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投稿官能小説「オトナの女」(緋山くうさん)
誰にも言えない不安
「あ、あの、先輩、頼まれてたの出来上がりました」
未だに慣れない、先輩のデスク。
私は必死で緊張を隠しながら、さっき出来あがったばかりの書類を差し出した。
「ああ、悪い」
先輩は、そんな私には目もくれず、ごく普通にそれを受け取ると、またカタカタとキーボードを打ち始める。
視線は、パソコンの画面に釘図けのままで、私は寂しい気持ちでペコリとお辞儀をすると、自分のデスクに戻った。
わかってる。
今は仕事中だって。
だけど、一日中不安になってしまうのは、先輩は経験豊富な人で、今まで沢山の女性とベッドを共にしていたからで……。
そんな先輩が、私とではまるで無縁のような状態なんて、どう見ても、私に原因があるとしか、考えられなかった。
手は繋いでくれるし、キスもしてくれるまでに前進した。
だけど、そういう雰囲気になっても、腕枕で終わってしまう。
やっぱり、私に色気がないからかな?
そんな、不安は、日に日に大きく膨らんで、こんな事相談出来る友達もいない私は、ただただ、必死でその気持ちを押さえ付けるしかなかった。
私は欲張り?
「ええ!?今何て言った!?」
そう言って、目の前の島田先輩はお腹を抱えて笑い出す。
「そ、そんなに、笑わないで下さい……」
彼は、高田先輩と同期で、デスクもお隣同士。二人はコンビ芸人のように息が合うし、仲も良い。そんな、島田先輩なら何かヒントを貰えるんじゃないかと、こっそりデスクに訪れたんだけど……。
「ごめんごめん。だって、篠崎ちゃん、第一声が『高田先輩ってゲイですか?』なんだもん。誰だって笑うでしょ?」
そして、また目に涙を浮かべながら、島田先輩はヒーヒーと笑う。
そんなに笑われるなんて。途端に顔がボッと熱くなる。
私って、そんな変な事言ったのかな?
でも、そうとしか今の私には、答えが思い浮かばない。いや、寧ろそうだとしたら、自分を納得させる事ができるのに……。
私は俯き、キュッと手に力を込める。
「不安、なんです。先輩は無理して付き合ってくれてるんじゃないかって……自信がないんです」
思わず漏れてしまった本音。
島田先輩は、急に静かになり脚を組むと、私をじっと見つめて言った。
「何故そう思う?」
「え!?そ、それは……」
抱いてくれないなんて、恥ずかし過ぎて言えやしない。言いどもっている私に、頬杖をつきながら、彼は更に言葉を続ける。
「俺は、大切にしてると思うけどな。片っ端から女を抱いてたアイツがさ、今じゃ、言い寄ってくる女全部断ってる。それは、篠崎ちゃんがどれだけ高田にとって特別な存在なのか、考えたりしない?」
「確かに、先輩は優しいです。でも、時々……先輩に抱かれた人達を羨ましく思ってしまうんです……。彼女達でも手にいれる事が出来なかった唇を、私は手にいれた。それだけでも、幸せなんですけど……そう思う私は欲張りですか……?」
少しずつ漏れていく本音は、やがて、核心へと近づいていく。ずっと悩んでいた、小さな秘密に。
「ああ、そういう事か。いや、女としては普通なんじゃないかな?女だって男だって本能はそうだろ? 理性があるから、衝動的になる事を制御出来ているだけで。だから、そう感じるのは変な事じゃないさ、好きな相手なら尚更ね」
「そう……ですか」
島田先輩の言っている事は、すぐにわかった。恋人同士なら、求めあうのは普通の事。
でも、それなら尚更、先輩から求められない私は……。
そう思うと熱い涙が、頬を伝った。
「篠崎ちゃん、難しく考えすぎなんじゃない?もっと小さな事から始めればいいんだよ、例えば……その先輩って言うのをやめるとか。それから髪型を変えてみるとか、香水をつけてみるとかね。ちょっとした変化でも、いつもと違ければ気付くはずだよ?男って」
まるで頑張れと言うように、私の肩をポンと叩くと、島田先輩は軽快に席をはずした。
そうだ、少しずつ変えてみよう。私らしく、ぶつかってみればいいんだ。
重かった肩の荷が、少し軽くなった気がした。
空回りしていたみたいに届かない
あの決意から、一週間がたった。
島田先輩のアドバイス通り、私なりにファッション雑誌や、女性誌を読みあさり、エロイ女になろうと日々励んでいる。
さりげない露出……チラリズムに男は弱いと聞けば、ブラウスを谷間ギリギリまであけて出社。
そして、先輩のデスクに向かうと、少し前かがみになってクールに書類を渡す。
「し、し、しゆゆ、しゅううう、秀一さん、これ出来ました」
私を見るなり、あんぐりと口をあける彼と島田先輩。まるで、言葉が出ないみたい。
やだ!もしかして、ドキッとしちゃいました?
ここで、なやましげにクネクネ作戦!
「し、し、しゆゆ、秀一さん、今晩空いてま……!!」
とたんに、隣のデスクから、声を押し殺した笑いが聞こえ出す。声の主は、勿論島田先輩。
そして、それと同時に、ふわりと、私の肩にジャケットが掛けられた。
思わず先輩を見上げると、優しい口調で小さく言った。
「身なり、整えておいで」
一瞬、言葉が出なかった。
少しでも先輩を惑わせたいと思った私の気持ちは、空回りしていたみたいに届かない。
力なく「はい……」と返事をすると、言われた通り、化粧室へと向かった。
『……島田、お前だろ?』
『的確なアドバイスをした筈なんだけど……おかしいなぁ』
秘密の最終兵器
残業後の、ディナーの帰り。
折角の金曜なのに、私を送る為に見なれた道を、先輩は、いつもの様に隣を歩く。
私……バカみたい。
この後の展開が簡単に予想できて、思わず俯いた。普段は気にもとめないランジェリーも、上下セットのセクシーなデザインを買い揃えたのに。
それらの、いわゆる勝負下着は、出番がないままタンスに落ち着いていく。
スカートもミニにしてるし、全身の無駄毛処理をして、スベスベにしている。いつでも、その時がきてもいい状態なのに、その時がこない。
男性は、そういった欲求が溜まると、はかずにはいられないと聞くけど……私とは約一ヶ月半、そういった事がないわけで。
もしかして、他に解消してくれる相手がいるんじゃないかと、先輩を疑ってしまう自分がいる。
私が初めてだから?
色気がないから?
こんなに、悩むくらいなら、本人に聞けばいいのに。臆病な私は、先輩に聞くのが怖い。
でも……。
今日は、最終兵器を持ってきた。折角の金曜日。かけるなら、今しかないよね?
「あ、あの!せ、先輩!」
思わず立ち止まり、繋がれた手をキュッと掴んだ。
「今日は、金曜ですよね?」
「ああ」
「明日も、明後日も私達オフですよね?」
「?……ああ、そうだけど」
「せ、先輩!だから、あの……」
「?」
『ふ、ふ、二人で、ゆっくり……』
「?悪い、声小さくて聞こえない」
そう言って、顔を近づける先輩。
駄目だ!恥ずかしくて言えない……!どうしよう……。
「あ、ああ〜……な、何だか急に目が回って……!酔ったみたいです!先輩、どっか休めるとこないですか?フラフラします!」
「酔ったって……アルコール頼んだっけ?ひなのはいつもジュース……」
「あ、あれ!アルコール入ってたのかも〜」
「でも、何処かって……この辺だとラブホしかないだろ?家まで我慢でき……」
「できません!」
私は、強引な手を使い、何とか先輩をホテルに連れ込む事に成功した。
魔法を纏い、ベッドへ
先輩に肩を抱き抱えられたまま、私は魅惑の一室に足を踏み入れる。
やわらかなピンクの照明。
見たこともない程大きくて、上品なベッド。
「すごい……」
まさに此処は、妖艶な雰囲気で、私はハッと我にかえった。
「……ひなの?」
しまった!この後の展開を考えてなかった!
「せ、先輩!私、気分転換に、ちょっとシャワー浴びてきますね……」
何か言おうとした先輩の言葉を、遮るように、私は慌てて身体を離すと、逃げる様にバスルームに飛び込んだ。
先輩……絶対不審に思ってるかも。
大きなジャグジーにブクブクと浸かりながら、念入りに最後のチェックをした。
そして、ポーチから、最終兵器をそっと手に取ると、首筋や、胸、手首、股にと全身に吹き掛けた。
甘いけど、甘ったるくなくて、どこか爽やかさが感じられる心地良い香りが、私をふんわりと包み込む。
特別な配合で作られた、男性を虜にする魅惑の香水。
いろいろな雑誌で取り上げられていて、興味をもった私は、藁にもすがる思いで購入した。
まるで、おとぎ話に出てくる魔法使いが作ったホレ薬。
私にも魔法をかけて欲しい。
エロイ女になる為に!
そして、先輩……王子さまとラブラブになる為に!
私は、真っ白でなめらかなガウンを纏うと、そっと先輩が待つ、ベッドに向かった。
本音と初めてを捧げる…
「あの……先輩……」
バクバクと音をたてる胸をおさえながら、毛先が濡れたヘアーを慌てて整える。
椅子にはジャケットがかけてあって、ベッドに腰掛けた先輩は、小さくて両手をひろげ私を誘う。
そして、すっぽりと背中から腕を回し私をおさめると、優しくキュッと抱きしめた。
「酔ったなんて、ウソなんだろ……?島田に聞いた……。前から、気付いてはいたけど、そんなに不安にさせていたなんて、思ってなかったから、ごめん……」
私は、言葉の変わりに、ううんと首をふる。
「ひなのが、初めてを俺に捧げようとした時。絶対にこの娘だけは、大切にしようと思った。俺なんかが、簡単に奪ったらいけないって……我慢してた」
やっと気持ちが届いたんだ……。
そして、思いもよらずに、聞けた先輩の本音。
まさか、先輩がそんなふうに思ってくれていたなんて、考えてもみなかった。
ううん。寧ろ、そんな先輩を疑ってさえいたのに……。
そう思ったら、言葉がつまって。
私を包むその腕を、キュッと両手で抱きしめながら、もう一度小さく頭を横にふった。
すると、不意に先輩の頭が肩に触れ、首筋に唇を近付ける。
恥ずかしさに、耳がボッと熱くなるのがわかった。
「せ、先輩……」
「ひなの……なんかエロイ匂いする」
そう聞こえた瞬間、先輩の手がガウンの隙間から進入してきて、首をつたう唇の感覚に、私は思わずキュッと瞳を閉じた。
やだ……ドキドキが止まらない!!
そして、とうとう私は押し倒され、視界は天井にひっくりかえった。
片手でワイシャツを外しながら、上から見下ろすように見つめる姿に、私の顔は炎上状態。
やんわりとしたピンクの照明が、更に先輩の色気を演出した。
先輩は、初めての私を優しくリードしてくれる。
身体中に感じる先輩の唇や、指の感触が心地よくて、何度も漏れる、自分のとは思えない声に、恥ずかしさを堪える。
そんな私に、「ひなの、可愛い。もっと聞かせて」と、イジワルな先輩は、更に私を気持ちよくさせた。
「……怖い?」
いよいよと、いう時。彼は私を優しく抱きしめながら、呟いた。
凄く私を大切にしてくれている。
先輩の愛を感じて、私は「ううん」と小さく返事をした。
「先輩のものにして欲しい……」
そう言った私の瞳に、彼の微かに潤んだ瞳が答える。
「優しくするから……ひなのはリラックスして、俺に預けてくれればいいからね」
不安にならないように、気遣ってくれている。
そんな先輩が、初めての人なんて、私は本当に幸せものだ。
そして、私達は、その夜初めて一つになった。
魅惑の香水
大きなベッドに寄り添い、私は先輩の腕枕をしながら、その余韻にひたっていると、先輩は、優しく私の頭を撫でながら言った。
「痛くなかった?」
今まで感じた事がない、甘く、穏やかな感じ。
それに、どっぷりつかっていた私は、ハッと、島田先輩に言われた事を思い出した。
「うん。し、しゆ、秀一さんが優しくしてくれたから」
何故か、クスクスと笑い出す先輩。
「もう遅いだろ?ベッドの中で“先輩センパイ”さんざん言ってたし」
「え!?」
恥ずかしさのあまりに、シーツに潜ると、先輩はまだクスクスと笑っている。
「いいよ、先輩で。俺はあまり気にしない方らしいから。それに、その方が、ひなのに呼ばれてる感じがする」
そう言って先輩は、シーツをはいで私を見付けると、優しくぎゅっと抱きしめた。
確かに、先輩の事をみんなは高田さんと呼ぶ。
秀一と呼んでいたのは、きっと結婚する筈だった美香さん……。
「それにしても……ほんとエロイ匂い。ひなのの身体中から、匂ってる」
首筋に顔を埋めながら、先輩が囁く。
「実は、魔法使いのホレ薬なんです」
「ホレ薬って……普通飲ませるものだろ?」
「ええーー!?」
魔法使いの魅惑の香水は、確かに私に魔法をかけてくれました。
王子さまと、ラブラブになる素敵な魔法を……。
「魔法使いって、まさか島田……」
「ち、違います!!」