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官能小説【9話】絶対ナイショのラブミッション〜再会した幼馴染は過保護SPでした〜
子供の時の約束
ぴんぽん、という間抜けな電子音の後、ドアが向こう側から押し開かれる。顔を覗かせたのは夏生君で、彼は私の顔を見るなり「おかえり」と小さく笑ってみせた。
「首尾は?」
「上々!」
鞄をとんとんと叩けば、夏生君はまた小さく笑って、私のためにスペースを開けてくれる。お邪魔しますと呟いて、玄関へと上がらせてもらえば、ふわりと夏生君の香りがした。

事態収束から数日後。私は『お父様』から今回の報酬を受け取り、晴れて恋人になった夏生君の家を訪れていた。リビングに移動し、いつかと同じように紅茶を貰う間もにこにこしている私を見て、夏生君がふと思いついたように言う。
「なあ、もしかして……その報酬のために、あんな危険な話引き受けたのか」
「そうだけど」
「脅されてたとかじゃなくて?」
「純粋に、その……お金がなくて」
「……」
重く大きな溜息が響き、夏生君が頭を抱えた。
「やっぱりお前、俺が見てないと駄目だ……」
「だ、だって……! ほんとにお金が必要で……」
「そもそも、何でそんなに金が必要だったんだよ。仕事はどうしたんだ」
今は詮索しない、――――そう言った彼の瞳を思い出す。もう仕事も終わって、私を縛るものは何もない。
私はなるべく要件をかいつまんで、自分が会社を辞めることになった経緯を話した。最初は真面目に聞いていた夏生君は、話が進むにつれ何だか苦いような顔をしてみせる。
「夏生君、どうかした?」
「いや……困るのが生活費とか家賃だけなんだったら、やっぱりあんな仕事途中で止めればよかったのに」
「えっ」
私が声を上げると、夏生君は何だか『しまった』というような顔をして、手の甲で口元を覆ってしまった。加えて目尻も少し赤くなっているのが気になって意味を問いただせば、彼はちらりと私を見遣ったのち、居心地悪そうな顔でぼそぼそと呟く。
「……俺と結婚すれば済む話だったな、って思ったんだよ」
「は……?」
「小学校の入学式の前日に、結婚しようって約束した……だろ、忘れたのかよ」
私を睨む目元は先ほどよりもずっと赤くて、私の胸を一息に貫いた。
夏生君が、照れてる。雷で打たれたような衝撃に、私は口に運びかけた紅茶のカップもそのままに静止した。苛立たしげな声音は照れ隠しだ、と気付いてしまえば破壊力も倍増で、思わず胸元を押さえてしまう。
約束自体は、よく覚えている。この間も夢に見た、幼い夏生君の一生懸命な告白、――――忘れられるはずがない。
「した!した、けど……」
「じゃあいいだろ。お前を支えるぐらいの稼ぎはあるし」
まだ微かに赤い顔で、夏生君がいつかと同じように私の手から紅茶のカップを取り上げると、ぐっと身体を寄せてくる。気恥ずかしさからか少し低い声音。私を追い詰める、その乾いた唇が耳朶へと触れた。
「ち、ちょっと一回待って。何でそんな急に……」
「急にじゃない。ずっと考えてた……それに、早くお前の言質取りたくて必死なんだって。……分かんない?」
甘さを含んだ、懇願するような声音がずるい。
きゅう、と胸の奥が締め付けられ、自然と目の淵が潤んでいく。ずっと好きだった初恋の幼馴染が『恋人』になった実感だってまだ薄いのに、――――混乱してぐしゃぐしゃに掻き乱された頭では、何と返事をしていいのかも分からない。ただこの胸に収まる心臓が、嫌だと言っていないのは確かで。
夏生君が私の指を絡め取り、焦れたように左手の薬指を甘く噛む。その瞳が、早く俺を受け入れてしまえと訴えかけてくる。駄目押しのように与えられたそれらの刺激に、何もかもすっ飛ばして彼の願いを叶えてあげたい気持ちになるのは幼馴染の性か、――――それとも惚れた弱みだろうか。
「……降参です」
夏生君は、にんまりと笑ってみせた。
シーツの海に落とされて
シーツの海に落とされた途端、彼の厚く熱い身体が覆いかぶさってくる。手のひらを恋人繋ぎでシーツへと縫い留められ、足同士すら厭らしく絡められてしまえば、恥ずかしいからと逃げることどころか、顔を覆うことだって出来やしない。
「なに、その顔……今更恥ずかしいのか?」
「ッ、ん……だって、」
すり、と彼の足が器用に太腿を擦り上げる。すぐに小さく啼いてしまう私に、夏生君はくつりと笑ったかと思うと、耳孔へ直接注ぎ込むかのように「可愛い」と囁いてみせた。
夏生君との触れ合いが今更恥ずかしいのは、『東条雛乃』の仮面が剥がれてから、彼を拒否していた理由と同じだ。散々別の顔で抱かれた後に、素の自分で相対するのは恥ずかしい、――――そんな私のささやかな葛藤すら、夏生君にはお見通しのようだった。
「最初から『美冬』で俺とするの、そんなに恥ずかしい……?」
「ッあ、何で、知ってるの……」
「お前のことなら大抵分かるよ。……ずっと、見てきたから」
昔から恥ずかしがりなとこ、可愛いなって思ってた。
恥ずかしいことを言う唇が、逃げるように顔を背けた私のうなじへ食いついた。敏感な生え際を甘く食まれて、ぞわぞわと立ち上る快感に、引き結んだ口から僅かに嬌声が零れる。
「も、あんまり可愛いとか言わないで……」
「なんで。好きな女に、可愛いって言うぐらい自由だろ……、ん」
「ッ、ん……っ」
もう何度目かも分からないキスは、それでも毎回ドキドキしてしまうのだから、きっと夏生君が特別なのだろう。角度を少しずつ変えながら、柔い感触が幾度となく唇へ触れる。たっぷりと濡れた舌が、入れてくれとばかりに隙間をなぞる感触に誘われ、そっと歯列まで開いてしまえば、可愛らしいだけの口付けが激しく熱っぽいものへと変わっていく。
「はー……、っみふゆ、目、開けて……」
「ふ、ぁ……んん、」
「ん、俺のことちゃんと見て、……そう、いい子、」
うっすらと開いた瞼の向こうで、苛烈な欲が滲んだ瞳が笑みの形に歪む。褒められると嬉しくて、私は絡められた彼の指先へと軽く爪を立ててしまう。
夏生君はずっと、私の幼馴染であり、庇護者でもあった。私を守ってくれるひと。大事にしてくれるひと。そう幼い頃から刷り込まれてきた『おとこのひと』に、これから無体を働かれるのだと思うと、――――どうしようもなく胸が騒いで、堪らないような気持ちになって。
「ハ、やっぱり……お前のこと笑えないかも」
「え?」
「……何回もこうしたのに、やっぱりちゃんと『美冬』だと、……違うなと思って」
重なり合った身体から伝わる、夏生君の脈拍がひどく早い。煽られるようにして私の心臓も激しく脈打ち始めると、それが分かったのか夏生君が小さく笑った。
「ずっと……小さい頃から好きで、大事で……お前のこと、無意識に自分のものだって思ってたから。汚すの、緊張してんのかも、な」
「っふ、ぁん……なつき、く、……過保護だもん、ね」
「過保護、ん……っじゃ、ないって、ただ美冬が、大事なだけだろ……」
絡まり合うようなキスは、唇同士の間にかかる銀色のアーチを繰り返し作りながら、どんどん深く、淫靡なものへと変わっていく。どろりと蕩けた彼の瞳にぎらついた情欲が灯っていく。汚すの緊張する、なんて言ってたくせに。そう言ってやりたいのをぐっと堪え、私は自分から彼の唇へと吸い付いた。
「夏生君になら、何されても……大丈夫だから」
「余計なこと言って。……知らないからな」
二人分の唾液で濡れた唇を、舌がじっとりと舐め上げる。獰猛な笑みを浮かべた夏生君が、ついに恋人繋ぎを解くと、私のシャツへと手をかけた。
「――――もう子供じゃないんだから、自分の発言に責任持てよ」
⇒【NEXT】今まで指でしか触れられたことのない、その敏感な場所に、夏生君の顔がゆっくりと下りていき…(絶対ナイショのラブミッション 最終話)
あらすじ
事態収束から数日後。晴れて恋人になった夏生の家を訪れた。
依頼を受ける経緯を話していたら、夏生の口から気になる言葉が…