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官能小説 あなたをいっぱい愛したい(インサート・コンプレックス 6話)
いっぱい愛したい
マリカは喜びを隠しきれない様子で、電話に出ていた。
「はい、ありがとうございます。本当ですね、はい!」
今は自身の勤務する喫茶店の系列店で、彼女は耕史とコーヒータイム中だ。電話を切ると、満面の笑みを浮かべ、マリカは大きなピースサインを作る。
「聞いて、耕史! 私の仮歌、本番に採用されるって!」
「へえ、それはすごいね」
仮歌というのは、本番を歌手が歌う前のデモのことを指す。だが稀に、仮歌の方が出来がいいときなどには、仮歌がそのまま本番用音源として使われることもあった。
「どんな歌なの?」
マリカだけでなく、耕史の目も輝く。歌手として日の目を見ることは、マリカにとって悲願だった。
「あのね、フライドチキンのCMソング。期間限定だけど、私の歌声がいいって! 来年以降も同じイメージで行きたいから、同じ作曲家さんと作詞家さんと、私とで組んでシリーズにしていきたいんだって!」
マリカは興奮していた。こんなに嬉しいことはそうそうない。興奮冷めやらぬマリカを抑えるように、耕史が彼女の手を握った。
「よかったね、マリカ。これから歌手としてどんどん成功していけるといいね」
「うん。いつか私の歌で、日本を震わせてみせるんだから」
そのセリフは、耕史が勧めてくれたアニメの言葉をもじったものだ。銀河を震わせる歌姫になることを誓う少女が、憧れの男の子に向かって言うシーンだ。
「そうだね、マリカの歌がチャートを賑わせて、普通にデートもできないぐらい人気になったらいいね」
「えー、普通にデートできないのは嫌。私、もっと耕史とイチャイチャしたい!」
「そう? じゃあ今からいちゃいちゃする?」
耕史は彼女のへのご褒美のように、そう提案した。見た目とは裏腹にうぶなマリカは、こう言われると照れてしまうものだが、今日の彼女は違う。
「する! 耕史のこと、いっぱいいっぱい愛したい」
マリカの上に重なっていた彼の手を反対の手で取って、彼女は思わず立ち上がった。そして2人は、喫茶店を出た。
噂のホテルで
繁華街を少し外れの方へ歩くと、ラブホテル街がある。以前は暗がりの中でキスをするだけだったが、今日は違う。耕史を「いっぱい愛する」と宣言したマリカが彼に腕を組み、立ちならぶホテルの間を歩いて行った。
「ここにする? 友達から聞いた噂によるとね、このホテルのある部屋だけ、グランドピアノがインテリアとして置いてあるんだって」
「何それ、面白いね。じゃあ、ここにしようか」
フロントで愛想のない婦人から鍵を預かり、エレベーターに乗って5階の部屋を目指す。鍵を回し入れドアを開けると、2人の目に飛び込んできたのは、真っ黒いグランドピアノだった。
「……噂、本当だったんだ」
「こんなところにピアノ置いて、どうするの?」
マリカと耕史は顔を見合わせてから笑った。
「ははは、せっかくピアノがあるなら、ちょっと歌ってよ」
耕史がそう言うと、マリカは鍵盤の蓋を開けて1つ音を鳴らしてみる。
「……うーん、だめ。調律がものすごく狂ってるから、とてもじゃないけど歌えない」
「そっか。じゃあ、その代わりにお風呂入る?」
彼の言う『その代わり』というのがなんなのかマリカにはよく分からなかったが、彼女は広いお風呂場に向かいお湯を張り始めた。ほどなくしてお風呂がわくと、2人は生まれたままの姿になって一緒に浴室へ向かう。
「なんか、恥ずかしい〜」
「今更恥ずかしがること? お風呂ならよく一緒に入ってるじゃん」
挿入にはいたらなくとも、2人は裸で一緒に眠ることがあった。マリカがそれに不満そうな顔をすると、耕史は決まって『ポリネシアンセックスの練習だと思って』と意味不明な言い訳をする。意味不明だけど、それでもマリカは一緒にいられるだけで嬉しかった。
それが今日は、どこか緊張してしまう。マリカは目のやりどころに困って、耕史の足元ばかり凝視しながらお風呂を上がった。上がってしまうと素早くバスタオルを体に巻きつけ、ベッドに腰掛けて耕史を待つ。
「どうしたの、マリカ」
視界を隠されて
「いやー……なんていうか、ちょっと緊張しちゃって」
「緊張?」
耕史は全くわからないといった風に、彼女に言葉を返した。
「私から『いっぱい愛したい』なんて言ったけど、どうしたらいいのか分からなくて……だって、いつも耕史が私のこと触ってくれるでしょ? 私からリードするなんて、できなくてさ……」
それに続いて、マリカは『私、なんて男慣れしてないんだろうね!』と言い放った。耕史はそんなマリカが愛おしくなって、彼女に自分を愛してもらいたいと心から思う。
「じゃあ……」
優しい目をした耕史が、ソファの上に脱ぎ捨てた服の中からネクタイを取り出し、マリカに近づいた。両手でネクタイを広げると、ゆっくりマリカの目の上に巻いていく。
「な、何するの?」
「恥ずかしいなら、目を閉じちゃえばいいんじゃないかなって思って」
顔に添わせたネクタイを後頭部で結ぶと、マリカの視界は真っ黒になった。
「ん、耕史がどこにいるのかも分かんない。これじゃ、いっぱい愛するどころじゃないよー」
困ったような声を上げたマリカの手を、耕史がそっと握った。
「大丈夫、俺が誘導してあげるから。まずはここに触って」
耕史に導かれたマリカの手が触れたのは、熱くて硬いものだった。彼女は、すぐにそれが耕史の茎だということに気づく。
「舐めてもいいよ。っていうか舐めてほしいな」

手で耕史に触れたまま、マリカは口を耕史の硬い部分に近づけた。唇を近づけるだけで、なんとなく周囲の空気までもが熱くなっているように感じられる。少しドキドキしながら、マリカは耕史のそこにキスをした。
ちゅ、ちゅ……という音を立てながら、彼女は愛しい人の熱い部分に口で愛を伝える。十分にキスで愛情を伝えたら、マリカは次に舌を出した。先端をちろちろと舐めると、少ししょっぱい味がする。
「耕史のここ、もう泣いてる」
舐めたままそう喋ると、耕史の口から切ない声が漏れた。
「ん……っ……だって、マリカに触ってほしくて……」
こうして触って欲しかったと言うのは、きっと本音だろうと彼女は思った。いつも挿入までたどり着けないけれど、そうしたくない男性がいるはずないとマリカは思っていた。耕史が時折静かな喘ぎ声を漏らしながら、マリカの頭をそっと手で包んだ。
「呑み込んでもらってもいい?」
「ん……わかった」
マリカは耕史が痛くないように口の中に唾液をいっぱい溜め、口の中に彼を呑み込んでいく。何度かこうして口でさせてもらうことはあったが、視界を奪われたままするのは初めてで、マリカは耕史のそれがいつもより大きいように感じていた。
「耕史のって……大きいよね」
その言葉に、耕史が少し体を震わせ、マリカの頭を包む手に力を入れる。彼がマリカの言葉をどう感じたのかは分からないが、口の中の彼はマリカの言葉で硬さを増したようだった。
「ふ……う、耕史のこれ、ほんとは私、欲しくてたまらないんだよ」
口いっぱいに耕史を頬張り、口を上下させる。舌を動かし、彼のもの全体を舐め回すようにすると、耕史は切なげな声を強くした。
「ん、マリカっ……だめ、イっちゃう……あ……あっ……」
「今日はこのままイってもらおうかな。なんか、耕史の声かわいい」
声に魅力があると社会的に評価されたのはマリカなのに、今彼女には耕史の声が世界で一番素敵に思えていた。耕史を咥えて上下するスピードを上げると、彼は泣きそうな声になる。
「ダメだ、イっちゃう……もう、……あっ……!」
耕史はマリカの口の中で果てた。口の中にどろりとした感触のものが放たれて、マリカは一瞬えづきそうになる。
それをこらえて口を離すと、マリカは耕史を最後まで愛せたことに満足感を覚えて微笑んだ。
第6話 終わり
⇒【NEXT】あなたが欲しいのに、どうして?(インサート・コンプレックス 7話)
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あらすじ
耕史といつも行く喫茶店でデート中に、マリカは自分の歌がCMに採用されたことが分かって大喜び。
耕史はご褒美と「イチャイチャしよう」と提案し、マリカも「いっぱい愛したい!」と宣言する。
二人はラブホテルへいくが、マリカはイチャイチャといってもどうしたらいいか変わらないでいると、耕史がネクタイで目隠しをし、フェラをお願いして…