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小説サイト投稿作品38 「キツく抱き竦めて」
「キツく抱き竦めて」
〜LC編集部のおすすめポイント〜
彼氏に振られ、落ち込んでいたところに現れた、昔からお兄ちゃんのような存在であった総人。
そんな中、主人公が化粧を落とした姿を見た総人は…
“お兄ちゃん”から“恋人”へ…2人の心の揺れ動きが鮮やかに描かれています♪
突然の別れ
「どうしたの。そんな慌てて」
いつもならゆっくり着替える私が走りながら更衣室に入ってきて猛スピードで着替えだした私に目を丸くする。
「実は彼氏が迎えにきてるらしくて」
「だから急いでるんだ。よかったね」
その言葉に大きく頷いた私。最近お互い仕ことが忙しくてなかなか会えなかったから、もう3週間近く会っていない。だから1秒でも会いたい。
「失礼します!」
短時間で着替え終え更衣室を飛び出した私はエレベーターに乗り込むと、そのまま1階でおりる。ロビーを抜けて外に出て、周りをキョロキョロ見渡せば見覚えのある黒の四駆が見えて頬が緩んだ。
大好きな大好きな彼氏――、のりくんの車。
「お待たせ」
「いや、勝手に来た俺が悪いんだし」
いつものように助手席に乗り込むと、のりくんは苦笑いをしてから、ラジオのボリュームを下げた。
「今からご飯?それとものりくんの家??」
「今日は話したいことがあって、とりあえずこんなところにずっと停めておくわけにもいかねぇし出す」
いつもののりくんじゃない気がする。
いつもと違うのりくんに違和感を感じながら、久しぶりに会えた嬉しさにその違和感を気にしないことに決めた私は、仕事のことやのりくんと会えなかったあいだにあったことを話し続けて。
いつの間にか車はファミレスの駐車場に停まっていた。
「今日はここでご飯?」
「ああ、うん。ここのファミレス好きだって言ってたろ?」
「うん。グラタンが絶品なんだよ!」
ファミレスに入り席に案内された私達。すぐにメニューを広げた私とは対照的にのりくんはメニューを見ずに、何かを考えてるのかテーブルの一点を見つめている。
「のりくん…?」
「え、あ、ごめん。考えごとしてて」
やっぱり…、やっぱり今日ののりくんはのりくんらしくない。
「どうしたの?何か悩んでることがあるなら、私悩みでも」
「…別れてほしいんだ」
そんなのりくんのいきなりの言葉をすんなり受け入れられるはずもなく、ただ私は目を見開くことしかできなかった。
そんな私にのりくんは。
「そういうことだから…、うん」
居心地悪そうに私から視線を外した。何がそういうことなの?何がうんなの??
「の、のりくん冗談キツい」
「冗談なんかじゃない。今日はそれを言いたくて会いに来た」
冗談じゃないってことは…
「本当に別れるつもりで…」
「ごめん」
そう言って頭を下げたのりくんにやっぱり私は詰め寄ることなんてできなくて、ただただ見つめるだけ。
本当は泣いて縋りたいよ。でも今の私には縋りたい気持ちはあるものの、それを実行する力を私は持ち合わせていなかった。
再会
一方的に別れたいと私に告げ、別れたい理由すら教えてくれない相手と付き合ってたなんて――、情けない。
あれから私はよく覚えていなくて、気が付くと夜道を1人で歩いていた。ここはどこなんだろう?虚ろな目で周りを見渡してもよく分からなくて、やはり夜道ということしか分からない。
「はぁ…」
溜め息を吐いてとぼとぼと歩く私の頭にピチャンと滴が当たりまた溜め息を吐き出した。最悪としか言いようがない。
空を見上げると大きな雨雲が徐々に近付いてきてるのが分かり、ザーッと雨が降りだすのも時間の問題。そして残念なことに今日は折り畳み傘を持ち歩いていない。
「ロッカーに置いたままで出てきちゃったから…、なんで今日はこんな悪いこと続きなの」
ポツリそう呟いた私は今日付けで元彼になってしまったのりくんとの思い出を思い出す。
のりくんと付き合ってから今年で3年目。そのあいだに私はあの会社に勤め、のりくんも夢だったプログラマー関係の仕事に就けた。だから必然的に私とのりくんは擦れ違いの日々が続いてしまったんだ。
喧嘩も数えられないくらいしてきた。でもそれ以上にのりくんと笑っていた時間の方が多かった。
「…、やだ…っ」
涙が頬を伝いそれを両手で拭う、そんな私の耳に――
「りん?」
私の名前を呼ぶ声が聞こえた。え…っ?と私がその声の方に振り向く前に。
「どうしたんだよ!?」
その声の主が私の肩を掴んだ。
「何かあったのか!?」
「総人くん…」
私の名前を呼び、私の肩を掴んだのは総人くんだった。総人くんは5歳年上で私が中学を卒業するまでお隣に住んでいた、言わばお兄ちゃん。
心配そうに私の顔を覗き込む総人くんに、止めなきゃと思っているのに涙は止まることはなくて、昔と変わらず優しい優しい総人くんに涙が出てくる。
何を聞いても涙を流すだけの私に総人くんは、
「俺の家、そこだから。落ち着くまでいなよ」
と私の手を引いた。
変わらない優しさ
「今、飲み物用意するから待ってて。りんは何がいい?」
「なんでもいい…」
「じゃ、ココアでもいれるよ。りんホットココア好きでしょ」
総人くんが住むマンションに連れてきてもらい、座った頃には私の涙は止まっていた。
少し冷静になってみると…総人くんの前であんなに泣くなんて小さかったときと全然変わってなくて恥ずかしくなった。昔はお母さんに怒られた私を総人くんはよく慰めてくれたんだっけ。
「りん」
「ありがとう」
総人くんが帰ってきて私の前にホットココアの入ったマグカップを置くと、私と向かい合わせになるようにテーブルを挟んで座った。
「少しは落ち着いた?」
「うん…、なんかごめんね」
「謝らなくてもいいよ。りんが泣いてるのに無視できるわけないし」
そうだね。やっぱり総人くんの優しさは何にも変わっていない。昔と何も変わってない。
ホットココアを一口つける私に総人くんは言いにくそうに口を開いた。
「…理由聞いていい?泣いてた理由」
当然だと思った。それに泣いてた私をわざわざここに連れてきてくれた総人くんにはそれを知る義務もある気がして、私は小さく頷く。
「…彼氏に振られちゃった。いきなり来ていきなり言ってきて、私と別れたいと思った気持ちも全く教えてくれなかった」
「――」
「私はずっと好きだったんだよ。仕事が忙しくてもなかなか会えなくても別れたいなんて思わなかったし、けど違ったんだなって」
マグカップを持ったまま俯く。顔を上げたらまた泣いちゃいそうで、マグカップの中身だけを見つめていた。
「縋ることもできなかった…」
ぎゅっと唇を噛み締めた私は、泣かないためにもグッと我慢したまま顔を上げる。そして笑った。
「けどもう大丈夫。見返して…、私と別れたことを後悔させてやる」
笑ったままそう意気込んだ私を総人くんは痛々しそうに私を見つめていて、その表情に不自然な笑顔だったのかな?なんて不安になる。
「……っ、洗面所借りるね」
そう言って私は立ち上がる。
きっと今の私はとても酷い顔をしているはずで、涙で崩れた化粧をなおさない限り、総人くんは私を痛々しそうに見てくるような気もして。私自身も痛々しくなる気がして。早くその顔を直さなきゃと思えた。
素顔の私
「ふぅ…」
洗面台に両手をついて深く息を吐いた。
――とにかく想像以上。こんな酷い顔で総人くんと話してたなんて恥ずかしい。
全部落として、全部一からしたいと思うのに、流石にそれは時間がかかりそうで悩む。
「総人くんだから…、いいよね」
小さなときなんて化粧をしてなかったわけだし、素の私を見ても総人くんなら普通に見てくれるような。
意を決してキュッと蛇口を捻ると水が流れてきて、それを両手ですくい顔にかける。パシャパシャと何度かしただけでも化粧が落ちているのは、私がクレンジングオイルではなく水で落ちるタイプの化粧品を好んでいたから。
タオルで顔を拭くと、そこには派手とはかけ離れている私の顔がある。
うまれたときから色素が薄い私。だからか何も塗ってない唇は存在感がなく好きにはなれなかった。
「あ、そうだ」
私はポーチの中からリップを取り出すと蓋をあけた。このリップは自然的だから素っぴんでも合うような気がする。
ゆっくり丁寧にリップを塗ると、存在感のなかった唇がプルっと輝いてとても目立っていた。
これで大丈夫…リップをポーチの中にいれると次は眉毛が気になって、眉毛を薄く書く。そして次は――
「キリがないからやめておこう」
次々欲が出てくる私自身に苦笑いを浮かべると、ポーチを鞄の中にいれてから、総人くんがいる場所に戻った。
誘う唇
「お待たせ」
「おかえり」
座って雑誌を見ていた総人くんが振り替えると、少し目を見開いた。そんな総人くんに私は、素っぴんだったから驚いてるのかな?なんてことを思っていて。なぜ総人くんが目を見開いたのか。その理由を私が知ったのは――
「ねえ、りん」
「なに」
「もしかして誘ってるの」
すぐのことだった。
‘もしかして誘ってるの?’
総人くんの口から出てくると思わなかった言葉に次は私が目を見開いた。
「そ、総人くん…?」
「りんはさ…、俺が昔のままだと思ってる?」
「総人くんは優しくて昔のままだよ」
総人くんは立ち上がると、立ち竦む私の前にきて私と視線を合わせた。
「総人くんは優しくて昔のまま、か」
私が言った言葉を呟いた総人くんは、ハッと鼻で笑う。
「間違ってるよ。りんは」
どういうこと…?いきなり総人くんの目つきが変わり胸が大きく鳴った。こんな目の総人くんを見たことがない…
「昔から変わってないのはりんの方だよ」
「え…」
「俺がどんな気持ちでいるとか全く気付いてないしさ…、ねぇ、なんで今素っぴんを見せんの?ねぇ、なんで唇をプルプルにしてんの」
だって、それは…
「俺からするとりんが俺を誘ってるようにしか思えないんだけど」
「ちが、…んっ」
突然塞がれた唇。それは総人くんの唇が私の唇に重なったことを示してる。
イヤイヤと総人くんの唇から逃げようとするけど、そんなことはさせないと言わんばかりにより強くなる総人くんの力。
いつの間にか私の肩に総人くんは手をまわしていて、抵抗するように私の手は総人くんの胸を押している。それでも総人くんの身体は動かない。
「や、あっ」
総人くんは乱暴に私の唇を抉じ開けると、私の舌を絡め取った。
逃げても逃げようとしても激しく動く総人くんの舌からは逃げられない。どんどん力がなくなる私からはもう…抵抗する力はなくなっていた。総人くんの胸を押している手をだらんと下げる。
抵抗していたときはあまり感じなかったこの音。部屋に木霊ように響いている総人くんと私の口から出てる音さえも、私はすぐに気にしないようになる。
キツく抱き竦めて
「はぁ…、はぁはぁ」
どれくらい続いていたのか分からなかったキス。
総人くんの唇が離れて行き、自由となった私は息絶え絶えの身体を総人くんの胸元に預けた。そんな私の頭をゆっくり撫でる総人くん。
「りん」
甘ったるい総人くんの声。
「これでも俺が昔のままだと思う?」
「――っ」
「ねぇ、りん。こっち見て」
そう言われた私はゆっくり総人くんの顔を見上げると、熱のあるような眼差しで私を見下ろした総人くんがいて。そんな総人くんにビクッと身体が揺れた。
「どう思う?」
「そ、うと…、くんは」
‘変わってないよ’
次は総人くんが肩を揺らした。
「なんで…、りんはそう思うわけ」
呼吸を整えてから私は、理由を口にする。
「だって総人くん優しいもん」
「無理矢理キスしたのに?」
「無理矢理キスしてもだよ。総人くんは優しいよ」
乱暴な総人くんを見るのも…今日は初めて見る総人くんをたくさん見てビックリしたけど、それでも総人くんは昔のまま。
「ムカつく」
「ムカつかないで」
「だって、やっぱりりんにとって俺はお兄ちゃんなわけだろ?はぁ…、ムカつく」
その言葉に私は頭を横に振った。
「私、総人くんをお兄ちゃんだって思ったことない」
「え」
「周りは総人くんは私のお兄ちゃんみたいな存在って言うけど私は違う」
もしかすると私がリップを塗ったのも、総人くんがいうように誘うためだったのかもしれない。意識はしてなかったけど無意識に思ってたかもしれない。
「総人くんはいつでも私の王子様。それは変わらない」
総人くんは知らないよね。総人くんを想って私がよく泣いていたこと。なんでこんなに年の差があるんだろう?って考えてたことも、全部全部総人くんは知らないよね。
「ヤバい。またりんにキスしたくなった」
「私もしたいって言ったら総人くんはどうするの?」
そう言った私に総人くんはビックリしてから微笑むと、さっきとは違うような触れるだけの優しいキスをくれた。くっついては離れて、くっついては離れて、くっついては離れて。そんな焦れったいキス。
ねえ、総人くん。
このキスが終わったら抱き締めて!じゃなくて、キツく抱き竦めてって言ったら抱き竦めてくれる?
ねえ、総人くん。私達の関係はこれからどうなっていくのかな?
――その答えが分かるのは数分後。それまで総人くんのキスに酔いしれていようと、私は数時間前に失恋したことも忘れて、愛おしくなるようなキスを受けていた――…