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官能小説【2話】夢も欲も愛も飼い慣らして
はじまりの予感
数日後の夜、桃花のスマホに愛からメッセージが入った。
『桃花〜、叔父さんが会いたいって!』
『は?』
ベッドに横になっていた桃花は思わず体を起こした。
『笑。なんか仕事の相談したいらしいよ。セッティングしていい?』
『私に仕事って何? 意味分かんないんだけど』
『愛も分かんないよ〜。叔父さん、web制作系の会社やってるんだけどたぶんその関係。社長だしヘンな意味じゃないと思うよ!』
『別にヘンとか思ってないけど。私とか何もできないから』
『叔父さんが相談したいって言ってるんだからいいんじゃん?なんかいい話かもよ!』
愛の叔父と名乗る男性が、桃花はどうも苦手だった。
けれどその反面、あの日のことが頭から離れずにいる。
『おーい。ダメ?』
返事を渋っていると、愛が可愛いスタンプと共に催促してきた。
『分かんない。愛に任せる』
『りょ。じゃあセッティングするね!』
密かに桃花の胸は騒いでいた。
それはたぶん、本能的な何かでこの先を期待していたからだ――。
予期せぬ依頼
「こんな高そうなフレンチとか、本当にいいんですか」
桃花はいかにもなフレンチレストランにやや尻込みをしながら問いかけた。
「大事な話だから」
短く答えて、男性は慣れた様子でワインリストから注文をこなす。選んだ後で、お酒は飲めるかと桃花に聞いた。
少しして食前酒用のワインが運ばれてくる。桃花は今日も、目の前の男性といると居心地が悪かった。
「…仕事の相談って聞いたんですけど。私なんかに、どんなことですか?」
「ああ、俺はこういうものなんだけど」
男性が、桃花の前に名刺を差し出す。
桃花は黙ったまま名刺を受け取ると、そこに書かれた文字を目で追った。
――代表取締役 広瀬貴之
「俺は、web制作系の会社をやっていてね、今度新しく依頼された仕事は、洋服の通販サイト制作なんだ。そこで、ページ開設イベントとして、アマチュアデザイナーから洋服のデザインを募ってユーザーの投票により優勝デザインを商品化する企画が立ち上がった。君も参加しないか」
「え…?」
「いいチャンスだと思う。君の力を試すと共に、お披露目もできるんだ」
「いえ、私は」
「どうして」
「どうしてって…そういうのはもういいんです」
「いくら君が自信をなくしているといっても、万が一にもという可能性はある。それに、本当は力があるかもしれないじゃないか」
「自分の実力ならもう知ってます。連敗だったんですよ、もういいんです。面倒なこともヤル気ありません」
「そうか」
「はい。わざわざありがとうございました。でもすみません」
「分かった。まあ、そんな返事だろうと思ってたよ」
「え…?」
「今日は方向転換をして、ただ食事を楽しもう。こんなおじさんとじゃ楽しめないかもしれないが、ここの店の味は一流だから」
「おじさんって言うけど、何歳なんですか」
「38。君は愛の友達だから…」
「23です。共通の会話も難しいですね」
「そうかな。話題は豊富なつもりだけどな。社長と言えども小さな会社で営業だってするからね」
「どうして起業したんですか?」
「仕事が好きだったから」
「え、それだけ?」
「そう、それだけ。会社員だと残業やルールに縛られるし、スピードだって出ない。俺は俺の好きなだけ好きなように仕事したかった。それだけ」
「ふうん。仕事人間なんだ」
「そういう君は?」
「見てのとおりです。ただのショップ店員」
「でも売り上げ上位だろう」
「お客様に似合う服を選んでコーディネイトするのが好きなんです。それだけ。残業はしたくないし、シフトの休みだってもっと多かったらいいのに、って思うふつうの店員です」
「はは、それはいい」
「…何がいいんですか」
「本来人間ってのはワークライフバランスが重要だから。仕事漬けの人間は人間じゃない」
「おじさん、人間じゃないんですね」
「おそらくね。あと、おじさんって言われるとどうも妙な感じだから名前で呼んでほしい」
「広瀬さんだと愛のことばかり思い出すので、おじさんがいいです」
「なら貴之さんで」
「え」
「それと、食前酒はシャンパンにしたけど、お酒はどんなのが好きかな。あまり強くないようなら、お酒でなくてもいいけど」
「話逸らしましたね、貴之サン」
桃花はわざとはっきりと、貴之サン、と呼んだ。
貴之は広げかけたワインリストから顔を上げて、「ああ、わざとだよ、桃花」と言った。
やっぱり目が鋭いのだと桃花は思った。
笑えば目尻の皺は柔らかく優しく感じられるのに、真正面から見据えられると居心地が悪いほど眼光が鋭い。
それに…思ったほど貴之との会話は気まずくなかったし、会話の内容に困ることはなかった。むしろ、弾んでいたというほうが正しくさえ感じられた。
お礼のキス
「ごちそうさまでした」
「どういたしまして。楽しかったよ」
店を出たのは夜の10時過ぎ。終電にはまだ余裕のある時間だった。
もう一軒行こう、もしくはホテルに行こう、と桃花は言われると思った。
だってそういう雰囲気だった。
それに、高い食事をごちそうしてもらったのだから、何か多少の見返りは必要だろう。そう思ったのだ。
でも、相手から言われなければもちろん何も切り出さない。
知らんぷりをしてただ帰ればいい。食事をごちそうしてもらうくらい、ままあることじゃないか。
そう、考えていたのに――。
「お礼、いりますか」
桃花の口からそんな言葉が零れていた。
タクシーを探すためだろう、道路へ視線を向けていた貴之がゆっくりと桃花を振り返った。
やっぱりその視線が鋭くて怖いと桃花は思った。だけど今は、不思議とその視線を受け止めてしまう。
「どんな?」
「…さあ」
「時々君はすごく大人っぽいね」
「老けてます?」
「いや、そういう意味じゃない」
貴之は桃花の後頭部を引き寄せ、何も言わずにキスをした。
さっきふたりで飲んだ白ワインの香りがふわりと鼻孔をくすぐる。
桃花はまるで恋をしているみたいにドキリとして、ぐっと体に力が入るのを感じた。
貴之はキスの後、片腕で桃花を抱き寄せ今度は髪へ唇を寄せた。優しいのか強引なのか分からずに、桃花はこの人といると調子が狂うように感じた。
探り合う舌
ホテルに入るとすぐに、貴之は桃花に深いキスをした。

貴之の舌が桃花の唇を割り、すぐに舌を探り当てからめ取る。これまでしたどんなディープキスよりも濃厚で、いつもなら不快に感じるアルコールの香りを、桃花はそんなに嫌じゃないと思った。
むしろ、同じ香りがしているというのはどこか安心感がある。
しっかりと支えられた腰。背中。貴之はその場ではキス以上のことはせず、ただそのことに集中していた。ただキスをすることに集中していた。
舌先で相手を探る。唾液を絡め、相手の味を知る。
どんなふうに絡み合うのか、どんなふうに応えるのかどんなふうに求めるのか、貴之の舌は探りながら吟味していた。
桃花という「女」を。
やがて唇が離れると、桃花は初めて近い距離で貴之の顔を見た。
思ったよりもイケメンじゃん、と桃花は思った。
貴之は友達の愛の叔父さんだ。それに38歳という年齢通りの老け具合だし、ほんの少し香る香水もちょっとだけおじさんくさい。
でもそれが嫌じゃなかった。
「シャワーしておいで」
「そっちは?」
「後からする」
これは食事のお礼だ。桃花は再度、胸の中でそう呟いた。
お礼にしては悪くない。そうも思った。
けれどそんなに深く考えることじゃない。もし貴之が自分を気に入ればまた連絡が来るのだろうし、もし今日限りの遊びならこれで終わりだろう。何を考える必要もない。
これはただの、お礼だ。
あらすじ
友人・愛から連絡があり、叔父から会いたいとメッセージが来た。何か相談ごとがあるとのことで、愛のセッティングにより叔父と会う事に。
web制作系の会社経営をしているとのことだが、なぜそれで桃花に相談するのだろうか…。
ひとまず仕事の相談として会う事に…。