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官能小説 【小説版】タワーマンションの女たち 13話【LCスタイル】

見たくない

今日も上手くいかなかった。

隣でスヤスヤと寝息を立てている詩を見ながら、溜め息がこぼれる。

「ねぇ、?央哉(なおや)。痛いんだけど……」

詩に挿入しようと自分のペニスを彼女にあてがい力を入れた瞬間、困ったような顔で言われた。

「ごめん……。優しくするね」

俺は彼女のヴァギナの入口でゆっくりと浅い挿入を繰り返す。それすらも、詩は痛そうに何度も顔を歪めた。

きっと、顔を歪めるだけで痛いと言わないのは、俺に痛いと伝えることを申し訳なく思っているからだろう。 そんな詩の姿がいじらしいし、俺も申し訳なくて情けなくて、どうにかしたい。

けれど、前戯にはたっぷりと時間をかけていて、出来ることはこれ以上は思いつかなかった。回数を重ねていけば、慣れていくものなのかな……。

飲みたい気分

タクシーの窓から流れるように見える車のヘッドライトが眩しい。

時刻は0時を過ぎる数分前だった。

俺はスマホに視線を落とす。仕事のメールの返信を手早くすると、再び窓の外に目をやった。

起業したのは大学生の時だった。あっという間に十年以上が経ち、今年で三十三歳になった。詩はもうすぐ三十歳だ。彼女との結婚を視野に入れて、タワーマンションを購入したけれど、セックスが上手くいかないことが少し引っかかっている。

詩と付き合っているのは、詩のことが好きだからだ。セックスの為じゃない。けれど、結婚してもセックスは二人の関係を継続していく上で重要なことの一つだと思う。お互いの気持ちを確かめ合えるものだからこそ、詩につらい思いをさせるのは嫌だし、一緒に楽しみたい。

マンションに着くと、俺はタクシーを降りた。

次に詩に会えるのは来週末だ。

エレベーターに乗り込み、自分の住む階数のボタンを押そうとして、手を止めた。

そう言えば、最上階にバーがあったはずだ。

引っ越してから、忙しくて一度も行ったことはない。

モヤモヤした気持ちをお酒を飲むことで紛らわそうとしている自分に苦笑しながら、俺は最上階のボタンを押した。

別世界

今までいろんなバーに行ってきたけれど、このバーの雰囲気はどこか独特だった。

「いらっしゃいませ。Bar ラブ・イマージュへ」

重厚な扉を押しあけて店内に入ると、美人な女性が上品な笑みを浮かべて、俺を迎え入れてくれた。思わず、赤いドレスから半分ほど露わになった胸に視線がいく。それ以上見ないように俺は視線を上げた。

「どうぞ、こちらへ」

女性に促されて、俺はカウンター席に座る。

「はじめまして。麗子と申します」

麗子さんはそう言って名刺を差し出した。手入れされた指先に自然と目がいく。職業柄、名刺交換をよくするので名刺を受け取る時に手元を見る癖がついてしまっていた。

「何になさいますか?」

「マティーニを」

「かしこまりました」

麗子さんは慣れた手つきでミキシンググラスでステアする。

しばらくすると、「マティーニでございます」と麗子さんはカクテルグラスに注がれたマティーニを俺の前に差し出した。グラスに入っているピンに刺されたオリーブが目を引く。

官能小説挿絵:お酒と男女

俺は口をつけると、その美味しさに目を見開いた。今まで飲んだマティーニの中で群を抜いている。

今度、詩を連れて来よう。

詩もお酒は好きだから、きっと喜んでくれるだろう。

俺がそんなことを考えていると、目の前に立っている麗子さんがこちらを伺うように口を開いた。

「今宵、何をお望みですか?」

「え?」

俺は問われた意味がわからず、間抜けな声で聞き返した。

「失礼致しました。てっきり、ご存知でいらしたのかと……」

麗子さんの言っている意味が全く理解出来ないまま、俺は彼女の次の言葉を待った。

「このバーでは、セクシャルな悩みを抱えている方に無償でアドバイスをさせていただいておりまして……」

無償でセクシャルな悩みにアドバイス?

そんな話、このマンションに住むようになってから一度も聞いたことがない。俺はからかわれているのだろうか。

「突然、こんな説明をされてもお困りになりますよね。失礼致しました」

麗子さんは申し訳なさそうに頭を下げた。

「いえ……」

俺はグラスに入っているオリーブを口の中に放り込むと、残っていたマティーニを流し込む。

「すみません、同じのを」

「かしこまりました」

俺は空になったグラスを麗子さんに差し出した。麗子さんはグラスを下げると、マティーニを作り始める。

セクシャルな悩みなら、俺にもある。詩とのことだ。

けれど、それを女性に相談するというのは、いかがなものか。

もし、詩が俺とのセックスを「彼氏とのセックスに悩んでいて……」と男性に相談したとしたら、俺は嫌な気持ちになるだろう。その悩みを他の男性に言うのではなく、まず俺に言ってほしいと思う。俺に言うのが無理なのだとしたら、せめて相談は女性にしてほしい。俺が嫌だと思うことを詩にはしたくなかった。

俺はお酒だけ飲んで、ほろ酔い気分で自分の部屋に戻った。

解決したい

俺には名案があった。

詩がセックスで痛がるのを解決したい。けれど、出来ることは思いつく限り全てやってきた。

そこに登場したのが、セクシャルな悩みにアドバイスをくれるというBar ラブ・イマージュの麗子さんだ。

でも、女性に自分たちのセックスについて相談するのは、配慮に欠ける気がする。

では、友人の話なのだが……、と相談するのはどうだろう。

勿論、友人の話を勝手に相談するとなれば、それはデリカシーのない行為だと思う。しかし、今回は自分たちのことを友人の話として相談するのだから、そのケースには当てはまらない。何より、自分たちの悩みに対して第三者の意見を聞くことも出来て、上手くいけば、悩みを解決することだって出来るかもしれない。

この方法を思いついた俺は、いてもたってもいられなくなり、仕事を早く片付けると、急いで最上階のバーへと向かった。

アドバイスをもらいに

扉を開けると、前回と同じように麗子さんは「ようこそ、Bar ラブ・イマージュへ」と出迎えてくれた。

俺は平静を装って、この間と同じ席に着く。頼むお酒も変わらずマティーニだ。

麗子さんが「お待たせ致しました」と言って、カクテルグラスを静かに差し出してくれる。

「以前、おっしゃっていたことで一つ伺いたいことがあるのですが……」

麗子さんは察したように笑顔で頷いた。

「どうぞ。なんなりと」

「友人から受けた相談なのですが、恋人がセックスの度に挿入を痛がるそうなんです」

「それはご友人もいたたまれないでしょうね」

「ええ、そこで麗子さんに何か良いアドバイスをいただけたらと思いまして」

「そういうことでしたら、お任せください」

麗子さんは軽く会釈をすると背を向けた。黒くて大きな棚の引き出しを開け、何やら取り出し始める。

「ぜひ、ご友人にこれをお渡しください」

麗子さんは手のひらに乗るほど小さな箱を俺に渡した。

その箱はピンクと白のデザインが可愛らしく、自分が手に取るのは、少し気恥ずかしかった。

「これは……」

「ラブコスメ リュイール ホットです」

「ラブコスメ リュイール ホット?」

聞いたことのない言葉に俺は鸚鵡返しする。

「ご友人には、ラブタイムの前に使用するようお伝えください」

「わかりました」

俺は麗子さんに嘘をついたというほんの少しの罪悪感を覚えながら、ラブコスメ リュイール ホットをバッグの中に入れた。

困ったことが……

しかし、翌朝、自分の考えが甘かったことを思い知る。

ラブコスメ リュイール ホットを箱から出したものの、使い方がわからないのだ。

どこを見ても、使い方の説明は記載されていなかった。

なんで、あの時、きちんと使い方を聞かなかったんだろう、と後悔してももう遅い。

俺は今日もBar ラブ・イマージュへ行くことにした。

【NEXT】⇒昨晩も詩とのセックスは上手くいかなかった…(【小説版】タワーマンションの女たち 14話)

あらすじ

彼女とのセックスに悩む主人公。お酒で気を紛らわせようとバーへ向かい…。

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