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小説サイト投稿作品62 「ずっと誘惑したい彼 後編」
「ずっと誘惑したい彼」
〜LC編集部のおすすめポイント〜
晴れて村山課長と恋人同士になれた綾。でも、彼は綾のことを積極的には求めてくれない。
不安になった綾は、友人に恋愛相談をし、誘惑する香水の存在を教えてもらうけれど…?
恋人あるあるな悩みに共感すること間違いナシのお話。主人公の誘惑作戦に注目です♪
誘惑できる秘密の香り?
「綾先輩、あれから村山課長とはできたんですか?」
あの日から数日後の今日。毎週当番で回ってくる定時後の会議室の掃除。
今週はたまたま有住ちゃんと二人仲良く揃って当番になってしまい、こうやって掃除をしているのはいいんだけど…。
久美子の影響なのか、急にそんなことをストレートに聞いてきたものだから、思わず身体の力が抜けてしまった。
「…ちょっと有住ちゃん?あまりにストレートすぎない?一応ここ、会社なんだからね?」
「それは分かっていますけど!気になっちゃって」
気になるって…。まだあれから数日しか過ぎていないのに。
「悪いけど、報告できることは何1つないよ?…有住ちゃんだって分かるでしょ?今、村山課長が多忙だってことくらい」
「それは分かりますけど…。でも一緒に行動している苛原さんは、どんなに疲れていてもしつこいくらい抱きついてくるんですよ? 村山課長だって、きっと綾先輩に抱きつきたいに決まってますよ!」
なっ…!
「ないない!村山課長に限って絶対にそんなことはないから!」
「えぇ〜そうでしょうか?勇気がないだけで、絶対にそう思っていると思うんですけど!」
なぜか食いついてくる有住ちゃん。
「本当にないから。…苛原さんと村山課長はきっと違うよ」
ストレートに身体で愛情を表現してくるような人じゃない。かと言って愛情を与えてくれない人でもない。
村山課長は違う。なんて言うか…こう、身体の芯にまで伝わってくるように愛してくれるって言うか…。
「…綾先輩?なに1人で赤面しているんですか?」
「えっ!?嘘!」
咄嗟に両手で頬を押さえてしまった。
「もう!仕事中に変なことを考えているのはどっちですか!」
「それは…ごめんなさい」
否定はできないわ。
「もう!」
まるでリスみたいに両頬を膨らませながら、集めたごみを持って私の前を通り過ぎていく有住ちゃん。そのとき、ふわりと鼻をかすめたのは、甘い香り。
「…あれ?有住ちゃんって香水つけてたっけ?」
「え?嘘!そんなきつく匂っちゃいましたか!?」
咄嗟に自分の腕の匂いを嗅ぐ有住ちゃん。そんな姿に口元が緩んでしまう。
「ううん、さっき有住ちゃんが通り過ぎるとき、ほんのりと甘い香りがしたから。もしかしてって思ったの。…有住ちゃんにぴったりな香りだね!もしかして、苛原さんからのプレゼントだったりする?」
何気なく言ったというのに、顔いっぱい真っ赤にさせる有住ちゃん。そして恥ずかしそうにモジモジしちゃうその姿は、まさに小動物系…。
こりゃどんなに疲れていても、抱きつきたくなる苛原さんの気持ちが分かるよ。
そんなことを考えているあいだに、有住ちゃんは照れくさそうに話し出した。
「…これ、苛原さんが告白してくれたとき、プレゼントしてくれたものなんです」
「やっぱりそうなんだ!」
さすがは苛原さん。よく有住ちゃんのことを見ているな。
「苛原さん…私からこの香りがしちゃうと、堪らない気持ちになっちゃうって言っていて…いつもは控えめにつけているんですが、さっき…その…」
あぁ、そっか。苛原さんに悲願されたのね。きっと甘い顔しちゃって『もっとつけて』みたいに。
だから有住ちゃんってば、こんなにも顔を真っ赤にさせているわけだ。本当にもう、可愛いんだから!
「…!そうですよ!綾先輩っ!それですよっ!」
「え?なっ、なに!?」
さっきまでは、あんなにモジモジと恥ずかしそうにしていたくせに、急にハッとしたように私に詰め寄ってくる有住ちゃん。
「香りですよ!香り!」
「かっ、香り?」
有住ちゃんの勢いに負けて、つい2、3歩後ろに退く。
そんな私には構うことなくさらに、距離を縮めてくる有住ちゃん。興奮気味でそれどころじゃないと言った様子。
「そうですよ!綾先輩に足りないのは、村山課長を誘惑しちゃうような香りなんですよ!!」
誘惑しちゃうような香り…?
「そんな誰もが羨ましがる唇を持っていますけど、何か足りなかったんですよ!それがズバリ!!香りですよ!!」
こんなに興奮している有住ちゃんを見るのは初めてで、その姿に圧倒されてしまって言葉が出ない。
知らなかった。有住ちゃんってば、興奮しちゃうとこんなふうになっちゃうなんて。興奮状態の有住ちゃんは、そのまま話を続ける。
「村山課長が思わずムラムラしちゃうような香りって絶対あるはずですよ! 苛原さんが言っていたので、間違いありません。…男性にはグッとくるような女性の香りがあるみたいですよ」
グッとくるような香り…?本当にそんなものがあるの?村山課長にとっても?
「今、けっこうネット通販とかでそれ系の物、売っていたりするみたいですよ?」
「そっ、そうなの?」
そんなものが売っていたりするの?
「はい!『誘惑しちゃう香り〜』みたいなキャッチフレーズでよく見かけるんで、綾先輩も見てみたらどうですか?」
「…う、ん」
誘惑する香り、か。本当につけただけで、村山課長を誘惑できたなら、どんなにいいことか…。
「あった。…これだ」
帰宅後。自宅で早速ネット検索をしてみると、有住ちゃんの言う通りヒットした商品がズラッと映し出された。
「なっ…!なによこれ! 『これをつければ彼の性衝動を駆り立てる…?思わず堪らないって言ってしまう…?」
刺激的な言葉に、思わず生唾を飲み込んでしまう。そして無意識のうちに、購入ボタンをクリックしてしまっていた。
嫌な予感
「やっ、やだ!私ってば一体何を…!」パソコンの前で、ガックリと項垂れてしまった。
「何やってんのよ…」パソコンの画面には、『ご購入ありがとうございました』の文字が映し出されている。
「…本当に誘惑できるの?」
あの村山課長のことも?本当に『堪らない』って言ってくれる?香水をつけるだけで、村山課長がそう言ってくれるなら、いくらでもつける。彼のことを、誘惑できるなら、いくらでも…。
…見られている。
購入した数日後。早速届いた例のもの。試しにつけて出社したものの、今日はいつもに増して見られている気がするのは、私の気のせいだろうか…?
「綾…、今日のあんた臭いんだけど」
「えっ!臭い!?」
勤務中だと言うのに、珍しく声を掛けてきた久美子。だけど声を掛けたくなるくらい臭いってことなんだよね?私…。
久美子の言葉に軽くショックを受けているというのに、そんな私に構うことなく久美子は言葉を続ける。
「なんなの?その香り。もわっとするような甘ったるい匂いで、胸やけしそうなんだけど!」
胸やけ…。そしてあからさまに嫌な顔を見せる久美子に、ショックは隠しきれない。
「いや、さ。これつけると意中の彼をメロメロにさせちゃうことができるって言うからさ…」
「はぁ?そんなどこにでもあるようなキャッチコピーを信じて買っちゃったわけ!?」
「だっ、だって!!」
勤務中だというのに、声を荒げる久美子。そんな久美子に一気に促進部内の視線が集中する。
「…っなんでそんなものを買ったりしたのよ!しかも会社につけてくることないでしょ!?」
咳払いをし、今度は周りに聞こえないよう小さな声で話す久美子。
「…だって村山課長と会えるのは、会社だけだし。効果を早速確かめたかったからさ…」
信じたいじゃない?この香りで村山課長を誘惑できるって。だけど久美子は大きな溜息を漏らす。
「あのさ綾。…村山課長を誘惑する前に、その他の男を誘惑しちゃってどうするつもりよ」
「え…?」
その他の男?呆れたように久美子は話を続ける。
「只今の時刻、午後の4時過ぎです。そして私はついさっきまで外出していました」
「うっ、うん…」
確かにそうだった。
今日は久美子は朝から外回りに出かけてしまっていて、実はついさっき顔を合わせたばかり。だけど、なんでそんなことを言うんだろうか?
「そして促進部へ戻る途中、何度も誰かさんの噂話を耳にしてきました」
「噂話?」
ちょっと嫌な予感がする。
「そう。販売促進部の東條さんのフェロモンがやばいって。きっと欲求不満なんだろうから、誘ってみる?とか、あれは絶対誰でもいいから誘ってるんだって!とか」
「嘘!!」
「しっ!!」
つい大きな声が出てしまい、久美子に口を塞がれてしまった。そんなことを言われちゃっているの!?
「嘘じゃないわよ。普段香水をつけない綾が魅力的な香りを身に纏っているものだから、勘違いしちゃっている男が急増中よ?…最近村山課長が多忙だってことは、誰が見ても分かることだから、うまくいってないんじゃないかって話まで聞こえちゃったし!」
「そっ、そんな噂まで…?」
恐ろしい。会社の情報網が。たった1日でそんなことまで知られちゃうなんて。そしてそんな噂話を瞬時にキャッチしちゃう久美子も。
「呑気に村山課長を誘惑したいなんて、考えている場合じゃないわよ?…退社後、変な男に襲われたくなかったら、今すぐその香りを落としてくることね」
「…はい」
久美子の言う通りだ。さっさと落としてきてしまおう。
「すみません、お手洗いに行ってきます」
上司に一言断りを入れて、トイレへと向かう。村山課長は、今日も促進部内にはいない。外回りに、会議に、打ち合わせに…。とにかく忙しく働きまわっている。
久美子の言う通り、もしかしたら会社の男性をこの香りで誘惑できたのかもしれないけど、肝心の村山課長を誘惑することは、できなかった。
「せっかくつけてきたんだけどな…」
無駄になっちゃった。水道を止めて、腕の匂いを確認する。
「…うん、もう大丈夫そう」
まだほんのりと香っちゃっているけど、至近距離にならないと分からないくらいだし。これくらいだったらきっともう大丈夫なはず。
さて。戻らないと。気持ちを入れ替えてトイレを出る。そして真っ直ぐ促進部へと戻っている途中、急に腕を掴まれ、身体をグッと引き寄せられた。
「っキャ!?」
すぐに口も塞がれ、近くの部屋へと連れ込まれる。一瞬にして、さっきまでの久美子の言葉が頭をよぎる。
嘘…まさか。そんな嫌な予感が浮かんでしまったとき、ドアを閉める音と共に聞こえてきた声。
「…悪い、こんなことして」
え…この声。すぐに自由にされる身体。振り返り見ると、そこには村山課長の姿があった。
「村山課長…」
突然現れた村山課長に言葉が出ない。それにこんなことをした犯人が村山課長だったなんて…。
ジッと見つめてしまっていると、疲れたように村山課長は大きな溜息を漏らし、そして窮屈そうにネクタイを緩める。
「…全く。君はいつも俺の予想以上のことをしてくれるよ」
「え…?」
どういう意味?真意が知りたくて、村山課長をジッと見つめる。
すると村山課長はなぜか怒ったような顔を見せ、私との距離を縮めてきた。
彼を誘惑する私の香り
「好きな女が、他の男どもの下ネタに使われている話を聞いた、俺の気持ちにもなってもらいたい」
「…えっ!!」
やだっ!それってつまり、さっき久美子が言っていたような話を、村山課長も耳にしてしまったっていうこと?
次の瞬間、カッと熱くなる顔。やだやだ!恥ずかしい!!あんな話を村山課長にも聞かれてしまったなんて!
恥ずかしすぎて村山課長の顔が見られなくなってしまい、下を向いてしまった。すると聞こえてきたのは、大きな溜息。
「どうして香水なんてつけた?」
両頬に触れる大きな手。その手によって上を向かされてしまい、必然的に村山課長と視線がぶつかり合う。
眼鏡の奥に見える大好きな瞳に、ドキッとしてしまう。
「綾…俺、聞いているんだけど」
そう言うと、いつものように私の唇を指でそっと撫でる。その行為にビクッと反応してしまう身体。
「ちゃんと答えろ」
わざとやっているとしか思えないくらい、私の耳元で囁くその声に、ゾクッとしてしまった。そんなの…。
「そんなの…村山課長を誘惑したかったからに、決まっているじゃないですか」
「…え?」
私の言葉が意外だったのか、驚いたように私の顔を覗き込む村山課長。
「村山課長が、してくれないから…!いつもいつもキスだけで帰されちゃうから…」
「綾……」
あんなに言いたくなかった言葉。だけどもう止まらないよ。全部村山課長が悪い。
こんな恥ずかしいことを言わせている、村山課長が悪いんだから。
「だから誘惑できちゃう香りをつけたんです!!…誘惑したいからっ…!村山課長をこの香りで誘惑したかっ…!」
言葉も途中に、唇を奪われてしまった。
「っ…!」
いつもとは違う激しいキスに、キュッと瞼を閉じる。
「村っ……」
“村山課長”と呼びたいのに、それされも許してくれない激しいキスに、声にならない。
次第に上がっていく息。それは村山課長も同じで、時々漏れる甘い吐息にピリピリと身体が痺れる。
「…本当にバカだな、君は」
「…え」
唇が離された今も、上がったままの息。村山課長の言葉がうまく頭に入ってこない。そんな私を愛しそうに見る村山課長に、胸がギュッと締め付けられる。
そして熱を持ったままの唇を、指でそっと撫でる。
「悪いけど、いつだって綾には誘惑されているよ」
「…嘘、だったらなんで、最近してくれなかったんですか?」
私はしたかった。キスのその先も。
「仕事は仕方ないって分かっています。でも待っててって言ってくれたらよかったのに」
「綾…」
「私はその言葉が欲しかったんです。そのたった一言が…」
言って欲しかった。
「フッ…本当に俺を誘惑するのが、上手い」
「…っ!」
あと一センチでも動いてしまったら、唇が触れてしまいそうな至近距離で、村山課長はジッと私を見つめる。
「仕方ないだろ?家で綾が待っていると思うと、仕事なんて手につかなくなるんだから」
「え…」
「それにそんなものつけなくたって、綾にはいつも誘惑させられている」
そう言うと、村山課長の唇は私の首元を這う。
「ッ…!!」
その行為に思わず声が漏れそうになる。村山課長は唇を首元に這わせたまま、言葉を続ける。
首元にかかる吐息
「気付いていないのか?綾の身体から香るこの甘い香りに、いつも堪らなく誘惑されているって」
村山課長…!首元にかかる吐息に、言葉が出ない。
「いつも誘惑されている。こうやって綾を目の前にしたら…」
え…ちょっと待って!!行為を続けようとする村山課長に、理性が働く。
「むっ、村山課長!今!今仕事中です!!」
どうにか出た言葉。すると村山課長は無言で私からそっと離れる。
それにホッとしたのも束の間、村山課長は急に携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。なぜかネクタイを外しながら。
「…悪い村山だ。さっき途中で具合が悪い東條と会って…あぁ、だいぶ悪そうだから、医務室まで連れて行く」
え…。
「あぁ、あとはよろしく」
そっと電話を切ると、いつになく怪しい笑みを浮かべる村山課長。そんな村山課長の言動に私は呆気にとられてしまっていた。
村山課長はまたゆっくりと私に近付いてくる。そしてそっと頬に触れる大きな手。
「誘惑した綾が悪い。俺にこんなことさせやがって」
「え…村山課長!?」
いつになく色っぽい村山課長に、私の身体は急激に熱を帯びる。そしてそっとキスを1つ落とす。
「だから責任とって」
耳元で囁かれる大好きな人の声。それだけでもう、理性なんてどこかに飛んでいってしまった。
「…はい!」
こんな責任なら、いくらでも取ります…。
彼を誘惑する香り。そんなもの、私にはないと思っていた。だけど違ったんだ。私にもあったんだ。
「綾…」
切なそうに私を呼ぶ彼の首に、そっと腕を絡ませる。
「…すっげ堪んない。この香り」
そう囁く彼の言葉にまた、胸がキュンと締め付けられる。
大嫌いだった唇も、この香りも――。全てであなたを誘惑したい。これからもずっと…。
(完)