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官能小説 【小説版】タワーマンションの女たち 11話

こっそり抜け出す夜

なんだか悪いことをしているような気分だった。

夜中になり、両親が寝静まったのを確認すると、私はこっそりと家を抜け出した。

勿論、向かうのは、依ちゃんが教えてくれたこのマンションの最上階のバーだ。そのバーに行けば、私は勇気を持てるらしい。これは行くしかない。

私は高鳴る胸を抑えつつ、エレベーターに乗り込むと最上階行きのボタンを押した。

エレベーターが上昇を始める。同時に私の緊張も加速していった。

勇気を持てる場所

エレベーターのドアが開いて、私の目の前に現れたのはバーの扉だった。

最上階のワンフロアがバーになってるんだ……。

私は心の中で「よしっ!」と気合いを入れると、バーの扉を押しあけた。

何か覚悟をしなければ、開けてはいけないような気がしたのだ。

扉の先に広がるのは、同じマンションとは思えないほどゴージャスな空間だった。

薄暗い店内の天井の真ん中には豪華なシャンデリアが吊るされ、耳を澄ませば心地良いジャズが流れている。

「いらっしゃいませ。Bar ラブ・イマージュへ」

 私が店内に一歩足を踏み入れたまま、その雰囲気に呆然としているとカウンターにいる女性が声をかけてきた。

 綺麗な人……。

「どうぞ、こちらへ」

女性は微笑みながら私に言うと、カウンターの席を勧める。

「ありがとうございます」

私は勧められた席に着くと、彼女を見上げた。

長い睫毛が頬に影を作る。伏し目がちな大きな瞳に思わず目を奪われた。

女性は私の視線に気が付いたのか、顔を上げ再び微笑む。

「はじめまして。麗子と申します」

麗子さんは私に名刺を差し出した。

「ありがとうございます」

そこには、麗子さんが口にした店名と名前、バーの電話番号が記載されている。

「カシスソーダをお願いします」

麗子さんに言うと、「かしこまりました」と言って、カクテルを作り始めた。

バーには時折行くことがある。けれど、一人ではあまりない。

一人でお酒が出るまで待つ時間は手持無沙汰だ。スマホを弄るのは不躾な気がして、私は麗子さんの鮮やかな手つきを見据えていた。

「カシスソーダでございます」

コースターの上にそっとグラスが置かれ、私は「ありがとうございます」と手に取った。

「美味しい……」

「ありがとうございます」

麗子さんの微笑みに私も微笑み返した。

いろんなお店でカシスソーダをオーダーしてきたけど、こんなに美味しいカシスソーダは初めてだった。

私は半分くらい飲み干して、ふと“勇気が持てるようになるかもしれない”とはどういう意味だろう? と不思議に思った。

「あの……」

「なんでしょう?」

「友達にここに来たら、“勇気が持てるようになるかもしれない”って言われたんですけど……」

「今宵、何をお望みですか?」

「え?」

「Bar ラブ・イマージュでは、お客様のセクシャルな悩みを解決するお手伝いをさせていただいています」

「……」

セクシャルな悩み……。

私の悩みも大きく分けたら、セクシャルな悩みに属するってことなのかな……?

私は麗子さんを真っ直ぐ見つめると、雪沢さんのことを話し始めた。

キスをしたくなる唇

「告白する勇気がないなら、自分磨きをしてみるのはどうかしら?」

「自分磨きですか?」

今でもそれなりに自分磨きに手は抜いていないつもりなんだけど……。

スキンケアもしっかりしてるし、体型維持もしてるし、ヘアケアの為に定期的にサロンにも通ってるし……。

これ以上何をしたら良いのだろう、と私が思い悩んでいると、麗子さんは大きな黒い引き出しからペンくらいの長さのピンク色をした細い箱を取り出した。

白く抜かれた部分には、ベリーのイラストが描かれ、箱と同じピンク色の文字で何か書かれている。

「ぜひ、これを使ってみて」

「あの、これは……?」

「キス専用美容液 ヌレヌレ・ラブリーキッスよ」

「キス専用美容液って初めて聞きました」

「あまり見かけないものかもしれないわね。これを使うと唇が潤って、 “キスしたくなる唇”になれると言われているの」

キスしたくなる唇……。

これを使ったら、雪沢さんも私にキスしたくなっちゃったりするのかな……?

そこまで考えて、私は急に恥ずかしくなる。

「きっと、自信が持てるようになると思うわ。頑張ってね」

「ありがとうございます」

私はヌレヌレをぎゅっと握りしめ、バーを後にした。

試してみたら……

家に着くと、幸いにも両親は私が抜け出したことに気付かず、寝室で眠っているようだった。

私は自分の部屋に戻ると、ドレッサーの前に座る。

麗子さんはああ言ってはいたけど、本当にキスしたくなる唇になれるのかな……?

私は半信半疑のまま、ヌレヌレを箱から取り出した。

ヌレヌレはペンより少し短くて、キャップを開けると、筆のような形状のはけに透明フィルムがついていた。私はそれを取り外すと、逆の端をカチカチと回してみる。すると、美容液がじわっとはけの表面に浮かんだ。

鼻を近付けると、ふんわりと甘い香りがする。

「いい匂い……」

私は唇にゆっくりとはけを這わせる。

「ツヤツヤして、キレイ……」

ヌレヌレ女性

唇が潤うだけでこんなにも印象が変わるんだ……。

自分では自分磨きをしっかりしているつもりだったけど、唇のケアまではきちんと出来てなかったかも……。

人と話す時は目を見て話すけど、唇も目と同じくらい印象に残るもんね。

私は鏡に映るツヤツヤと輝く自分の唇にしばらく見惚れていた。

気付いてほしい

女という生き物はつくづく自分勝手だな、と思う。

自分の些細な変化に気が付いてほしいのだ。

正直、唇がいつもと違うなんて、誰が気が付くというんだろう。

それでも、雪沢さんが気が付いてくれたらいいな、と淡い期待を抱いてしまう。

私は始業時間まで余裕があったので、化粧室に行き、ヌレヌレを塗り直した。

ヌレヌレを塗る度に甘い匂いが漂い、癒される。

私はヌレヌレを化粧ポーチにしまうと、自分の席に戻る為、化粧室を出て、廊下を左に曲がった。

「おはようございます」

たまたま、前からやって来た雪沢さんに気が付き、私は慌てて挨拶をする。

「おはよう。って、あれ?」

雪沢さんは擦れ違う直前で足を止めた。

「どうかしました……?」

私も足を止め、雪沢さんを見る。

「あ! わかった! 宮原さん、コスメ変えた? いつもより、唇がツヤツヤしてる」

「わかるんですか?」

「そりゃあね」

雪沢さんはそう言って、エレベーターの方に向かって歩いて行ってしまった。

雪沢さんが気が付いてくれた……!

私はニヤニヤしてしまいそうになるのを必死で堪えながら、自分の席に着き、パソコンを起動させた。

嬉しすぎて

私は雪沢さんが自分の変化に気が付いてくれたことが嬉しくて、依ちゃんを誘って、近所の焼鳥屋さんに来ていた。

「依ちゃん、今日はじゃんじゃん食べて、どんどん飲んじゃって! 私がご馳走するから!」

「本当にいいの?」

「勿論! 依ちゃんに教えてもらったバーに行ったら、キス専用美容液をもらったの。そうしたら、雪沢さんが“コスメ変えた?”って気が付いてくれて……」

「ねぇ、萌絵ちゃん。水を差すようで悪いんだけど、コスメの違いに気が付いてくれただけでしょ?」

「うん! すごいと思わない? いつもと違うって気が付いてくれるなんて」

「すごいことかもしれないけど、特に進展はしてないよね?」

「あ……」

依ちゃんに指摘され、浮かれていた私は現実に引き戻された。

「気付いてくれたのはいいことだと思うけど、萌絵ちゃんが勇気を持って告白することが一つ目のハードルでしょ?」

「一つ目って、他にもハードルあるの……?」

「その雪沢さんって人に、お付き合いをOKしてもらうこと」

「あ、そっか……」

「ねぇ、萌絵ちゃん。勇気を持つ為のコスメなんだから、変化に気付いてもらうだけじゃダメなんだよ。次に繋げなきゃ!」

次に繋げるなんてこと、私に出来るのかな……。

どうやら、勇気はすぐに持てるようになるわけではないらしかった。

あらすじ

依ちゃんから教えてもらったバーへ向かう主人公。バーの麗子からキス美容液を勧められ…

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