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官能小説【4話】絶対ナイショのラブミッション〜再会した幼馴染は過保護SPでした〜【LCスタイル】


私が東条雛乃として過ごし始めて数日が経った。分かってきたのは、私が『囮』として雇われていたのだろうということと、『お父様』は恐らく夏生君の同僚たちと共に犯人の解明を急いでいるのだろうということだ。パーティーが終わった後も契約が続き、こうして夏生君と二人でホテル待機を余儀なくされているのがその証拠だろう。


「雛乃様も、ようやく私に慣れてくださいましたね」


「……四六時中見られていれば、気にならなくもなってきます」


『二回の触れ合いを経て』という言外の揶揄いをあえて無視し、私は彼の淹れてくれた紅茶を一口含む。パーティーでの情事の後も関係は変わらず、夏生君は約束を守って私を『東条雛乃』として扱ってくれていた。夏生君が私をどう思っているのかとか、今の関係をどう解釈すればいいのだろうかとか、そういうことは全部仕事が終わってから考えよう、――――そう改めて覚悟を決めてしまえば、存外穏やかな生活だ。


でも、このままずっとホテルに籠っていてもいいのだろうか。お父様からどこかに顔を出すように指示があるかと思ったのだけど、そういうことも特になく、『囮』らしい行動も出来ないままだ。もう少し外に出て隙を見せたほうが、案外さっさと解決したりして、――――


「何か要らぬことを考えていらっしゃいませんか」


「い……いえ、何でもありません。警護に集中しなさい」


「勿論、集中しております。雛乃様のほうは、何でもないようには見えませんが……そうですね、」


こちらを胡乱な目で見つめていた夏生君が、何やら考え込む様子を見せる。ややあってスマホを取り出すと、どこかへ電話を始めた。


クラゲの水槽

「わ……!」


大きな水槽の中、回遊魚たちが目の前を通り過ぎていく。色とりどりの魚が自由に泳ぎ回る様は、見ているだけで心が躍った。


あの電話は捜査関係者への連絡だったらしく、了解を取った夏生君は、ずっとホテルに缶詰めだった私の気晴らしにと水族館へと連れ出してくれた。薄暗く人混みに紛れやすい水族館なら、いざという時も守りやすい、――――そう笑った夏生君が素知らぬ顔で私の手を取る。

「え、」


「また離れられては困りますから。それに手の一つでも繋げば……恋人同士に見えて、より守りやすいので」


すり、と彼の指先が私の手首を擦った。何かを感じさせるその手つきに、心臓が甘く跳ねる。恋人、なんて嘯く唇が、にんまりと笑って「次はクラゲでも見ましょうか」と私を促した。

「クラゲ……」


「クラゲ、お好きでしたよね。前に来たときも、私を放り出してずっと眺めていらっしゃいましたし」


「えっ何で知っ……あ」


夏生君がどこか悪戯めいた笑みを浮かべた瞬間、今よりも幼い彼の笑顔がそこに被って見えた。


確か昔、――――ずっと昔。離れ離れになる少し前、二人きりで水族館に来たのをふと思い出す。あのときも夏生君に手を引かれて歩き回ったっけ。中学生だった私はもうとっくに彼に恋をしていて、握られた手に変な汗をかきそうだったのを、よく覚えている。


あのときは確か、最後に約束したのだ。『また二人で来ようね』と。結局その約束は、離れ離れになったせいで果たされなかったけれど、――――


「今来てるからいいだろ」


「そうだね。……私は『美冬』とかいう人じゃありませんけど」


同じことを考えていた気恥ずかしさに、お決まりの台詞が僅かに上擦る。可愛くない言葉を諫めるかのように、夏生君の指先が蠢き、私の指と絡み合う形へと変わった。いわゆる恋人繋ぎ。あの頃の私がやられていたら真っ赤になって舞い上がっていただろうそれに、大人の私の顔にもじわりと赤が滲んだ。初恋が掘り返されていくような感覚は、私の心臓をあっという間にときめかせてしまうから、性質が悪い。

「ほら、クラゲですよ。……相変わらず、何がいいのかはさっぱり分かりませんけど」


「ふわふわしてて可愛いでしょう」


「可愛い……?」


つん、と水槽を突きながら首を傾げる夏生君が可笑しくて、私はつい笑ってしまう。

「そこの、小さくて丸いのとか可愛いと思いますよ」


「どれですか?」


「ええと……そこです、上の方の……」


彼と同じように水槽に指を付けてカラージェリーフィッシュを指し示せば、夏生君がゆるりと目を眇めたのち、私の方へと顔を寄せてきた。頬が触れ合いそうな距離。「見えねー……」なんてぽつりと呟かれた台詞にきゅんと来ている辺り、私も重症だ。


ああだこうだとくだらない会話をしながら、クラゲの水槽を二人で眺める時間は幸せで、――――結局私たちは閉館時間ぎりぎりまで、存分に水族館を楽しんだ。


夏生君の家で

水族館からホテルへ戻る途中。ホテルがようやく見えてきたというところで、私より半歩先を歩いていた夏生君がほんの一瞬足を止めた。


「どうかしましたか?」


「……こっち、」


手首を掴んだ夏生君の指先は、水族館のときとは違って少し強張っているように感じる。瞬時に『何かあったのだ』と悟った私は、口を噤むと大人しく彼の誘導に従った。
夏生君は素知らぬ顔で再び歩き出すと、ごく自然に、ホテルとは違う方向へと曲がった。


「尾行されています。私から離れないで」


低く囁いた彼は、そのままスマホで同僚と思わしき人たちに連絡を取り始める。

「こちら城阪。護衛対象と外出中、尾行者有り。現在地は××町〇丁目。俺のGPSから追ってください。対象は身長180センチ前後。黒の上下ジャージ、黒いキャップとマスク、白いスニーカーを着用。以前の東条雛乃誘拐未遂のホシと、身体的特徴の類似点が見られます。確認願います、――――ええ、はい。了解」


あっという間に仕事の顔へと戻った夏生君が、スマホを再び懐に戻し、ちらりと私を見遣る。少しだけ持ち上げられた口角は、私を安心させるためだろうか。


「……どうするんですか?」


「私は貴方を安全な場所までお連れするのが役目ですので。確保は他の捜査員に任せます。……雛乃様、今日はホテルには戻れませんが、構いませんか」


「それは構いませんが……」


ホテルじゃないとしたら、どこへ向かうつもりなのだろう、――――私の疑問への答えは約二十分後、夏生君がようやく足を止めたマンションの前で明かされた。

「ひとまずは撒いたようですね。今のうちに中へ」


「マンションですけど……?」


「私の家が七階にあります」


「え、」


しれっと返された言葉の意味を呑み込み損ね、私の唇からは呆けたような音が零れる。素早くエントランス内に入った彼は、エレベーターに乗り込んでから私の手首をそっと解放した。


「警察の施設へ逃げ込めば、私が警察関係者だと向こうに気付かれる可能性もある。警察や東条家と関係のない場所で、安全な場所というとここぐらいでしょう。ご容赦いただけますか」


「よ、容赦と言われても……」


夏生君の家。そう思うと、脅威が去った安堵もそこそこに、現金な心臓が浮つき始めるのが分かった。エレベーターが七階に到着し、落ち着かない気持ちのまま彼の家に足を踏み入れる、――――物の少ない殺風景な部屋は、ふわりと微かに彼の香りがした。


「何もないところで恐縮ですが……ああ、お茶をお出ししましょう」


「え?あ、ああ……お気遣いなく……」


駄目だ、『東条雛乃』の顔が崩れてきている。
動揺で激しく波打つ心臓のせいで声は震えているし、ぎりぎりで口調の体面だけは保てているものの、声音や言葉選びが完全に素に戻ってしまっている。早く落ち着かないと、と思えば思うほど鼓動が速くなっていって、もうどうしていいか分からない。


紅茶を淹れる画像


夏生君が淹れてくれた紅茶を受け取り、ソファーにそっと腰を下ろす。ひとまず紅茶を飲んで一回落ち着こう。隣に腰かけた夏生君からなるべく意識を逸らしながら、たっぷりと時間をかけて紅茶を飲み進めた。居心地の悪いような、気恥ずかしいような感覚が、温かな紅茶によって少しずつ解されていくのを感じて息をつく、――――ふと顔を上げると、どこかじりじりとした煌めきの双眸が、ひたりとこちらを見つめて、いて。


「っ……、あ、」


「美味しいですか?」


「お……おいしい、ですけど」


「本当?ホテルで淹れたときは『SPの紅茶の味にはもともと期待していませんでした』なんて可愛くないことを仰っていましたが」


「うっ……」

にんまりと笑った夏生君が、自分の分の紅茶をテーブルへ置いて、私の太腿横に手を付いた。もう一方の手はソファーの背もたれへと無造作に掛けられて、彼の上体がぐっとこちらへ倒れてくる。近い。思わず紅茶のカップを抱きしめるようにして息を潜めれば、甘ったるい声と、喉だけを鳴らしたような白々しい笑みが降ってくる。

「……今日はなんだか、随分と可愛らしいですね」


彼の手が、私から紅茶のカップを取り上げた。身を守るささやかなものすら失った私は、彼にされるがまま、ベッドへと運ばれて、彼の香りのするシーツの海へと落とされてしまう。


「――――めちゃくちゃにしたくなる、な」


熱い唇が、首筋へ口付けながら囁いた。

⇒【NEXT】8/11公開予定!家に連れ込まれて襲われてるの、興奮しますか?それでも、私の身体が興奮してしまっているのは誤魔化しようもない事実で…(絶対ナイショのラブミッション 5話)

あらすじ

パーティーが終わっても契約が続くことになった美冬。夏生君は約束を守って私を『東条雛乃』として扱ってくれていた。
それでも、美冬がクラゲが好きだったことは覚えていて…

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