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小説サイト投稿作品29 「笑わないオトコ」(ペンネーム:yuchikaさん)
「笑わないオトコ」(ペンネーム:yuchikaさん)
〜LC編集部のおすすめポイント〜
無愛想な上司に胸キュン必死です♪
自分の気持ちになかなか気づけない不器用さも◎!!
ヒロインの諦めない姿勢にも元気をもらえます。
大好きな人と気持ちが通じ合うのは難しいことですが、念願かなって恋が実った時にはとても充実しますよね♪
キャラクターに個性があって、テンポ良くお話を読み進めていくことができます。
S系男子がお好きな方にオススメです♪
無愛想な上司
「あの、主任!今度……」
「断る」
「えぇっ!?まだ何も言ってないじゃないですかー!!」
「お前の言いたいことは、大体分かる」
「キャッ!主任、わたしのこと……」
「好きではない。勘違いするな」
もう、何度目だろう。主任の野原徹に、ことごとくフラれ続けて3ヶ月。
それでも石本結衣は、諦めずにいた。
「ねぇ、結衣。あんな冷血上司の、どこが好きなのよ…」
フラれたにも関わらず、落ち込んだ様子も見せない結衣に隣から声を掛けられ体ごと、そちらに向けた。
「えぇ?だってさぁ、主任っていつも無愛想でしょー?そんな無愛想が笑ったら、絶対ステキだと思うの!!」
「は…?あんた、バカじゃないの?」
同期でもあり、親友でもある木下葉子が呆れ顔で、結衣を見つめた。
「どうして、分からないかなぁ?主任の良さが!!」
「分かろうとも、思わないわよ。はぁ…。仕事しよ」
「うーん…」
結衣は腕を組み、首を傾げるも葉子も仕事を始めたので自分の席へと向き直った。
絶対笑ったら優しい顔になると、思うんだけどなぁ。
もっと、女の子に優しくしたら株上がるのに。
はっ、上がったらライバルが増える!
ダメダメっ!!
結衣は、頭をブンブン横に振った。
「はぁ…。石本。マジメに仕事をしようとは、思わないのか」
「ひゃっ!しゅ、主任!!」
突然、上から声がして見上げると呆れ顔の徹が立っていた。
「まったく…、お前は。もうちょっと、木下を見習ったらどうなんだ」
「え」
チラッと、葉子を見ると真剣な顔をし、仕事に取り掛かっていた。
「まったく喋るな、とは言わない。けど、仕事なんだ。遊びに来てるわけではないんだ。だから……」
「主任は、葉子が好きなんですか」
「なぜ、そうなるんだ」
話の途中だったが、結衣は耐えられなくなり、口を挟んだ。
徹は結衣の言葉に、更にゲンナリとした顔をした。
「ちょ、ちょっと結衣!?なに、言ってるのよ!」
結衣と徹の会話に、周りは「なになに!?」
とチラチラ見ていて、葉子も慌てて会話に飛び込んだ。
「だっていつも、葉子とわたしを比べてるじゃないですか。
主任もキレイで仕事の出来る女性がお好きなんですね」
「はぁ、バカバカしい」
徹は、わざとらしく盛大な溜め息を吐くと、自分のデスクに戻った。
「……っ」
結衣は今にも泣き出しそうな涙を堪えると、無言でパソコンに向き合った。
「結衣」
葉子の問いかけにも一切答えることなく、ひたすらキーボードを打ち続けた。
それは定時を過ぎても、ずっと……。
香水
「結衣…。帰らないの…?」
「ごめん。もうちょっと、残ってく」
いつもなら、葉子と一緒に帰る結衣だが今日は帰らなかった。
「無理だけは、しないでね…?」
それだけ言うと、葉子は結衣に背中を向けた。
「あ、待って葉子!さっきは、ごめんね…。無視したわけじゃないの…。あのとき、多分葉子の顔見たらきっとわたし泣いてた…。だからっ……」
「分かってる、分かってるから…。ね?」
「葉子…。ありがと」
二人は顔を見合わせると、クスッと笑った。
「あ、そうだ。これ」
「なぁに?それ」
葉子が取り出した小さい容器。
「最近買ったの。すごくいい香りで、リラックスできるんだぁ。小分けにして持ち歩いてるの。結衣にあげる!これ付けて頑張って!」
「いいの…?ありがとう!もうちょっとだけ、頑張るね!」
葉子は笑顔で手を振ると、帰宅した。
「わぁ、いい香り。甘いけど、甘ったるくなくて好きだなコレ」
さっそく、結衣は葉子からもらった香水を付け仕事を再開した。
外は、どんどん暗くなり社員も一人、また一人と帰って行く。
それでも結衣は、仕事を止めようとはしなかった。
今まで不真面目でもなかったが、真面目でもなかった気がする。
徹を好きになってからは、徹ばかり気になっていた。
「あぁ…。疲れた……」
そんな独り言を呟き、ふと、顔を上げると徹はどこにもいなかった。
独り言
「ねぇ、いいの?」
「なにがだ」
「彼女。まだ、仕事してるよ?」
「いいことだ」
結衣が必死に仕事をしている中、徹は同僚の真也と二人で休憩室にいた。
ほんの少しの休憩だ。
「いくらなんでも、言い過ぎだったんじゃない?」
「そうか?俺は思ったことを、言ったまでだ」
「はぁ…。ほーんと、徹くんってユウズウのきかないオトコだよねぇ」
「なっ…」
徹は眉間にシワを寄せ、不機嫌な顔になった。
「そんなんじゃ、結衣ちゃん離れていっちゃうよ?」
「ちょうどいい。迷惑してたんだ。助かる」
「うわぁ…。サイテーなオトコ」
「……ぬ」
さすがに徹も「サイテー」という言葉には、言葉を詰まらせていた。
「あのさ、徹くん。言うけど、彼女みたいな子いないよ?」
「どういう意味だ」
「こんな無愛想でサイテーな上司を“好き”だなんて言ってくれる子は、他にいないって言ってんの」
「お前なぁ……」
徹は、溜め息を吐くと首を弱々しく横に振った。
「徹くんは、このままずーっと一人でいいわけっ!?」
「お前には、関係のないことだ」
「孤独死だよ、コ・ド・ク・シ!!わぁ、かわいそうな徹くん…」
「勝手に決め付けるな」
もうこいつとは、話してても時間のムダだと感じた徹は席を立った。
「彼女のこと!ちゃんと、真剣に考えてあげなよー!!」
休憩室のドアが閉まる直前、そんな声が徹の耳に届いた。
「真剣って…。どうしたら、いいんだ…。さっぱり、わからん」
部署に戻る徹は、そんな独り言を呟きながら一人、廊下を歩いた。
掴まれた腕
「まだ、帰らないのか」
徹が休憩から帰ってきて、数時間。
終電の時間が、近付いていた。
それでも結衣は、手を止めようとはしなかった。
そんな結衣に、徹は思い切って声を掛けたのだ。
「明日、休みなので。主任は先に帰っていいですよ?戸締り、ちゃんとしておきますから」
いつもはニコリと微笑む結衣だが、今日はニコリともしない。
それどころか、目も合わせない。
そんな結衣に、徹は少しだけイラッとした。
「あまり、詰め込み過ぎてもよくない」
「別に、詰め込んでません」
「……いいから、帰るぞ。支度しろ」
「ちょっ…!痛いですっ、主任…!!」
徹は腕を掴むと、そのまま力任せに結衣を引っ張り上げた。
「だったら、早く支度をしろ」
「わ、分かりましたからっ。離してくださいっ!!」
「あれれェ〜?お取込み中だったぁ?」
もう二人しか残ってないと思っていた中、冷やかしのようなそんな声がした。
見ればドア付近で腕組みをしながら、ニヤついている真也がいたのだ。
「徹くん、会社で押し倒そうとか、なかなか強引なやり方だねぇ」
「ば、ばかやろう!ど、どうして俺が…。そんなことするはずないだろ!」
「ふぅん、そうなんだ。ま、いいや。それより、結衣ちゃん。今度ゴハン行かない?」
怒る徹を軽くあしらうと、真也は結衣に声を掛けた。
「え、はぁ…。別にいいですけど」
「ほんとっ?じゃぁ、メアド教えてよ」
「あ、はい」
結衣は真也に言われるまま、携帯を取り出した。
「石本、帰るぞ」
「え、主任!?ちょっと、今……」
「うるさい」
徹は携帯を操作しようとしてた結衣の手を引っ張ると、そのまま無理矢理廊下に連れ出した。
「まったく…。徹くんは、こうでもしないと素直にならないんだから」
そんな真也の声は、徹には届かなかった。
体が勝手に
「主任、痛いですってば!!」
思いきり、手首を掴み歩く徹に結衣は、ちょっとだけ声を張り上げた。
「あ、すまない……」
「もう…。どうしたんですか」
素直に謝る徹に、結衣は少し戸惑った。
「どうしたって…。お前だって、どうしたんだ」
「はい…?なにが、ですか」
「なにが、って…。あんな男に警戒もせず、アドレスを教えようとしてただろ」
「しょうがないじゃないですか。意中の人は、わたしなんかに興味ないみたいですし?」
結衣の言葉に、徹は何も返せずにいた。
意中の人が、自分だと分かったからだ。
「わたしだって、3ヶ月頑張りました。それでも脈ゼロですもん。それより、今日なんてみんなの前で、あんな怒り方されて、もう完全ないなって思い知らされましたから」
「……」
「理由、聞けて満足しましたか?じゃぁ、わたし帰りますので。お疲れ様でした。」
結衣が徹の前を、横切った。
これで、いいのか…?
彼女はずっと自分に、好意を寄せてくれていた。
それなのに、これでいいのか…?
真也に取られるかもしれないんだぞ。
徹の心に、色んな感情が溢れ出す。
だけど、答えが出る前に体が勝手に動いていた。
「しゅ、にん…?」
「……行くな」
徹は後ろから、結衣の手首を優しく握りしめた。
「今、なんて……」
「……だから、行くなと言ったんだ」
夜だというのに、徹の顔や耳までもが赤くなってるのが結衣には分かった。
「急に、どうしたんですか…?」
「……分からない。体が勝手に動いたんだ」
いつもの無愛想な上司。
だけど、いつもとは違う一面に結衣は自然と笑顔になっていた。
「……お前は、笑ってるといい」
「可愛いってことですかぁ〜?」
「違う。勘違いするな」
やっぱり無愛想だ、と結衣はクスッと笑った。
俺の隣で…
「主任、わたしに興味わいてきました?」
「……わいてなどいない」
「そうですか。じゃぁ、今から会社に戻ってメアド交換……」
「わいたかもしれない」
目も合わせず、ボソリと言う徹に結衣はプッと吹き出した。
「なんだ」
「主任、わたし好きなんです。主任のことが、大好きなんです」
不機嫌そうな徹に、結衣は急にマジメな顔になり告白をした。
「女として見れないのなら、今すぐ振ってください。お願いします」
結衣は、深々と頭を下げた。
「石本、顔上げてくれ」
徹の言葉に結衣は、ゆっくりと顔を上げた。
「お前は、そんな顔より、その…。笑ってるほうが、か…可愛い」
「主任…?」
「俺の隣で…。笑っていてほしいと、思った…」
「しゅ、にんっ…」
結衣の視界がボヤけて、前が見えなくなると同時にポロっと涙が溢れ出た。
「笑って、くれないか」
「……はいっ」
徹の言葉に涙目になりながらも、ニコリと目を細め結衣は微笑んだ。
「……ありがとう」
「……っ!!」
徹は今まで見せたことのない笑顔を見せると、ためらいながらも結衣を抱き寄せた。
「さっきから思ってたんだが…。お前、いい匂いするな」
「欲情しました?」
「アホ」
徹の“アホ”に結衣は、盛大に吹き出した。
「主任っ、今度わたしとゴハン行ってくれますか…?」
「あぁ、行こう」
「デートは?してくれますかっ?」
「あぁ、当たり前だろう」
やっと、振り向いてくれた。
この3ヶ月諦めずに、頑張って良かった。
葉子がくれたこの香水も、後押ししてくれたのかな。
無愛想な上司だけど、自慢の彼氏です!!
「主任…」
「なんだ」
「キス、してほしいです…」
「それは断る」
「えーっ!?どうしてですか…!!」
「は、恥ずかしいだろっ」
「乙女ですか!!」
「…うるさい、黙れ」
甘い関係になるのは、まだまだ先みたいです……。