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恋愛とセックスのかけ算/28歳 奈々枝の場合
それは神話のようなもの
耳元に軽いジャズの音楽が流れている。
奈々枝は大きな角氷が入ったウイスキーグラスの露を中指でなぞって大きな円を書いた。
目の前に座っているジュンがテーブルをリズミカルに右手の指ではじいている。
タンタタタンと聞こえないような小さな音で。
長い髪の毛をうしろでまとめ、渋いえんじ色のベスト。
胸元にシルバーの鍵型のペンダント。
ジュンはパーカッションの奏者だ。
今夜は仕事がオフなので、奈々枝を誘ってライブバーに飲みに来ている。
いつもステージでパーカッションに命を吹き込むジュンの姿を見て奈々枝は胸をときめかせていた。
今夜のジュンは奈々枝一人のものだと思うと周りに自慢したい気分だ。
奈々枝とは反対に物静かなジュンは、会うたびに奈々枝の話を真剣に聞いてくれる。
意思の強そうなまなざし。時に助言もしてくれる。
自分に否定的な意見を言う友達など一人もいない奈々枝にとって、ジュンの叱咤は新鮮だった。
ウイスキーをコクンと一口流し込み、奈々枝が尋ねた。
「ねえ、これ誰の曲?聞いた事あるなあ」
「オスカーピーターソン」
ゆっくり答えるジュンの口元はセクシーな動きを見せた。奈々枝の胸がドクッと波打った。
親友の千沙にしか話してはいないが、奈々枝は28歳になる今まで男性経験がない。
20歳になっても経験がないことを「ヤラハタ」と言うとネットで見かけた事がある。最近は「ヤラミソ」もいると千沙が教えてくれた。
やらずの30歳。
まさに奈々枝なのだが特にあせっているわけではない。
奈々枝には自分なりの規律がある、それは神話のようなものだと自身に言い聞かせている。
「セックスは本当に好きな男性と、お付き合いしてからでなければしてはいけない」
過去3度、そういう場面に遭遇したことがある。キスはOK。
おっぱいを触るまでは許すが下着に手がかかる瞬間
「ダメ!そこからダメ」
ときっぱり断るのだ。
男たちは「はあ?」という顔をする。無理にしようとした奴は今までいない。
そのうち一人は友達として今でもたまに会うが、二人はその後いっさい会わなくなった。
「まったく、やりたいだけの男が多いんだから…」
奈々枝はふっとむなしくなる時があった。
昼の裏原宿
LINEを覗くとノブからだった。
「今、原宿。ランチ行こ」
時計を見ると12時前。ちょうど昼休みタイム。
「OK。裏原のPouで」。
日差しが燦々と降り注ぐPouに入るとノブが手招きした。
ノブはイラストレーター。絵を描いて暮らしてゆくなんてよっぽど才能がないと無理だろうと思っていたが、ノブは文章も書けてネットに強いのでイラストと気の利いた文章の組み合わせで結構仕事になっているようだ。
いかにもという派手なアニマルプリントのシャツに黒白コンビの太縁フレームの眼鏡。頬が艶々に光っている。
オリラジの藤森風で、都会派イケメンのノブは深夜からでも飲みに行く男友達という存在だ。
奈々枝にとっては暇な時間、いや寂しい時間に呼び出せば必ず付き合ってくれる「癒し男」でもあった。
しかしノブには彼女がいる。そうそう頻繁に呼び出すわけには行かず遠慮がちな付き合いだった。
「奈々枝さあ、気になる男できただろ。最近、夜中に呼び出し来ないから、もしかしてって思ってんだけどなー」
「わかる?そうなの。太鼓たたいているアーティスト」
「太鼓?和太鼓?」
「パーカッションよ。ジャズの」
「へえ、おしゃれじゃん。それ、ロンゲで髭あってヒョロっと背が高い感じ?胸元あけている?」
「髭以外、当たり!夜のミュージシャンってお決まりのスタイルなのかな」
二人はジュースの中の氷をカリコリ噛み砕きながら大声で笑った。誰が見ても気が許し合える友達風景に見える。
「30までに結婚したいって言っていたよなー。そろそろ決めないと間に合わないじゃん」
意地悪そうにノブが切り出した。
「ノブこそ、もう33でしょ?仕事さぼってクラブイベントに精を出してる年齢じゃなくない?」
奈々枝も皮肉っぽく返した。
「遊びが充実してないといいイラストが描けないんだよなあ。わかるか、この芸術論」
「じゃあ、今の私をイメージして1枚描いてよ。その芸術性に富んだイラストやらを」
奈々枝が大きめサイズのメモ用紙を取り出すと、ノブは持っていた黒色のサインペンをスラスラ動かし始めた。
耳の長いウサギがワイングラスを片手に一粒涙を流している。
「なんでーー!ウサギ、かわいいけど泣いてんじゃん」
「奈々枝ウサギは結婚にあせって、やけ酒を飲み、いい男はどこにいるのと毎夜泣いているって構図。」
「ばーか」
奈々枝がサインペンをもぎ取り、涙を黒丸で塗りつぶした。おてもやんのような田舎っぽいウサギに変身した。
「あ、これ、イケてる。俺の次回作にこれ使おう。昔なつかし童話風のイラスト」
ノブの底抜けの明るさが奈々枝にはまぶしいくらい嬉しかった。
シーツを握りしめて

ノブに彼女がいなかったら付き合いたいと考えた時期もある。寂しい時にそばにいてくれる男はかけがえないものだ。
しかしジュンが現れてからその想いがしだい次第にジュンにシフトしていった。
ノブが屈託なくアハハと笑うのに比べるとあきらかに笑顔比率が少ないジュン。
怒っているのかな機嫌が悪いのかなと不安になると、ふっと口元を緩めてやさしい笑顔を見せる。
口数も少なく、何を考えているか想像しにくいところが、悔しいけれどとても魅力的に映る。仕事を失敗したりして自分が嫌になったときジュンに怒って欲しいとさえ思う。
日曜日、ジュンを美術館に誘った。
ジュンは絵を見ながら自分の仕事に対する考えや、なりたい姿をポツポツ短く語った。
いつかパーカッションを教える小さな教室を開きたい事も。思うようにいかない時のジレンマも明かしてくれた。
ふっと二人は足を止めた。美しい女性の絵。
豊満で肉感的な女性の絵の前でたたずむジュンを見ながら、この人に裸を見て欲しいと直感的に思った。
おとなしいけれど内に秘めたものを持つジュンに処女を捧げたいと。
「あの…ジュン、あのね…」
「何?」
「今夜、ずっと一緒にいて欲しい」
一瞬の沈黙の後、ジュンの口元が動いた。
「いいよ。一緒にいよう」
ジュンの愛撫はパーカッションを打つ時とはちがい、繊細に奈々枝の胸の上を這い回った。
そろりそろりと壊れやすい陶器をさわるように。大きな円、小さな円を胸の上でえがく。
小さな円をその先の周りで描かれたとき、背中を電流が走った気持ちになった。
「あっ…」
「どうしたの?ビクンとしている」
「強くはじいて。あの時のテーブルでリズム取っていたみたいに」
「こう?」
タタタタタンと中指がその周りでリズミカルに動く。
「ああ、そう、そんなふうに」
ジュンの左手が奈々枝の秘部に割り込む。初めての体験。
ひとりエッチの経験もない奈々枝の女の部分は、しっとり湿りはじめていた。
ジュンの指が小さな突起をとらえるとまた背中に電流が走る。ジュンが耳たぶを唇に含む。
腰から下がむずがゆいようなこそばゆいような不思議な感覚。
ジュンの両手が太ももをクイっと割る。
開かれた自分がとても恥ずかしい。男性の前で開くなど人生で初めての経験。
「あの、ジュン、私、初めてなの。やさしくして」
ピタリとジュンの動きが止まった。奈々枝は目をつむっていたのでジュンの表情がわからない。
そっと目を開けるとジュンがいつものやさしそうな目で奈々枝を見つめていた。
「ごめん、奈々枝ちゃん、初めてだって知らなかった。今日はキスだけにしておこう」
奈々枝の頭の中が泡立て器で混ぜられているように拡散された。なぜだかわからなかった。
「どうして?いいのよ、私、ジュンに抱かれたい。続けて欲しいの」
ジュンは奈々枝の頬に軽くキスをした。
「奈々枝ちゃんがぼくのこと好きでいてくれる気持ちはわかってるけど、こういうことするとちゃんと付き合うってことだろ。今はまだ結婚は考えられないんだ」
「私が初めてじゃなかったら、抱いてくれるの?」
ジュンはちょっと考えた。
「そうだね。初めての女性と聞くとやっぱり…奈々枝ちゃん、30までに結婚したいってよく言ってたし。今の僕はそれに答えられない」
奈々枝は真っ白なシーツを握りしめた。
ゴワゴワして冷たい感触。
今まで心地よいジュンの体温を感じていた身体が一気にすべてから突き放されて冷たくなった。
バージンはあなたに
寂しい気持ちだった。美術館に行った日曜日からずっと奈々枝は沈んでいた。
千沙から飲みに誘われても行く気がしない。寂しい時はノブと遊ぶというルールも実行する気にならない。
ジュンのことが好きな気持ちは変わらないが、結婚する気がない男に寄り添っていていいのかどうかわからない。
どうして女性には結婚リミット、出産リミットが付きまとうのだろう、どうしてバージンは腫れもの扱いされるの、神様は不公平だと思った。
結婚する人に処女を捧げるという自分の神話は恋愛を妨げる神話だったのか。
バッグの中からくしゃくしゃになったウサギの絵が出て来た。
涙を黒く塗りつぶして愛嬌ある顔になったはずなのに、ウサギは何故だか泣いているように見えた。
冷蔵庫から缶のカクテルを取り出し、ウサギに向かって
「乾杯。飲もうぜ」
と声をかけた。
ほろ酔いになり、お笑いの動画サイトを見ているとノブから着信があった。
「おまえんちの隣り駅で飲んでるんだけどさ、帰るのめんどーだから寝かせてくんない?ソファでいいから」
酔いにまかせて答えた。
「いいよ、私のベッドで寝かせてあげるよ」
ノブと初めてキスをした。
いつもはお笑い系のノブがまじめな顔で奈々枝にむさぼりついてくる。初めて男の臭いをノブから受け取った。
狭い奈々枝のベッド。ベッドが揺れるくらい激しくノブは奈々枝の全身を触りまくった。
奈々枝の首筋に歯を立て、硬くなった胸の先に吸い付いた。小ぶりの胸を大きな手のひらで包み込みギュっと握ってこねくり回した。
へその周りをペロペロ舐めて毛並みが揃ったヘアを唇でくわえて引っ張った。
すべてが力強い。ジュンのようにリズミカルにやさしく触ってくれない。
ノブのゴツっとした指がヘアを掻き分けて奈々枝の真ん中に侵入した。
濡れていない。自分でもわかる。濡れていない。
ひっかかっている。ノブの指が。どの指なんだろう?中指、人差し指。
考えているとむなしくなってきた。彼女がいる男と寝てどうするの、私?
「ノブ、やめとこ」
クリアな声がワンルームの部屋に響いた。ノブがむくっと顔をあげた。
「やっぱ、やめとこ。彼女いるじゃん。ノブ。彼女持ちと寝てもいいことないっしょ」
無理矢理に笑顔をつくって伝えた。
「まじすか?俺のコレどうすんのさ」
いきり立った下半身をノブが指差した。
チラ見して奈々枝は手を差し伸べた。右手でそれを包み込んだ。上下にゆっくり動かしてみた。
ノブが気持ち良さそうに目を閉じた。
「もっと、ぎゅっと握って…」
ノブがささやく。力を込めた。
「タンタタタン」
口ずさみながらテンポをはやめ、奈々枝は手首を上下に動かした。
あっという間にノブが果てた。男がイクところを初めて見た。
不思議な現象。こんな練乳みたいな液体が放出されるんだ。
ノブがそのまま寝入ってしまうと奈々枝はウサギのイラストをまた見つめた。
「二兎追う者は一兎をも得ずってすごいことわざだね。ウサギちゃん。私、30までに結婚するために新しい恋を探すね。結婚すると決めた人にバージンあげるんだ」
奈々枝のベッドからノブの幸せそうな寝息が聞こえて来た。
END
あらすじ
奈々枝にはこだわりがあった。
それは「セックスは本当に好きな男性と、お付き合いしてからでなければしてはいけない」ということ。
パーカッションの奏者ジュンのリズムに耳を傾け、彼のセクシーな口元に目が釘付けになり…