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官能小説【3話】秘密、蜂蜜、果実蜜
ドライブデート
作:三松真由美

樫田とのドライブは唯香の少ないデート経験の中で一番と言えるほど楽しく、満ち足りていた。自分のハートが桃色に染まる、ティーンズの頃の少女っぽい感覚が蘇る。
青い海、頬を撫でる潮風。唯香は初めてフルーツ以外の風景をSNSに上げた。紅羽が見るといけないので”職場の友人とお出かけ”と書いた。
流行りのポップスを流しながら助手席で微笑む唯香。樫田はネイティブな発音でサビの部分を口ずさむ。
「あるアーティストのライブ行ったことあるんだよ。花火や紙吹雪の演出が最高で日頃のストレスなんてちっせえーって思えるんだ。唯香さんのストレス解消法はなに?」
「えーと。そう言われると、これといってないなあ。趣味なし女子ってつまんないですか」
樫田がやわらかくブレーキを踏む。展望台の駐車場に車を停めた。
「いや、これから僕と楽しんでいけばいい。ライブもワインも英会話も唯香さんの趣味にしてあげるよ」
シートを倒し、樫田が助手席に座る唯香の唇に自分の唇を重ねる。唯香は目を閉じる。波の音がかすかに聴こえてくる。樫田の心臓の音が唯香の胸のふくらみに伝わってくる。胸の上の野いちごが、何かを期待した。
家に帰るとすぐに紅羽にLINEを送る。やはり秘密はよくない。
「内緒にしててごめん。樫田さんと付き合うことにしたよ!紅羽は山梨の地主とうまくいくこと応援するよ。うちらの初めてのSEXも、もうすぐだね」
犬がオヤスミと言っているスタンプしか返ってこない。すごいリアクションが来ると思ったのに。眠いのだろうと思って気にしなかった。
忙しい時期になった。学校行事が続いたり、教育実習生の面倒を見たりと騒がしい日が続く。樫田から誘いはあったが次のデートは先延ばしになっていた。LINE電話は毎晩した。電話だけでも相手の様子がよくわかる。少し会うのを我慢すれば次のデートは極上になるはず。唯香は前向きに考えていた。
波乱の幕開け
保健室で日誌を入力していると三年C組の東郷広夢がヌボーっと現れた。ズボンのポケットに両手をつっこみ悪ぶっている。
隣町の女子校生徒から「城ヶ崎高校の王子」と呼ばれ、モテっぷりは半端ない。パッチリした目元。細く流れる眉毛。形の整った小ぶりの唇。確かに恋愛漫画に登場する王子様系のルックス。
しかし、地理の授業になると退屈だと言って発熱を訴える。唯香には小学校低学年の男子にしか見えない。
「東郷くん、サボりだって丸わかりよ。教室に戻りなさい」
「唯香せんせえー、俺の気持ちわかってよ。好きだって何度も言わせないでよ」
「はいはいはい。そういうのは隣町の女子高生達に言ってちょうだい」
「本気にしてくんないよな。ほら、熱あるじゃん。37.8度。唯香ちゃんのことを考えると発熱するんだ」
のらくらする広夢を追い返すと、スマホが震える。久しぶりに紅羽からLINEだ。
『悪いねえ、唯香。大河さん、お先にいただきました?』
何これ?どういうこと?意味わかんない。唯香は廊下に立ちすくむ。目の前が暗くなる。窓の外を見るとパラパラと急な雨が降り始めている。
突然の裏切り
勤務時間が終わり、渡り廊下の隅っこで紅羽に電話をする。
「どういう意味?よくわかんないんだけど」
してやったという口調で紅羽が答える。
「大河さんにたまに連絡してたのよ。そしたら唯香の学校が忙しいらしく会ってくれないって寂しそうだったから、私が変わりにデートしたいって言ったの。それで飲みに言って。山梨の見合いは乗り気じゃないことも話したら打ち解けちゃって。大河さん、お酒好きなのよね。私も飲みすぎて、つい」
「ついって、何?」
数秒空く。
「初めてのSEXよ」
言葉が出なかった。怒るところだ。なじるところだ。怒鳴るところだ。友情が終わるんだ。腹の底は煮えくり返っているが、怒りの言葉が出てこない。ひとって怒りを乗り越えると、こんなふうに頭の芯が冷たく凍るんだと感じた。
「……そう。紅羽、バージンじゃなくなってよかったね。じゃ、さよなら」
無意識にスマホから紅羽のアドレスとIDを削除する。大河のIDも。小一時間立ちすくむ。金縛りにあったように身体が動かない。
「唯香せんせえ、帰るの?俺の気持ち受け取ってー」
振り向くと広夢が笑っていた。広夢がカエルのバッグチャームを差し出す。
「雨が降ってもブルーにならないお守りだよ。プレゼント!」
かわいらしい生徒だ。唯香は少しだけ怒りを忘れた。
あらすじ
樫田とドライブデートをした唯香。
海沿いをドライブしながら、流行りのポップスを口ずさみ、会話を楽しんだ。
デートはうまくいったかのように思えたが…。