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投稿官能小説「マッサージ」


マッサージ

少し思い出話をしましょうか。
その人に出会ったとき、私は遠い国にいました。

爽やかな夏の昼下がり、私は彼の視線を感じていました。涼しげな青い目が、その日は絡みついてきました。
実は前日の夜から彼の様子がなんだかいつもと違って、これから起こるだろうことをなんとなく感じていました。

電気もつけず、ブラインドも上げずに、テレビだけがついた薄暗い部屋で、大きなソファーの上で並んで座っていました。
彼はぽつりと言いました。

「マッサージしようか。」

「いや。」

小さく言いながら、私の体はゆっくり傾いていきました。
おかしいでしょう?
言ってることと、してることが別々で。

体と頭が別って、こういうことかな、と。
先の保証なんてない人なのに、だから、今欲しくて仕方がなかった。
頭から肩、背中へと彼の手を感じて、私の体がほどけていくのを感じました。

いつの間にか手は、Tシャツの中にいました。
脇腹を上がっていって、下着に触れるか触れないかで下がっていきます。

そうして彼は、足の先まで揉んでいきました。

「仰向けになって。」

引き込まれる瞳

それでも彼の言うままになるのが怖くて、私は横を向いて寝るという、なんとも中途半端なことになりました。
かまわず彼はシャツの中で私に触れました。
熱い手がお臍のまわりを撫でると、思わず声が出そうになりました。
必至に抑えると、彼はゆっくりゆっくり、脇腹を撫で上げていきます。
私の肌の感触を楽しんでいるようでした。

どれくらい過ぎたのか、彼が下着の線に触れました。
もう私はとろけきっていて、逆らうことなんてできませんでした。
一瞬彼の手が止まるのがわかりました。
でもすぐに、私は仰向けになっていて、彼は下着を押し上げて私の胸に顔をうずめて、舌を這わせていました。

「かわいい乳首だね…好きだ…」

初めて男性の体温が私の上にあるのを感じ、固くなった部分を吸われるのを感じました。
こんなに誰かに肌を見せるのだって、初めてでした。
思わず目を閉じました。

下半身も裸にされるのがわかりました。
彼の顔が下がっていき、閉じた脚は簡単に持ち上げられました。
熱くなった場所に、慣れない感触がありました。

湿って生暖かいものが、何度もそこを上下し、私はくすぐったいような、でも体は湿っぽくなるばかりで、自分の声が漏れているのも気づきませんでした。
彼の肩に乗っている脚が、自分の体ではなくて、何か別の物のような気がしていました。

「濡れてるよ…もっと欲しい?」

休むことなく、彼は下から私の表情を窺います。
目が合うと、引き込まれそうな薄い青色は、薄暗い部屋で少し濡れて光っていました。
彼の顔がすっとこちらへ寄ってきて、唇を重ねます。
優しく、かすれるように。

愛さずにはいられない

また彼の顔は下へ戻っていきます。

「痛っ」

舌の先が少し入ってきました。
裂けるような痛みを感じて、小さく悲鳴を上げました。

すると彼は進入をやめ、また外を舐めたり、吸ったりします。そんな繰り返しのうちに、私は彼の舌を受け入れられるようになっていました。
自分も着ている物を脱ぎ捨てて、彼は私をうつ伏せにします。

「きれいなお尻…誰よりもきれいだ。」

私のお尻を撫でまわし、盛り上がった頂きを吸い上げます。そして、少し息切れした私を、後ろから抱きしめました。
荒い呼吸が首筋にあたって、小さく震えると、耳たぶが唇に挟まれ、耳の中に舌を感じました。

今までより一段高い声が出ました。

彼の体は熱くて重くて、下にいると息が苦しくて、でもこのまま呼吸まで一つになれればいいと思いました。
海の底に、二人だけで沈んでくような。そうしたら、帰る場所も年の差も、何もない。
大きなぶ厚い体に包まれて、決して十分ではない自分の胸、お尻だけ立派な自分の体が、その時宝物のように思えました。

後ろから回された彼の腕に触れ、そっと指を吸いました。
彼の生きた日々が刻まれた体。それを、愛さずにはいられませんでした。
今でも、ときどき思い出しては懐かしむのです。ブラインドの隙間から漏れる日の光。

終わった後に彼が作ってくれたチーズ入りのスクランブルエッグ。
確かに二人の世界があったこと。求めあったたこと。

全ては、はかなかったけれど、二人の中で、あの時が生き続ければいいと思うのです。

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