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小説サイト投稿作品20「年の差レンアイ事情」(ペンネーム:桃城猫緒さん)
「年の差レンアイ事情」(ペンネーム:桃城猫緒さん)
〜LC編集部のおすすめポイント〜
手をつなぐって、恋人同士のステータスですよね。
好きな人と初めて手をつないだ日の気持ち、みなさんはいかがでしたか?
緊張しすぎて覚えていない!という方ももしかしたらいるかもしれませんね。
不器用な年上の彼との恋愛、包容力があってとても素敵です。
ちょっとした不満はあるけれど最後には…♪
読んでいる間キュンキュンしっぱなしの作品でした!
宙ぶらりんの手
「やめろ。子供じゃあるまいし」
ああ。また振りほどかれた。
虚しく宙ぶらりんになった私の手。可哀想に。
ひとりぼっちにさせられた手は名残惜しそうに空を掴んだあと、コートのポケットに押し込める。
「…女がポケットに手を突っ込むな、みっともない」
「だって、手が寒いんです」
あなたが寒くしてるクセに、と反発の意味を籠めて言ってみるも
「ならば手袋を買え」
返ってきたのはそんな言葉だけで、やっぱりその手の温もりを分けては貰えなかった。
彼、 林 龍弥さんと付き合うようになってもうすぐ3ヶ月。
季節は秋から冬に変わって人肌恋しい寒さが訪れても、彼が私と手を繋いでくれたことはない。
一度も。
年の差
20歳の私と30歳の龍弥さん。
その大き過ぎる年の差がいけないんだろうか。
それとも、彼の職業が警官と云うお堅い仕事ゆえか。
自他共に厳しくていつも背筋がピシッと伸びている龍弥さんは、私とイチャイチャするのを嫌がる。
1年前、夜道で不審者に追い掛けられている所をたまたま巡回中だった龍弥さんに
助けてもらった私は、凛々しく勇ましい彼にゾッコンになった。
堅い堅い彼をじっくり時間をかけて責め落とし、ようやくお付き合いするようになったのは3ヶ月前。
デートも何回もしてるし、「好き?」と聞けば「当たり前だ。じゃなきゃ付き合ったりしない」と、ぶっきらぼうながらも応えてくれる。
初めてのキスだって、1ヶ月前のクリスマスにしてもらった。
愛し合ってると思う。
私、ちゃんと愛されてると思う。
けど、ベタベタ甘ったるい事が嫌いな龍弥さんは
……私と手を繋いでくれない。
ため息
「龍弥さん。私、龍弥さんと手が繋ぎたいです。」
「子供じゃあるまいし、何故繋ぐ必要がある。お前は手を繋がなきゃ迷子にでもなるのか?」
さっき手を振りほどかれた不満を、カフェのテーブルに着いてから訴えてみるも、呆れたような言葉が返ってくる。
虚しくて吐いたため息が、私の前の紅茶の湯気をはかなく揺らした。
いっそ迷子にでもなって泣いてやろうかしら。
迷子の迷子の子猫ちゃんみたいに。
そうすれば優しい犬のお巡りさんは手を繋いで慰めてくれる?
けれど、そんな寂しい思いを籠めて見つめた私から龍弥さんは視線をはずすと
「…こんなことで拗ねるな」
コーヒーを飲みながら、そう告げた。
ただでさえ大きな年の差。子供っぽい所は見せたくないと思うのだけど。
…私にとって龍弥さんは実は初カレで。
だからどうしてもアレコレ夢見てしまって望んでしまう。
そんな子供の願いに龍弥さんは出来るだけ応えてもくれるけど…
このように譲れない所はキッパリと断られてしまう。
「……はぁ…」
痛烈に感じる年の差。感性の違い。
静かに零したため息は、もう一度、紅茶の湯気を小さく揺らした。
龍弥さんは決して冷たいワケじゃない。
今日のデートだって私が行きたいと言ったミュージアムのチケットをわざわざ前売りで取って、こうして連れて行ってくれた。
物言いは少しぶっきらぼうだけど、何かあれば凄く心配してくれるし体調なんかもよく気遣ってくれる。
ただ、真面目だからチャラチャラした事が嫌いなだけ。
………いいや、もう。
手を繋ぎたくないのが龍弥さんなりの信念なら、私はもう諦めよう。
せっかく龍弥さんが私を好きになってくれたのに、そんなことにこだわってギスギスするのも嫌だし。
手を繋ぐ夢は金輪際あきらめよう。
「次、どこ行きます?」
気持ちを切り換えて明るく声をかけると、龍弥さんはコーヒーカップをソーサーに置いてからこちらを見た。
「決まってるだろう。そこのデパートで買い物だ」
「え?龍弥さん何か買い物あるんですか?」
「お前、さっき自分が言った事を忘れたのか。手が寒いんだろう?手袋を買いにいくぞ」
龍弥さんは優しい。
例え手を繋いでくれなくったって。
「好きなものを選べ。買ってやる」
私の手はじゅうぶん、温かい。
からだ委ねて
そんなこんなで月日は流れ、ひとりぼっちの手にも慣れてきた頃。
ふたりで近場に一泊の小旅行に行くことになり、私はついに初体験の夜を迎える事になった。
相手は大好きな龍弥さんなんだから、何も躊躇いはない。
やっと結ばれて名実ともに彼の恋人になれる事が嬉しい。
けど……それでも怖いものは怖い。
「緊張しなくていい。俺に委ねろ」
そう言われても、初めて裸を見られて、初めて色々さわられて、緊張するなって方が無理。
恥ずかしい。そして初めての刺激に自分が変わっていくことが怖い。
「……龍弥さん……龍弥さん……」
「大丈夫だ。ここにいる」
羞恥からずっと目を閉じていた私の頬を、龍弥さんは少しゴツゴツした手で安心させるように撫でてくれた。
体が汗ばむくらい沢山の刺激を受けて、ようやく私の全身からいらない力が抜けた頃。
「目を開け」
そう言われ硬く閉じていた瞳を開くと、龍弥さんが私の顔をまっすぐ見つめていた。
「ちゃんと俺を見ろ。今からお前を抱く男の顔だ」
「龍弥さん……」
その言葉が私の心と体に熱を灯す。
「龍弥さん、好きです。私を抱いて下さい」
そして私の言葉も、彼に愛と欲という火を点ける。
包まれるように
「…っ、い…あぁっ、いた…い…っ」
初めて知る私の中に何かが入ってくる感触。
その違和感と体をこじ開かれるような痛みに、私の表情は苦悶に歪み、汗ばんだ手は無意識にシーツを握りしめる。
「力を抜け。息を整えろ」
そう言われてハッハッと短い深呼吸を繰り返すも、緊張と痛みで体の力は抜けない。
受け入れたい。龍弥さんを全部。
けれど怖い。
こんな体を突らぬかれるような感触、なかなか受け入れられない。
怖さと怯えてしまう自分のもどかしさで
「…龍弥さん…龍弥さん……」
すがるように何回も彼の名前を呼んでしまう。
すると。
「離すな。つらければ爪をたてても構わない」
シーツを掴んでいた指をゆっくりとはがされ、龍弥さんが私の手に自分の手を重ねてきた。
「……あ……」
優しく、優しく。
指が絡み合い包まれるように、手を繋がれた。
柔らかくはない指先。ゴツゴツした甲の感触。力強くて、けれどとても優しい。
「……龍弥さぁん……」
初めて知ったその感触が嬉しくて、瞼が熱くなり涙が零れてしまった。
繋いだ手はとてもぶっきらぼうだけど、私を大切にする気持ちで溢れていて、それはまるで龍弥さんそのもの。
嬉しくて嬉しくて涙をこぼし続ける私に、さすがに龍弥さんもビックリしたようで表情に戸惑いが滲む。
「…あまりツラいなら今日は止めておくか」
心配そうに私を見つめる彼に微笑みかけて私は小さく首を横に振る。
「違うんです。嬉しいんです。龍弥さんが手を繋いでくれたことが」
零れる涙をそのままに答えると、彼は少しだけ驚いた顔をした。
「離さないで、龍弥さん。ずっと繋いでて、お願い」
私の切なる願いに龍弥さんは静かに頷き
「ああ、絶対に離さない。だから安心しろ」
繋いだ手にぎゅっと力を籠めた。
結ばれた手。 結ばれた体。 結ばれた心。
龍弥さんは最後まで手をほどかずにいてくれて、私はもう彼が愛しい気持ちだけで満たされて、緊張も怖さもいつの間にか消えていた。
彼の愛をすべて受け入れて私はこの夜“女”になった。
男の事情
「……小さい手だな」
終わったあと、未だほどかない私の手を見つめながら龍弥さんがポツリと呟いた。
「そうですか?普通ですよ」
握られた自分の手を見つめ彼に答える。
「普通かもしれないが、俺には小さい」
確かめるように絡め合った指をニギニギと動かし、それを眺めながら龍弥さんはもう一度「小さい」を言った。
“小さい”と繰り返す彼にちょっとだけ不安が湧き出る。
上目で彼を見つめ、おそるおそる尋ねてみた。
「子供みたい…ってことですか?」
いつだって気になる年の差。龍弥さんには子供っぽいと思われたくない。
体を結んだ後でまでこんな事を思うのは卑屈かもしれないけど。
けれど、龍弥さんは寝そべった体勢のまま視線だけ私に向けると
「お前はいつもそれを気にするな。俺はお前を子供っぽいと思ったことは一度もない。子供だと思ってたらとっくに手ぐらい繋いでる」
そんな、思いもしなかった返答をくれた。
「どういうこと…ですか?」
「人前で好きな女の体を触りながら歩けるか。……男には男の事情ってものがあるんだ」
どこか恥ずかしそうに吐き出されたその言葉は直ぐには理解できなくて、不思議そうな顔をした私にどうしてか龍弥さんは拗ねたような表情をして
「分からないなら考えなくていい」
と言った。
私の思考を遮るように龍弥さんは繋いでいた手にキスをすると
「……女の手しやがって…」
聞こえないぐらい小さな声で、零すように呟いた。