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官能小説【4話】秘密、蜂蜜、果実蜜
壊れた友情
作:三松真由美
女の友情なんてもろいものだ。
高校からずっと楽しいことも悩み事もシェアしてきた紅羽に恋を邪魔された。いや横取りだ。しかもSEXまでするなんて。許せない。
二週間以上紅羽への絶望心で食欲がなくなり、ひどい頭痛に悩まされていた。好きなフルーツも欲しくない。テーブルの上には乾ききったオレンジがひとつ、寂しそうに転がっている。
朝、目覚めると、紅羽と樫田が腕を組む姿が浮かび、耳の奥がキンキン痛くなる。
何週間経っただろう。
保健室にやって来ては幼稚なギャグを連発する生徒達の相手をしたり、看病したり、悩みを聞いたりしているうちに平常心を取り戻してきた。ペン立てにかわいらしいカエルのチャームを飾っている。カエルの頭を撫でた。
「もういいや、仕事だ……。仕事は私を裏切らない」
新しい出会い
午後遅めの時間帯、広夢がまた保健室にやって来た。
「まじ、寒気する。喉痛い。仮病じゃないから寝かせて」
額が熱い。目が潤んでいる。体温38度。ほんとうに身体が辛いらしい。そのまま放課後まで寝かせたが、ふらつくようなので家まで送ることにした。両親は仕事で留守だと言う。
大きな門構えの立派な家だ。二階を見上げると広いバルコニーもついている。玄関に続くアプローチにはパンジーの花が色とりどりに咲いている。
「素敵なおうちね。お母さまがお手入れされてるの?」
「おかあは、会社やってるから家にほとんどいない。近所に住んでるおばあが庭いじりやってる。メシもおばあが作るか、宅配ピザなんだ」
「そうなのね。じゃあここで。すぐにベッド行きなさいね」
と戻ろうとすると家の奥から声がした。
「広夢、サボったのか?」
白シャツ、腕まくりをした若い男。
「あれ、先生と一緒?先生にあがってもらえよ。お茶淹れるよ。僕が作ったケーキがあるんだ」
「兄貴、うちにいんのかよ。めずらしいな」
「お兄さん?」
「ああ、大学生。パティシエになりたくて大学休んで専門学校通ってる。先生、甘いもん好き?」
「…ええ…でも、東郷くん、風邪なんだから寝てないと」
「お茶してってよ。俺、ソファで寝るからさ」
落ち着きを取り戻して…
兄の甚がていねいに挨拶をしてくれた。背は広夢ほど高くない。だが横顔が似ていた。顎がくいっとあがり、きれいな顔立ちだ。よく見ると広夢とは目が違う。意志を持った強いまなざしをしている。白い肌、女の子のような細い指。ケーキ職人を目指す繊細な心の持ち主なのだろう。
「ムースアラピスタシュ、初めて作ったんですよ。味見してってください」
「ピスタチオのスイーツ?」
「そうです。なめらかさを出すのが難しかったなあ」
広夢は首にマフラーを巻き付けてソファで眠ってしまった。甚が毛布を持ってきて掛けてやる。唯香は広夢のサボりぐせの話をしたり、お菓子の話をしたりで時が経つのを忘れてしまった。甚は十歳近く年下なのにしっかりしている。気づくと、頭痛がすっかり消えていた。
「唯香先生、広夢のことよろしくお願いします。うち、オヤジがマレーシア行ったきりで。母親は服の輸入の会社が忙しいもんで広夢、寂しいんです。僕はやりたいこと見つけたからいいんだけど、まだ広夢は小学生のままで寂しがりやで」
唯香はククっと笑った。
「私もそう思います。身体は大人。中身は子どもって、まさに東郷くん」
広夢の寝息がやさしく響くリビングで、何かが芽生えた、そんな日になった。
広夢と甚のおかげで、冷静さを取り戻してきた。樫田大河とは付き合わなくて正解だったのだ。唯香を誘っておいて、親友の紅羽とヤってしまう男だ。外見や楽しい話題に惑わされて本気度ゼロの男を見抜けなかった自分が悔しい。あの海辺のドライブは、いい経験として取っておこう。海の景色の投稿を削除した。
⇒【NEXT】初めての相手は甚と決めた。だが、いくら唯香が自然と誘ってみても二人の関係は中々進展しなかった。そこで唯香は自分から行動に出ることに…!(秘密、蜂蜜、果実蜜 5話)
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あらすじ
紅羽に恋の邪魔をされ、絶望に陥っていた唯香だが、
保健室にやってくる生徒のおかげで徐々に平常心を取り戻していた。
ある日の午後、生徒の一人が熱を訴え、保健室へとやってきて…。