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官能小説【2話】絶対ナイショのラブミッション〜再会した幼馴染は過保護SPでした〜


淫裂の蜜だまり

「ッや、だめだって……!」

「だから、駄目じゃないだろ。見せて……な?」

伺うような声音とは裏腹に、彼の手は少しだけ強引だった。かろうじて纏っていたバスタオルを剥いて、私の膨らみすらも曝け出していく、――――私はそれを、信じられないような気持ちで見つめていた。
幼馴染で、初恋の人。変な再会の仕方をしたかと思えば、こんなふうに組み敷かれて、際どい場所にまでキスをされて、混乱するのは当たり前だろう。でもどうしてか、逃げ出したいとか嫌だとか、そんな気持ちにはならなくて。

「は、ぁあ……っ」

「ほら、あった……」

ふるりと震えた膨らみの上に、ほくろは三つ。鎖骨に近い位置、縦に二つ並んだそれが、恐らく夏生君の言った『反対側のほくろ』だろう。その二つに、甘いリップ音と共にキスを落とした夏生君は、もう一つのほくろ、――――蕾の根本にあったそれに目を付けたらしい。

「……こんなところにもあったんだな」

「そ、そこ、ほんとに、や……あっ、ぁ!」

「ッは、やらか……」

普段は慎ましいはずの蕾は、彼の唇に全身をなぶられる感触に悦び、ぷくりと大きく膨れていた。根本に触れる夏生君の唇は必然的に蕾にも当たって、そのたびに、じんとした快感が全身へと広がっていく。ちゅ、ちゅ、と何度も唇を落とされ、軽く吸い付くようにされると堪らなくて、私は喉を晒して甘く喘いだ。
キスされてるだけなのに、どうしてこんなにときめいて、きもちいいの。重くなっていくお腹の奥。じっとりと熱を持つそこから蜜が溢れ出す感覚に、私は思わず腰を捩る。
夏生君はそれを見ただけで、私の身体に何が起きているかを悟ったようだった。

「急に大人しくなって……なに?気持ちよかったのか」

「っん、な、何言って……」

「ここ、勃ってるし……っん、気持ち、よかったんだろ……?」

「ッあ、ぁあっ!」

ほくろの上だけを丁寧になぞっていた唇が、悪戯めいた動きで蕾を捕らえた。熱く湿った咥内に引きずり込まれた蕾は、伸びてきた舌に優しくあやすように舐められ、しゃぶられ、きつく吸い付かれ、赤く熟れたあられもない姿へと変えられていく。とろ火で炙るような快感が、激しく燃え上がるようなそれに変わっていく。
その隙をついて、夏生君の手は鳩尾のほくろを軽く引っ掻いたのち、下腹部へと忍び寄った。

「っふ、ぁ……違う、の、」

「じゃあ、何でこんなに濡らしてんの。なあ?」

「ひ、……ッあ、ぁ……!」

なじるような声音は、嗜虐の悦びに濡れていた。ついぞ聞いたことのない、幼馴染の雄めいた吐息に、身体の芯がぞくりと震える。お腹の奥がきゅんと締まる。耳の奥では心臓がうるさく騒ぎ立てて、夏生君が指を蠢かせるたびに立つ重い水音と混ざり合った。

「やらし、……とろっとろだな」

私を見下ろす彼の瞳に、剣呑な色が混じる。今度は反対側の蕾に吸い付きながら浅く笑ってみせる彼は、壮絶に厭らしく、目を覆いたくなるぐらいに男の顔をしていた。
そのかんばせに惚けているうちに、硬く骨ばった彼の指は私の好いところを的確にくすぐり、引っ掻いていく。秘所の中心、緩く口を開けた淫裂の蜜だまりを甘やかすように掻き混ぜたかと思うと、やがて温かな泥濘にずぶずぶと沈んでしまった。

「あ、ぁあ……っん、ん、なか、入って……」

「ハ、ァ……奥までこんなに緩めてて、いいのか?ちゃんと締めてないと、俺に付け込まれるぞ」

「ッは、ぁ、んん……っそ、んな、」

言葉とは裏腹に硬い指先が襞を擦り、蜜を絡め取っては奥を拓いていく。そんな恥ずかしいこと、言わないでほしい、――――そう思っているのは本当なのに、彼に言葉で苛められると胸とお腹の奥が甘く疼いて、好きにされたいという願望が湧いてくる。東条雛乃として振る舞わないといけないのに、感じてはいけないのに、どんどん夏生君に身体の主導権を明け渡してしまう。
指はあっという間に三本に増え、ひどい水音を立てながら私の蜜壺を蹂躙している。拓かれきった奥が小さな痙攣を繰り返し、私の意思なんてお構いなしに、自分を埋めてくれる熱を強請るのが恥ずかしくて堪らなかった。

懐かしい笑み

「っ、はー……なあ、美冬」

「んぅ、……あっ、や、」

「みふゆ、」

ぐっと甘く蕩け切った声音で呼ばれた名前は、たぶん私への救済措置だ。今認めたら『美冬』として接してあげる。『美冬』にしてあげる。そういう甘やかしが滲んでいた。お腹側の浅瀬にある、私の好いところをぐっ、ぐ、と押し込みながら、夏生君は耳元のすぐ横のほくろへと口付ける。
それでも、私はゆるゆると首を振った。方向は横だ。ほとんど認めてしまったようなものだったけど、お金のためにこんなきな臭い話に乗った以上、自分から仕事の決まりに違反する気はなかったし、何より。
――――『美冬』として抱かれるなら、こんなふうに流されてじゃなくて、ちゃんとしたい。

「ちがう、から」

夏生君のことがまだ好きだから、ちゃんとしたい。

「……強情だな」

そういうとこ、昔から変わってない。
くしゃりと私の頭を撫でて、夏生君がゆるく笑った。仕方ないなと私を甘やかすときの、懐かしい笑み。私はそれに応えないまま口を引き結ぶ。ちょっとでも気を抜いたら、気持ちが溢れ出てしまいそうだった。

「――――では、雛乃様」

「ッ、ぁ……」

「私に蕩かされて、たくさんイく顔……見せてください」

SPの顔で甘ったるく囁いた夏生君の手が妖しく蠢き、指を三本咥え込んだ蜜口の上、ふるりと震えていた花芽に親指を宛がうと裏側を優しく掻きむしる。敏感な神経の塊に対する暴虐に、私の身体がびくんとしなって、爪先がきつく丸まった。隘路を貫く指も、先ほどまでよりも激しく抜き差しされて、蜜だまりをひどく掻き回す。
彼に刺激を与えられるたび、唇からはあえかな悲鳴が勝手に零れ、耳からも私の身体を高揚させていく。このままだと昇りつめてしまう、イッてしまう。駄目だと思う心から離れ、身体はどんどん果てへと押し上げられて。

「ぁ、あっ、だめ、だめっ……」

「大丈夫です。私が付いていますから……ほら、――――イッて」

「ッ、あ……!」

がくりと腰が跳ね、快感が爆ぜる。思考を吹き飛ばすほどの衝撃。どろ、と奥から蜜が溢れて、夏生君の指を汚したのが分かった。獣のような荒くざらついた呼吸音が響く中、私の身体は緩やかに果てから下りてくる、――――ぐり、と花芽が押しつぶされた。

「え、っ……?あッん、や、や、……なんで、」

「『たくさん』と申し上げましたので」

火照りの収まっていない身体が、あっという間に疼きを溜め込み始める。甘やかすような手淫が再び開始され、先ほどまでより蜜濡れになった襞を拓くように、奥を執拗に擦られ、私はこれから起きることを悟らずにはいられなかった。
小さく痙攣を繰り返す足を持ち上げて、夏生君はうっそりと笑ってみせる。

「たくさんイッて……早く『素直』になって」

なあ、美冬。

甘い疼き

ゆっくりと意識が浮上する。眩い陽光に誘われて瞼を持ち上げれば、目の前に夏生君の顔があった。
長年恋焦がれて、何度も夢想した、大人の夏生君の顔。それが睫毛が触れ合いそうな距離にある理由を、回転の鈍い頭で捻り出す。

「ああ……夢か……」

「……はよ、美冬。もう少し寝ててもいいぞ」

「ん……?」

「なに、寝ぼけてんのか?目がとろっとしてる……」

男性に迫られている女性

大きく硬い手のひらが、私の頬を優しく撫でる。きもちいい。ふわふわとした思考は未だ定まらず、私はその手のひらに擦り寄って、ゆるゆると瞬きを繰り返した。どこか甘さを含んだ、苦笑めいた彼の顔は、何度見ても大人になった夏生君そのもので、――――あれ?

「ッ……!あ、え!?」

「お。起きたか」

「なんっ……何で、同じベッドで寝て……るん、ですか!出て行きなさい!」

未だかつてないスピードで回転した頭が、これまでの経緯を一息に思い出し、ぎりぎりのところで『東条雛乃』の仮面を被り直すことに成功した。いや、もうこれまでの経緯で手遅れ感が否めないけれど、自分からは認めていないからセーフだと思いたい。
ちらりと窺った夏生君は、何だか面白そうな顔をしていて、胸の内に激しい不安が募っていく。

「散々イッたお前が、抱きついたまま寝落ちて、――――」

「ッ言わなくていいんですそういうことは!とにかく出て行ってください!」

「……畏まりました。今日のご予定に、私も護衛として同行させていただきますので、準備が終わりましたらお声がけください」

どこまで続くか見物だな、――――そんなことを言いたげな笑顔のまま、夏生君が部屋を出ていった。一人取り残された私は大きく息をついて、ベッドにもう一度転がる。
東条雛乃の代役二日目の仕事は、パーティーへの出席だったはずだ。シャワーをして、借りたパーティードレスを着て、化粧をして。頭の中で予定を組み立てようとするのに、浮かんでくるのは昨夜の情事のことばかりだ。

「はあ……」

思い出すだけでお腹の奥が甘く疼き、胸まで掻きむしられるような感覚を味わう。あれだけ色々しておいて、自分の中に大した後悔もないのが無性に恥ずかしかった。ずっと焦がれていた人に触れられた悦びが、まだ身体と心を浮つかせているような気さえする。
ただ、今は仕事中。自分の正体を気付かれてはいけない、――――というのは既に達成不可能な条件だけど、自分から認めてしまったらそれこそ終わりだ。

「……この仕事が終わるまでは、夏生君への気持ちは一回忘れておかないと」

ベッドから勢いよく起き上がる。シャワールームへと向かいながら、私は決意を新たにするのだった。

交わる視線

その日の昼過ぎ、エスコート役に扮した夏生君と訪れたのは、東条正芳の側近が主催するパーティーだ。このパーティーの参加者は、東条雛乃を知っている人がほとんどだろう、――――そう思うと緊張がこみ上げ、会場に入るなり、つい夏生君の後ろに隠れてしまう。

「どうされましたか?」

「……いえ、何でもありません」

「……お加減がすぐれないのなら、私の腕に掴まってください。一度端の方へ行きましょう」

「別に、具合が悪いわけでは……」

「そのほうが私も、貴方を守りやすい」

――――私から、決して離れないでください。
会場に入る前、そう約束させられたのも記憶に新しい。耳元で交わされる密やかな言葉は、昨夜の暴虐の欠片もなく紳士的で、そのギャップにくらくらする。鼓動を微かに早めた心臓を押さえ、大人しく夏生君のエスコートに従ったのは、これ以上耳元で囁かれるとどうにかなってしまいそうだったからだ。

「お父様から、挨拶回りだけはするようにと言われています。終わったら早めにお暇しましょう」

「そうです、ね、――――」

彼の言葉が不自然に揺れる。掴まっていたのとは反対の腕が、素早く私の腰を引き寄せた。

「え?」

「静かに。……見られてる」

ほんの少し硬い声音が、耳朶に注がれる。見られてる、って何。そう問う暇もなく、視界のほとんどが夏生君のスーツの胸元で埋まった。その端からちらりと見えた人影。恐らく男で、背もそこそこ高い。彼は一瞬だけ私と視線を交わらせると、ぱっと身を翻してあっという間に人混みに紛れてしまった。

何をされたわけでもない。たまたまこちらを見ていただけの人だ、――――そう笑い飛ばすには、腰を抱く夏生君の腕の力が、やけに強いような気がした。

⇒【NEXT】「契約違反のお仕置きは、きちんとしなければいけませんね」SPの甘いお仕置き…(絶対ナイショのラブミッション 3話)

あらすじ

「だから、駄目じゃないだろ。見せて……な?」

幼馴染で、初恋の人。変な再会の仕方をしたかと思えば、こんなふうに組み敷かれて、際どい場所にまでキスをされて…。でもどうしてか、逃げ出したいとか嫌だとか、そんな気持ちにはならなくて…

皆原彼方
皆原彼方
フリーのシナリオライター・小説家(女性向け恋愛ゲーム/…
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