。

「君が狂おしいほど、好きだ。ずっとそばにいたい。絶対に……離さない」

全身で感じすぎて気持ちがいっぱいになっているのに、さらに濃厚なキスが降り注ぐ。唇から快感を注ぎ込まれるようなキス。必死で受け止めて、そこでもうっとりする。

体じゅうが、花のようにぱぁっと開いていく感覚。

「ん、ぁ……瞳子、好きだ……あ、あぁ……イク……」

「泰明さん、私も……っ!」

私たちは強く抱き合って、絶頂に達した。

***

……なんてことがあったかと思えば、意外な甘えん坊な姿を見せてくれたりもする。

「あぁ、今日は疲れた。式場、3軒ハシゴだったよ」

仕事から帰ってきて着替えるなり、私の膝に横になって上目遣いをしてみせたり。

「はいはい、お疲れ様でした」

私は微笑んで泰明さんの頭を撫でてあげる。

私が愚痴を言って慰めてもらうことも珍しくない。どちらかが一方的に寄りかかられるのではなく、こうやって癒し合えるのはいいと思う。

「でも、式場巡りも悪くないね。僕たちの結婚式のこと、思わず想像しちゃったよ」

(そうか、もうすぐなんだよね……)

決まってしまえば、あっという間に時間は過ぎていった。

私は来月、この人と結婚する。


⇒【NEXT】スタイリストを目指したのだって、きっかけは褒められたからだ。(同居美人〜番外編〜ワケありイケメン 松垣洸太〜ワケありの理由〜)

あらすじ

同居美人の番外編として、7人の男性キャラクターのうちひとりを主人公にした短編ストーリーが登場♪

▼キャラ紹介
小島泰明 35歳 ウェディング・プランナー
「行列のできるウェディング・プランナー」として雑誌やTVでも紹介されている。
紳士で大人な彼だが、言うべきことははっきりと言う。
このような職についているが、本人は忙しくて婚期を逃した。

そんな彼のラブストーリーが楽しめます!

松本梓沙
松本梓沙
女性向け官能、フェティシズム、BLなどを題材に小説、シ…
poto
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毎日小説「夜ドラ」の挿絵も担当。書籍、ウェブ、モバイル…
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