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【前編】恋愛とセックスのかけ算/21歳 萌奈の場合【LCスタイル】


くだらないモノたち

カフェオレの画像

ほとんどミルク味のカフェオレをすすりながらフリマアプリを覗くのが萌奈のやすらぎ時間。

母と姉の美梨が寝静まった頃、キッチンに向かう。

耐熱カップにインスタントコーヒーをスプーン1/3。砂糖2杯。パックの牛乳を並々そそいでレンチン。

誰もいないリビングで立て膝をしてフリマに出されているグッズを見つめる。

オレンジ色の長靴、ムチャ欲しい。窓ガラスに張る星型シール、ダサっ。

ひまわりがユラユラ揺れるカチューシャ、10年前なら絶対買ってる。

ロックなTシャツ、空也(くうや)のバースデーにプレゼントするか。

小さな画面にモノが溢れかえる。ちっちゃい頃は自分の大事箱に、おもちゃが増えるのがうれしくて、くだらないモノを集めていた。

キラっと光るヘアピン、美梨が飽きてしまった着せ替え人形。

大事箱は宝物だった。

今はスマホアプリが萌奈の大事なおもちゃ箱。萌奈は服や雑貨が大好きだ。

チープなおもちゃも見ているだけで楽しい。つい買ってしまう。

ユニークな雑貨にも目がない。下北沢や中野ブロードウェイに行かなくてもフリマアプリで速攻探せて、安く手に入る。

3LDKの古いマンション。美梨が来年結婚すれば部屋を使っていいことになっている。待ち遠しい。

雑貨と古着でごった返している部屋にちょっとは空きスペースができるだろう。

萌奈の働くモチベーションは「かわいいモノを買うこと」に尽きる。

給料日になると母に生活費を3万渡し、フリマのために5万取っておく。

給料の残りはランチや友達と出かける費用で消えてゆく。

28歳、実家暮らしのくせに貯金なしの浪費女と美梨からは嫌みを言われている。

萌奈の仕事は果物屋チェーン店の本部の事務。

商品の発注をしたり、在庫管理の表と向かい合っている。

文字ばかり見ていると疲れるのでたまに果物の写真を見る。

大ぶりのイチゴを見るとこんな指輪があればいいと思うし、形がいいパイナップルを見ると、パイナップル模様のシャツが欲しくなる。

リビングでスマホ画面を撫でていると美梨が声をかけてきた。

「萌奈、雑貨オタク続けてると彼氏できないよ。タラレバ見たでしょ。30歳になると一気にモテなくなるんだから、今のうちにつくりなよ」

「美梨ねえだって、30歳で大沢さんに会ったんでしょ。私、あと2年ある」

「その余裕が危ないんだ。私なんか大沢くんにどんだけ迫ったか。迫りまくらないと、結婚できないぞー」

「へえ、結婚してって迫ったの?」

「いんや、無理やり押し倒して腹に乗った」

安定男との結婚

女性の画像

2つ上の美梨は夢見がちな萌奈と違って超現実的。いや打算的。

キリッとした眉とつり目に気性が現れている。我儘なお嬢さん顔。

家電メーカーで営業事務をしている。

二人が中学の時、父と離婚して苦労している母を見て、自分は絶対離婚しない、稼ぐ男を探し出すと誓った。

美梨の口癖は「女は付き合う男に寄って人生変わる」だ。

家では男勝りで乱暴な物言いのくせに、一歩外に出ると笑顔をたやさず、きちんとした敬語を使う。

「すてきなお姉さんねえ」と言われるたびに萌奈は「へ、嘘じゃん」と小さな反旗をかざしていた。

スレンダーな姉と違い、小太りでホワッとした体型の萌奈。

小学校の頃のあだ名は「もふ子」。

薄桃色やクリーム色の服を着ると膨れて見える。だがどうしても女子色を好んでしまう。

服はもちろんフリマアプリで購入。

ボディラインが見えないチュニックやダボっとしたニットを着て、うさぎのブローチなどつける。

まさに夢見がちな少女系。

ぷっくりした体型がかわいらしくもあり、なぜかもてる。付き合った彼氏は過去4人。

去年、なんとなく別れてから今は一人。空也という高校からの同級生とたまにドライブするくらいだった。

美梨は地方銀行に勤めている大沢と友達の紹介で知り合い、品が良い女性のふりをして結婚までたどりついた。

デートのたびにSEXまで持ち込もうと企んでいたが、大沢は一向にその気がない。

夕食を終えると「送っていくよ」とすぐに帰ろうとする。

しびれをきらせた美梨が自分で運転してラブホテルに連れ込み、覆いかぶさったというわけだ。

身体の関係を持ったことで結婚を迫る。まじめな大沢は承諾してくれた。

萌奈は家の顔と外の顔が違う美梨をこざかしいと思っていたが、予定通り、安定男との結婚まで持ち込んだことには尊敬の意を抱いた。

「美梨ねえちゃん、すごいよ。大沢さんちは埼玉の地主で、土地もアパートもいっぱい持ってるんだもんね。いずれ全部、美梨ねえちゃんのものになるんだよね」

「そう。ちゃんとそこまで調べたもん。兄弟は妹一人。すでに嫁に行ってるし。それに一応銀行マン。安定収入。OKでしょ。かあさんみたいに夜遅くまでパートで働くなんてしたくない」

「しかし、ラブホで強引にするって……あり得ない計画だー。大沢さんがまじめな人でよかったね」

開運ホテル

マグカップをもって寄り添う画像

「あんた、ラブホ行ったことあんの? 最近はきれいだよー。高級感満載」

「ラブホはない。元カレとは、いっつもあっちの部屋でしてたし」

「土江くん? あんなヒッキーのプーとは別れてよかったよ。ねえ、男運って大事だよ。恋愛はね自己努力のほか、運を味方につけなくちゃだめ。フリマでまずお守り買いな」

萌奈はさっそくフリマアプリを開いて、お守りを探す。ふと手を止める。

「つうか、そういうのネット購入より、その場に行って買わなくちゃだめっしょ。恋に効く神社っしょ」

「まあね。でも、神社より効く場所あるよ。伝説の場所」

「どこさ」

「新宿のラブホ」

萌奈はスマホをソファに放り出し、カフェオレを作り始めた。

「ばっからしい。彼氏に出会いたいってことは彼氏がいないってこと。一人でラブホなんか行けないし。その伝説おかしいっしょ」

珈琲の香りも色もないミルク90%のカフェオレを美梨に手渡す。

「うへっ。何、このお子ちゃま感。珈琲もっと入れて」

「美梨ねえちゃん、身体に悪そうなものばっか好むよね。惣菜屋の油っこいコロッケとか、色がついたお菓子とか」

「うるさい。あんたみたいなお子ちゃま舌じゃないの。大人のオンナなの」

「アタチ、お子ちゃまだからラブホなんて行けないーーー」

萌奈が幼児言葉で返す。

「へへへ、女と行けばいいんだ。まずその開運ホテルに行って、運をしょいこむの」

「女?」

「女子会ができるラブホあるんだ。でもさ、せっかくのエッチなホテルなんだから女子友と行ってエッチの練習すればいいんだよ。私も行ったよ。女友達と4人で。エッチの教え合いした。ネットで検索するより勉強になるよ。実際に教え合うの。お互いのテクをさ」

マグカップを持つ女性二人の画像

「エッチの勉強会?」

「そっ。彼氏とどんなエッチするか教えあいっこするの。こうしたら喜ぶよとか生の声ってやつ」

「まじか」

美梨はカフェオレをグビっと飲んでやんちゃそうに笑う。

「もち、裸でやるんだよ。お互いの身体を彼氏の身体と見立てて」

「……ないないない」

「でもさ、アソコは女子にはないからさ、絶対バイブ持ち込むこと」

「……いやいやいや。美梨ねえちゃん、変態!」

「ま、とにかく新宿の伝説ラブホでオンナ同士キスすれば絶対彼氏ができるってことだよ。私も銀行マン、ゲットしたじゃない」

女同士のおしゃべりは延々と続く。

美梨が結婚してしまうとこの時間がなくなる。

萌奈はちょっぴり寂しさを感じた。

?

翌日、休日というのにやることがない。

萌奈はカフェチェーン店の隅っこに陣取ってスマホアプリをなぞっていた。

外で飲むカフェオレは珈琲味がきつくて飲めたもんじゃない。

萌奈はホットミルクを2杯頼んだ。

「あの……」

「はい?」

「そのスマホのイヤホンジャック、子犬ちゃんシリーズですよね。そのシリーズ持ってるんす」

いきなり隣の席の女の子に声をかけられた。

ショートカット。愛くるしい目をした、小顔の女の子。

オレンジ色のセーターを着ている。萌奈のラッキーカラーだ。

「あ、そうすか。私、柴犬くん」

「こっち、ダックスフンドとトイプードルとブルドッグ。全部買ったんです」

小顔の女の子は狭い丸テーブルの上にコロコロっと犬シリーズのジャックを転がした。

「わあ、ムチャかわいい。ネットで買ったの?」

「ええ。こっち、ネットショッピングマニアで。ワンコもの見るとすぐ買っちゃうんです」

「私も!私はフリマ大好き。売るのも好きだし」

「そうなんですか。こっちがよく見るサイトは……」

おたくっぽい会話を続けていると時間を忘れた。

自分のことを「こっち」と呼ぶ小顔の名前はミチカ。

声優に憧れてバイトしながら専門学校に通っているという。

たしかにアニメのような声をしている。

二人の世界

寝転んでスマホをいじる画像

ミチカとLINEでつながった。

その日から萌奈のネットショッピングタイムにミチカが参加した。

”このポーチ、売ろうと思うんだけど、つかみの言葉、何がいいかなあ”

”わ!赤いチェック、かわいい!それ、こっちが買う”

”え、ミチカちゃん、気に入ったの? じゃああげるよ”

”買うって。この前のカフェで待ち合わせよう”

萌奈の世界が少しだけ広がる。

職場には趣味の話ができる同僚はいない。

高校時代の友人も話題動画の品評で一瞬盛り上がりはするが、ネットヘビーユーザーではない。

ミチカとつながっていると単純にワクワクする。

かわいいモノを集めていることで子供扱いしたりしない。

もっと安く手に入ると他のフリマサイトを検索してくれる。

何時間でもネットの中で会話ができる。

スマホを通して萌奈とミチカは二人の世界を作り上げていた。

仕事が終わり、萌奈が会社を出ようとした時、息を切らしながら紺のスーツの男が駆け込んできた。

「営業1課の串田さんとお約束しているナスコムの吉岡です。串田さん、いらっしゃいますか」

「はあ、少々お待ち下さい」

終業時間にやってくるなんて迷惑なクライアントだ。

萌奈は後戻りしてパーテンションごしに串田を探した。

「串田さーん。お客さんですよ」

「ありがと。やっと来たかあ」

串田も待たされていたのだろう。めんどくさそうに席を立つ。

「わるい、小倉さん、お茶お願いしていい?会議室に」

「えーー。帰ろうと思ってたんですけど」

串田はたまにランチをご馳走してくれるので気を許している。お茶くらい入れてやろう。

それにさっきの男の人、仕事できそうでかっこよかった。

萌奈は給湯室でお茶を入れながらリップジェルを盛った。

会議中の男性の画像

会議室にお茶を運ぶと吉岡は、チラッと萌奈の方を見て微笑んだ。

眉がアーチ型になり、白い歯が覗き、まるでスマイルマークのような完璧な笑顔。

お茶ごときでこんなに喜んでもらえるんだと萌奈はお辞儀をして笑顔を返してリップジェルを舐めた。

翌日、串田が萌奈に耳打ちした。

「小倉さん、昨日帰りがけにひっぱちゃってゴメンな。昨日の吉岡さんさ、小倉さんのこと気に入ったみたいで、ゴーコンしようってさ。金曜、どう? 誰か友達一人誘ってよ。4人で飲み行こう」

萌奈はぽってりしたおなかを手のひらでたたきながら、

「ゴーコン嬉しいけど、あと4日で痩せられるかなあ」

と、自分をディスった。

「小倉さん、わかってないなあ。うちの課の男たちはみんな小倉ファンだよ。オグモナって呼んでるよ。ダイエットでギスギスしてる女より、好きなものをおいしそうに食べて、ちょっと太くても気にしない小倉さんが自然体でいいよなって」

「ほんとですか!」

串田は内緒声になった。

「ああ、セクハラって言わないでくれよ。ここだけの話、ボンボンのダイナマイトボディ、男はそこに魅力を感じるんだ。ダイエットで不健康に痩せた女にはエロチックを感じない」

そんなこと、萌奈は昔からわかっていた。

ダイエット発言も女友達のマネをしただけで、本心ではない。

小太りと言われる自分だが、そこそこのモテ人生。

萌奈が太いことを気にしていないので周囲が「ぽっちゃりしてかわいい」と率直に言ってくれるのだ。

面と向かって「デブ」と言ってくる人はこれまでいなかった。

萌奈は自分の身体をきらいと思ったこともなく、むしろ大ぶりのアクセやノーウエストの服で着飾ることを楽しんでいた。

フリマサイトでも「L」「11号」のコーナーの常連だ。

「吉岡さん、狙っちゃおうかな」

「おお、いけるぞ。優秀なSEだ。ネットにも詳しいから小倉さんと話合うよ」

満点の仕込みゴーコン

乾杯の画像

予想どおり、金曜のゴーコンは盛り上がった。

串田に気がある同僚の沙弓は串田の隣を陣取り、ロックオン状態を保った。

吉岡は萌奈のぽっちゃりぶりをベタ褒めした。

萌奈がグラスを取ろうとする腕を指でひと押しして、

「このバウンド感、白い肌。ほんと、萌奈さん、きれい」

と言った。

「吉岡さん、もしかしてデブセンっていうやつですか」

萌奈は上手に自分をディスる。

「そういう言い方しないで。萌奈ちゃんは男を包み込んでくれる女神的雰囲気持ってんだから」

酒もはいっているので串田もシモネタ前開で囃し立てる。

「ヨッ! 付き合ってください、お二人さん! 今夜は五反田か歌舞伎町に繰り出してください。萌奈ちゃんの肌枕……いいねえ」

「串田さんこそ、沙弓お持ち帰りオッケーですよ。ねえ、沙弓」

沙弓は「やっだー」と萌奈の肩をピシャピシャ叩きながらまんざらでもない素振りを見せる。

確実に2組のカップルができる、満点の仕込みゴーコンだった。

帰りがけ、吉岡は萌奈を送っていくことになった。

街路樹を外灯が照らし出す歩道で吉岡は一歩萌奈に近づく。

「串田さんにまくしたてられたからって言うわけじゃないけど、今度二人でデートいいすか」

萌奈はゆっくりうなずいた。

大胆に迫るほうが話が早いのは体験上知っている。

「このまま帰るのは寂しいなあ。キスだけでもして。私も吉岡さんの笑顔、好みなの」

吉岡はキョロっとあたりを見回し、ひと目がないのをたしかめてから萌奈の両肩に手を置く。

身長は萌奈より5センチほど高い。

目を閉じた萌奈のおでこに軽くキスをして、すぐにくちびるをとらえた。

温かい吐息が萌奈のくちびるを割って流れ込む。

「……んっ……。」

萌奈は吉岡の腰に手を回して身体を押し付けた。

下腹部に固いものが当たるのを感じる。

スマホを見る女性の画像

ミルクたっぷりのカフェオレをすすりながら美梨に吉岡のことを報告した。

「へえ、SEさん。いいじゃない。萌奈みたいなおたくにはネット界の人が合うよ。萌奈のサイトつくってもらえば? フリマ口コミサイトとかさ」

「うん、付き合おうと思うよ。ゴーコンでキスまでしていいって思った男の人ははじめて」

美梨が身を乗り出す。

「性的魅力を感じたってことだね。早いけど、今度のデートでSEXまで持ち込めばいい」

「なんで美梨ねえちゃんはそこ、急かすの?」

「大沢さんが、なかなかそこにたどり着かなかったからさあ。しびれきらすより、とっととやっちゃえばいいんだよ。30代男はどっちかに分かれるね。エッチ躊躇組と速攻ヤルヤル組」

「そうか。わかった。吉岡さんが躊躇してたら、私から誘う」

「その前に過去の女遍歴を聞き出したり、家族構成とか調べなくちゃ。職種はばっちり。勤めてる会社も信用できる。あとは過去だね」

「興信所みたいだね」

「結婚前提なんだから、それくらい調べな」

萌奈はOKサインを指で作った。

「デートで着る服、ネットで探そっ」

「たまには、リアルな店に買いに行けっつうの。スマホ依存症の妹よ……」

萌奈は、無視してフリマアプリを開き、どっぷりショッピングに浸る。

薄い水色のフレアスカートを見つけたので、ミチカにLINEで尋ねる。

“彼氏できるかも!このスカート、デートにどうかなあ“

“まじで? 萌奈ちゃん、その話、聞きたいからいつもの珈琲屋さんで会おうよ。スカートはもっと安値で探してみよう“

“いいよ。水曜夜なら早く終わる“

“じゃあ、水曜。待ってる。会えるのうれしい“

ミチカとのやり取りがなんだか恋人同士のそれに思える。

萌奈はクスっと笑った。

女友達以上の存在

スマホを見る女性の画像

ミチカとリアルに会っているわけではない。

寝る前に必ずLINEでショッピングアイテムの話をしているのでなんだか一緒に住んでいるルームメートのような感覚だ。

カフェでたまに会うリアルなミチカ。

ミチカは時々、頭をプルプルっと左右に震わせ癖がある。

ハラっと前髪が揺れて愛くるしい。

人形のように小さな顔でキャップをかぶっていると、少年のように見える。

スマホには子犬のジャック、リュックにはうさぎのホルダー。

いったいいくつなのか年齢不詳。尋ねても教えてくれない。

ベトナム珈琲の底に甘ったるい練乳が滞っている。

ミチカがスプーンですくって舐める。とんがった顎にねっとりしたミルクがつく。

「ミチカちゃん、ついてるよ。ミルク」

「拭いて」

「え?」

「萌奈ちゃんに拭いてほしい」

「なに、子供みたいなこと言ってんの。へんなの」

萌奈が紙ナプキンで顎の先をぬぐってやる。

ミチカは目を閉じてくちびるを半開きにしている。

萌奈はくちびるを重ねたいようなおかしな気持ちになる。

「ミチカちゃん……」

「……あのね、こっち、萌奈さんとハグしたい」

「ハグって……」

「ギューって」

「なんかあった? 寂しい気分なの?」

「好きなの。萌奈ちゃんが」

「なに。私も好きだよ。フリマアイテムの相談もできるし、雑貨が好きっていう共通の趣味もあるし」

「そんな好きじゃなくて、彼女になって欲しいほど好きってこと」

萌奈は紙コップの水をこぼしそうになる。言葉が続かない。

「萌奈ちゃんと話してると、こっち、幸せな気分になる。ここがあったかくなる」

ミチカはこぶしで左胸を叩く。

「ふっくらした萌奈ちゃんの腕やほっぺをずっと触ってたい」

ミチカがまた頭をプルっと左右に振る。髪の毛が乱れる。

萌奈はそっと手を伸ばして、髪の毛を直してやる。

妹のようなルームメイトのような……友達以上の存在なのは確かだ。

「新宿、行こっか……」

「何しに?」

「女子会できるラブホあるって、ねえちゃんから聞いた」

「萌奈ちゃんと二人で女子会?」

「そう。ハニートーストもあるらしい」

「行く!楽しそう」

ミチカが萌奈の腕を掴む。

寝室の画像

女子同士でラブホに入るなどおかしいだろうと考えるのは時代遅れだと気づく。

新宿にあるここは、まさにアジアンリゾートだ。

ファッションサイトに出てくるような流行りのメイクをほどこした女子たちが3人、ロビーのソファに座ってワインを飲んでいる。

盛り髪をしたキャバファッションの二人が、ロビーの中央に山積みされたバスソルトやアメニティをキャアキャア言いながら選んでいる。

「まじでー、コンタクトケースもあるしー助かるーー」

「私、この洗顔ソープ3個もらう。3回、顔洗わないとマスカラ落ちないし」

楽しそうだ。ドラッグストアで買い物をしている女子を見ているようだ。

その女子達をチラ見しながら腕組みした男女のカップルがエレベーターに向かう。

ラブホのイメージがくつがえる。遊園地みたいなホテル。

「萌奈ちゃん、いつも使ってるシャンプー、借りれるみたい。すごいね。こっちがいい」

バスケットに入ったお気に入りのシャンプーセットを持って、部屋に向かう。

部屋に着く前にワクワクする世界観ができあがっている。

驚くほど豪華な部屋だった。

ネットフリマで買ったチープな物でごった返してる自宅の部屋とはぜんぜん違う。

広いベッドには透けた布が垂れ下がり、まるでお姫様の部屋だ。

黒をイメージした高級そうなインテリア。

ミチカもキョロキョロして落ち着かない様子だ。

注文してあった甘くて赤いカクテルで乾杯する。

女子会用ドリンクでの乾杯の瞬間、夢の時間が始まった。

二人は開放感でいっぱいだ。

ミチカが萌奈に抱きつく。

「ミチカちゃん、私、付き合おうと思ってる男の人いるんだよ。恋愛の対象はおそらく男。だけど、ミチカちゃんにハグしたいって言われたら、私もそう思ったんだ。ミチカちゃんのこと抱きしめてみたいって」

「萌奈ちゃんがレズビアンじゃないのは分かってる。ただハグしたいって思っただけ」

「うん。でもね、せっかくこんなきれいな部屋に来たんだから、エッチな女子会にしようよ。ベッドもすごいじゃない」

萌奈がベッドの上に座って、バウンドしてみせる。

ミチカは目をパチクリさせる。スッと顔がほころぶ。

「そうだね。ベランダに露天風呂あるから、一緒に入ろう」

二人は服を脱がせ合いながらくすぐったり、肌をつねったりしてじゃれた。

パンティまで脱がせ合い、お互い裸を見せ合う。

「やっぱり萌奈ちゃんの身体きれい。おっぱいもこっちの3倍はあるし、プヨ感もすごい」

ミチカは肋骨が浮くほど痩せていて、おっぱいもあるかないかと思うほどの貧相な膨らみだった。

露天風呂での勉強会

温泉の画像

「ミチカちゃん、もっとケーキ食べたりして太ったほうがいいよ」

かろうじてくっついている小さな乳首のテッペンに萌奈はキスした。

「あんっ」

ミチカが目を閉じて、また頭をブルルっと振る。

手を繋いでベランダに出る。露天と言っても都心だ。

外から見えぬよう巧みに囲いがされている。

ひんやりした空気が肌に触れ、ミチカが小鳥のようにチョコンと首をすくめる。

萌奈はミチカを単純に愛しいと思う。

露天の湯船に二人で抱き合って浸る。

あたたかなお湯をミチカの肩にかけてやりながら、萌奈はミチカにキスをする。

そして、耳たぶを噛みながら、お湯の中にある薄いヘア地帯を、手のひらで撫でる。

ミチカがうれしそうに声をあげる。

「萌奈ちゃん、こっちの気持ちいいとこ全部触って」

「いいよ。どこがいいのか教えてくれたらそこにキスしたげる」

萌奈は、美梨の話を思い出す。

『女子同士で勉強会すればいいんだよ』

男と女の性感帯は似ていると言う。

ミチカの身体で気持ちいいところを知っておけば、吉岡さんとのその時に力を発揮できる。

ミチカが萌奈の豊満な胸に頬を近づける。

「フッカフカであったかい。安心できる」

「Gカップだからね。ミチカちゃんはAカップでしょ。揉んであげるよ。揉むと大きくなるってねえちゃんが言ってた」

乳首が申しわけなさそうにのっかっている小さなふくらみを手のひらで包む。

「ああ、こんなことされたことない」

「……男とか女とか、どっちかと付き合ったことないの?」

変な感じの質問をしてみる。

「うん、どっちもない」

「じゃあ、バージンってこと?」

ミチカがうなずく。

「萌奈ちゃんに奪って欲しい」

「ど、どうやって? バ、バ、バイブとか?」

「……作り物のおもちゃじゃなくて、この指で」

ミチカが萌奈の人差し指と中指をそっと咥える。

萌奈は妙な心地よさを感じる。

ランプの画像

寝たことがないようなフワッとしたベッドが、くっついて並んでいる。

アジアっぽい照明がベッドを照らしている。

「さあ、今からショーの始まりですよ」と言わんばかりに。

萌奈は少し心が傷んだ。

吉岡さんと付き合おうと思っているのに、ミチカとこんなエッチなことをしていいのだろうか。

ミチカはそれでもいいのだろうか。

「萌奈ちゃん、すごい部屋だね。豪華だー。こっち、1Kのアパートしか住んだことないから、緊張しちゃう」

「私だって、家族3人で狭いマンション暮らしだよ。しかも、私の部屋はフリマで買ったモノでぐちゃぐちゃ」

そんな話をしながらベッドに倒れ込む。

萌奈はミチカの上に覆いかぶさる。

「ねえ、女子会に興味あってラブホに来ちゃったけど、ほんと、いいの? 私、ミチカちゃんと付き合うわけじゃないんだよ。恋愛対象は男なんだよ」

ミチカが下から萌奈の顔を見上げる。

「いいの。友達以上の関係でいてくれれば。彼氏さんとうまくいけばいいって思ってるよ。こっちは」

萌奈はミチカにキスをする。

元カレ達がしてくれたことを真似して、男役に徹する。

うなじから鎖骨を味わうように舌を遊ばせてみる。

ヘソ周りにたどり着く頃、ミチカは涙声で喜んだ。

「うれしい。うれしいよ」

「感じてる?どこが一番気持ちいい?」

「萌奈ちゃんがキスしてくれたとこ全部感じる」

「そうか。じゃあ、クライマックスはここだね」

萌奈はミチカの脚を立てて大きく開き、中心にパックリあいた窪みに舌先を這わせる。

「ああ、あああん」

ミチカが両手でシーツを握って、腰をそらせる。

シーツがよれてしわくちゃになる。

「恥ずかしいよ。そんなとこ、やだ……」

⇒【NEXT】「でもさ、すっごい濡れてる。こんな濡れるものなんだね」(【後編】恋愛とセックスのかけ算/21歳 萌奈の場合)

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あらすじ

主人公・萌奈の姉はラブホテルで女子会をやって、女の子同士でレクチャーし合ったり、バイブを使ったりして男のツボを押さえる実技訓練を行なっていたことを聞かされた。
萌奈は興味を持ったものの、それはさすがにヤバいと思っていた。そんなある日、休日にカフェチェーン店に行ったところ、スマホのイヤホンジャックで同じものを持っているとミチカから声をかけられる。

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