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【前編】恋愛とセックスのかけ算/23歳 藤香の場合
遊び心
駅ビルに新しくできたメガネ専門店、カラフルなフレームが所狭しと並んでいる。
花柄のフレーム、ジェルネイルのようにピンクコーティングしてあるフレーム。原宿あたりでしか見かけないようなビビッドカラーもある。
遠慮がちに楕円形の鏡の前に立って藤香は自分のメガネ顔を映してみる。太い黒縁の生真面目メガネ。
首のあたりでひとつに束ねた真っ黒の髪の毛。着ているセーターまで黒のニットだ。ピアスもペンダントもしていない。
藤香はキョロっと店内を見渡す。
女性客たちは長くて裾が広がっているスカートを履いていたり、パステル風のカットソーを着ている。選んでいるメガネもワインレッドやチェック柄のフレームだ。
「なんか、私……地味だね……」
楕円形の鏡に向かってコソっと話しかける。
「お客様、メガネを新しくされますか?今のメガネは度が合わなくなりましたか?」
店員の声が藤香の耳によどみなく流れ込む。
ほどよい低音のバリトンボイス。あわてて振り向く。
紺のフレームのメガネをかけ、青いブレザーを着た奥二重の目の店員がほほえんでいる。
ヘアスタイルは短めで柔らかくウェーブ。中性的な顔立ちと低い声が釣り合わない。
メガネをかけているだけで誠実そうに見えるというマジックなのか、藤香はていねいにお辞儀をしてしまった。
相手も驚いて深々と頭を下げる。
深いお辞儀を終えて目が合うと、何か変な感じがして二人でクスッと笑ってしまった。
「丁寧なお店なんですね」
「いえ、お客様が頭を下げられたのでつい……」
「今日はなんとなく見に来ただけです。このメガネ、去年作ったばかりだから」
「そうでしたか。そちらはお仕事用にして、プライベート用に遊び心があるフレームはいかがですか」
「遊び心……」
藤香は”遊び心”など持ち合わせず23年生きている。
副都心線の北側に位置する埼玉の郊外で高校まで過ごした。遊び心に溢れたの思春期を過ごしたわけではない。もともと控えめな性格なのだ。たいした思い出も作らず実家を離れた。
叔父が都内に住んでいたので、下宿させてもらい簿記会計の専門学校に進んだ。コツコツ勉強し晴れて会計事務所で秘書の職につくことができた。
一人暮らしをするようになっても遊び心は生まれてこなかった。
今は会計士と藤香二人だけの池袋の会計事務所勤務だ。経理の仕事をそつなくこなしながら、何の変哲もない生活をしている。
エクセルで日常を区分すると5日間は確実に同じセルに入るほどの決まりきった毎日。
同じ時刻の電車、3両目に乗り、同じ事務所に行き、同じ場所でお弁当を食べる。
そして18時になったらいつもの電車で帰る。楽しみといえば同世代の女性が出るテレビドラマを見るくらい。
スマホは格安プランなので、ティーバーではなく、家の小型テレビ。
「いいなあ、東京でこんなキラキラした生活、憧れるな」
と主人公に自分を重ねて画面の中に入り込みながらいつしか眠りにつく。
遊び心など持つ隙間はない。
妄想と満足
メガネ店に行ったのはたまたまだ。帰りの電車が車両事故で止まったというアナウンスを聞いたので、駅ビルの3階に向かっただけだ。
次の朝、目覚めて顔を洗い丸テーブルの上にある鏡をのぞく。サンシャインシティの300円ショップで買ったダイヤモンド形の卓上ミラー。
派手を好まない性格のくせに、日曜にサンシャインビルや池袋地下街のようなかわいいものでごったがえしている場所をフラフラ歩くのは好きだ。
きらびやかなジュエリー雑貨を手に取るけれど、見つめただけで元に戻す。
テレビドラマに出てくるイケメン俳優がサンシャインビルの上にあるレストランでそれをプレゼントしてくれる光景をチラっと妄想して満足する。
300円ミラーに映った藤香の顔は、そこそこきれいだ。
くっきりした二重まぶた。茶色みがある瞳。ほっそりした頬。ちょっと困ったようなハの字カーブを描く眉毛が控えめな性格を表している。
その日は以前買ったものの使ったことのないアイラインを目尻にめがけて入れてみる。
ヌードベージュのシャドーをくっきりしたまぶたにのせてみる。つけ睫毛などせずとも、ドラマに出てくる主人公の顔に近づく。BBクリームを塗った肌にアイメイクだけして黒縁メガネで出勤する。
「おはよう、岡崎さん、なんか、今日、違う人みたいだけどなんでかな?メガネ取ってみてよ」
初老の会計士高田は、銀縁のメガネをティッシュで拭きながら話しかけてきた。
「高田先生、おはようございます。今日はちょっとメイクしてみたんです」
「へえ、女の人って化粧でそんな印象変わるの?うちのかみさん、外ではどんな顔してるんだろうな。家では眉毛がなくて雪女みたいな顔なんだけどなあ。ブカブカの服しか着ないし」
「外ではきれいにしてるんじゃないですか。一度、外食にでも誘ってみればどうです?メイクした奥さんに会えるかもしれませんよ」
「ハッハッハ。絶対、二人で出かけたくないって言われるよ。うちのはまずは子供優先だ。高一のにいちゃんは、親と一緒になんか出かけないし……寂しいもんだよ」
藤香は高田の家族のクールな話を聞くたびに、結婚なんてこんなもんかと思わされる。
子供の頃は、両親も叔父夫妻も仲がいいと思ってはいたが、藤香が大人になると母も叔母も相手の愚痴をポツポツ語り始めた。
「結婚生活がそんな感じだと、恋愛にもに興味もてませんよね」
高田に聞こえぬようつぶやく。
メイクの効果
その日、いつもどおりデスクワークに励んでいた。
顧客の領収書を整理したり、税金を計算したり、都税事務所に電話で問合せたりのルーチンワークだ。
社員は一人だけ。
気を遣うことがない。
効率よくマイペースで仕事がはかどる。
「孤独」と「人間関係」を天秤にかけるなら、人間関係を捨てる。
わずらわしいのはまっぴら。
作り笑顔や、話を合わせる術などうっとおしいだけだ。
休憩時間にスマホのニュースで未婚女子の6割が彼氏なしという結果を見て、ホッと胸を撫でた。
結婚などしなくても、コツコツ働いて無駄遣いしなければ老後、一人でも生きてゆける……根拠がない自信にだけ支えられ、会計事務所の給与だけでひたすら頑張ってきたのだ。
夕方、高田が顧客先から帰ってくるなりさりげなく聞いてきた。
「そういえば、なんで今日、化粧してたんだ?きれいな社員が事務所にいると、いい気分だ。はい。お土産。あ、こういうのセクハラになる?訴えないでくれよ、ハッハッハ」
池袋西武のデパ地下にある有名なケーキ屋の箱だった。
ケーキひとつがランチ1回ぶんの値段なので、藤香はショーケースを覗くだけで買ったことはない。
箱を開けると、まるで宝石のようなケーキがふたつ鎮座していた。
オレンジ色の下地が透明のゼリーで包まれてツヤツヤ光っている。
トップには苺やらマンゴーやらチョコスティックやらが舞踏会の会場のように賑やかに乗っかっている。
その上、金粉まで散りばめられている。
「うわあ、きれいなケーキ。すごいー。先生、お茶淹れますますね」
子供にかえったように喜ぶ。
「僕はお客さんと食事会がはいったから、持て帰ってゆっくり食べなさい、一緒に食べる彼氏は……あ、こういうのがセクハラ発言になるんだ。肝に命じよう」
ちょっとアイメイクをしただけで、平凡だったはずの一日に晴れやかな色が刺された。
“なんでメイクしたのかって?”
藤香は考えてみる。
朝起きて、急に鏡に向かったのはどういう心境の変化なのか。
「メガネショップ……お辞儀をしてくれた店員だ」
真っ白な恋愛遍歴
塩顔でお辞儀をしてくれた店員のことが気になった?ないない。
藤香の恋愛遍歴は、真っ白なのだ。小中と、成績は中程度。
担任からの評価は「落ち着いてじっくり物事を考えることができます。自己主張をすることがないので、もう少し自分の意見を言えるよう努力しましょう」といった、”控えめ女子”の判定だ。
遠足でバスに乗り遅れても皆に気づかれることがないような女の子。
高校時代もしかり。
ただ弓恵という友達が一人いた。弓恵に「もっと明るくなりなよ。藤香ったら存在感なっ!」と常に言われ続けてきた。
少しだけ気になる同級生がいたが、もちろんアクションを起こしたわけではない。至近距離に彼が来るとサッと風のように逃げていたくらいだ。
弓恵が初エッチをした話をしても、上の空で聞いていた。恋愛などセックスなど自分とは別世界の話。
風呂場で鏡に裸を映して考えたのはこの頃だ。
こんもり膨らんできた乳房。薄桃色に色づきちょこんと胸にのっかっている乳首。足の付根に三角の形に茂ってきた薄いヘア。
体育の時間に恥ずかしいので脇のヘアだけは毛抜きで一本ずつ脱いた。脱いても脱いても生えてくる。
「子供の身体のままでいられたらいいのに。ブラジャーで締め付けず、脇毛の処理もしなくていい身体。もちろん生理だってないほうが楽に決まってる」
その思いを母にも弓恵にも言ってはいない。とんでもない反応が返ってくるとわかっていた。8歳下の弟に、胸をちら見されるのすら嫌だったのだ。
性教育の時間に女性器の図を見た日は頭痛で眠れなかった。
「どうしてこんな変な形のところに好きな男の子のアレを入れることができるの?こんな不細工なとこを好きな男の子に見せるってこと?信じられない。おしっこしてるとこ見られるようなものじゃない」
藤香は大人になることをひとつずつ拒否していった。
弓恵が生理が来ないと大慌てでばたついているのを見つめて決意した。
「私はまじめに生きる。恋やセックスなど無縁のところで」
ブロンズの美女
ドラマで20代の主人公が相手役の俳優と初めて会うシーンを見ていた。
「今度の休みはあいてる?」とさりげなく聞かれている。
藤香は画面を見つめながら考える。
空想の中の彼氏に休日は何をしているか?と尋ねられるとどう答えるか。
池袋の雑貨店を散歩するほかに、何をしてしる?ブックオフで2時間ほど本あさりして3冊だけ買う。
必ず100円本を1冊は入れる。
駅前の鯛焼き屋であんことクリームのたい焼きを2個買って帰る。
たい焼きを食べながら本を読む。
ああ、我ながら地味で安めの休日の過ごし方。
ドラマチックでもなんでもない。
リモコンでチャンネルを変える。
古い外国映画。
もろにベッドシーンが映し出される。
ブロンズの美女と彫りの深いイケメン俳優がが広いベッドで裸で抱き合っている。
シーツで腰から下は覆われているがシーツの盛り上がる形で絡み合っているのがわかる。
撮影なんだから下着はつけたまま演技しているだけだ、理性的に考えるとなんともない。
ただ、この夜の藤香はいつもの思考パターンから少しずれていた。
メガネショップの店員。
彼と裸の俳優が重なる。
ブロンズ美女は……藤香。
これまで毛嫌いしていた男と女の不潔な行為。
チャンネルを替えもせずじっと見つめる。
映画のセリフを聞いていると両家のお嬢様と庭師の恋愛ものだ。
禁断の恋というストーリー。
女優がうるんだ瞳で相手役を見つめ、首に腕を巻き付けて唇から舌をのぞかせている。
舌が見えるといやらしい感じがする。
こんなに密着して恥ずかしくないの?
汗の匂いとか口の臭いとか気にならないの?
それに、女のアソコってその行為のときは濡れてるんでしょ?
シーツは汚れないの?
濡れるって……その液は相手の太ももやおなかに付かないの?
その液って、何?どんな液?どんな臭い?初めてだった。
性的なものに興味を抱くのは。
空想とテレビ画面がごっちゃになる。
塩顔の店員が藤香に乗りかかり、大きく腰を動かす。
藤香が顎を天井に突き出し「ラブユー……」と呻く。
現実の藤香は股の間がジンっと細かく震えるのを感じた。
キュっと膣が引き締まる感覚。脈が早くなる。
何これ?わたし、どうしたんだろう。
母の発情期
「男の人と交わるなんて、一部が私の身体に入ってくるなんて想像できない。気持ち悪い……」
恋にもセックスにも関心がない理由はよくわからない。
ちょっと厳しい父と口数が少ないが子供にはやさしい母と、話が合わない弟。
地味な性格は両親二人の遺伝子だ。
母親から恋愛話や性の話題など振られたこともない。
だが、なぜ藤香には関心がないのかひっかかった。
ネットもテレビも同じ年頃の女性の恋愛話で溢れかえっている。
よく考えてみる。
幼いころの記憶を糸を引っ張って手繰り寄せるようにじんわりと。
白い靄がかかったような子供の頃の記憶。
6歳……だったと思う。
夏休みだ。
むせ返る暑さ。
ジージージーと泣き叫ぶ蝉の声が背中に雨のように降りかかる。
同じクラスの彩芽ちゃんの家に向かった。
ゲームをして遊んでいたが彩芽ちゃんがジュースを飲みすぎておなかをくだしたので、早めに帰ることにしたはずだ。
母親はその頃専業主婦。
家に戻ればアイスキャンディーをもらえると思っていた。
暑かった。
大きなツバの麦わら帽子をかぶっていたが、焼け付く日差しが背中と腕を焦がすくらいに。
家に着くやいなやキッチンの冷蔵庫に向かって走る。
「かあさん、アイスちょうだいー」
母は見当たらなかった。
「おかえり」の声も聞こえない。
居間にエアコンはついていない。
「かあさん、お買い物?」
戸建てだがそれほど広い家ではない。
寝室と子供部屋のドアをあけても人の気配はない。
外に出て車庫に向かう。
狭い敷地の左奥に物置と車庫を兼ねた建物がある。
わけもなく胸がドキドキした。
夏休みの午後、痛いほど熱い空気がが藤香の小さい身体にまとわりつく。
喉がカラカラ。
車庫の扉が少しあいている。
ちょうど中を覗けるくらい。
思い出した。
おとなしい母が、汗まみれで変な声を吐いていた。
猫の発情期のような変な声。
母は車のボンネットに手をつき、母の後ろには……知らないおじさんがズボンを膝まで下げて腰を母の知りめがけて打ち付けていた。
長いプリーツスカートをめくりあげて。
「スカートめくり?クラスの男の立ちがいたずらするやつ」
藤香は固まった。
膝がガクっと震えた。
あんな母の顔は見たことがない
子供心にも声をあげてはいけないと察した。
あんな母の顔は見たことがない。
薄暗い空間にほんのり浮かぶ青白い肌。
汗で髪の毛が頬と首に張り付いて幽霊みたいだ。
目を閉じて顎を突き出し、口を開いて……舌先が見えていた。
いやらしいという感覚は6歳の藤香にはなかったが、ただただ、嫌だった、母が幽霊のようになったのが。
「はあん、はあん、ふうん……」
という猫のような声。
薄暗いのに熱気に満ちた車庫。
暑さの中で一瞬、背中に冷水を浴びせられたような思い出。
そのあとどうしたのかは覚えていない。
走って逃げたのか、そのまま見続けていたのか。
夕食時に、何事もなかったように母がかぼちゃのコロッケを出してくれたのをうっすら覚えている。
それ以外のことは忘れようと努力したのだ。
母が幽霊になった日のことは。
物心つき、性の仕組みを知った時、弟は本当に父親の子なのか頭をよぎったこともある。
「亮ちゃんはおねえちゃんによく似てかわいらしい目だね」
「兄弟よく似てるね」
と、しょっちゅう言われることでその疑惑はもみ消してきた。
おとなしい母が幽霊みたいに見えたから、男女の営みを否定するようになったのかはよくわからない。
ただ、塩顔の店員がかぶさる深夜映画の一シーンが、藤香の中にある硬い石をコツっと揺るがしたのは確かだ。
藤香は部屋着のズボンを脱ぎ、ダイヤ型の鏡を手に取った。へそまである白いパンティーをゆっくりくるぶしまでおろし、床に開脚してぺたんと座る。手入れもなにもしていないヘアはもじゃもじゃと真っ黒な三角地帯を描く。
鏡で太ももの付け根をおそるおそる覗く。茂みを指でかき分けると、口の中のような粘膜尿道の下に位置する割れた部位。
ネットでイラストを見たことがあるが唇が縦方向になったような形。口と違って舌はない。
その中はいったいどこまで伸びているのか、どんな広さなのか興味が湧いてくる。こんな狭い唇に男の人が入ってきたり、赤ちゃんが通ったりするなんてどういう仕組なのか試してみたくなる。
あらすじ
真面目に23歳まで生きてきた藤香はひょんなことから会員制のバーに招待される。
そこで豊満な肉体を持つカオルと、バーの大家であるケントと出会い…