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官能小説 私の知らない私 6話


窓が鏡に…

夜景と満月とを窓の外に見て、ベッドに膝立ちになって…。
手首を後ろに縛られて、亮にお尻をサワサワと撫でられて…。
揺らめいているのが、外の光なのか自分なのか、それとも両方なのか…、分からなくなっていた。

「え?」

音もなく、揺らめく外の光が消える。代わりに、窓には亮と私の姿が映し出された。
すぐに亮を振り返る。右手をベッドサイドに伸ばして、ライトを消したようだ。

「ごめん、おいで」

改めて私を後ろから支えると「見てよ、綾乃さん」と、クイッと私の顔を窓に向ける。
縛られて、左のお尻を撫でられ、右の胸の先端を突かれながら、耳を舐められる…。
そんな私の全身と亮のいたずらっぽいカラダが、鏡となった窓に浮かんでいる。
窓の中で目が合うと、「可愛い」と言って、亮はまた枕元の何かに手を伸ばした。

「何?」
「こうやって…」

彼は、私の質問には答えずに、手にしたボトルの中身を私の肩から垂らした。
トロリとした冷感に鎖骨が緊張する。しかし、そのとろみは、すぐに私の熱せられた肌に馴染んで、ゆっくりと胸に向かう。

「ローション、キモチいい?」

両手で胸を撫でる彼の声が、耳元から胸元へと走りぬける。私の視線は亮の指に釘づけになった。

「ちゃんと、見て」と、彼はまた私の顔を窓に向ける。

亮と私と、ふたりが映っている窓。

「見て、綾乃さんのカラダ、こんなに光ってる、キレイ…」

そう言いながら愛撫する亮。鏡になった窓の中の自分と亮と、交互に目が合いながら、吐息が湿り気と甘さを増していく。

あぁ、本当に、亮の言う通り、きれいなのかもしれない…。 肌が溶けてしまうのではないかと思うほど、心地いい…。
でも、でも…。
パチンと、また”私の知らない部屋“のライトがつく。
なぜ、…なぜ、私は受け身なのかしら…。
そんな疑問を照らし出すライトが…。

突き抜ける快感…ともるライト

スッと、胸からウエストに両手を滑らせると、亮は私のお尻をクイッと持ち上げた。直後、私の胸元に左手だけを戻し、優しく、ベッドにおろした。
手首を後ろに縛られている私は、彼に身を委ねるしかない。
お尻の丘を両手で撫でた亮の手が、私の中心をなぞる。スルッとあまりにもスムーズに滑る彼の指を感じて、恥ずかしくなる。

(こんなに、濡れてる…)

そう思うのと同時に「こんなに濡れてるよ」という彼の声が耳に響いた。

「あんっ」

私は、自分でも驚くほどにお尻をくねらせて、彼をねだっていた。
ふぅと息を吐いてから、亮は熱く噴き出す私の泉の入り口に彼自身の先端を馴染ませて、一気に沈み込んだ。

「う…ん…」

肩から先を自由に動かせずに、もどかしい声が私の口から漏れる。
亮は、私の中に入り込むと同時に、深く、そして執拗なほどねっとりとかき回した。
自由のきかない腕の代わりに、私は腰を振り乱していく。彼の先端が、徐々に強烈に泉の奥を突き崩していった。

でも…。
絶頂が貫きそうになるたびに、脳裏でパチッとともる“私の知らない部屋”のライト。

(私は…亮で…。亮は…私で…)

手首を縛られて突き抜かれながらも、彼と自分が入れ替わったような、立場が逆転したような、ごちゃごちゃと頭と心をかき乱す感覚が、私を覆い尽くしていった。
どうして、こんなおかしな感覚が、やってくるのかしら…。

変わる私

不意に、手首に開放感が広がる。

「すごいね、綾乃さん。どんどん濡れてくるよ」

手首のネクタイを解くと、亮は私をクルリと自分に向かせ、対面座位へと導いた。
亮とすぐそばでまっすぐに目が合う。さっきまでは激しく張りつけ合っていた腰を、今度は深く掘り合うようにくねらせる。
じっと、少しずつシワの寄る彼の眉間を見つめると、彼もこちらに視線を向けた。しかし、すぐに照れくさそうに逸らそうとする。

パチン…。
その時また”私の知らない部屋“のライトがつく。今度は一瞬ではない…。

「ダメよ、ちゃんと目を合わせなきゃ。甘くて苦しい顔を見せて…」

そう言いながら、私は驚いていた。
無意識のうちに、自分自身の声色が変わっていく。厚みと深みを帯びて、熱も増していく…。

「綾乃さん…」

いっそう深く眉間にシワを寄せながら、亮は私を見つめていた。
「はぅ」と息を吐きながら、愛くるしいほど健気な瞳で。

⇒【NEXT】「やめてほしい?亮君はね、こうされる方が好きなのよ…」(私の知らない私 最終話)

あらすじ

はづき
はづき
肌の細胞すべてに、体の動きすべてに、心が宿る。 心が…
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