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小説サイト投稿作品62 「ずっと誘惑したい彼 前編」
「ずっと誘惑したい彼」
〜LC編集部のおすすめポイント〜
晴れて村山課長と恋人同士になれた綾。でも、彼は綾のことを積極的には求めてくれない。
不安になった綾は、友人に恋愛相談をし、誘惑する香水の存在を教えてもらうけれど…?
恋人あるあるな悩みに共感すること間違いナシのお話。主人公の誘惑作戦に注目です♪
キスだけじゃ足りない
「綾…」
今日もまた彼は、切なそうに私の名前を呼んで唇に指を這わせる。 そしてゆっくりと、唇の感触を確かめるように一周させるんだ。
「村山課長…」
もう何度もされている行為なのに、なんでこんなにもドキドキしてしまうんだろう。
村山課長の言動全てに、こんなにもドキドキさせられてしまう。
何度も訪れている村山課長のマンション。
最近多忙で、なかなか会えなくて。やっと会うことができた。
玄関に入るなり、抱きしめられて。そして久し振りに感じる村山課長のぬくもりに、しばしの間酔いしれてしまっていた。
ドア一枚向こう側は、いつ誰が通るか分からない。
だけど、そんなの気にしていられないくらい、今の私は彼を欲している。
大好きなの。今、目の前にいる彼が――。
「綾…」
愛しそうに私の名前を呼ぶ、彼が…。
ゆっくりと顔が近づいてきて、そのスピードに合わせるように瞼を閉じる。
すると与えられるのは、唇の感触を確かめるような甘いキス。久し振りのキスに、嬉しさがこみ上げてくる。
昔はあんなに大嫌いだった自分の唇。だけど今は、そんなこと思わない。 だってこの唇がなかったら、村山課長とキスなんてできないのだから…。
「綾」
離されては、されるキス。その合間に囁かれる私を呼ぶ声。ずっと不足気味だった村山課長。
「村山課長…」
ギュッと村山課長の背中に手を回した瞬間、タイミングよく鳴り響く着信音。
「…悪い」
しばらく出ないでいた村山課長だけど、ぞれでもしつこく鳴る着信音に、大きな溜息を一つ漏らし、そっと私から離れる。
さっきまであんなに感じていた村山課長のぬくもりが、一気に消えてしまい酷く寂しい気持ちが襲ってくる。
そっと私を手招きしながら、電話にでる村山課長。
「もしもし…はい…」
電話をしながら部屋へあがっていく。だけど私は玄関から動けずにいた。…だって嫌な予感がするから。
「え…いや、でも…はい、分かりました」
大きな溜息と共に電話を切る村山課長。それだけで分かってしまった。
「…悪い、綾。会社に戻らなくてはいけなくなった」
…やっぱり。嫌な予感は見事に当たってしまった。
最近、よくあることなんだよね。やっと早く帰れたと思ったら、電話で呼び出されることが。
おかげで私たち、ここ最近キスしかしていない。
「そうですか、私のことは気にせず行って下さい」
仕方ないって分かっている。仕事なんだから…。
「悪い」
だからそんな顔をしないで欲しい。
「いいえ。…仕方ないです」
本当はそんなこと思っていない。会社になんて行って欲しくない。
毎日会社で顔を合わせてはいるけれど、久し振りに2人っきりで会えたんだよ?
もっと一緒にいたい。もっと触れていたい。ぬくもりを感じていたい――。
だけど私には、そんなことを言えるだけの勇気もない。だから言って欲しいのに…。
「…本当にごめんな?また連絡する。送るよ」
「…はい」
言って欲しいの。『何時になるか分からないが、待っててくれないか』って。『綾に触れたいから』って。
その一言が欲しいのに、村山課長は仕事で呼び戻されると、こうやって私を家まで送り届ける。
言いたいけど、言えない。『もっと私を求めて下さい』って…。
「えぇ!?なんですか!その可愛すぎる悩みは!」
「…本当、そんなエロイ唇持っているくせに、なんで綾はそんなにピュアすぎるの?」
いつものオフィス。そしていつもの昼休み。入社して3年という月日が過ぎた。
今では目の前にいる有住ちゃんといった可愛い後輩たちもできて、すっかり先輩として勤務している。
それは隣にいる同期の久美子も同じ。
「あのさ、2人とも。私は真剣に悩んでいるんだけど…」
恒例となっているお互いの恋の悩み相談。久美子には幼なじみの彼氏。
そしてこの小動物のように可愛い有住ちゃんには、同じ販売促進部の時期エースとして呼び名高い、イケメン彼氏がいる。
そんな私たち3人が揃ったら、いつも自然と話題に上がるのはお互いの彼氏の話ばかり。
「もう村山課長が綾先輩にメロメロなの、すっごく分かります!!」
「メロメロって…全然私は感じないんだけど。それを言ったら苛原さんじゃない。公衆の面前で堂々といつも有住ちゃんを抱きしめちゃっているし」
「そっ、それは苛原さんが…!!」
そう言うと顔を真っ赤にさせる有住ちゃん。慌てちゃって本当に可愛い。
「いいなぁ…。苛原さんはそうやって自分から求めてきてくれる人で」
羨ましい。確かにちょっと人前でって恥ずかしいかもしれないけど、我慢できないほど想われているってことでしょ?ちょっと憧れちゃうよ。
求めてほしい
「なによ、綾。村山課長に身体を求められていないの?」
「なっ…!ちょっと久美子!?ここ会社だから!!」
しれっと爆弾発言をしちゃう久美子に、つい辺りを見回してしまった。
「大丈夫よ。みんな聞いているようで聞いていないものなんだから」
「だっ、だからって…!」
いつものことだけど、久美子ってばストレートすぎるのよ、言葉が!
聞いているこっちが恥ずかしくなってしまい、誤魔化すようにトマトジュースを飲む。
そんな私を見て、久美子はなぜか大きな溜息を漏らした。
「つまり綾は欲求不満なわけだ?」
「…ぶっ!!」
「キャー!綾先輩大丈夫ですか!?まるで吐血したみたいになってます!!」
思わず吹き出してしまったトマトジュース。
口の周りはきっと、有住ちゃんの言う通りの惨劇になっているに違いない。
慌てて有住ちゃんはティッシュを数枚取り、私に差し出してくれた。
「ありがとう」
本当、よくできた可愛い後輩だ。そんなことを思いながらも口を拭いていると、また久美子は大きな溜息を漏らす。
「本当に綾ってば魔性の術を兼ね揃えているわよね」
「…なによ、その失礼な言い方は」
魔性だなんて!ムッとしつつ言うと、久美子は呆れたように話し出す。
「バカね、誉めているんじゃない。綾の存在自体がもう既に男を誘惑しているっていうのに、そんな可愛い悩みを持っちゃってさ。
素直に一言言えばいいんじゃない。『したい』って」
「きゃっ!久美子先輩ってば大胆な!!」
ストレートすぎる久美子の言葉に、有住ちゃんは照れたように両手で顔を隠す。
「…そんな世の中の女性がみんな全て久美子みたいに、ストレートに伝えられるような人ばかりじゃないのよ? …その一言が言えないから、こんなに悩んでいるんじゃない」
そうよ。そのたった一言が言えないの。言いたくても、言えない。
男を誘惑できるエロイ唇って?
「そっ、それにさ!そんなこと言っちゃったら、引かれそうな気がしちゃって…」
最後の方は声が小さくなってしまった。
「はぁ?なに!?綾ってばそんなことで悩んでいたの!?」
「そっ、そんなことって…!かなり重要なことだと思うんですけど!!」
つい声を荒げてしまった。だってそうでしょ?重要なことじゃない。私から誘うなんて、恥ずかしいし。
「『そんなにしたいのかよ』って引かれちゃったら、どうしようって考えるのが普通じゃない!」
好きな人が相手なら尚更のこと。そんながっついているみたいで、嫌われてしまいそう。 タダでなくても、最近の村山課長は多忙で疲れているっていうのに。
「あー、もう!本当に綾ってバカすぎて笑えなくなる」
「…別に笑って欲しくて相談しているわけじゃないし」
久美子の冷たすぎる言葉に、つい可愛げのないことを言ってしまった。
すると久美子は、本日何度目か分からない大きな溜息を漏らした。
「あのさ、綾。きっと村山課長はそんなこと絶対に言わないよ。…むしろ好きな女からそんなこと言われたら。嬉しいと思うよ?」
「…嬉しい?」
こんなに恥ずかしい言葉なのに?
「そう。…と、うちのバカ蒼佑が言っていたから、間違いないと思うけど」
照れたように言葉を濁す久美子。なるほど。蒼佑君、ね。有住ちゃんも分かったのか、ニヤニヤした目で久美子を見つめている。
「…そっか。でも嬉しい、んだ」
男と女では、考え方や感じ方が違うのかな?でも嬉しいって思ってくれるなら、村山課長も私と同じ気持ちってことだよね?
なら、なんでいつも言ってくれないのかな?『帰らないで待っていて欲しい』って。
その一言だけでいいのに…。もう1か月以上していない。あの大好きなぬくもりに触れていない。
最初は村山課長とキスするだけで、すごいドキドキしちゃって、どうしようもない気持ちになっちゃっていたのに。
今はそれだけじゃ、全然足りない。だってキスのその先も知ってしまったから…。
あんなに甘い顔をしちゃう村山課長を知ってしまったから…。
男を誘惑できるエロイ唇。
こんな唇を持っていたって、一番誘惑したい人を誘惑でいないなら、なんの意味もない。
苛原さんみたいに、感情のままに求めてくれたらいいのに。
蒼佑君みたいに、ストレートに言葉で表現してくれたらいいのに。
仕事も大切だって分かっている。だけどたまには、本能のままに私を求めてくれたらいいのに…。