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小説サイト投稿作品19「僕らの秘密」(ペンネーム:みまさか永久子さん)
「僕らの秘密」(ペンネーム:みまさか永久子さん)
〜LC編集部のおすすめポイント〜
ギャップ萌え…とはまさにこのことですね♪
いつもは見せない特別な表情と官能的な姿…
そのギャップが激しければ激しいほど恋は熱く燃え上がります♪
男性目線で描かれた作品ですが、ヒロインの女性に、同性の私もドキドキしてしまいました!
髪の毛がきれいな女性って素敵ですよね♪
鉄仮面の彼女
「全然、面白くない。やり直し」
抑揚のない声でそう切り捨てると、彼女は顔色一つ変えずまたパソコンと向き直った。
「うっ…」
彼女に原稿をつき返された契約社員の若い女の子は、人目もはばからずその場で泣き出してしまった。
無理もない。やり直しは、これでもう十回目。
それも、毎度同じ台詞で原稿をつき返されているのだから、そりゃ、泣きたくもなるだろう。
僕の勤める広告代理店では月に一度タウン誌を発行している。
地元ではわりと有名な雑誌で、隠れ家的なお店の情報や、デートスポット特集や、サロンのクーポン券が満載でそこそこ人気がある。
地域情報誌ながらライターの筆力の高いのも評判だ。
「いつまで、そこで泣いてるの。泣いたからって、文章がおもしろくなるわけでもあるまいし」
彼女がそう言うと、泣いていた女の子はとうとうオフィスを飛び出して行ってしまった。
重苦しい空気がオフィスに漂う。
「鉄仮面のせいで、また、若い女の子がやめちゃうよ」
営業の上野が、僕にそっと耳打ちした。
僕は、鉄火面と呼ばれている彼女をこっそりと盗み見る。
こんな空気になっても、彼女だけは相変わらず何事もなかったかのように淡々とキーボードを弾いていた。
うわさ
鉄仮面こと、平沢琴美は、このタウン誌を立ち上げた編集長だ。
三十六歳。独身。趣味仕事。恋人なし。
ほとんど化粧をしていない顔に縁のないめがねをかけ、服装は野暮ったいねずみ色のスーツが定番。絵に描いたようなオールドミス。
「なあ、鉄仮面って、あれのときも、無表情なのかな?」
上野がにやにやする。
「あれって?」
「決まってるじゃん。エッチの最中ってこと」
ああ、そういうことか。
鉄仮面というあだ名の通り、平沢琴美は表情をほとんど変えない。
嬉しいときや悲しいときはもちろん、さっきみたいに、どんなに怒ったとしても、だ。
よく言えば冷静。悪く言えば冷血なのだろう。
怖い上司なら他にもたくさんいるけれど、平沢琴美のように感情がまったく表面にでないのはもっと怖い。
一体、何を考えているんだろう。彼女は腹の底から笑ったことがあるんだろうか…。
飲み会の場では必ず彼女の話題が上った。
「なんていうかさ、柔らかいところが一つもないよね。心も身体もぎすぎす。表情も声も硬い。 どんだけ、閉ざしてんだよって話。あんな女抱いても、全然面白くないだろうな」
上野はそう吐き捨てると、営業先へ出かけて行った。
視線の先に
確かに彼女は魅力的な女性とは言いがたい。容姿が十人並みなうえに、可愛げのないお堅い女。
けれど、そんな平沢琴美にも一つだけ柔らかなところがある。
それは、髪の毛だ。
茶色いバレッダで後ろに一まとめにしただけのロングヘアーは、実は絹糸のように滑らかで柔らかい。
てっぺんから指先で梳くと一度も絡まることなく毛先まで通過する。
執拗に髪の毛を触ると、彼女は鉄化面からただのか弱い女になる。
何度も何度も繰り返すうちに、か弱い女から淫らな女に変わる。
けれど、そんなことはこの会社の人間は誰も知らない。僕以外は。
僕の視線を感じ取ったのか、彼女がふとパソコンから顔をあげた。
にっこりと微笑むと、彼女は軽くお辞儀してまた下を向いた。
西日に照らされた彼女の頭上にはいくつもの天使の輪が浮かび、輝いていた。
二人きりのオフィス
初めて彼女とそういう関係になったのは半年前のこと。
営業先から帰ると、オフィスに彼女だけが残っていた。
誰もいないことで気が緩んだのか、めがねを外し、机につっぷすように眠っている。
このままにしておくのもかわいそうだから起こしてやろうと僕は彼女に近づいた。
その時、蛍光灯に照らされる彼女の髪の毛の美しさに気付いたのだ。
あまりの美しさに、僕は導かれるように彼女の髪の毛に触れた。
美しい髪の毛をしている人はたくさんいるけれど、艶かしく美しい髪の毛をしている人はあまりいない。彼女はまさにそれだった。
彼女の髪の輝きにはエロスさえ宿っていた。
僕は、まるで、彼女の髪の毛に誘惑されたような気分だった。
真っ直ぐに伸びた黒髪は小動物の毛のように軽く、予想以上に滑らかな手触りをしていた。
僕は彼女を起こさないようにそっとバレッダを外すと、彼女の見事な髪の毛の感触を楽しむように弄んだ。
梳いたり、撫でたり、指に絡めたり…。
震える肩
しばらくすると、眠っているとばかり思っていた彼女の肩が震えているのに気がついた。
「平沢さん。起きてたんですか?」
恐る恐る呼びかけると、彼女はゆっくりと顔をあげた。
僕は息を呑んだ。顔を上げた彼女は鉄仮面なんかじゃなかった唇をぎゅっと噛み締め、瞳は涙で潤み、頬はピンク色に染めた、なんとも悩ましげな表情。
「私、弱いのよ。髪の毛触られるのに」
彼女は恥ずかしそうにそう言った。僕はたまらなくなって、彼女を押し倒した。
「やめなさい!」
平沢琴美は抵抗したが、僕が髪の毛に触れると、湿った声を上げ、抵抗するのをやめた。
僕はセックスのあいだずっと、彼女の髪の毛に触れていた。
キスをしながら頭皮を刺激し、胸に触れながら髪の毛を口に含み、時々は乱暴な手つきでもみくちゃにした。
そのどれにも彼女は艶かしい反応を見せた。
鉄仮面と呼ばれている女は、僕の前で散々乱れ、果てた。
なんでも、髪の毛は彼女の最大の性感帯で、セックスの最中に撫でられると、まるで一本一本に神経の通っているような感覚に陥ることすらあるのだそうだ。
それ以来、僕らは秘密の関係を続けている。
シトラスの香り
「これ、直しておいて頂戴」
ぼんやりしていると、目の前に平沢琴美がやってきて僕の机に書類を置いた。
相変わらず、そっけない態度。
けれど、彼女が立ち去ったあとほんのり残ったシトラス系の香りを嗅ぎ取った僕の胸は高鳴った。このシャンプーは彼女からのお誘いのサインなのだ。
僕は彼女の無機質な後姿をじっと見つめた。
あの美しい黒髪を、今日はどんな風にいたぶってやろうか。
乱暴に押し倒したとき、真っ白なシーツに孔雀のように広がる彼女の髪の毛を思い出し、僕はそっと目を閉じた。