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【後編】恋愛とセックスのかけ算/27歳 蓮の場合
見下ろしていた世界
1週間ぶりに会社に顔を出す。
ビルでぎっしりの都会の景色を見下ろす。
バリのプールで見上げた青空が、ふと頭の中に広がる。
さわやかな気分と淫靡な気分が溶け合う、形容しがたい感覚……。
これまで世界を見下ろすのに慣れてしまっていたことを、蓮は意識する。
優越感にひたっていた自分。選ばれた者と思い込んでいた自分。女など興味はないといきがっていた自分。
蓮は今、上を見上げることで未熟な自分を変えたいと思った。
その時、後ろから話しかけられる。
「蓮さん、おかえり。LINE読んでくれた? おわびのディナーは?」
サキだった。
「サキちゃん。この前は、ひどいことを言って悪かった。明日、ごちそうするよ」
サキが不思議そうな顔をする。蓮はサキに尋ねた。
「聞きたいんだけど、なんであの時、ライブラリーで写真集見たの? すぐに部屋に行かずに」
サキの顔がホッとほころぶ。
「蓮さんのことをためしてみた。ホテルまで誘ったのは私の方だけど、そんなのビッチみたいじゃない。したがってるイージーな女のまま抱かれたくなかった。せめて部屋には蓮さんから誘って欲しかったから、ライブラリーで足止めしてみたんです」
「そうなんだ……。女の人って複雑なんだな。僕には想像できないことばかりだ。モテ男っていうのは、その複雑な気持ちを先読みして、振舞えるのかもな」
「なに、どうしちゃったの? 蓮さんらしくない。まさか、好きな人できたの?」
サキの不安そうな顔をじっと見て、蓮はまた気づく。
「うれしがったり、安心したり、嫉妬したり。ちゃんと観察すれば、女の人の気持ちも少し分かる気がする」
「は? なんか、やっぱりおかしい。蓮さん、いつもと違うもの。休暇中、何かあったのね」
敬愛の念
蓮はサキを食事に誘い、あらためて失礼を詫びた。
サキは、温厚な蓮の態度に戸惑いをおぼえる。
「クールな蓮さんが好きだったんだけど。なんだかおかしな気分です。パーフェクトな男、蓮さんはどこに行ったんだろ」
「やさしい言葉をかける僕はパーフェクトじゃない? それはサキちゃんの好みの問題だ。サキちゃんは狩猟本能が旺盛だから、なかなか振り向かない僕を好きになった。そうじゃないか?」
「……そうかもしれない。牙が抜かれた蓮さんは、ちょっとタイプと違う。それに、こんな恋の話ができる人だと思いませんでした」
「ありがと。サキちゃんには感謝だ。気づかせてくれた。男と女の違いに」
「蓮さん、私にお礼言いながらほほえむ蓮さんって、やっぱ趣味じゃないです。もうホテルなんか誘わないし、ゴハン連れてって言わない」
「そうか。僕はやっぱりもてない男なんだ」
蓮はオリーブオイルにパンをひたして噛みしめる。
「蓮さん、好きになった人、まだ振り向いてくれないんでしょ。蓮さん、今、悩んでるって雰囲気ですね」
「なんでも分かるんだなあ。女の人はやっぱりすごい能力を持ってる」
「ふられた数が多いだけいい男になれるという説もあるんです。痛みが分かる大人になるから。ふられるの覚悟で告白すれば?」
「叶わない恋もあるってことか。痛みをあえて選びに行く。人生哲学としてはなかなかいけてるな」
キャンドルのほのかな灯りに照らされて、サキがうれしそうに微笑む。
サキの顎についたオリーブオイルを、蓮はすかさず人差し指でぬぐう。サキは目を伏せる。
「蓮さんを好きになってよかった。女からガツガツ行くなんてドン引きされるんじゃないかって悩んだときもあったけど」
蓮は黙ってサキの言葉のひとつひとつを聞く。敬愛の念を持って。
サキの大きな瞳にうっすら涙が滲んだ。
蓮は気づかぬふりをしてチーズワゴンをオーダーした。
タワーマンションのクラブラウンジ、大きな窓から朝の光が燦々と差し込む。
パソコンを開いていつもの珈琲を飲む。
メッセンジャーに純奈のIDを入力する。
「おはよう。無事、帰れたかな。バリの思い出は大切にします。もう一度会いたいけど、純奈は結婚してる。だから、まず旦那さんに純奈をくださいって伝えてみたい。それで却下されたら純奈にはもう会わない。純奈の黒髪と焼けた素肌の感触をずっと慕って生きてゆく。OKなら返事ください。だめなら返事はいらない」
蓮は、下の世界を見下ろすことなく、空を見上げた。
まばゆい。真っ青な空。
富士山の方向はグレーの雲が出ている。刻々と空は変化する。
「おもしろいよ。空。男と女も……」
蓮は空に向かって背伸びをして、坂田にLINEを入れた。
「坂田くんの推測ははずれて、旅先で見つけたよ。その人のためなら犠牲になれると思えた。今夜、ホテルのバーに報告しに行くからね」
グラスを持って立っている坂田が窓越しに見えた気がした。
END
あらすじ
主人公・萌奈の姉はラブホテルで女子会をやって、女の子同士でレクチャーし合ったり、バイブを使ったりして男のツボを押さえる実技訓練を行なっていたことを聞かされた。
萌奈は興味を持ったものの、それはさすがにヤバいと思っていた。
そんなある日、休日にカフェチェーン店に行ったところ、スマホのイヤホンジャックで同じものを持っているとミチカから声をかけられる…