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官能小説【5話】夢も欲も愛も飼い慣らして


濃厚なキス

タクシーに乗り込み向かった先は、ホテルだった。

「なんだ、結局ヤりたかったんじゃん」

桃花は不服さを露わにつぶやいたが、貴之は一向に気に留めないまま桃花の細い腰を抱き寄せた。
ぐっと桃花の体がしなって、ふたりの体が密着する。無言のまま貴之は唇を重ねた。
すぐに桃花の唇を舌で割り熱く絡める。>桃花が酸素を求めて唇を離そうとすると、貴之はその後頭部を強い力で固定した。

「ん……ふ……っ」

苦し気な桃花の吐息が部屋の中に響く。貴之の舌は強引で熱く、ぬめぬめと桃花の口内を蹂躙した。
悔しいけれど、すごく上手で腰から力が抜けそうだ。そう、桃花は思った。
貴之はいつだって、桃花の意志などお構いなしに踏み込んでくる。いや本当は、分かっていて踏み込んでいるのかもしれない。
桃花が本当は、貴之の中の何かを求め始めていることを。

長く永遠にも思える激しいディープキスをしながら、貴之の手が桃花の体をなぞり始める。
激しいキスとは裏腹に優しく煽るような手つきに、桃花は一種のもどかしさを感じた。
気がつくと貴之の服にすがっていた。翻弄されるがままに、なすがままに、なっていた。
おしりの辺りが震える。
意識すればするほど、震えて崩れ落ちそうになる。

もうイヤだ。桃花は思った。
ぐっと貴之の体を押す。するとあまりにもすんなりと男の体躯は桃花から離れ、ふたりは見つめ合う形になった。
貴之は、ふたりの唾液で濡れた唇をゆっくりと手の甲で拭った。桃花のリップがべったりとその甲に痕を残す。
こんなに苦しくて訳の分からないキス、桃花は初めてだった。

冷ややかな瞳に犯されて

「何がしたいの」

桃花は表現しがたい悔しさに駆られて吐き捨てるように言った。
貴之の無言の視線は鋭い。
ほんの数秒、まるで睨むように見つめ合ったのち、貴之は桃花の肩を押してベッドへ倒した。ややかためのマットレスに背中を打ちつけられて、桃花の呼吸がいっとき詰まる。

「感じさせてやる」

低い声で言いながら、貴之もベッドへ乗りすぐに桃花のショーツの中へ手を入れた。

「あ」

桃花が短い声を上げた時にはすでに、貴之の指は彼女の茂みを潜り抜けていた。
桃花は驚いた。
自分でも分からないうちに、そこはぐっしょりと濡れていた。触られただけで分かる。あまりに滑らかな感触に、桃花は眉を寄せて足を閉じた。桃花の太ももに手を挟まれたまま、貴之の指は器用にその秘部でうごめき始める。

「俺を利用しろ、桃花」

桃花は貴之の顔を睨みつけた。

「イク方法を教えてやる。君の才能も開花させてやる。俺が」

「何その上から目線。何様のつもり」

「君はまだ何も知らない」

「そうだろうね。おじさんと比べたらまだ全然なんにも知らない。でも別におじさんに教えてもらいたくない」

――傷つきたくないから。

その言葉を桃花は飲み込んだ。
だってそれを言えば本当に負けた気持ちになる。

桃花はどうしても、目の前の男に屈するのが嫌だった。これまでの彼との付き合いでそんなふうに考えたことなんてただの一度もなかったのに、貴之にだけは嫌だと思った。
だって。
傷つきたくない。
この人はこれからもきっと、平気で私を傷つけてくる。

そう思うと、悲しくて悲しくて泣きそうな気持ちになった。
貴之の手が桃花のショーツにかかり、はぎ取る。貴之は強引に桃花の足を割り開いた。
くちゅりと卑猥な音がして、桃花は唇を噛み締めてまた貴之を睨みつけた。

「――別に、若い女を育てて楽しむ趣味はない。誰かをプロデュースするのが好きなわけでもない」

「な、にが言いたいの」

貴之は鋭利な視線で桃花を見つめ返しながら静かに語った。指先はねっとりと、たっぷり溢れた愛液をかき混ぜるように動かしながら。

「君がこうさせるんだよ、桃花」

「んっ……」

腫れ始めた陰核をぐっと指の腹で押されて、桃花はくぐもった声を上げた。一度顔を逸らしてから、また貴之に顔を向ける。
視線が絡むと切ない心地が湧いてきた。

「前みたいに目を閉じるんだ」

「いや」

「桃花」

愛撫を続ける貴之の指先。断続的に桃花の花芯を刺激し続けている。
もう片方の手で、貴之は桃花の唇をなぞった。さっきたっぷりとキスをしたおかげでリップは剥げて少しかさついている。それを指先でゆっくりとかたどってから、唇を割って指を突っ込んだ。
いや。
貴之の長い指先が桃花の口内をなぞった瞬間、桃花は顔を逸らして逃げようとした。けれど貴之はそんなことはさせてくれない。
逃げようとする桃花の舌をなぞり、歯列を這って上あごを愛撫した。

「ん……っ、ふっ……」

言葉を発することもできずに桃花がもがく。
その姿を見つめる貴之の目は冷ややかで……、それでいてその奥には確かに熱があった。

ああ、イイんだ。
桃花は不意に思った。
イイんだ、と。
蔑むようにも見える貴之の眼差しが最高にイイ。私だけに向けられる欲が、私がこうさせているんだと言われたことが、そしてクリトリスを刺激する絶妙な手つきが。

最高に、イイ――。

初めてのオーガズム

気がつくと桃花は、夢中で貴之の指をしゃぶっていた。
貴之がふっと目を細めて桃花を見つめる。それは蔑んでいるようにも愛しんでいるようにも、どちらにも見えた。

官能小説挿絵:男性の指をしゃぶる女性

「桃花。君はいい女になる。きっと」

「んぅ……っ」

指をぐっと喉奥まで入れられて、桃花の目尻に涙が伝った。その痕に貴之の唇が優しく押し当てられる。

ダメだよ、まるで付き合ってるみたいじゃん。

桃花はそう思って目を閉じた。また一筋、涙が零れる。
さっきからずっと、貴之が刺激している場所から痺れるような感覚が広がってきている。陰部全体に広がる快楽ともいえる感覚に、桃花の足が震え始めた。
桃花は首を振った。
貴之の指が口から外れて、彼の強い視線に射貫かれる。

「逃げるな、桃花」

唇が重なる。激しく舌が絡められて、指の固い感触とは違うぬめった感触が桃花の思考をからめとった。
痺れていく。
痺れていく。

桃花は腰を揺らした。
陰核から広がる甘い痺れが、熱を持ってじんじんと広がっている。

痺れる。

痺れる。

痺れる。

「ん……んっ……」

桃花は夢中で貴之の舌を貪りながら、その先を求めた。
桃花はまだ知らなかった。その先に何があるのか。どんなものが待っているのか。

「いや」

声にならない声で桃花は言った。
貴之の指の動きが激しくなる。桃花の体に自然と力が入った。

どうしよう。
よく分からないままに怖くなって、怖いけれど欲しくなって、桃花はぎゅっと貴之の体にしがみついた。
わずかに汗ばんだ肌の感覚。熱い体温。桃花は貴之の肌に爪を立てた。
その瞬間。

「っ……、い、や……っ――」

桃花の秘部全体に、とろけるような得も言われぬ甘美な痺れが弾け散った。
どこかへ昇りつめたような、何か不思議な魔法をかけられたような、切なくて怖かった感覚が一気に解放される瞬間。
愛液がじわっと大量に溢れた。

「あ……ぁ……――」

桃花の震えを感じて、貴之の指の動きはゆっくりと止まった。
どくん、とそこで心臓が脈打つように桃花の体が震える。蜜口は不規則に痙攣を繰り返した。
優しい波に揺られるように、溶けた余韻が桃花の体を包み込む。
それは。
桃花が生まれて初めて感じるオーガズムだった。

「いい子だ。よく我慢したな」

「……また、子ども扱いしてる」

また桃花の目尻に涙が伝って、貴之はふっと笑った。優しい目だった。

「子どももいずれ大人になる。君を大人にするのは、いい気分だ」

まだ余韻の残る桃花のそばから離れないまま、貴之が枕元に手を伸ばしてすばやくゴムを装着した。

「あっ、いや……っ」

卑猥な水音を立てて男根を押し当てられ、桃花はとっさに声を上げた。
別に嫌なわけじゃなかった。でもそう言ってしまった。

「ああっ」

達したばかりで膨れ上がったクリストリスにペニスを押しつけられると、我慢できないようなつらさが走る。
貴之は桃花の足を持ち上げると、

「ああぁあっ……っ」

ぐっと一気に挿入した。
桃花は大きくて自分のものではないみたいな声を、初めて上げた。

⇒【NEXT】桃花は貴之の首を両手で引き寄せて抱き締めた。(夢も欲も愛も飼い慣らして6話)

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あらすじ

「なんだ、結局ヤりたかったんじゃん」

桃花は不服を言葉にするが、貴之は一向に気に留めないまま桃花の腰を抱きよせ、唇を重ねる。
貴之の舌は強引で熱く、悔しいけれど、すごく上手で腰から力が抜けてしまい…。

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