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彼にマッサージ【vol.18】川奈まり子書き下ろしコラム
彼にマッサージ【vol.18】川奈まり子書き下ろしコラム
私の恋人はお風呂が大好きだ。無理もないと思う。月曜から金曜まで毎日、朝からずっと埃(ほこり)っぽい街中を歩きどうしなのだから。
しかも、暑い最中でもスーツを着て、革靴を履いて。
つきあい始めた頃、マメだらけの足に驚いて、お風呂でマッサージしてあげたら、もしかして毎回やってくれたりして?と言われた。
もちろん彼は冗談のつもりだった。
だけど私は生まれてからこれまでにこんなに真剣になったことはないというくらい真剣に、いいよ、と答えたのだった。
それからはベッドに入る前か後に必ず、彼の足を揉んであげている。
爪先から始めて、足首へ、そしてふくらはぎへ……という具合に、少しずつ下から順に揉んでいく。
足のマメもあいかわらずだが、ふくらはぎの筋肉もパンパンに張っていて、いつも、とても痛そうな感じがする。
このためにわざわざ買ったバスマットの上に正座をして、私の太腿の上に彼の脚を抱え上げ、優しく揉んだり撫でたりする。
やがてそのうち、彼は気持ち良さそうに唸りながらゴロンと仰向けに寝てしまう。
彼の足から幸せをもらう
ゆっくり、ゆっくり。と、私は自分に言いきかせながら、逞しい膝こぞうをくりくりと撫で、膝の裏側の柔らかいところをギュウッと押してやる。
それから、マッサージ・ソルトを新しく掌(てのひら)に取って、太腿へと移る。
ゆっくり、上の方へ向かって……。
マッサージの最中に彼の勃起が目に入ったとしても、見ないふりをして続けることにしている。
彼も不思議と、早くなんとかしろと言わない。
いつでも、騒がず、大人しく揉まれたり撫でられたりされるがままになっている。
「最近、つるつるになってきた気がする」
うわずった声が答えた。
「そうか?」
顔を見ると、眉間に縦ジワを寄せて目を閉じている。
「毛が生えてるから、よくわからないだろ?」
そんなことない、と言い返して、私は手を伸ばしてお尻の頬っぺたをさすさすしてやった。
「ほら、ここが、つるつる」
彼は返事のかわりに唸り声をあげて、バスマットの上で身じろぎした。
私は笑って、その脚を抱え直す。彼は逆らわない。
再び、静かな時間がバスルームに満ちていく。
かたわらでは浴槽のお湯が湯気を立て、マッサージソルトは良い香りがして、彼の脚は重く温かい。
こんなときだ。
私が、私は彼から幸せをもらう約束したのだなあと思うのは。
正確には、彼の足から幸せをもらう約束、かもしれないが……。