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【前編】恋愛とセックスのかけ算/29歳 美鶴の場合


ジェラシーを感じる才能

両腕を天に向かって伸ばす。眠っていた肩の周りの筋肉がいきなり起こされて、しぶしぶ動き出す。肩甲骨の内側のコリは頑固だ。何分かストレッチをしてグルグル腕を回す動作をしなければほぐれそうにない。

美鶴は30分かけて上半身の関節をゆっくり伸ばした。次は脚まわり。スタジオのウッドフロアの上でゆっくり開脚をする。180度開脚は簡単にできる。つま先に力を入れてポイント&フレックスを繰り返す。

身体の隅々まで伸ばしていると、筋肉の全てが目を覚ましてくる。暖かい血液が皮膚の下を駆け巡る。筋肉が熱を帯び、動きたくてたまらないと美鶴に話しかけてくる。美鶴は毎日、ウォーミングアップをしながら肉体に語りかける。

「気持ちを込めた踊りが出来るように、私の言うことを聞きなさいよ。固まっちゃダメよ」

一通りのアップを終えて、音響装置から音を流す。2ヶ月後のステージのために振付を考えなくてはならない。クライアントは4人組のアイドルグループ。中高生の目に焼きつくようなチャーミングな振付をという依頼だ。

画用紙に色鉛筆で4人のフォーメーションを描く。

「3番4番をセンターに立たせて1番を上手に…」

その時、スタジオのドアが開き、ミミが森の子リスのように可愛らしい顔をちょこっと覗かせた。

「美鶴っち、おはよ! 手伝いに来ました〜」

本当は久我美佐子だが、ダンサーっぽくないということで「ミミ」という愛称を付けられた。赤っぽいブラウンに染めたロングヘアを上手に頭のてっぺんでまとめている。美鶴より身長は10センチ以上低い。

小柄で目立たないかと思いきや、身体能力は抜群でバネのように上下に動く。手足は時に風に揺れるリボンのように、時に鋼鉄の柱のように自由自在に形を変える。ステージでは誰しもミミのダンスに視線を集中させる。その才能に美鶴はジェラシーと尊敬の念を抱いていた。

「ミミ、おはよ、はやくアップして、ヨチヨチ歩きの動きのバリエーション考えて」
「はあい」

ミミがストレッチをする姿を横目に見ながら美鶴はため息をつく。ミミはなんでもない動きをしていても輝く。かっこいい。美しい。生まれながらのダンサーなのだ。

ダンスの振り付けをミミと一緒に踊りながら考える。何度も同じステップを踏む。腕の回し方のバリエーションを20個以上やってみる。ミラーに映る二人は汗だくのビーナス。しなやかで美しい。

あっという間に一日が終わる。シャワーを浴びてロビーのソフアにどっしり沈み込むように座ると疲れが関節中から顔を出し始める。痛みまではいかないが、これ以上動くとダメというサインを骨が送ってくる。

スマホを取り出すとLINEが何本か入っている。

「美鶴、今夜行くから。なんか作っといて」

香坂賢吾、妻子持ちの男。下積み時代、居酒屋のバイトで知り合った7歳年上の男。やめよう、やめようと念じても美鶴の中のもう一人の自分が会いたくてたまらないと泣き叫ぶ。そして四年、気持ちをごまかしながら付き合っている。

賢吾の裸の胸に顔を埋めるとなんとも言えぬ幸福感が美鶴を包み込む。賢吾の胸に唇を寄せる時、「奥さんにも舐められているんだろうな」と小さなジェラシーが沸き起こる。思わず強く歯を当てる。

「いてっ!おい、歯形つけるなよ…」

慌てる賢吾を見下ろして、頬をつねる。

「私だけの賢吾でいてよ」

賢吾の腰の上にまたがりながら何度、頭の中で訴えたことか。

そのジェラシーにまみれたシーツの上で賢吾を思うままに操る行為が美鶴の征服欲を満たす。賢吾との交わりはいつも美鶴が勝者だ。賢吾に主導権は渡さない。大きく開いた足の付け根を舐めさせながら自分だけ上り詰める。

賢吾にそれを入れることはさせない。焦らす。徹底的に。美鶴はダンサーだ。身体が軽やかに動く。賢吾が追いかけてきてもスルリと抜ける。かぶさってきても両足で羽交い締めにしたまま賢吾のそれを導かない。

「ミツルーー、勘弁してくれよ。いっつもお前だけ気持ちよくなって、俺は発射させてくんないなんて卑怯だぞーー」

ギブアップの顔をして横たわる賢吾の上にいきなり乗っかり、瞬殺する。焦らされていた賢吾は最高の快感で大声をあげる。長い雄叫び。二人にぴったりの愛のパターンが完成していた。

活力源

賢吾が美味しそうに風呂吹き大根をつついている。安いウイスキーで作ったハイボールを3杯飲み干した。

「うまいよ。美鶴のメシ。うちじゃ、子供が好きなハンバーグとかソーセージのタコさんとかさ、お子様メニューばっかだ。大人の舌には辛いぜ」
「休日にはけんちゃんの好きなもの作ってくれるでしょ。奥さんは料理上手?」
「まあ、こじゃれたメシはな。シチリア風なんちゃらとか。イベリコなんちゃらとか」

美鶴はムっとした。結局、喜んで食ってるんじゃないか。

「けんちゃん、なんで私と続けてるの。バレたらまずいってビクビクしながら浮気続けてる男の気持ちってどうなの?」

賢吾が箸を置いて、まじ顔になる。

「浮気とか言うなよ。俺は美鶴のことずっと前から大事にしてる。でも美鶴が結婚はまだしたくないって言うから、あきらめて今の奥さん選んだんだ。お前の言うこと聞いただけだ」

美鶴は黙り込んだ。確かにあの時は、ダンスが楽しくてしかたなかった。コンサートで全国を回ったり、海外のアーティストの振り付けを頼まれたりと充実していた。結婚という言葉がピンとこなかった。

賢吾は安定志向で早く家庭を持ちたかったからそこはずれていた。それでも賢吾と離れたくなかった。結婚しようが賢吾を手放したくなかった。そして今の状態にある。

賢吾を征服するセックスは美鶴にとって活力源だ。賢吾と交わると疲れた身体にガソリンが注入されるような気持ちになれる。ハードなステージを終えて「ああ、限界。筋肉疲労通り越して痛い…」とベッドに倒れ込んでしまう夜も賢吾と抱き合うと翌朝には復活する。

福井県の営業所に月に2度出張がある賢吾はその時に必ず美鶴の部屋に泊まって行く。出張がない時でも美鶴が「疲れたから一緒に寝たい」とLINEを入れると、2時間だけでも時間を作って来てくれる。

美鶴は、賢吾の右肩にもたれかかり、ハイボールの氷を人差し指でかき混ぜて賢吾に飲ませた。

「冷てえ」

くしゃっとした顔で賢吾が笑う。今度は賢吾が人差し指で氷をかき混ぜた。その人差し指を美鶴の服の襟から忍ばせた。ブラジャーの下にある美鶴の乳房をソッと撫でる。

「冷たいーー」

賢吾の唇が美鶴の唇を塞ぐ。冷たい指が乳首をつまむ。美鶴は求めたくなる。

「あふっ…」

熱身を帯びた唇、冷たい指に弾かれた乳首。美鶴は、無意識に嫉妬心を呼び起こす。わかっている。嫉妬することでセックスを攻撃的に変えることができる。

「奥さんとはいつしてんの?」
「奥さんとは週何回してんの?」
「奥さんとはどんなことしてんの?」

吐息まじりにたたみかける。

「子供が寝た後で布団に潜り込む…」
「週2回しないと機嫌が悪くなるんだ…」
「美鶴とは全然違うこと…」

賢吾も美鶴の耳たぶを噛みながら質問に次々答える。悔しい。悔しすぎる。美鶴はお返しに賢吾の耳たぶをきつく噛む。思い切り嫉妬の念を込めて。

「やめろって。跡つけるなよ。バレたらどうすんだ」

賢吾が美鶴の頬をグーで軽く押し返す。

「今日は奥さんとしてることを私にして」
「バーカ…ダメだよ、美鶴はすぐ逃げて俺を焦らすから」
「今日は逃げない。じっとする」
「本当か? お前、身体柔らかいから、まるで軟体動物とプロレスしてるみたいな気になるよ」
「普通にしとく。じっとして動かない。だから奥さんにしてることして」

一瞬、賢吾が真剣に美鶴を正視した。

そして、命令口調で告げた。

「脱げよ」

こんな力強い声で命令されたことはない。美鶴はたじろぐ。

「…え? 自分で?」

賢吾があごをクイっと上に向けて言う。

「そうだ。俺の眼の前で全部脱げ」

じゃれ合っていた子犬同士が何かの拍子で喧嘩を始めた。そんな雰囲気だ。

美鶴の心が囁いた。

「賢吾、怖い顔してる」

新鮮な行為

美鶴はニットのセーターとデニムのミニスカートを脱ぎ捨てる。半袖のシャツをゆっくりたくし上げる。しゃがみながらストッキングをずらす。

賢吾が唾を飲む。まるで映画を観ているかのようにじっと見つめられている。美鶴はふとダンサーの自分を思い出す。脱ぐ動作もダンスにしなければ。妖艶に。男を惑わすように。

脱いだストッキングを人差し指と親指でつまんでベッドに放り投げる。ブラジャーのホックに手を回す。「見たい?」というような表情を作り、賢吾を挑発する。ラテンダンスのノリで腰を左右にゆっくりひねりながら。

美鶴のFカップの胸に冷たい空気が触れる。

「あっ」

自分で脱いでおきながら、感じてしまった。

賢吾が触れてもいないのに、乳首が固まる。賢吾の視線は美鶴のたおやかな胸に止まる。パンティ一枚になった美鶴は賢吾に向かって言う。

「これは、けんちゃんが脱がしてくれるんでしょ」

賢吾は首を横に振る。

明るい部屋で、賢吾に見つめられながら下着を脱ぐのは恥ずかしいが、新鮮な気分だった。ヌードダンサーになった気分で思い切りセクシーに腰をひねり、最後の一枚を脱ぐ。

「その机の上に手をついてお尻を突き出して」

また命令される。

立ったまま、机に両手をつく。背中をしならせるようにしてお尻をグイっと突き出す。

賢吾がハイボールの残りを飲み干し、すくっと立ち上がる。裸の美鶴を後ろから抱き締める。両手でふくよかな乳房を強く揉む。押しつぶすように強い力。

「あん、痛い。いつもみたいに優しく…」
「俺の嫁と同じことしろって言っただろ。俺は嫁にはやさしくしない」

美鶴は何も言えなくなる。

ベッドの上の女性

美鶴の背中越しに賢吾が、硬くなったそれをヒップに押し付ける。美鶴は20センチほど足を開く。いつものように優しく愛撫されたわけではないのに迎え入れる準備は充分できている。むしろ突き上げて欲しいとさえ思う。

入ってくる。立ったまま。後ろから。それは地上から勢いよく伸びた杭のように、美鶴を垂直に刺す。

「ううっ…」

美鶴の腰を両手で固定し、下から上に、ズンズンと突かれる。背筋から頭のてっぺんまで快感が昇ってくる。まるで背中を羽で撫で上げられているかのように。うなじを汗が滑り落ちる。

「…すごい。何これ…」
「初めてこんな格好でするだろ」

何度も空に持ち上げられそうになる。美鶴は熱い息とともに言葉を吐き出す。

「初めて…こんな角度で…あああ。ああああっ」

汗が机の上にポタリと落ちる。賢吾の太もももじっとり汗で湿り、美鶴のヒップにヌルリとあたる。

賢吾の両手が腰骨から離れ、急に美鶴の乳首をつまんだ。

「ううんん…」

美鶴の身体に地上から電流が流れたようにしびれた。臀部と下腹部が連動して波打つ。

「すっごく…いい」

美鶴は立ったまま、達した。振り返って賢吾の顔を見る。ニヤリと笑う賢吾を見て、強く妻に嫉妬した。

翌日、ミュージカルのオーディションに向かった。満足した身体、男に愛された身体、神経と細胞をフル回転させた身体。その身体で踊るダンスは誰よりも自分らしさを表現できると美鶴は知っていた。

ミミとも、以前この話題になった。

「ミミさあ、いいエッチすると、ダンス上手くならない?」
「なるなるなる。しなやかに動くよねえ」
「特に女性を前面に出す振付の時、思うんだ」
「うん。同意。ヒップホップとかハウスよりベリーダンスやサルサ系の時でしょ。バチャータとか。フラメンコもそうかな」

この日以来、オーディションの前には抱かれようと思った。そしてすぐに虚しさを感じる。

「ケンちゃんのエッチで寂しさを紛らしてるだけなんだよ。結局私は…」

ミミは能天気にストレッチをしていた。

憧れの人

オーディションの審査員に美鶴が尊敬しているダンサー黒木航星(こうせい)がいた。

2年前に同じステージで踊ったことがある。観客席まで熱の輪が届くかのようなパワーを持つ踊り方。上半身裸で舞台を舞う航星は、輝くオーブに包まれているようにも見えた。スターダンサーだ。

後ろで見ていても、舞台袖で見ていても航星は完璧だった。人を圧倒する。美鶴はいつか航星のように光をまとって踊りたいと夢を見ていた。

決められた曲で8フレーズ踊る。愛する男を慕いながら去って行く女心。昨夜の快感と目の前にいる航星がかぶる。高鳴る鼓動。上気する頬。爪の先まで丁寧に神経をゆき届かせる。

航星が美鶴の動きを凝視している。切れ長のシャープな目つき。細面の小顔。無駄な筋肉が1グラムもない細い首。航星は筋肉の量を測りながらトレーニングをしているのではないかとさえ思える。

美鶴は昨夜、立ったままの快感を施してくれたのは航星ではないかと錯覚した。

航星に愛されている、航星の両手が腰を支えて美鶴を宙に放り上げる。軽やかなジャンプステップ。宙で美鶴は両腕を羽のように広げて月に飛び立つ。

「はい、そこまで」

女性審査員の声が現実に引き戻した。

美鶴は深々とお辞儀をした。

「ありがとうございました」

顔を上げると厳しい航星の眼差しが、緩んだ。野原で仔ウサギを見つけた少年のような笑顔を見せて、パンパンと2度拍手をくれた。

ロッカールームを出て、自販機でサイダーを買う。ストイックなダンサーは自分で作ったオーガニックドリンクや水素水をボトルに入れて持ち歩く。美鶴は面倒くさがり屋なのでそこまで気を遣わない。居酒屋のハイボールも安いワインもなんでもいける。

サイダーのペットを持ってスタジオの裏にある広場のベンチに座る。

ミミに「上出来だったよ」とLINEを入れようとした時、目の前に背の高い男が現れた。なんの気配もなく、いきなり。根っからのダンサーだ。

「こ、こ、航星さん…」

「合格だ。いいダンスだった。時にメトロノームのように正確で、時に怪しく揺れていた。正式な通知は来週届くよ」

美鶴はただ驚いて立ち尽くしていた。

「前に、一緒の舞台立ったよね、確か…」
「はい、お伽の国のラブストーリー」
「覚えてる。あの頃の踊りは印象になかったけど」

美鶴は気まずそうな顔をした。しかし持ち前の明るさで航星を見上げた。

「大尊敬してます! 憧れです」

航星が名刺を手渡した。

「君の名前は?」
「高槻美鶴です。美しい鶴と書きます」

航星がまた優しくほほえんだ。

「鶴、綺麗な鳥だ。静寂で気高い」

いきなり、航星が片足を後ろに90度の高さで降り上げて、両手を頭上にまっすぐ伸ばして手首をクロスした。

美鶴はサイダーのペットボトルを落とした。

「きれい…。鶴。鶴の舞」

一瞬で元の立ち位置に戻り、航星は言った。

「次に会う時は、君も鶴になって踊ってみて。曇り空の暗い湖岸に立つ鶴。寂しい、寂しい…鶴。」

航星の姿が見えなくなってからも美鶴は放心状態で立っていた。

「すごい。すごい存在感…」

そして鶴の舞の課題を与えられたことが特別な自分になった気がした。ただ単に嬉しかった。

落としたペットボトルを拾い、セーターの裾でキュっと拭いて、飲み干した。炭酸が抜けていて、甘い水のような味がした。

オーディション合格の通知より、航星と毎日一緒に踊ることを喜んだ。美鶴は必死で練習をした。電車に乗っている時も、スーパーで買い物をしている時も、頭の中にはステップが巡っていた。

振付を覚えるだけじゃダメ。いかに気持ちを込めるか。縮こまらずに伸び伸び動けるか。そして稽古中、美鶴の目は航星を追っていた。すべての動作が美しかった。

歩く時も、音響係と話す時も、ダンサーに教える時も。身体中の筋繊維と骨関節を知り尽くして動きをコントロールしている。

振り向く姿さえ、貴公子に見えた。美鶴の心は揺れ動いている。賢吾のことが霞のように消えてゆく。

浮かんでくる顔

舞台稽古が始まり6日目、張り詰めた空気の中で他のダンサーと合わせながら踊る。一人暮らしのマンションに戻るとドっと疲れが出て、好きなハイボールを飲む気にもならない。

賢吾の存在など思い出すこともない。手足の筋肉が軽くこわばる心地よい疲れ。アロマをデフューザーで流しながらコンポにCDを入れる。

夜はバラード系ポップスを聴く。しかし職業柄、音が流れるとつい振付を頭の中に描いてしまう。バラードが流れるとバレエやジャズダンスの動きをついしてしまう。

美鶴にとってアロマは趣味の域を超えている。28種類のアロマを棚に並べ、その日の気分で流す香りを変える。ダンサー仲間が遊びに来る時、彼女たちの状態に合わせてアロマを調合する。

失恋で意気消沈の友達、オーエィションに合格してハツラツしている友達、彼氏とけんかしてイライラしている友達。皆が美鶴のアロマで心を落ち着かせる。

口コミで、友達以外のお客さんまで来るようになった。アロマを仕入れて対面で販売する。ちょっとしたお小遣いにもなった。

クッションにもたれて暖かい紅茶を飲んでいると航星の顔が浮かんできた。

「やだ、どうしよう。いっつも航星さんのこと考えてる…」

美鶴はプルプルっと頭を横に振った。突然、チャイムが鳴り響く。

「イエェーーイ。充電切れたからLINE入れずに来ちゃったあ。もう帰ってるかなって思って」

この前とは違う髪の毛の色。ピンクに染めたミミが、ドアの隙間からかわいらしい笑顔をのぞかせた。

「びっくりしたー。仕事帰り?」
「うん。帰りたくないから泊めて」

ミミが拗ねたように頬を膨らませて言った。

「なんかあった? ジローと」
「最低。あいつ。スマホのアルバム見てたらカチューシャしたブリブリ女と一緒の写真出てきた。肩に手、回して顔くっつけてるバカ写真」

ブスっとしながらクッションに猫パンチしているミミが妹のように思える。

⇒【NEXT】航星の唇が美鶴の唇をふさぐ。そしてサポーターを付けている手首をキュッと握り締める。美鶴は恋におちた。(【後編】恋愛とセックスのかけ算/29歳 美鶴の場合)

あらすじ

主人公・美鶴は、妻子持ちの男・香坂賢吾と付き合っている。
「奥さんにも舐められているんだろうな」そんなジェラシーを持ちつつの関係だ。
そして、嫉妬することでセックスを攻撃的に変えていて…

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