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官能小説 【小説版】タワーマンションの女たち 7話
エッチと嘘
綴昭さんのピストン運動が次第に速まっていく。私の口からは幾度となく、甘えた声が漏れた。そんな私を見下ろして、綴昭さんはさらにピストン運動を速める。
私は彼から視線を外すと、自分の部屋の見慣れた天井の一点を見つめ、身体の奥がこすれるのを感じていた。
気持ちいい。けれど、その気持良さは一定の快感を保ったまま、良くも悪くもならない。しかし、綴昭さんの様子を見ていると、とても気持ち良さそうに見える。それは彼の吐息からもわかった。
「朔、イってもいい?」
「うん……、私もイキそう……」
こうして、綴昭さんは果ててしまった。 けれど、私に突き抜けるような快感は今日も訪れない。
私は逆流してくる彼の体液をティッシュペーパーで抑えながら、綴昭さんの方に視線を向けた。「朔、気持良かった?」
綴昭さんはティッシュペーパーでペニスを拭いながら言う。
「うん」と笑顔で答えた私を見て、綴昭さんは嬉しそうに微笑んだ。
またやってしまった……。
彼がイク瞬間、私は自分がイってもいないのにイった振りをしてしまう。 その行動に悪気なんてなかった。ただ嘘をつくことに胸の奥がチクリと痛む。 私がイカないことを綴昭さんが気にするのがなんだか申し訳なくて、イった振りをしてしまったのがそもそもの始まりだった。
私がイッた振りをしているとは知らない彼は、私が彼とのエッチで初めてイッたと伝えた時、とても喜んだ。 彼が喜ぶのも無理はなかった。彼は四十五歳なのだ。そして、私は二十八歳。 若い妻を自分のテクニックでイカせることが出来たとしたら、その喜びは計り知れないものだろう。
嘘をついてから、しまった、と思った。 けれど、私は嘘をついたとは言えず、二度三度と嘘を重ねてしまい、今ではイク振りをするのが当たり前のことになってしまっていた。
どうしよう……。
それが私の正直な気持ちだった。
「朔、こっちにおいで」
綴昭さんに言われ、私はベッドに横たわる綴昭さんの隣に滑り込む。綴昭さんが伸ばした左腕に私は遠慮がちに頭を乗せた。 エッチの後はいつもこうして腕枕をしてくれる。
ただ年の差の所為か、綴昭さんはすぐにいびきをかいて寝てしまう。でも、それが愛おしくもあった。 私はいつも彼のいびきを聞きながら、イケない理由はなんだろう? と考える。
原因はいくつか思い当たっていた。まず、身体の相性が悪いという可能性。 でも、フィット感は悪くない。というよりも、フィット感は抜群で申し分ないように思える。
次に綴昭さんのテクニック不足。けれど、これも考えられない。 なぜなら、綴昭さんは今まで付き合った誰よりもエッチが上手なのだ。 となれば、考えられる原因はただ一つ。
――私の身体が開発されていない、ということだ。
よくよく考えてみれば、今までそれなりに男性と付き合ってきたけれど、一度もイッたことはない。でも、身体の開発ってどうすればいいんだろう?

ささやかな幸せ
翌朝、私は眠い目をこすりながら、ベッドを抜け出し、綴昭さんの持っていくお弁当を作っていた。会社役員をしている彼は、夜は会食が多い。だから、せめて朝ご飯とお昼ご飯はバランスの取れた食事を摂って欲しくて、結婚してからずっとお弁当作りは欠かしていない。
「おはよう。ああ、いい匂い」
綴昭さんは幸せそうに言うと、キッチンに立つ私を後ろから抱きしめた。
「おはよう。顔洗ってきたら?」
「うん」
綴昭さんは私の頬にキスをして、キッチンから出ていく。結婚して良かった、と思うのはこんな時だ。
私は彼の朝ご飯の仕上げに取りかかる。和朝食は手間がかかるけれど、綴昭さんが喜んでくれるから、作ることが苦にならない。
綴昭さんは顔を洗い終えると、いつものようにダイニングテーブルに着いた。 私はこの時間がとても好きだ。 平坦な日常の中に幸せはあるのだと思う。
いってきますのキス
『いってきますのキス』
身支度を終えた綴昭さんはいってきますのキスをしようと私に顔を近付けて、急に止まった。
「どうしたの?」
「もしかして、昨日、あまり眠れなかった?」
「あ、うん……」
「今日はカフェのバイトあるんだっけ?」
「ううん。今日はお休みだよ」
「それじゃあ、今日は家事も休んでゆっくりしてなよ」
「でも……」
「君が寝不足なのは心配なんだ。休める時にきちんと休息を取ることは大切だよ」
そう言って、綴昭さんは私の頭を撫でると、いってきますのキスをして仕事に行った。
困った時の情報収集
綴昭さんを送り出し、私は朝ご飯の後片付けをしていた。 綴昭さんとのエッチでイケないのは私に原因があるとして、それを解決するにはどうすればいいのかよくわからなかった。
こういう時にやるべきことはただ一つ。インターネットでの情報収集だ。 私はダイニングテーブルに置いてあったスマホを手に取ると、早速エッチでイク方法を検索した。
イク方法には、クリトリスと膣の二つの方法があり、クリトリスでイク方が簡単らしい。 膣でイケる人はあまり多くないけれど、Gスポットへの刺激やボルチオと呼ばれる子宮口の入口への刺激でイクことが出来るようになるようだ。
そして、身体の開発はパートナー任せにするのではなく、自分で一人エッチをすることで出来ることもわかった。 だけど、頭で理解することは出来るものの、実際どんな風にすれば、開発が速やかに進むのかということはいまいちわからない。
一人エッチでバイブやローターを使うのは知ってはいるけど、使ったことなんて一度もない。 第一、お店で買うなんて恥ずかしくて私には無理だ。そんな人の為にインターネット通販があるわけだけど、どれを買っていいのかもよくわからないし……。
私がスマホをダイニングテーブルに置くと同時にインターホンが鳴った。 誰だろう?
インターホンの画面を覗き込むと、誰も映っていない。マンションの入口ではなく、ドアの隣にあるインターホンが押されたということだ。
「はい」
「あの、天野です。回覧板持ってきました」
「今、行きます!」
私は玄関に走っていくと、ドアを開け、「おはようございます」と優さんに笑顔を向けた。
「おはようございます。はい、回覧板」
「ありがとうございます」
「もしかして、寝てるの起こしちゃったかな?」
「いえ、起きてましたけど……」
私が不思議そうに優さんを見ると、彼女はほっとしたような表情を浮かべた。
「良かったぁ。体調悪くて寝てるところ、起こしちゃったかと思って……」
「体調悪そうに見えます?」
「うん、顔色がいつもより良くないなって」
綴昭さんにだけでなく、優さんにも言われるということは、余程疲れた顔をしているのだろう。
「実はちょっと寝不足で……」
「寝不足ってつらいよね。私も締切前は寝られないことが多くて……」
優さんはライターさんだと、引っ越してきた時に教えてもらった。今は女性ファッション誌でコラムの連載をしているそうだ。
「優さんって夜中まで仕事をしていても、お肌キレイですよね」
私は優さんの顔をまじまじと見る。
「そうかな? スキンケアをハナビラっていうシリーズに変えてからお肌の調子が良くはなったけど……。あ、でも……」
「でも……?」
私は興味津々で優さんの言葉を待つ。 すると、優さんは私の耳元に手を当て、小さな声で囁いた。
「最近、ラブタイムが充実してるからかも」
「ラブタイムですか!?」
私は思わず大きな声を出してしまう。
「もう、朔ちゃんてば……!」
「すみません……。でも、羨ましくって」
「朔ちゃんも充実してるんじゃない? 旦那さんと仲良さそうだし……」
「仲は良いんですけど、その……悩みはあるっていうか」
「その気持ちわかる! 私もそうだったし」
「優さんにも悩みがあったんですか?」
「うん、その時は一人で悩んでも解決出来なくて、でも誰にも相談出来なくて。そんな時に麗子さんが力になってくれんだよね」
「あの……、麗子さんって?」
「朔ちゃんもこのマンションの最上階にバーがあるのは知っているでしょ?」
「はい、それは」
「そのバーのバーテンダーさんが麗子さんなの」
「麗子さんが相談に乗ってくれるってことですか?」
「相談にも乗ってくれるけど、悩みを解決する為に必要なものを教えてくれるんだよ」
「必要なもの……?」
私は優さんの言っている意味が明確には理解出来なかったけれど、その日の夜、早速麗子さんのいるバーを訪れた。
あらすじ
夫・綴昭にイったふりをしていて悩む主人公・朔。優しい彼に対してますます感じられない自分への不安感が募る。自分の体が開発されていないと思った主人公は…。