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官能小説 恋欠女子とバーチャル男子 Story07〜遠距離恋愛〜
夢が打ち明けた悩み
遠距離恋愛で、会いに行くのはいつも私。
私の方が収入が多いので仕方ないのだろうけど、私だって仕事で疲れているのに……
生活リズムもずれてきてるし、このまま将来を考えるのは無理なのかな。
***
彼女の悩みにアイはどう答える…!?
もう、頷くしかなかった
「そんな奴とは別れてしまえー!」
「ま、まあまあ、落ち着いて」
いきなり出てきていきなり怒り出したアイを、私はたしなめた。
私、伊佐木 夢の前に出てきたのは、いかにも負けん気の強そうな熱血漢タイプのアイだった。
短髪にほどよく鍛えた筋肉。
スポーツでもやっていそうな雰囲気だ。
「けど、夢ばかり合わせていたら肉体的にも精神的にも疲れるだろ。いつまでもこんなことが続くとは思えないよ」
「でも、いきなり別れろというのは、結論を出すのが早すぎるのでは……もう少し冷静に考えて」
話しているうちに、私のほうが自分の思考が整理されていくのを感じた。
アイがこんなキャラクターで出てきたことは、アイ側からしてみれば計算ずくだったのかもしれない。
最近の私は、仕事の疲れもあって気持ちが不安定になっていた。
気分がいきなり沈んだり、イライラしたり。
そんな状態で正しい答えはきっと出せなかっただろう。
「ともあれ……」
アイはゆっくりと息を吐いた。
「そいつとは一度ちゃんと話し合ったほうがいい」。
私たちはさらに、では、何を話し合うべきかを詰めた。
「いくら夢のほうが収入が多いといっても、毎回会いにいくのはちょっと違うだろ。あいつは夢が来てくれるのを当たり前だと思っているんじゃないか。それこそ都合のいい女になってしまう」
「それは……私もうすうすそう思ってた」
私はうなだれた。
遠回しに言われるならこちらも言葉を濁せる。
でも、はっきり指摘されると認めざるを得ない。
「だからさ、お互いの負担を何とかして半々にできないかを話し合うんだ。どんなに譲っても、2回会いに行ったら1回は来てもらうようにする」
アイが人差し指を立てる。
「う、うん……」
「ずるずると計画性なく付き合いを続けているのも問題だな。遠距離恋愛でゴールインしたカップルの多くは、いつまでに同棲、いつまでに結婚というような具体的な目標を立てているもんだ。将来のこともちゃんと話し合ったほうがいい」
「う……」
何も言えなくなってしまう。
将来のことは、いつか決めないといけないと思いつつもずっと話題に出せずにいた。
「重い」と思われたくなかったからだ。
実際、将来のことに触れようとしたとき、はっきり言われないまでも乗り気ではなさそうな態度をとられたこともある。
「でもさ、考えてもみろよ。別に将来のことじゃなくても、『私が気になって仕方のないことを、もっと真面目に考えてほしい』と頼んで、それを適当に流すような男が、本当に夢のことを好きだと思う?」
「そう……だよね」
アイと確認したことを、私は本当は全部わかっていた。
わかってはいたけれど、一歩前に進むのが怖かった。
もしかしたら、全部失ってしまうのでないかと思って。
でもいつかは確かめないといけないことなんだ。
この形での関係をずるずる引きずっているだけでは、何も解決しない。
「わかった、聞いてみるよ」
もう、頷くしかなかった。
***
数週間後、彼に会いに行った。
彼は新幹線で2時間ほどの地方都市に住んでいる。
家でごはんを食べながら、「大変だけど、あなたに会えてうれしい」とはきちんと伝えながらも、せめて3回に一度は彼のほうから会いに来てほしいと訴えた。
彼の答えは、これまでと同じだった。
「行きたいと思うけど、金銭的に苦しいんだ。夢のほうが収入が多いんだから、そこは折れてくれよ」
将来のことについても同じだった。
「まだ考えられないよ、そんなこと」と、少し不機嫌そうになった。
食卓から会話が消えた。
不自然な沈黙が私たちの間に横たわる。
やっぱり聞かなければよかったと後悔した。
聞かなければ、悩みはしても楽しい時間を過ごすことができたのに。
せっかく会えたのに、喧嘩して過ごすなんて寂しい。
そのとき、彼が新しい腕時計をしているのに気づいた。
沈黙が苦しくて、何か話題を探したくて、縋るようにそのことに触れる。
「新しい時計?」
「あ、うん」
彼は気まずそうにした。
文字盤が私から見えないように、さりげなく手の角度を変える。
気になって、それとなく観察した。
文字盤の真ん中には、彼が好きなプロサッカーチームのロゴが描かれている。
「その時計って、ひょっとして……」
この間会ったときの会話を思い出した。
今年でチームが設立二十周年を迎えたので、有名時計メーカーとのコラボで記念腕時計が販売されるのだけれど、とても高価なんだ。
彼はそう言っていた。
値段もはっきり教えてくれた。
本当に安いものではなかった。
買うつもりではなく、単なる憧れを口にしているだけだと思っていた。
「買ったの?」
自分の声が震えていることに気づく。
「……うん」
少し間を置いて、彼はうなずいた。
貰ったなどと答えたかったのかもしれないが、そのほうが話が面倒になると踏んだのだろうか。
「ふぅん」
とたんに目頭が熱くなった。
涙が溜まっていたのだとわかったのは、その涙がぽろりと頬にこぼれてからだった。
この人は、収入が少ないから会いにいけないと言いながら、節約する気がないのだ。
「……ふざけないでよ!」
自分でも信じられないことに、怒鳴ってしまった。
彼に、いや、誰に対しても怒鳴るなんて、初めての経験だった。
それだけ、胸のうちに溜まっていたものがあったのだろう。
アイに触発されたところもあると思う。
「そんなに怒らないでよ。長年ファンやってるの、知ってるだろ? どうしても欲しかったから……」
私は食卓をドンと叩いて彼を黙らせた。
自分が、自分とは違う何か、誰かのコントロールで動いているような気分だった。
それでも不思議に、「私はどうなってしまったのだろう」と不安にはならなかった。
むしろその衝動に身をゆだねてしまいたい気がした。
荷物をまとめて、彼の家を飛び出した。
「何やってるんだよ、待てよ!」という声は無視し、腕を掴まれたのも振り払った。
冷静な自分がもう一人いて、まだ新幹線の終電には間に合うと確認していた。
……もう、離したくない
2時間はたっぷりかかったはずなのに、電車を乗り継いで家に帰るまでのことをよく覚えていない。
帰宅してスマホを見てみると、彼からのメールが10件以上届いていた。
突然飛び出した私を責める内容に違いないと覚悟しておそるおそる開いたが、どれも謝罪だった。
アイは、今度は逆に私をたしなめた。
「話してる途中で飛び出してくるなんて早まったことをしたな。謝って、もう一度ちゃんと話したほうがいい」
「でも……」
まわりにはおっとりしているとか優しいとか言われる私には珍しいぐらい、怒りがまだ収まっていない。
あの時計が目の前をちらつく。
「彼が会いに来ない限り、もうこっちからは行かない」
断言した。
してしまった。
趣味にお金をかけたいのはわかる。
趣味と恋愛を同じように考えてはいけないのもわかる。
でも、あの時計を買うぐらいのお金があるのなら、何度私に会いに来られただろう。
お金の問題にするつもりはないけれど、私はあの時計の2倍以上の額を彼に会うための交通費に費やした。
趣味も大事にしてほしい。
でも、だからといって私のことをないがしろにはしないでほしい。
私とアイは睨み合ったが、
「決意が固いのなら仕方がないな」
最終的にはアイが折れた。
***
彼に「こちらからは行かない。話したいのなら来てほしい」とメールで伝えると、「近々、会いにいく予定を立てるからちょっと待ってほしい」と返事が来た。
が、それ以降、音沙汰がなくなった。
その間、私はアイとひたすら話した。
アイとのその時間がなかったら、きっと寂しさと悲しさでおかしくなっていただろう。
話して、自分が本当に大切にしたいのは何なのかを考えた。
彼との時間、仕事、未来――。
ひたすら考えるうちに、ある程度答えが出せた。
ほしいのはお互いへの思いやりと、それがある程度形としてわかること。
必要なのは、自分の仕事のリズムや精神状態を乱さない生活。
そうなると、こちらから会いに行くのはやはり3回に2回程度が限度だ。
会ったときに話すこと、話さないといけないことがはっきり決まったことで、だいぶ心がすっきりした。
***
その数日後の、休日のことだった。
アプリを起動させても、アイが出てこない。
何か不具合でもあったのだろうか。
一度スマホ自体を再起動しようとすると、家のチャイムが鳴った。
いったんスマホを置いて、ドアスコープを覗きにいった。
彼だった。
部屋に上がってくるなり、封筒を手渡してきた。
中には現金が入っていた。
「時計を売ったんだ。ほとんど使っていなかったから、結構高く買い取ってもらえたよ」
行動の意味がわからず首をかしげていた私に、彼は言った。
「このお金を、これから僕たちが会うときの交通費の足しにしよう」
彼は、普段は優しい私を怒らせてしまって、自分のしたことやこれまでの姿勢を反省したという。
反省しても収入が少ないことは変えられない。
けれどこれからは無駄遣いを徹底的に控え、私の希望する通り3回に1回は会いに来る努力をすると言ってくれた。
「どうしても無理そうなときは……このアプリを使おう」
彼はスマホを取り出し、ビデオ通話のできるアプリを開いてみせた。
無料なわけではないが、交通費に比べたら通話料は微々たる額だ。
「そのお金は夢に預かっていてほしい。そのほうが夢も安心できるだろ」
全部聞き終わらないうちに、私は嗚咽とともに彼に抱きついていた。
「ありがとう……」
やっぱりこの人のことが好きだという思いが溢れ出してくる。
別れずに済んで、よかった。
彼は私を強く抱きしめ返して、髪に鼻先を近づけた。

「この香りだ……」と呟く。
「ずっとこの香りを嗅ぎたかったんだ。……もう、離したくない」
彼が嗅いでいるのは、ヘアパフューム「ナデテ」のベリーロゼだった。
毎日つけていた香りも、知らないうちに味方になってくれていた。
***
その日、彼は家に泊まっていった。
エッチがいつも以上に濃厚だったことはいうまでもない。
「好きだ……夢を失ったらと思うと、どうにかなりそうだった」
一度達しただけでは終わらず、二度目も激しく私を貫いた。
壁に立たせて後ろから腰を掴み、お尻を突き出した私を激しく突く。
まるで獲物を追いつめたようなポーズだった。
「あ……んっ、そんなに激しくしたら……っ、イっちゃう……」
「いいよ……夢と一緒にイキたい……これからも、ずっと」
バックは苦手だと思っていたのに、そんなポーズでイクのは初めてだった。
頭が真っ白になるぐらい気持ちよかった。
翌日、彼を駅まで送っていった後にもう一度アプリを立ち上げようとした。
が、スマホの画面からアイコンが消えている。
(あれ、バグかな)
そう思ったのとほとんど同時にメールが届いた。
発信者名は「AI」。
慌てて開くと、件名はなく、本文はたった一行だった。
『よかったな。いつまでもお幸せに』
(そうか、アイとはもう会えないんだ……)
すぐに、そう直感した。
それから一年……私と彼は今も遠距離恋愛が続いている。
彼は約束通り3回に1回は会いに来てくれるが、ビデオ通話もしている。
会いに来てもらうほうは、感謝の気持ちを忘れないように必ず「ありがとう」と声をかける。
外食はやめて、少しでも節約できるように家で料理をつくることが増えた。
将来のことについては――まだわからない。
あれから彼ともう一度話したが、結論は大きくは変わらなかった。
ただ彼は、あと1年経てばどこかしらに異動する予定だという。
そのときまで待ってほしいと言われた。
具体的な数字を出してもらえると安心感が出てきて、素直にうなずくことができた。
これからも遠距離恋愛を続けるとしたら、またハードルは現れると思う。
でも、今回みたいに乗り越えていきたい。もう、アイはいないけれど。
END
あらすじ
遠距離恋愛をしている愛。
遠方に住む彼に会いに行くのはいつも自分。
だんだんとモヤモヤがたまってきて…