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恋愛とセックスのかけ算/23歳 ふみの場合
またたく長い睫毛
マネキンのボディに新しく届いた洋服を着せながら口ずさむ。
音楽プレーヤーで昼休み中に聴いていたブリトニーの新曲。
「ふみちゃあん、ごきげんねー。なんかいいことあったあ?」
店舗スタッフの同僚、美加子が顔を覗き込むように近づいてきた。
甘ったるい声、だるそうな動き。シロップ漬けの果物のようなズルそうな女。
金髪のヘアを三つ編みにして毛先を外側にわざとはねさせている。異様に長い睫毛がひじきみたいだ。
「別にフツーだよ。美加ちゃん、睫毛伸びてきてるの?」
「そうだよう、育てているの。美容液あげたりエクステしたり、子育てと一緒だよ」
まばたきが異様にとろい。
美加子は派手なファッションをしているが1歳の子供のママ。
子供を保育所と実家に預けながらふみと一緒の洋服屋で働いている。いわゆるさずかり婚だ。
休みの日にはかわいい女の子を抱いて店に顔を出す。結婚して幸せというアクションを振りまく姿がどことなく鼻につく。
夫と子供、二つのお宝を勝ち取った女。ふみと年齢はかわらない。
むしろ、ふみよりずっと若く見える。ふみは美加子を見るたびに腐りたくても腐れない果実を思い出す。
マネキンに服を着せ終えて試着室の鏡の前に立ってカーテンをシャっと閉めた。姿見にふみの全身が映る。
ベリーショートで、シルバーのピアス。自社ブランドの花柄フレンチスリーブのセットアップ。
美加子ほどではないがしっかりリキッドライナーで目に線を入れ、アイメイクを決めている。
おしゃれな自分、イケてるじゃないと思う。なのに、なんだか寂しそうな自分。
ブリトニーを口ずさんでいたのは機嫌がいいからじゃない。寂しいからだと自分ではわかっていた。
寂しいときに流行りの曲をハミングするくせが昔からある。ふみの最大の悩み、それは一緒に暮らしている寛太との関係だった。
ちょうど一年前から寛太の2Kの部屋で一緒に暮らし始めた。
最初は新婚気分だったものの、後半そしてまた半年、まったく寛太が求めて来ないのだ。
ふみが悲しくなる原因は寛太との性欲の違いだった。
すれ違う二人
寛太は印刷会社で働いていて、急ぎの仕事があるときは夜中にぐったりして帰って来る。
暇なシーズンと忙しいシーズンと分かれているので、暇なときは友達が経営しているバーでバイトをしている。
家にいるのは日曜くらいしかない。
26歳とはいえ常に疲れていて「眠いー疲れたー」を連発している。
一緒に暮らし始めた頃は夜遅く帰って来ても、シャワーで髪の毛が濡れたままふみの隣りにもぐりこみ、パジャマの中にモゾモゾ手を入れてきた。
「お布団濡れるから髪乾かしてよ」
と言うと
「乾かす時間があったらふみとイチャイチャしたい」
と言って下半身をこすりつけてきた。
すぐに硬みをおびてくる寛太の一部をふみはたまらなくかわいく思っていた。
「なんてかわいいの」と両手で包み込み、愛しそうに握ったり解き放ったりする。そのうちに寛太はパジャマのズボンだけ脱いでふみに入ろうとする。
「ちょっと、私、準備できてないんだけど」
と不満を言う。時間が遅いからしょうがないかとあきらめて寛太のかわいい分身を受け入れる。
ふみは以前から性欲旺盛だった。
愛撫などなくてもそのことを考えただけで内側が湿り始める。寛太のかわいいものが硬くなるだけで受け入れ態勢はできあがる。そしてワンストロークで完全に溢れる。
寛太はそれをいいことに丁寧なキスもタッチングもしなくなっていた。夜中に帰って来て、ふみに入って、放出してすぐに爆睡。
ふみは、ananのセックス特集に出てくるようなロマンチクなエッチを楽しみたかったが寛太のライフスタイルでは到底無理。
それでも一日おきに求められ、必ず二人でイクという夜の交流をふみなりに楽しんでいた。
それが三日おきになり、一週間に一度になり、そして半年経つ頃は二ヶ月に一度、それもふみが激しく求めないとしない状況になっていた。
「寛太くん、ねえ、寛太くん、しようよう」
「ええー、オレッチ眠くてたまんないんだよ。仕事きっついんだよ。勘弁してよ。日曜にしよ」
と言ってクルリと横を向いて寝てしまう。
そして日曜になると
「なんか、今日そんな気分じゃないし。明日早いから寝よう」
「どうしても観たいDVDあるからエッチは来週」
とか言い出して、うまくはぐらかされるようになった。
誘う口元

ゲームに夢中になってスマホを睨みつけている寛太の背中に抱きついてみた。
せっかくの日曜なのに寛太はふみよりスマホを見つめている時間の方が長い。
「ねえ、カンちゃん、平日は無理でもさあ、休みの日くらいエッチなことしようよう」
ちょっと甘えた声で誘い、寛太の表情を観察した。
あきらかにとまどっている。目が宙をさまよい小鼻がヒクっと動いた。前歯で唇をキュっと噛んでいる。
スマホを閉じて立ち上がり意味も無く背伸びをして
「あああ、喉かわいた」
と言う。わかりやすい男だ。
「じゃあさ、冷蔵庫にトマトジュースあるから取ってきたげる」
ふみはトマトジュースを大きめのコップになみなみ注ぎ、立ったまま豪快に一口飲んだ。
口のまわりに赤いジュースがべっとりついた。
「カンちゃん、舐めてー。ついちゃったあ」
ふざけたように寛太に唇を突き出す。これを断れば喧嘩になると思ったのか、寛太はまじ顔になり、舌先でペロっとふみの口のまわりを舐めた。
ふみは、この先の展開を期待しても無駄かと思いつつも寛太に抱きつき、久しぶりに口の中に自分の舌をねじ込んだ。
「んっ!」
半年ぶりのキスに驚いたように寛太が立ちすくんだ。腕をダランと下げたままふみの舌先に自分の舌をあずけている。
ふみは右手を寛太の下着の中に滑り込ませた。寛太は抵抗しない。
体温があがっているのか頬がほてっている。
「カンちゃん、シャツ脱いでソファに横になって」
ふみはいらだった。女の私にここまでさせて、それでも押し倒してくれないなんてと。
ふと、美加子のひじきのような睫毛が脳裏に浮かんだ。
ダンナがやさしくて、毎晩求めてくるとのろけていた。二人目できたかもしんないと下腹部を撫でていた。
愛されキャラと自慢しながらゆっくりまばたきをする美加子。睫毛がバシバシ音を立てているようでむかついた。
今、引き下がるわけにはいかない。美加子に勝つためにも寛太に抱いてもらわなければ。
ふみは自ら下着を脱いだ。
寛太がソファの上で観念したかのように長い息を吐いた。
愛と性欲
寛太は一言も話さなかった。
ふみがそれを口に含んでいるあいだも、うなじに舌を這わせても。
ふみは自分を触って欲しかった。耳たぶもおしりも、乳房も、そして心も。
「私の心も身体も愛して欲しいの。どうしていつも知らんぷりするの」
寛太の手を自分の脚のあいだに誘導した。
寛太の指はおっかなびっくりそこに触れようとしたが、われにかえったようにサっと手を引っ込めた。
「どうして? 前は触ってくれたじゃない。エッチ好きって言っていたじゃない」
ふみは涙目でささやいた。あと3分後には大きな嗚咽になるとわかった。
そのくらい悲しみが胸の億から湧き上がっていた。せき止めていたダムの水が流れ出す一歩前のような。
「ふみ、ごめん。ふみのことは大事だけどさ。一緒にいて楽しいし。でも、あんましエッチな気分にならないんだ。」
「それって私にだけ? ほかの女の子とならエッチできるの?」
「ううん、十代のときみたいにエッチしたいって気持ちなくなったんだ。仕事で疲れているってのもあるけど、疲れてない日でもエッチよりゲームしたり、コミックカフェでまったりしてるほうが楽しい。バーのバイトも好きだし」
ふみは、どう答えていいかわからなかった。震える声を絞り出した。
「じゃあ、私のこと好きじゃないから別れてもいいってこと?」
寛太はやっと腕をふみの方に伸ばしてふみの手を握った。
「ふみのことは好きだから、別れたいなんて思わないよ。でもエッチはあんまり…したくない。エッチなしで一緒に暮らすのってだめかな」
別れたいと言われなかっただけで、ふみの気持ちは落ち着いた。
だが寛太の性に関する考えはすぐには受け入れる事はできない。
男と女が結婚を意識して一緒に暮らしているのにセックスがないなんて寂し過ぎない? 愛している人に抱かれたいって女はみんな思うものじゃない?
ふみの頭の中は乱された。
ふみの愛されたい願いとほとばしる性欲を寛太は満たす事ができない男なのだ。
キャハハハという美加子の笑い声が頭の中をこだまする。
ひとりの男に愛されている美加子。いつも抱かれている美加子。
ふみの中で黒いカーテンがシャっという音とともに閉じられた。試着室のカーテンよりずっと重い分厚いカーテン。
「カンちゃん、ごめん、私の中では愛と性欲は一致するんだ。しばらく距離置こう。それでこれからのこと考えたい」
ふみは、シャツをはおって窓のカーテンをあけた。
フワっとあいたカーテンの先に、茜色の夕焼けが広がっていた。
END
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あらすじ
ふみには悩みがあった。ふみの最大の悩み、それは一緒に暮らしている寛太との関係だった。
ちょうど一年前から同棲を始めた二人だったが、だんだんすれ違いが生まれて…