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【後編】恋愛とセックスのかけ算/35歳 智子の場合
本気の想い
小梅食堂で定食を食べる金はないが、あの笑顔がかわいい若い女の顔を見たかった。
英生は小梅食堂の近所にある公園のベンチで就職情報誌を見たり、スマホで職探しをするようになった。公園にはあずまやがあり、雨の日でも座って休むことができる。
若い女が通らないか、かすかな期待をした。何日待っても会えないので、小梅食堂の前を通りかかるふりをして偵察に行く。4時半。夜の準備をしている時間帯だろう。
予想は当たった。引き戸がガラリとあいて彼女が現れた。クリーム色のエプロンをして店の前に水を撒き始める。ふっくらした頬。絵本に出てくるお姫様のような小さな唇。英生の胸はトクトクと高鳴る。
「やあ、夜は何時に開くの?」
彼女が振り向く。クルッとした目が驚いたようにキョロっと動く。かわいらしい。
「あ、ランチのお客さんだ。夜は6時からですよ。お酒もあるんで来てください」
「酒もあるんだあ。君はアルバイト?」
「はい。昼の時間は週3日。夜は週2日の。この2週間は春休みだったから、昼は毎日来てました」
「なんて名前か聞いていい?常連客になるからさ」
「まど花です。立川まど花。今日6時、来てくださいね」
英生は駅前のキャッシングで2万円を借りる。初めての借金。そして6時に小梅食堂に入る。
髪の毛の薄い店長がはちまきをして魚を焼いている。こおばしい臭いが店に立ち込める。まだ早い時間なので飲み客は英生一人。
ウーロンハイをまど花に頼む。まど花は嬉しそうだ。タコぶつの小鉢を英生の前にコトンと置く。白魚のような指に桜貝のような爪。智子のように節くれだっていない。
「店長、こちらのお客さん、私が営業したんですよ」
「まど花ちゃんもやるねえ。こうなったらうちに就職しなよ」
店長はちゃらっと調子がいいことを言っている。就職なんてそんな簡単にできるものじゃない。
客が来るまでまど花を独り占めにできた。いろいろ尋ねて、まど花を知った。家政学部の被服学科在籍ということ、実家は福井で今は友達と二人で安アパートに住んでいること。将来は洋裁の腕を活かす職につきたいということ。彼氏はいないこと。
「俺は転職したくてさ、今、就活中。だから日中動けるんだ。今度、デートしようよ」
店長に聞こえないように、思い切り若ぶった話し方で誘ってみた。
「いいですよー。うち、おとうさん、ちっちゃい時からいないから年上の男の人と話したいんです。相談に乗ってほしいし」
「おとうさん、いないの?」
「はい、浮気相手のとこに行っちゃったって、かあさんが泣いてた…」
ジメジメした話題を避けるため英生は切り返した。
「俺はまど花ちゃんのとうさんほど年食ってないぞー。おにいさんだろう」
「お客さん、すごくおっきいからやっぱおとうさんみたいですよ。森の熊さんみたい。」
まど花はいつもの笑い声でキャラキャラとはしゃいだ。熊でも狼でもなんでもいい。英生の暗い森に、かわいいリスの子がまぎれこんだような気がした。
面接試験に力が入った。男とは単純だ。職さがしをする気にならず家でブラブラしていた日を後悔している。むしゃくしゃしているときは面接の時の作り笑いがぎこちないのが自分でもわかる。
まど花が英生の世界に登場してからというもの、英生は力いっぱい自分をアピールできている。
「誠心誠意、御社のために働かせていただきます」と最後に唱える言葉が嘘っぽくない。相手方に好印象を持ってもらえていると実感できる。
英生はある日、店でまど花にプレゼントを渡した。店長にも隠すことなく、やさしい常連客を装って。
「まど花ちゃんのおかげで、就職できそうだ」と恵比寿さんのように微笑んだ。智子に見せていた下品な笑い方は英生から消えていた。
「わあ!ありがとうございます。きれいなチャーム。バッグに付けてみよ」
光を反射してキラキラ光るチャームを自分のバッグにつけてまど花が喜んでいる。
「まど花ちゃん、俺、まど花ちゃんのおかげで就職活動頑張れてるんだ。転職決まったらでいいからさ、よかったらご馳走させてよ。小梅食堂じゃなく…えっと、その、イタリアンかなんか」
まど花はくったくない笑みで答える。
「はい!ネットで話題の女子大生人気ナンバー1のお店、連れてってください」
今時の女の子だ。ちゃっかりしている。英生はそんなまど花を本気で好きになっていた。
思惑通り、再就職が決まった。横浜郊外にある部品メーカー。そのことを智子に伝える前に英生は小梅食堂に駆け込んだ。
まど花は、風邪で熱が下がらないから休みを取っていると店長が気の毒そうに言う。英生は、まど花の身体が心から心配になる。魂が抜けた顔で自宅に戻る。
智子が肩にサロンパスを張っているところだった。
「ちょうどよかった。背中に貼ってくんない?」
「ああ、再就職先決まったぞ」
「そう、少しは楽になるわね。でも貯金は底をついてるし、ギリギリよ。ほら、これ3枚貼って。パソコン作業ってまじ大変なのよねえ」
智子のサロンパスだらけの背中を見て、英生は「ばばあになったな」と思った。ばばあでもなんでも今までならそのまま押し倒してやってしまうのだが、今の英生は智子を性の対象にできなかった。
かわいいまど花、まど花の桃のようにぷっくらした頬にくちづけしたいとサロンパスを貼りながら願った。
大切に扱いたい人
一週間後、まど花がよる時間に働く曜日。また小梅食堂を訪ねてみる。いた。声が枯れていたがまど花の「いらっしゃいませ」という声が英生の耳にストーンと心地良く滑りこんだ。
「まど花ちゃん、よかった。風邪治ったんだね」
「でもまだ声おかしいでしょ。咳するとお客さんに悪いから咳が止まるまでバイト休んでたんです」
英生は今の状況を伝え、まど花が行きたがっていたイタリアンの予約を取ろうと申し出た。次の土曜、バイトの日程を変更してもらい、行くことになった。英生は大きな身体を揺らして喜んだ。
土曜夜。確かに若い女性が多い店だ。ネット評価にも味より店のインテリアのポイントが高いと書いてある。スタイリッシュなイタリア家具とやけにお姫様っぽいレースのカーテンがみごとにマッチしていた。天井が高く、開放感がある。壁に大きな太陽の絵が描かれている。
「ここの人気はドルチェ。ティラミスの周りにいちごとラズベリーが山積みされてるんですって」
まど花が小声で教えてくれる。この日のまど花はせいいっぱいのおしゃれをして来ている。
ふわっと広がった薄紫色のスカート。小花模様のブラウス。バッグには英生がプレゼントした靴の形のチャームが揺れている。完璧なデートだった。まど花がスパゲッティをチュルリとすすりこむ口元を見て英生は目を細めた。
「愛らしい、なんて愛らしい口元なんだ」
甘いお酒を一口飲んだだけでまど花の桃のような頬はさらに熟した桃になった。
いちごに埋もれたティラミスを幸せそうに頬張ってスプーンを舐めるまど花を見て英生は我慢できなくなった。
「あの、まど花ちゃん、僕、その、大人げないんだけどまど花ちゃんに夢中になったみたいで」
「えー、なに言ってるんですか。伊崎さん、奥さんいるじゃないですかあ」
「いや、その妻はただのアイコンでその、もう好きとかじゃなくて、いつでもさよならできる関係で…」
「やだあ。奥さんに悪いー。うちのお父さんも浮気で出て行ったんですよう」
英生はしまったと思った。
「でも、男と女って何が起きても不思議じゃないってかあさんが言ってました。最初から100パー合う人なんか見つかりっこないんだって。残りの10パー求めて恋に落ちるそうです。友達の恋愛見ててもそう思うな。最初はあんなに好き好きって言ってても、浮気したり飽きたりして…」
「まど花ちゃん、どうしても二人きりになりたい。その…エッチな意味じゃなくて、手、握るだけでいいから。頑張ってるまどかちゃんがかわいくてたまらないんだ」
まど花はちょっと考える素振りを見せた。
「…ええ、いいですよ。伊崎さん、悪い人に見えないし。大きくて熊さんみたいだから、かわいいし」
英生はATMで多めに借りておいてよかったと思った。少しだけ高いビジネスホテルにチェックインした。来月からは給料が入るという安心感も後押ししていた。
セミダブルのベッドに並んで座り、英生はまど花の手の甲に自分の手を重ねてただじっとしていた。それだけで充分すぎるほど幸せだった。
智子とならあちらの都合も考えず、したい時に強引にするくせに、まど花に限っては大切に扱いたかった。
英生が休日出かけるなど珍しいと思いながらも智子は何も疑っていない。職にありついたから気分がいいのだろうと。巨体の金無し男など飲み屋街に行ってもモテるわけがないと馬鹿にしている。
ロマンが膝の上にピョンと飛び乗ってくる。ペロッと智子の顎を舐める。瞬間、鼓動が早くなった。
「やだ、私ったら。変なこと思い出した…」
原口に教えてもらった肩こり改善体操をしているせいか、肩こりも頭痛も前よりずっと楽になっている。また原口に会いたくなっている自分に気づく。会いたいというより、撫でて欲しい。触って欲しい。ロマンが何かをねだるようにミャアと鳴く。
「ロマンはいいわね。世間体なんか気にせずいつでも甘えられて。私も甘えてみたいわ。男の人に…」
ロマンの首を撫でながら智子は原口のマッサージを思い浮かべる。自分で肩をさする。ロマンがまた智子の頬を舐める。すでに智子の下半身はしびれてきていた。
想像以上の展開
英生が新しい職場に通うようになり、家にいる時間が少なくなった。仕事を覚えるまで残業するから夕飯はいらないと言う。英生はまど花がいる日は小梅食堂で夕飯を済ませるようになっていた。
まど花は夜、店に出る回数を増やしている。英生にとってまど花とのLINE交換が何より心地いい。まるで高校生に戻った気分だ。
あの時代にスマホがあれば人生が変わっていたかもしれないと思いながら英生は休憩時間や電車の中でこまめにLINEを打つ。
まど花からはわけがわからない絵文字やいろいろな表情の顔文字が届く。泣き顔の顔文字が送られてくると、心配になる。
「疲れているのか、店長に怒られたのか…」
ある日、将来のことで相談があるというまじめな文面が届いた。英生はすぐに返信した。
「まど花ちゃん、そういう大事な話はこの前みたいに静かな場所で話そう」
まど花のバイトがない木曜日、英生は研修が午前中で終わる日だった。智子は6時まで家には戻らない。
LINEを送る。
「まど花ちゃん、よかったらうちに来ないか。おいしい紅茶を淹れてあげるよ。それに、猫のロマンもいるから楽しいよ」
「ロマンちゃん、会いたい!」
嬉しい顔のスタンプが届く。バンザイをしている。
英生はスマホを持った手でスタンプのようなバンザイをした。
気になる彼女を家に誘いたい場合はペットを使えと、ネットのモテ講座に書いてあった。まったくそのとおりだ。
玄関のベルが鳴る。
「…こんにちは。来ちゃいました」
英生は衣装ケースの中にあった一番上等のTシャツを着て、ロマンを抱きかかえて玄関でまど花を迎える。
「わあ。ロマンちゃん。かわいい。おでこの毛もふさふさ」
家のキッチンで初めてティーパックではない紅茶を淹れる。駅前の輸入菓子屋で見つけた、缶に英語がいっぱい書いてある紅茶。もちろんいちごのショートケーキも買い揃えた。
小さなソファでロマンと遊びながらまど花が紅茶をすする。
ひととおり、将来の就職先の話が済んだ頃、まど花がポツンと言う。
「奥さんと仲悪いってほんとですか?おうち、きれいに掃除してあるし、幸せな家庭っぽいけど。てか、奥さん、夜まで帰らないんですか。ドキドキするなあ」
「早く帰ってきたら、会社の後輩ってことにするよ。近くに来たからお茶に誘ったって」
「きゃはー、嘘くさいー!」
ロマンが伸びをしながら長細い鳴き声を上げる。
まど花がしきりに智子の事を気にするので頭を掻きながら、智子について話し始める。
「奥さんとはね、仲はあんまりよくないよ。夕飯は何時だとか風呂は洗ったかみたいな話しかしないしなあ」
「そんなもんなんだ。じゃあエッチは?エッチはあるの?」
ギクリとした。清純そうなまど花からそんな質問が来るとは思ってもいなかった。
「まど花ちゃんは、そんなこと興味あんの?」
「うん、友達はみんな経験してるから、話題についてゆけなくて寂しいんです」
「じゃあ…したこと…」
「ないですよう。彼氏もいないのに。地方から出て来たってバレバレなんです。田舎くさいからもてないの」
英生は思わず細い肩を抱きしめた。
「もてないなんてことない。すごくかわいくていい子だよ」
「伊崎さん、ふっくらして気持ちいい。プヨプヨですね」
まど花が英生の腕の肉をつまんで笑う。堰き止められていた水が一気に流れ落ちるように英生の欲情が動く。英生は思わず、まど花の唇を塞いだ。ロマンがあわててまど花の膝から飛び降り、サッと逃げてゆく。
その時、驚くことが起こった。まど花が舌先を英生の口の中に入れてきたのだ。
英生は思わず目を開けた。まど花は目を閉じてキスに夢中だ。唾液を交換するようなネットリした絡め合いが続いた。まど花の口の中は甘い。ホイップクリームの味がする。こんな甘いキスはいつぶりだろうか。
「キスの仕方、ちゃんとわかってるんだね」
まど花がコクンと頷く。
「友達みんなが教えてくれたの。舌を使ってこうするんだよって。合ってましたか?」
あどけない顔、桃のような頬。英生は頬にキスしながらまど花の白いシャツの裾から手を入れた。まど花は抵抗しない。抵抗されたらすぐにやめるつもりだった。
ブラジャーにフリルがたくさんついている。フロントホックを外す。こんもりとした小さなふくらみ。智子と違って固い。新鮮な肌触り。先端は心なしかこわばっている。英生の手のひらがふくらみを包み込む。
「あったかい手…」
まど花がフーっと息を吐く。ソファが狭いので床のカーペットの上にまど花を寝かせる。
暴かれた関係
体重がかからないように腕で支えながら、まど花の上に乗っかる。頬、耳たぶ、うなじと唇でたどる。
「これが大人のキス?」
初めての行為をまど花はいちいち確認しながら楽しんでいるようだ。
「重くない?僕、ダイエットしなくちゃね」
英生はまど花が緊張しないよう、時折、会話をはさみ、バンザイさせてシャツを脱がす。
フリルのブラジャーは薄桃色だった。白肌とのコントラストが美しすぎる。智子のベージュのスポーツブラとは大違いだ。スカートのジッパーをおろす。パンティも同じフリル。
白い肌が汗ばみ、こころなしか震えている。
「妖精みたいだ。きれい」
英生はブラジャーを取り、小さなふくらみをいとおしそうに舐めまわす。乳首をパクリと加える。熊がやっと見つけた獲物にかぶりつくように。
「あんっ」
初めて漏れた感じる声。智子の振り絞るような喘ぎ声とはまったく違う。鈴がチリリンと響くような声。
すべてが新鮮だった。相手は始めてだ。痛くしてはいけない。英生はパンティをそろりと降ろす。産毛のような柔らかいヘアが覆っていた。大事なものを触るようにそこに舌を這わせる。
「そ、そんなとこを…」
「一番大事なとこだから、やさしく舐めてあげる」
まど花は両手で顔を隠している。昼の日差しがカーテンの隙間から差し込む。英生の舌先がまど花の恥ずかしい部分をていねいに舐めあげる。下から上に上から下に。時に丸く。
まど花が自分から脚を開く。ピンクの谷間が英生の欲情を煽り立てる。それほど濡れていないので、英生は一生懸命唾液を注ぎ込む。
我慢できなくなってきた。英生はそそくさとズボンとパンツを脱ぎ、まど花の膝を立ててソレを入り口にあてる。
「ゆっくりするから、こわがらないで」
まど花が顔を隠したまま頷く。そろそろとソレの頭をねじり込ませる。
「痛い?」
まど花が首を横に振る。半分まで侵入し、あとは、腰をグッと押し付けた。
「ああああんん」
まど花が意外なほど大きな声でよがる。
「ゆっくりするから、力抜いて」
英生はまど花を怖がらせぬよう、なるべく落ち着いて説明する。
「もっと奥に入れて大丈夫か?」
まど花はイヤイヤする。本当は根本までグッと押し込みたいところだ。しかし無理はできない。まど花の中は湿り気も足らず、緊張で身体中こわばっている。包み込み具合の気持ち良さで言えば智子の勝ちだ。英生は秒速5ミリを目指して動いてみる。
「これくらいなら痛くないだろ」
まど花はだんだん慣れてきたようで力の抜き方がわかってきた。するとスッと奥にもぐり込めた。まど花の桃のような頬にくちづけながら英生は精を解き放った。
まど花が巨体を重く感じないよう、まど花の上から降りた。横に寝そべって髪の毛とふわふわしたヘアを交互にを撫でた。何分経っただろう。ゴトンと玄関で音がした。
「やばい!今日は早く帰ってきた!」
英生は目の玉をひん剥いて、ズボンを上げた。ソファに投げかけてあった白いブラウスをまど花に着せる。あたふたと動く二人。
間に合わなかった。スーパーの袋を持った智子が仁王立ちでリビングの入り口にたたずむ。何も言葉を発せず、般若のような形相だ。
スーパーの袋から突き出た長ネギが揺れている。しばらく沈黙の時間が伊崎家に流れた。まど花は無言でスカートを履き終えると、バッグを持って智子の脇をすり抜け玄関に消えた。
英生は床の上に正座して座ったまま、智子を見上げる。
「どうゆうこと?誰、あの小娘」
「今更言い訳も何もないよな。そういうことだ。俺はあの子が好きなんだ」
「はっ?デブで金もないあなたが、小娘と浮気…金がないから自宅でセックスってこと?」
英生は開き直る。
「そういうことだ」
「せっかく再就職できて安心してた矢先に…」
智子は買い物袋からじゃがいもを取り出し、英生に二個投げつけた。英生は何も言わずにうつ向いたままだ。ロマンが智子の方に擦り寄る。猫は飼い主の力関係を知っている。
智子の復讐心
智子はむしゃくしゃしたまま裏の公園に行った。アキに電話をかける。
「アキさん、私、旦那の浮気現場に遭遇しちゃった。バッカみたい。腹が煮えくり返ってる」
「智子さん、ほんと?プータローって言ってた旦那さんでしょ?」
「うん、ずっと貯金と私のパート代で暮らしてた。最近再就職できたばっかだったの。と思った矢先に女連れ込んだ。だから仕返ししないと怒りが収まらない」
「わかるわ。その怒り。復讐しなさい」
アキは大人だ。頭がいい。
「原口さんの電話番号、すぐメールで知らせる」
それだけ言って電話を切った。夜の暗闇が迫っていた。原口ももう家に帰っていることだろう。3コールですぐに出た。
「あの、私、伊崎です。お願いがあるんです。肩こりで頭痛がしてきて。出張っていうか、どこかのホテルでマッサージしてもらえませんか。今から会社の保健室行くのも変だし」
原口はためらうことなく答えた。
「いいですよ。高速インターの近くにあるホテルシャルムわかります?そこなら自転車で来れるでしょう。30分後に玄関で待ち合わせを」
慣れていると感じた。紺野アキも二階の事務の池内も、ホテルシャルムで抱かれているのだ。そう考えると逆に気持ちが楽になる。
ホテルシャルムは古くからあるが改築したようで、部屋はこざっぱりしている。赤いライトがレトロな雰囲気を演出する。
「じゃあ、さっそく仰向けになってください」
原口もマッサージのために呼び出されたとは思っていない。いつもは心地よさでウトウトしながら性的興奮を得ているが、この日の智子はしっかり覚醒している。
しかも英生に対する怒りで身体中の神経が棘のようにとがっている。原口は理由を聞くこともなく、智子の衣服を脱がせた。
「伊崎さん、小柄だからマッサージしやすいんですよ。小柄な女性は性感帯も集約されているから感度もいいはずです」
「むちゃくちゃにして。いやらしいことなんでもしていいから」
原口は智子にむさぼりつくようにキスをしてあらゆる場所を噛んだ。歯形がつくかつかない程度に。
人がどの程度の力をかけると痛がるか、原口は熟知している。痛みを感じる前にスっと抜き流す。それが性的興奮に変換される。
「んあああ。んんああああ」
保健室とは違い、いくら声を出しても誰にも聞こえない。英生が小娘としたこと以上のいやらしいことをしてやる。
復讐だ。デブで金がないくせに浮気した変態夫。あんなさきいか臭い下品な男に、小娘がなびくわけがない。きっと借金して何か買ってやったに違いない。智子は想像で頭がいっぱいになる。
くるりと智子を四つ這いにさせ、原口は後ろから一気に突いてきた。智子はロマンが伸びをするように背中を反らせ奥へ奥へと導き入れる。自分の身体の一番奥を智子はわかっている。英生に教えられたから。
「すごいな、伊崎さん、乱れ方が」
原口が眉をハの字にしてガシガシ出し入れする。
「んんあああ、いいわ、いいわあ。」
原口がスピーディーに腰を震わせる。
「ねえ、アキさんともこんな体位でした?」
悶えながら意地悪な質問をつきつける。
「…ああ」
原口も乱れた声で吐息混じりに答える。
「ほかのパートの人達ともしてるんでしょ」
「…こんな感じさせてくれる奥さんはいない…」
「私の身体、いいの?」
「…グショグショで中が狭まってて搾り取られそうだ…」
「あなたが肩こりを治してくれたから、元気になったのよ」
原口は、極みを目指して猛ダッシュする。刺激が子宮口まで伝わる。英生と小娘が裸でまさぐり合う光景が脳裏に浮かぶ。あんな若い娘に入れるなんて変態オヤジだ、となじりながら智子もしだいに上がってくる。
「はあああああん」
ことがすべて終わると、怒りの炎が消えていた。自分だって原口とこっそりまさぐりあっていたのだ。英生を咎めても仕方ない。小娘に貸してやっただけの話だ。
「ふふふ」
自然に笑いがこみ上がる。タバコをふかしながら原口が智子を見る。
「伊崎さん、僕が整骨院オープンする時、ちょっとでいいんで出資してくださいね。永久会員にしますから」
智子はそのタバコを取り上げて口に加えた。
「いいわよ。アキさんと一緒に永久会員にしてちょうだい。ま、今は26万しか貯金ないけど、全部出資する」
原口が背中から智子を抱きしめる。
「ありがと。いつでもマッサージいたしますから。奥様」
タバコ臭いキスを交わしながら智子は考えた。
「絶対、英生とは別れない。あいつが小娘にふられる日まで別れるもんか。セックスもさせてやらない。」
「何考えてるの、伊崎さん」
「ふふ。これから先ずっとね、肩がこった時は、あなたとセックスしたいなって…」
「おやすい御用ですよ」
原口は智子の肩を両手でそっと包んで揉んだ。
英生と原口。二人の男との長い人生が始まる。英生にはジリジリ復讐してやる。智子は自分の人生は自分で支配すると固く誓った。
END
あらすじ
主人公の夫・英生がリストラになり、主人公・智子がパートで働いている現状に、智子は憤りを覚えている。
やりがいのない仕事で忙しい日々。色んな不満が相まって、日常のネガティブなことはすべて英生のせいにした…