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小説サイト投稿作品1 「愛すべきフレーバー」(ペンネーム:永以真子さん)
「愛すべきフレーバー」(ペンネーム:永以真子さん)
〜LC編集部のおすすめポイント〜
編集部スタッフいちおしの作品!
女の子が大好きな、甘くてとろけるアイスクリーム。
カレとのデートで仲良くアイスクリームを選ぶ描写から、とても可愛く、微笑ましいふたりの姿が思い浮かびます。
主人公の心情の表現がとても上手で、リアルな気持ちが伝わってきます。
アイスを食べるときには、マネしてみたい!シチュエーションですね。
彼の笑顔には敵わない
「アイスクリーム、食べに行こう」
と言って、彼はするりと私の手を握り締めた。
そして私の答えを聞く前に、颯爽と歩き出す。ぐいっと繋いだ手を引っ張って。
向かったのは近所のショッピングモール。
一階のフードコートにあるアイスクリーム屋さんを目指す彼の足取りは、弾むように軽ろやかで楽しそう。
私は彼に手を引かれるまま。
ついて行くのに必死になっているというのに、彼は鼻歌でも出てきそうな涼しい顔をしてる。
もう少し、ゆっくり歩いてよ。
文句のひとつでも言ってやろうかと思う気持ちが、浮かんでは消えていく。
だって彼が時々振り向いて、きゅっと口角を上げるから。
そんな彼の顔が可愛いから。
彼が振り向くたびに、文句を言い出しそうとした口を噤んで微笑みを返す。
何事もなかったかのように、彼に歩幅を合わせながら。
ダメだ、彼の笑顔には敵わない。
視界の端のあなた
ショーケースの前に立ち、ひと目覗いただけで彼が顔を上げた。
ちらりと私を見て、「決まった?」と問いかける。
「うん、ちょっと待って」
私は答えて、ショーケースを見渡した。
前に来た時に食べたフレーバーを思い出しながら。
彼はもう、何を注文するか決めている。
さっき覗いた時に決めたのではなくて、ここに来る前から既に決めていたのだから。
ショーケースを覗く私の視界の端には、常に彼の顔が映ってる。
早く決めろとは言ったりしないけど、見られているというだけで焦ってくるじゃない。
後から来たカップルが、私たちを追い越して店員さんに注文してる。
何を注文しているのか、そちらに耳だけ傾けてみた。
よし、私も決めた。
間近で見つめられたら…
「やっぱり美味しいなあ……」
彼はスプーンを咥えて、無邪気な笑顔。
彼が食べているのは、チョコチップの入ったチョコレートのフレーバー。
チョコレートの好きな彼は、いつも決まってチョコレート系のフレーバーを食べる。
どうして、こんなに美味しそうに食べるんだろう。
スプーンを咥えるたびに、彼は目を細めて嬉しそうに口角を上げる。
そんな彼の顔に見惚れてしまって、いつの間にか私の手が止まってしまう。
「ごちそうさま、美味しかった」
食べ終えた彼は、語尾に音符でもついているんじゃないかと思うような声。
じっと私を見ていると思ったらテーブルに肘をついて、ぐいと私へと顔を寄せてくる。
そんな間近で見られてたら、恥ずかしくて食べられない。
じわじわとこみ上げてくる緊張感が灯した熱は、頬から体中へと広がっていく。
「可愛い、すぐに赤くなるね」
恥ずかしさを必死に堪える私に、彼が追い討ちをかける。
悔しい……
いつものパターンだとわかってるのに。
「黙っててよ……、あっち向いて、見られてたら食べられないでしょ」
と言い終わらないうちに、手にしたスプーンからアイスクリームがこぼれ落ちた。
ぽたりとテーブルにできた悲しいシミ。
そこに注がれる彼と私の視線。
「ああ、もったいない」
あなたが余りにも見てるから、と言いたいのを堪えて彼を睨んだ。もちろん冗談だけど。
彼がどんな反応をするのか、ちょっと見てみたかっただけ。
少し口を尖らせてみたら、彼が顔を引きつらせる。
「ごめん、布巾持ってくる」
慌てた様子で席を立つ彼の背中を見たら、少しかわいそうなことをしてしまったように思えて。
ごめんねと心の中で謝りつつ、スプーンを握り締める。
彼のいない間に食べてしまおうと、急いで口へと放り込む。
彼の姿を横目で見ながら、急げ急げと。
「ごちそうさま」
彼が戻ってきたのは、ちょうど食べ終えて一息吐いたところ。
彼が見つけて、にこりと笑う。
「やっと食べ終えた?」
「うん、美味しかった」
うまくいったとほくそ笑む私の隣に彼が立ち、テーブルに布巾を滑らせる。
テーブルに置き去りになっていたアイスクリームが、綺麗に姿を消していく。
「ありがとう」
と見上げたら、予想外に彼の顔がすぐ近くにあったから驚いた。
後退る間も無く素早く伸びた彼の手が、私の頬を包んで引き寄せる。
もはや手遅れ。
ぎゅっと目を閉じると同時に、唇に柔らかな感触。
重なり合う唇の隙間から流れ込んでくるチョコレートの匂い。
さっき、彼が食べたアイスクリームの味だ。
胸の鼓動が今にも弾けそうになる。
このまま蕩けてしまいたいのに、周りが気になって目を閉じることもできなくて。
それなのに、ここがフードコートという公衆の面前だということを忘れてしまいそう。
ゆっくりと、温もりが離れていく。
チョコレートの余韻を追いかける私の視線と、彼の視線が交わった。
フードコートの彼方から、女子高生たちの大きな笑い声が耳に飛び込んできた。
食事時を外しているから、フードコートにいる人は少ないのが幸い。
皆自分たちの世界にすっかり入り込んでいて、私たちなど気にする様子もない。
私たちだって同じ。
「ごちそうさま」
きゅっと口角を上げて、彼が微笑む。
私の大好きな顔をして。
END
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あらすじ
キスが甘い…とろける…
笑顔でアイスクリーム屋さんに急ぐ彼と面倒に思いながらもそれについていく彼女。
じっと見つめられるその視線にドキドキ、降ってくるキスに胸が熱くなり…