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官能小説【11話】夢も欲も愛も飼い慣らして
桃花のGスポット・初めての中イキ
「桃花。ずうっとセックスしてたみたいにぐずぐずだな、ここは」
いやらしい言葉を言われると、ぎゅっと蜜口が締まる。
貴之の指を飲み込む場所を見下ろすと、茂みの奥でうごめく指が妙に艶めかしいと桃花は思った。
貴之の指は、浅い場所をしごくようにして動きを繰り返し始めている。
そうされるたび、桃花の腰にじん、と重い痺れが広がった。
なんだろう、これ。いつもと違う。そう思ったけれど、桃花にはどこがどう違うのかよくは分からなかった。
いつもよりうんとイイ。
いつもイイけど、それよりもっと……、イイ。それだけだ。
優しくじんわりとした心地よさが体の奥に生まれて、桃花はソファの背に体を預けた。自然と体の力が抜けていく。
「何してるの、それ」
桃花はうっとりとした心地で聞いた。
「刺激してる。Gスポットを」
「何それ」
「イイ場所だよ」
桃花は目を閉じた。
何度も何度も気持ちのいい波が打っては返す。それが次第に大きな波になっていく。
「待って。なんだかヘン」
「変じゃない。気持ちいいんだ」
「ヘン……」
「変じゃないよ」
桃花の内ももに力が入る。
貴之はもう片方の手で優しく桃花の内ももを愛撫した。
「あ……っ」
ふわりと体が浮き上がるような感覚に、桃花の体がしなる。不意に怖くなって目を開けた刹那。
「ああぁあっ――」
体の深部が甘くとろけて弾けた。どっと蜜が溢れて貴之の指をしとどに濡らす。
腰から下に溢れ出すようなエクスタシーが訪れる。それはあっという間に体全体に広がって……、桃花の脳を溶かした。
長い長い絶頂の先に、甘美な余韻が訪れる。それはこれまでとは違う、深くて濃い快楽だった。
貴之がゆっくりと指を引き抜いただけで、また軽い絶頂が訪れる。快楽に震える体を貴之は優しく抱き締め、キスをした。
「……ズルいよ、貴之サン」
「どうして」
「こんなの教えたら、もうどこにも行けない」
「どこにも行かなくていいだろ」
「もっとイイ場所があるかも」
「そうだな。君は、それでいい」
ふたりの舌が絡む。
桃花は夢中で唾液を絡め合った。そうしているだけで頭の先から痺れて、足の間にまで走り抜ける。
やっぱりこの人、上手だ。
そんなことを頭の隅で思って、すぐに掻き消えた。
熱いご褒美
「もっと欲しいか、桃花」
キスをしながら聞かれて、桃花は、「ん」と短い返事をした。
いやらしく舌を絡めながら貴之がズボンの前を開ける。トランクスをずらして少し体を離すと、さっとゴムを装着した。
ソファに重なり合ったまま、ふたりは繋がった。

「ああっ……、や……っ」
深く響く。温かくて固い欲が、桃花の深部を掘る。
すぐに貴之が桃花の中を突き始めると、達したばかりのせいか桃花の中はきつくうねった。
ぎゅうとしなって、貴之の形に絡みつく。
「俺も、イイよ。桃花。これは頑張ったご褒美だ」
ずっと。
ずっと。
コレが欲しかった。つう、と桃花の頬を涙が伝う。
ずっと欲しくて苦しかった。苦しかったからイイ。
やっぱりおもちゃより指より、うんとイイ。
「あ……ぁっ……――」
貴之が力強い律動を繰り返すたびに、桃花から声が漏れる。それはただ刺激されて発せられる声じゃない。快楽で生まれた声だった。
「ずっと、我慢してただろう。あの日からずっと」
「あの日って……?」
「前にホテルに行った、あの日」
「……そうだって言わせたい?」
「言わなくてもそうだ」
「やっぱり自信家だね」
「桃花に対してはな。手に取るように分かる」
「ムカつく」
「でも嫌じゃない。そうだろ」
「やっぱりムカつく」
桃花は貴之の背中に足を絡めてぐっと引き寄せた。深くに押し入った感覚でさらに強く力が入る。
広い背中に手を回して抱き締める。少しだけ汗ばんだ貴之の首筋へ顔を埋めると、また泣きそうに切なくなった。
何も考えられなくなる。ただ、ただこのことでいっぱいになる。
気持ちいいことで、貴之のことで、頭と心と体がいっぱいになる。
それがこんなに幸せなことなのだと、桃花は初めて知った。誰かと抱き合うってことがこんなふうに満たされることだなんて……。
「貴之さん……、好き――」
気がつけば、桃花はそううわごとのように口走っていた。
貴之の首筋から香る汗の匂いすら愛しい。唇を寄せてキスをしたくなる。だからそうして首筋を吸って、噛みついた。
貴之が桃花の片足を持ち上げ、さらに深い場所を突き上げてくる。
「んっ……、あっ……」
噛みついていた唇が離れると、より淫らな声が漏れた。
「これでいいんだよ、桃花」
貴之もしっかりと桃花を抱き締めたまま、甘く掠れた声を発する。
「心から欲しがって、泣いて、夢中になって……、それが本物のいい女だ。君はきっと、もっともっといい女になる」
感じすぎた桃花の耳に、貴之の言葉は朦朧と響いた。
聞いているはずなのに上手く理解できない。いや、理解しているけれどどうにもできない。
貴之は目の前にいるのに、もう目いっぱいもらっているのに、もっと欲しくて堪らない。
けれど果たして、これが性欲なのか恋なのか、桃花にはよく分からなかった。
愛しいオスがいること。
それが恋愛か情欲か、もっと別のものか……。
難しいことは考えられなかったし、考えたって分かることでもなかった。
愛しい人
「もう……、出すぞ」
貴之の腰の動きが速くなる。
桃花はもうずっと、軽いオーガズムを体験し続けているような激しい波に投げ出されていた。
それからすぐに。
「ん……、ぅ……」
めずらしく短い声を上げて、貴之は果てた。桃花の最奥で熱いものをほとばしらせて。
ぐったりと貴之の体から力が抜けて、桃花に重みがかかる。桃花はそれすら愛しくなって貴之の汗ばんだ背中を抱き締めた。
呼吸する音が、胸から伝わる速い鼓動が、つながったまままだビクビクと震えるペニスが。すべてが愛しく感じられた。
「貴之さん……」
いつも少しだけ皮肉めいていた『貴之サン』という呼び方が、いつの間にか優しいものになっていた。
それはきっと、大切なものを呼ぶ声音。
貴之は桃花の髪を撫でると、優しくそこへキスをした。
重そうに体を起こして、さっとゴムを処理するとズボンを引き上げる。
桃花は笑った。
「やっぱり貴之さんって、シたあとアッサリだよね」
「ベタベタするのは好みじゃない」
「あんなにエッチなのに?」
「別次元の話だ」
「同じだよ」
「女にとってはな」
桃花ものろのろと身だしなみを整え始める。
「送っていく」
「いいよ」
「いいから支度しろ」
「メイク見て。崩れてる?」
桃花が貴之にわざと顔を近づけると、貴之は小さく笑った。
目尻に寄った無数の小さな皺を見て、桃花も少しだけ笑ってしまう。
「メイクの状態を聞くのが好きなんだな」
「だって鏡持ってないもん」
「嘘だ」
「バレた?」
「ああ」
「あ〜、俺がこいつのメイクぐしょぐしょにしたんだなぁって思うと、またシたくならない?」
「まだ足りなかったのか」
貴之が桃花の足の間に足を割り入れて、ぐっとももで秘部を刺激した。桃花が声にならない声を上げて貴之にしがみつく。
「卑怯だよ、そういうの。それにパンツ気持ち悪いんだからやめて」
「じゃあ穿かずに帰れ」
「やだよ!」
「送っていくって言っただろう。問題ない」
「でもやだよ。落ち着かない」
「そうか」
「うん」
「荷物を取ってくる」
アッサリと貴之はミーティングルームを出ていく。
桃花は短くため息を吐いて部屋の中を見回した。さっきまで睦み合っていたソファはなんの変哲もない。明日からもこの部屋はふつうに打ち合わせの場として機能するんだろう。
その時貴之は、一度くらいは自分のことを思い出すだろうか?
そう思うと、妙な優越感が湧き上がった。
貴之も私みたいに、相手のことでいっぱいになっちゃえばいいんだ。
そう、思った。
⇒【NEXT】本当に、自分たちの関係にはどんな名前がつくんだろう。(夢も欲も愛も飼い慣らして 12話)
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あらすじ
なんだろう。いつもと違う。
そう思ったけれど、桃花にはどこがどう違うのかよくは分からなかった。
貴之に「Gスポットを刺激している」と言われると、何度も気持ちいい波が打っては返す。
桃花にふわりと体が浮き上がるような感覚が訪れ…。