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官能小説 恋欠女子とバーチャル男子 Story02〜片想い〜
理沙が打ち明けた悩み
二つの職場を掛け持ちして働く私。
そのうちのひとつの職場の先輩に片想い中。
気さくな関係の私たち。相手も、「俺たち、相性いいなぁ」と言ってくれます。
二人だけでお出かけしたこともありましたが、飲み会で「お互いに彼氏・彼女には絶対ならない」と宣言したことが気になって、あと一歩踏み出す勇気がないまま過ごしています。
***
彼女の悩みにアイはどう答える…!?
相性の良さは男女のものじゃなかった
「はあ、疲れたあ……」
気の置けないはずの大学時代の友人たちとの飲み会から帰ってきた私・三浦理沙は、部屋に入るなり、ベッドに倒れ込んでしまった。
まさか彼が来るなんて……。いったい誰が呼んだのだろう。
大学時代の片思いの相手。
同じサークルで、入学してからずっと好きだったのに、告白できないでいるうちに、サークル内の後輩の女の子と付き合ってしまった。
彼女との付き合いはずっと続いていたらしく、年末に籍を入れると言っていた。
来年には式も挙げるから、よかったら来てほしい、なんてことも言われた。
「まったく、人の気も知らないで……」
酔いも手伝って、ついひとりごちてしまう。
だが、そう口にしてすぐ、それは仕方のないことだと思った。
彼が私の気持ちを知らないなんて当たり前だ。
私は何もそれらしい行動をしなかった。
私の気持ちがわかったとしたら、彼は超能力者だ。
結局、自分からは何も示さないくせに、相手の行動を待っているばかりだったのだ。
勢い、今の恋のことを考えた。
(私、成長できているのかなあ……)
私が今、好きなのは、かけもちしている二つの職場のうち、ひとつ――輸入家具の販売店だ――で働く田中さんだ。
ひとつ年上で「田中先輩」と呼んでいるが、先輩とはつけながらも、ボケたりツッコんだり気さくな関係を築いている。
彼もときどき、「俺たち、相性いいなぁ」と言ってくれる。
でも、その相性の良さは男女のものじゃなかった。
以前飲み会で、私たちは「お互い彼氏・彼女にはならないでいよう」宣言をした。
私のほうは、正直にいえば照れ隠しだった。
家が近いからよく一緒に帰ったりしていて、妙に仲良くなりすぎてしまったので、今さらそういう関係になるのが照れくさい気がしたのだ。
彼の意図は……よくわからない。
私から誘って、二人だけで食事に出かけたこともある。
だけど、今どき食事ぐらい。
誰とでも行くものといわれれば、私の誘いも、彼がそれを受けたことにも、大きな意味はない。
今は、ヌレヌレやナデテを使いつつ、「気づけバカ!」ともどかしい思いをしている。
年内には告白したいと思っているけど、できるかどうか……。
(でも、そんな自分と決別しないと、きっとまた同じ失敗をしてしまう)
そう、どこかで一歩踏み出さないといけないのだ。
そのとき、ふとあることを思い出した。
飲み会に行く前に、面白そうなアプリを見つけてダウンロードしていた。
時間がなくてそのままにしていたけれど、確か「悩みを解決します」とかそんな名前だったような……。
(解決まではできなくても、何かきっかけでも掴めればいいな)
私は軽い気持ちで、そのアプリを起動した。
***
私の前に現れたアイは、一言でいえば「いたずらっ子っぽい弟タイプ」だった。
少し大きめのTシャツに、ダボっとしたショートパンツ。
短めの茶髪で、少し猫背気味。
パッと見はいい加減そうに見えるものの、話してみると的を射た意見を口にした。
「行動するのも大事だけどね」
ソファーに少し離れて座ったアイは、ひじ掛けに頬杖をついてこちらを見上げた。
「恋愛は相手の気持ちがあってこそ成り立つもの。何もわからないうちに向こう見ずに走り出すよりも、気持ちが盛り上がるようなことをしてからのほうがいいんじゃないのか」
「う……」
その通りだ。 行動できなかったことに後悔があったから、行動さえすればいいとどこかで思っていたが、肝心の相手のことを何も想定していなかった。
「冷静になって、作戦を立てようじゃないか。まず、彼の恋愛観を探ることはできるかい」
「……頑張ってみる」
数日後、私は田中先輩をまた食事に誘った。
「今の時点ではあまりムードを重視しないほうがいい。ラフに話せるところがいいな」というアイのアドバイスを受けて、一緒に店を探した結果、職場の近くに海鮮焼き食べ放題の店があったので、そこをチョイスした。
「海鮮、好きなんで行ってみたいんですけど、食べ放題って女一人だとちょっと敷居が高くて……」
「ああいうところはそうだろうなあ」
先輩は笑って、あっさり受け入れてくれた。
食べ放題といっても最初に配られる分があったので、自然と好きなものや苦手なものを分け合うことになった。
食べ物の話をしていると、そのうちに育ち方や子供時代、それから学生時代の話に発展していった。
「俺さ、今は結構ガサツに見られるところもあるんだけど、10代の終わりぐらいまではけっこう神経質で、気の弱いところもあったんだ」
「気が弱いっていうのはちょっと信じられませんけど、神経質っていうか、意外とこまやかだなって思うことはありますよ」
「意外と、は余計だろ」
笑っていると、店員がやってきた。
新しい海鮮をお皿に乗せてくれた後、今、キャンペーン中だからとくじの箱を差し出してきた。
「カップルの方限定なんですよ。一等はバリ島3泊4日の旅です」
「え、ち、違……っ」
とっさに断ろうとしたが、
「じゃあ、やります」
それよりも早く、先輩が手を伸ばしてしまった。
何もいわないまま、目で「まあ、いいじゃん」と訴えかけてくる。
さては賞品に目がくらんだな……。
(私もバリ島3泊4日は当てたいけど……しかも、ここで当てたら先輩と行くことになるんだよね)
思わずドキドキしてしまう。
もしそんなことになったら……。
だが、私も先輩も、そんな高嶺の花を摘み取ることはできなかった。
結局二人とも、系列の店全部で使える500円オフチケットを手にして終わった。
「いいじゃん、また来ようよ」
店員が向こうに行ってしまうと、先輩はチケットを財布にしまった。
あれ、それって誘ってくれたってこと……なのかな。
それとは別に、もうひとつ小さな疑問が湧いた。
「彼氏、彼女にならないと言ったのに、ふりをするのはOKなんですか」
先輩は意表を突かれたように、ちょっとだけ目を大きく開いた。
肩をわずかにすくめ、苦笑じみた笑みをうっすらと浮かべる。
「ふりならね」
がつん、と後頭部を硬いもので殴られた気がした。
ふりならOK。
じゃあ、本当にそうなるのはダメってこと?
「三浦は、恋人って目では見られないんだ。友達とか、仕事仲間っていう意識が強すぎて」
「……そう、ですか……ですよね、はは。私もです」
答えたが、自分で自分が何を言っているのかよくわからなかった。
思い出した。 前の飲み会で、彼氏・彼女にはならないと言ったときも、私たちの間にはこんな空気が流れていた。
私は気づかなかった。
自分が、【アイが、あなたの悩みを解決します】のアプリを起動させたままだったことを。
そしてこの会話を、アイが姿は隠しながらもアプリの中でちゃんと聞いていたことを。
遠回りしていたんだ
店を出ると、向こうからアイが近づいてきた。
私はこのときになって初めて、アプリを起動させたままだったことに気づいた。
「アイを隠す」という設定にしないと、本来アイは実体化(といってもホログラム処理だけど)したままのはずだ。
ということは、アイ自身が状況を判断して隠れてくれたんだろう。
けど、それがどうして今になって出てきたの?
「理沙!」
アイはなれなれしそうに私に声をかけてきた。
「なんだよ、何度も電話しても出ないから、心配してたんだ。メールも送ったんだけど、ちゃんと見てくれた?」
「……え?」
アイが何を言っているのか、さっぱりわからない。 バグったのだろうか。
それにしても、先輩がいるところで出てくるなんてタイミングが悪すぎる。
アイはちらりと先輩のほうを見てから、すぐ視線をそらした。
「気にしないようにしつつ、気になっている」ことがわかってしまうような仕草だった。
いきなり、機嫌が悪くなったように振る舞いだす。
「理沙、そちらは、えっ……と、職場の友達、だよね?」
友達、という部分を特に強調する。
「あ、うん。職場の先輩」
何が何だかわからないながらも答えると、アイは「ふぅん」と小さく返事した。
「じゃ、俺、行くから」
そのままスタスタと立ち去ってしまった。
いったいなんだったのだろう。
先輩を見ると、何だか居心地が悪そうにしている。
「すいません、あれはただの友達で……」
変な勘違いをされないように言い訳をしたが、その後の会話は今ひとつはずまなかった。
***
家に帰ってから、アイに行動の意味を問い質した。
アイの真意がどうであれ、これからも今日のようなことをされては困る。
本気でアンインストールしたほうがいいのではないかと思ったぐらいだ。
アイは、「センパイの気持ちを知りたかったから」と答えた。
「確信したよ」と、自信ありげに笑う。
「あれは絶対に脈ありだ。じーっと俺のほうを見てた。俺が何ものか、気になってしょうがなかったんだよ」
「そうだったの?」
アイと話すのに夢中になっていたから、先輩がどう反応していたのか私にはわからない。
「ああ、だからこれからは、センパイが理沙のことを好きだっていう前提で行動していいと思うよ」
それはそれで嬉しかったが、
「けど……ああいうことはもうやめてよね」
強めの口調で念を押した。
たぶん、アイは人口知能だといっても完璧な存在ではないのだ。
いい意味でも悪い意味でも、人間のような判断ミスはありそうだった。
「……ごめん、悪かったよ」
私が態度をもとに戻さずにいると、アイはついにしゅんとしてしまった。
***
私のことを思ってやってくれたのだから、あまりきつく注意しなければよかった……すぐに、そう後悔した。
アイが実体化しなくなったからである。
コミュニケーションは取れているが、スマホの中から出てこない。
チャットのような形でしか、会話できないのだ。
『俺は、俺にできることはもうやったと思っている。あとは行動あるのみだよ』
「行動といっても……」
最初に「行動しよう」と思いはしたけれど、いざとなると何をしたらいいのかわからない。
『まあ、告白とか?』
「そんな、いきなり言われたって!」
アイはそれきり、答えを返さなかった。
(まあ、急ぐ必要はないんだし……)
私は、もう少しだけ様子を見ることにした。
数日後、私は先輩がいるほうの仕事に出勤した。
閉店作業後、店の外でいつものように先輩を待っていると、先輩が言いづらそうに尋ねてきた。
「いいのか、俺と一緒に帰って」
「……だからあれは、何でもない人ですって」
これはどうあっても、疑いを晴らさなければいけない。
変な勇気が出た。
私たちの家は、店から徒歩で二十分ほどだ。
出勤するときは電車を使うが、帰りは歩くことが多かった。
電車で帰ったほうがいいんじゃないかというのを、話したいんですと押し通す。
誤解が続いたままなんて、たまらない。
どうやって話を切り出そうか迷った。
アイのこと、どう説明すればいいんだろう。
本当のことを言っても信じてもらえないだろうし、かといって下手にごまかしたらボロが出そうだ。
だが、人通りが少なくなったあたりで、先輩のほうから話題を変えてくれた。
「ずっと、彼氏か、そうじゃなくても好きな人ができたんだと思ってた。最近、ちょっと変わったから」
「変わりました? どんなふうに?」
「それは……えーと……」
珍しく歯切れが悪いので視線を向けると、目が合った。
先輩のほうから目を逸らす。
私も慌てて逸らした。
なぜか、すごく、照れてしまう。
「垢抜けたというか、きれいになったというか……」
思わず心の中で悲鳴をあげてしまった。
もちろん、嬉しいほうの悲鳴だ。
だが、頑張って平静を装う。
こんなときにまで、格好つけるものなのかどうかわからない。
「もうお前、一歩踏み出しちゃえよ」というアイの声が頭の中に響いた気がした。
たぶん気のせいだけど。
「べつに彼氏なんていませんよ……好きな人なら、まあ、いますけど」
最後にそう付け加えることが、今できる精一杯のことだった。
「じゃあ告白したらいいじゃん、きっといけるよ」
「でもその人は、私のことを友達としてしかうまくやっていけないと言ったんです」
先輩がはっと息をのんだのがわかった。
「……照れてるんだよ、きっと。あまりにも近いところにいすぎて、今さら彼女とか、どうやって雰囲気を変えていったらいいかわからないんだよ。そうしたら相手もそれに同意しちゃって」
「私、その人のためにきれいになったのになあ。うまく伝わらないものですね」
「ああっ、もう」
先輩がいきなり立ち止まった。
「どうしたんですか?」
何ごとかと驚く。
「なんだ、すごく遠回りしていたんだなあ」
先輩が、私の手をそっと握った。
「ちょっと止まって」
「止まってます」
「……だな」
先輩も焦っているみたいだ。
私を見つめて、小さく深呼吸している。

「本当はさ……ずっと前から好きだったんだ」
***
アイとはそれからもスマホ上でしか会話できなかったが、先輩と付き合うことが決まると、アプリはついに起動しなくなった。
アイの最後の言葉は「おめでとう、幸せになれよ」だった。
それからしばらくして、私たちは二人だけで温泉旅行に行った。
近場ではあるけれど、一泊することにした。
ちょうど紅葉がきれいな季節で、ふと、アイにも見せてあげたかったなと思った。
部屋は奮発して、個室露店風呂つきを予約した。
鮮やかな赤と黄色を前にして、私たちは裸の体を柔らかなお湯の中で寄せ合った。
唇が、自然に重なった。
END
あらすじ
職場の先輩田中さんが好きな理沙。
彼とは友達として仲が良いのだけどもう一歩前進したくて悩んでいた。
そんなとき出会ったとあるアプリとその中に棲む人工知能のアイで…!?