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彼の手【vol.10】川奈まり子コラム〜キスよりもセックスよりも感じる、彼の手〜


彼の手【vol.10】川奈まり子コラム〜キスよりもセックスよりも感じる、彼の手〜

くちづけのほうが先だった。手をつなぐ機会が、なぜか無かった。
たぶん、二人とも大人になりすぎていたのだと思う。

彼が最初に触れたのは、貴方の手の甲だ。てのひらじゃなかった。
恋人は貴方の手が好きだという。
彼が好きなマニキュアの色はピンク。

「やわらかそうな色だし、なんとなく女らしいし」と彼は好きな理由を説明する。
彼は、やわらかそうなものを好む。

貴方の唇、頬、乳房、お尻、そして……。
貴方は恋人に愛されている。
愛されれば愛されるほど、貴方は心も身体もやわらかくなってゆくような気がする。
てのひらも、やわらかくなった。

貴方の手がかさついていたことは恋が始まってからは、たぶん一度もない。
恋人に「綺麗だ」ともっと言ってほしくて、大事にしていたから。
けれども彼は、貴方の手のやわらかさをまだ知らない。

手のひらにふれて…

――こんど、そのことを恋人に教えてあげて。
好い香りのするハンドクリームを買って、デートの前に両手によくすりこんで、彼に会ったら、くちづけや言葉よりも先に、彼の手に手を差し伸べて。
そして、初めて手をつなぐ(初めては、いつも心を躍らせる)。

この瞬間、貴方は受身ばかりの恋を卒業する。

手をつないだら、次は、恋人にそうされたのと同じように、貴方が彼の唇や頬、可愛らしい乳首や……に、手で触れてみて。
初めて貴方から積極的に恋人の身体に触れるのだ(初めてはエキサイティング!)。
手をつなぐことは最初の一歩。

――てのひらから恋心をつたえよう。
恋人の肌に触れる貴方のてのひらは、ピンク色で、やわらかくて、女らしくて、素敵な香りがするだろう。
彼は、貴方の手に病みつきになるかもしれない。
てのひらから始まる、恋愛の第二章。

――ハンドクリームの用意は出来た?
こんどは貴方が愛を与える番よ!

あらすじ

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