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官能小説【最終話】夢も欲も愛も飼い慣らして
一週間の不安
貴之の言った通り、サイトは金曜にオープンした。それと同時に、何十点かのデザインがアップされ、すぐに投票が始まった。
リアルタイムで見ることのできる投票を、桃花は気がつけば必死で追いかけていた。
期間は一週間。
1位になりたい。
商品化されたい。
でも。
どこかで無理かもしれないとも思っていた。
桃花はもう何度も、他のデザインをスクロールして穴が開くほど見た。どれもこれも素敵だし、それぞれの良さがある。
ここは負けてる、でもここは勝ってるんじゃないかな、そんな思いを繰り返すうちに次第に疲れてくる。
SNSでも割と話題になっていて、無意識にすぐエゴサーチしてしまう自分がいた。
「はぁ……、無理」
スマホを閉じてベッドに突っ伏す。
貴之に連絡したくて、思い直してやめた。
不安な気持ちを別のもので穴埋めしたってどうにもならない。泣いても笑っても一週間経てば結果は出るのだ。
桃花は不安な気持ちを切り捨てるようにパソコンに向かった。
怖がってる暇があったら新しいデザインを作って練習を重ねるほうが有意義だ。あとは仕事に集中しよう。
いったん気持ちを切り替えると、投票がすべてだった毎日から解放された。
逆に、他のライバルのデザインを見たおかげで、色々と刺激された部分もある。
いくつも作っているとあっという間に時間が過ぎて、睡眠時間が削られてしまう日もあったほどだった。
結果を待ちわびて
一週間が流れ、投票結果の出る日を迎えた。
結果は今日の20時。
ちょうど桃花は、シフトの終わる時間だった。
バタバタと仕事を終えて控室に駆け込む。スマホでサイトを開きかけて、すぐに閉じた。
「やっぱり帰って落ち着いてから見よう」
そう思ってスマホをバッグに仕舞った瞬間、スマホが震えて着信を知らせた。
貴之だった。
まだ結果を見る前に、貴之から連絡がきてしまった。
無視をするのはためらわれて、迷ったけれど電話に出る。
「もしもし」
『仕事は終わったか』
「うん」
『今から住所を送るから、その店に来い』
「え、なんで?」
『予定があるのか?』
「ううん」
『じゃあ待ってる』
「あ」
次の言葉を言う前に通話が切れてしまう。
貴之には会うとして、その前に結果を見ておこう。そう思いサイトを開こうとすると、貴之からのメールが入った。
送られてきた場所は、職場からほど近いレストランだ。
「落ち着いてから……、でいいよね。見るのは」
桃花は気合を入れるように深呼吸をして、言われた場所へ向かった。
結果を聞かされて
店へ着くと貴之は先に到着していた。落ち着いた雰囲気の店内で、奥まった席へ案内される。
「えっと。お待たせ」
結果を見ていないだけに、まずはなんて言えばいいのか分からず、桃花は曖昧な言葉と笑顔になった。
「飲むか」
「うん、ちょっと」
「何がいい」
「任せる」
「分かった」
貴之が手短にオーダーを済ませて桃花に向き直る。
「何。怖いんだけど」
「結果。見たか」
「……えっと。まだ。家に帰って落ち着いて見ようと思ってて」
「そうか」
「……サイアクだった?」
「いや」
「何位?」
お待たせしました!と飲み物が運ばれてくる。
冷えたグラスを手にしてもまだそれを飲めないまま、桃花は貴之の答えを待った。
「自分の目で見なくていいのか」
「うん、またゆっくり見るから」
「そうか」
「うん」
「3位だ」
「! ……そ、か」
落胆しなかったと言えば嘘になる。
けれど桃花は、ホッと肩の荷がおりたような気持ちになった。
「悔しいな。絶対の自信があったわけじゃないけど、1位だったら嬉しかった。でもそんな甘くないよね」
「ああ。けど3位だ。上出来だろ」
「でも1位じゃないと商品化されないんだよ」
「3位でも未来はある。スカウトの声もかかるかもしれないだろ」
「1位じゃないと意味ないよ」
「意味はある」
「ないよ」
「……そうか」
「ないよ」
桃花は俯いた。
ひと粒だけ涙が、俯いた目から手の上に落ちる。
「――でも。悔しいけどでも。やめないよ。またチャレンジするよ、私。もう逃げない」
「ああ」
「ショックで落ち込んだり傷ついたり、カッコ悪いこととかダサいこととか、つらいこととかしんどいこととか、ムカつくこととか理不尽なこととか…。何があってもいいよ。もう、別に何があってもいいよ」
「そうだな」
「続けた人だけ、次のステップがあるんでしょ」
桃花は顔を上げた。涙はひと粒だけでもう流れてはいなかった。
「ああ、その通りだ」
貴之が頷く。
桃花は握ったままだったグラスを持ち上げて、ぐいぐい飲んだ。
「桃花」
貴之は何も口にしないまま桃花を見ていた。返事の代わりに桃花は貴之に視線を投げる。
久しぶりに鋭い視線を向けられて、桃花はじっとその瞳を見つめ返した。
ふたりの関係に名前がついた日
「桃花。俺のものにならないか」
「え……?」
まったく予想しなかったことを言われて、少し間抜けな声が出てしまう。桃花は慌てて表情を引き締めた。
「何そのなんだか古臭い言い方」
「古臭くてもこれが一番しっくりくる。君を、俺のものにしたい」
貴之の顔は真剣だった。
「……貴之さんのものになってる人は、どれくらいいるの」
「飼い慣らしたのは桃花だけだ」
「答えになってないよ、それ」
「じゃあ答えを変えよう。他に女はいない」
桃花は胸の奥がぐっと締めつけられるように熱くなるのを感じた。
本当は分かっていた。
貴之に、他に女がいないことは。
でもそれを本人の口から聞きたかった。嘘いつわりないことだと言われたかった。
「誓う?私に」
「ああ」
「貴之さんのものになったら私はどうなる?」
「質問ばかりだな」
「どうなる?」
「……どうだろうな。ありきたりな言葉しか浮かんでこない」
「それでいいよ」
「いいのか」
「うん。ありきたりなのが、欲しい」
「――俺だけのものになったら、桃花。君をもっと満足させるよ。幸せにする」
「私……、貴之さんが好き」
「ああ」
「知ってた?」
「ああ、分かってた」
「いつから?」
「さあ」
「誤魔化さないで」
「桃花は分かるのか。いつ、俺を好きになったかなんて」
「分かんないよ」
「そういうことだ」
「じゃあ貴之さんはいつ私を好きになったの?」
「子どもみたいだな」
「なら子どもじゃないこと言う。貴之さんと、エッチしたい。そのあと、ベタベタしたい」
「ああ」
「嫌いなんでしょ?」
「そうだな。でもそれが俺の女になる条件なら、のもう。契約だ」
「やだ、そういうの」
「取り決めはあったほうがいい」
「そういうのやだ。欲しい時欲しいだけ、貴之さんをちょうだい。それでいい」
「……ああ、分かった」
「もうお店出たい。今すぐシたい。朝がくるまでずっと」
「仕事は」
「そういうのもやだ。欲しいだけちょうだいって、言ったのに」
「ああ。ああ、そうだったな」
テーブルに投げ出した桃花の手に、貴之は指を絡めた。
手の先だけで伝え合う温もりですら愛しくて堪らない。今すぐ引き寄せて抱き合って、いつもみたいなキスがしてほしい。
ううん、ちゃんと、恋人になったキスがしてほしい。
桃花はその気持ちを伝えるように貴之を見た。熱を帯びた視線が絡んでふたりだけの空間になる。
言葉もなく貴之が立ち上がった。
桃花も立ち上がると貴之の腕に手を絡めて体を寄せる。桃花は泣きそうになって微笑んだ。

これまでとは違う距離でふたりが歩き出す。
勝手に決めて勝手に進んでしまう貴之の背中を、桃花はいつもただ追いかけていた気がする。
けれどそれももう終わり。
同じ歩幅で歩く心地よさを感じながら、ふたり溶け合う快楽に想いを馳せるのだった――。
END
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あらすじ
デザインサイトがオープンし、投票結果は1週間後。
ちょうどシフトが終わる20時だった。
結果を見ようとした時、貴之からの連絡が入った。
果たして、二人の関係は…。