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小説サイト投稿作品17 「First kiss」(ペンネーム:たーさん)
「First kiss」(ペンネーム:たーさん)
〜LC編集部のおすすめポイント〜
一生に一度しかないファーストキス…あなたは覚えていますか?
言葉数の少ない2人から、付き合いたての初々しい様子が伝わってきます。
短いですが、情景が浮かんでくるような作品です。ぎこちないやり取りにドキドキします!
未来の約束
改札口を通り、駅から続く一本道。ぎこちなく遠慮がちに繋がれた2人の手。
ゆっくり、ゆっくり歩き目指すのは一本道の先にある時期外れの海岸。
夏には、七夕祭が開かれるのだと彼が教えてくれた。
『一緒に見に来ような』
彼の言葉にそんなちょっと先の未来の約束が嬉しい。
その頃には少しでも2人のあいだに存在するぎこちなさがなくなっていればいいな…なんて思いながら繋がれた手を見ると笑みが零れた。
1人で歩いて行くには少し長い距離だけど、彼が一緒だから苦にはならないそんな距離。
海岸に到着すると、まだ冷たさが残る潮風が知らぬあいだに火照っていた頬を冷ましてくれる。
初めてのキス
2人で海岸の砂浜に腰を降ろし止むことのない波の往来を見つめる。
お互い無言なのに、苦痛でもなく何か話をしなきゃと焦ることもなく、寧ろその2人を包むこの雰囲気が安らぎすら与えてくれる。
もう少しで暖かい春が来ようとしている空がゆっくり夜の訪れを教えるかのように、夕日が2人を照らしながら地平線の先にゆっくりと消えていく。
『綺麗…』
『そうだな』
“この光景はきっと一生忘れない”と、切に思った。
刹那的に隣にいる彼の視線を感じ瞳が合う。
『キスしてもいい?』
『うん』
いきなりの言葉だったけど驚きや躊躇いはなかった。
私も――
同じ気持ちだったから――。
そして、ゆっくり2人の影が重なった――。
初めてのキスに戸惑うことなく頷き、受け入れることができたのは、それはきっと彼だったから。
運命の人
重なった唇が離れ彼を見つめると、同じように彼も私を見つめる。
夢幻を見ているのかのように周りがボンヤリ霞み、波音すら消え、彼と私しか存在しない世界になってしまったかのような感覚になる。
それは、あまりにも甘美で素晴らし過ぎる瞬間で。嬉しいのに何故か泣きたくなる。
それはきっと、彼と出会い、想いあうことができた幸せと、もしかしたら彼をこの先失ってしまうかもとしれない不安を同時に感じて心が震えるから。
この気持ちを伝えたい想いはあるのに、うまく言葉で伝えられない。
私はきっと、たった1人の運命の人を見つけるために生まれてきたのかもしれない。
微笑むと、彼が私の顔を包み込むように手を添えて近づいてくるのと同時に、ゆっくり瞼をおろす。
ゆっくりと2度目の唇が重なった―――。